2015年7月6日 商工文教委員会
学生が安心して使える奨学金を求める請願に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 学生の奨学金の問題は、大きな社会問題であり、教育問題に発展して、ヤフー知恵袋でも「奨学金」という項目があり、「奨学金 結婚」という項目がある。いわば、奨学金が返済できないために結婚できない。結婚してみたら、妻が奨学金の滞納を抱えていたなど、大変深刻な社会問題になっている。
 日本学生支援機構における大学生の滞納者の実態、滞納額はどうなっているか。

【企画課長】
 平成25年度末で、延滞3月以上が18万7000人、3月未満の延滞が14万7000人で、計33万4000人となっている。返還を要する人に占める延滞3月以上の者の割合は5.3%である。

【斉藤委員】
 延滞がつかない部分を含めると、滞納が8人に1人になっている。例えば月10万円で4年間借りると480万円、そうすると返済総額は600万円を超える。大学を卒業したら600万円を超える借金を抱えるということになっている。
 有利子の場合は、だいたい月2万数千円の返済で20年間。22歳で無事就職して、43歳まで返済する。まともに就職すればいいが、いま若者の2人に1人が非正規雇用である。年収200万円程度だったら、とてもではないが返せない。また奨学金の返済があるために結婚をためらう、できない。夫婦で奨学金を返すというケースもある。奨学金の返済だけで月45000円ということもある。本当にこれは深刻な問題で、先ほど参考説明で、奨学金制度というのは、最初は無利子だった。ただ枠を拡大するときに、例外的に有利子を導入した。ところが今は7割方有利子である。いわば例外が当たり前になり、この枠が10万円まで拡充された。圧倒的には有利子、いわば教育ローンである。これは諸外国では奨学金とは言わない。500万円600万円借金を抱えるというのは、私はよく生活相談をやるが、自己破産の対象である。ましてやまともな職に就けなかったら返せない。そういう点で、いま奨学金制度というのは抜本的な改革が求められている。先ほど説明もあったが、無利子を基本にするというのは最低限のことである。もう1つは、所得連動型奨学金にすると。これは一部やられていて、年収300万円以下だったら免除されると。最低こういうものが全面的に実施される必要があると思う。
 いま猶予期間が5年から10年に延びた。ただ、10年経ったら返せる保障は1つもない。10年たったら自己破産と。そういう点で、いま奨学金制度の抜本的改革が必要で、制度改善の報告でも、そういう基本方向が出ているが、いつから実施されるか分からない。これは直ちに、いま示された改善方向は実施される必要があるのではないか。
 そして、延滞利息の制度というのは、利息も問題だし、延滞利息という制度もローンの発想である。これをなくすのは当然ではないか。

【企画課長】
 ご指摘あったように、旧日本育英会の制度ができた際は、無利子が基本だったが、現在はそれが大きく逆転しており、奨学金の事業、貸与者事態は大きく増加しているが、これは主として有利子の貸与人員が増えたところである。先ほど説明した文科省の報告書でも、本来、日本学生支援機構の奨学金は、無利子が根幹であり、有利子は補完ということに立ち戻るべきだということが指摘されている。その他、返還の制度だとか指摘があるわけだが、また給付型については、漸進的無償化ということで、まず有利子を無利子へ加速化させる、返還しやすい環境をつくる、その上で将来的には給付型も検討するということで、徐々に改善の方向に向かうべきものと考えている。

【斉藤委員】
 給付型奨学金制度の創設を求めているが、大学の学費がある国で、給付型奨学金のない国は先進国で日本だけである。アメリカもちゃんとした給付制の奨学金がある。そもそも学費がない国もあるので、大学の学費も無料というのは、EUなんかは基本である。日本の場合は、世界一高い学費と言われている。これは国立大学の初年度納入金で83万円、文系で115万円、理工系150万円。こんな高い学費なのに、給付制の奨学金制度がない。まさに、世界最悪の状態で、そのことが奨学金を借りなければ大学に入れない、大学生活を維持できない。いま奨学金を利用している学生がどのぐらいいるかというと52%である。そして、仕送り額が10年前はだいたい月10万円だったのが今7万円である。親の収入がこの10年間で60万円減った。それが反映して、そしてアルバイト代も6割7割に減った。本当に奨学金に頼るしかない。そして挙句の果てにブラックバイトである。大学の授業にも出られないような、ブラック企業予備軍というべき。こういう学生が矛盾の集中点にいるということをしっかり認識した上で、改善の方向は1歩前進だが、あくまでも方向であり、いつから実施するかはっきりしていない。これは直ちに実施すべき中身ではないか。
 先ほど、給付制の奨学金はすでに実施されているという話をもう一度していただきたい。いまどういう形で実施されているのか。その対象はどうなっているか。

【企画課長】
 県が直接実施している給付制の奨学金は2つある。1つは、東日本大震災津波の遺児・孤児を対象とする「いわての学び希望基金奨学金」があり、小学校〜大学生まで497人に給付されている。2つ目は、非課税世帯の高校生を対象とする高校生等奨学給付金があり、平成26年度の実績では1814人となっている。。
 一方、岩手育英奨学会の実施している奨学金については、貸与型ではあるが、無利子である。

【斉藤委員】
 給付制の奨学金は2つの制度で部分的に実施されたと。学びの希望基金は大変喜ばれているし、低所得者向けで1814人が対象となっている。これは授業料免除を一部削って、その財源を回したという経過があったが、しかしそういう形で給付制の奨学金制度が一部ではあるが作られたことは評価したい。そういうものをさらに、大学生にも拡充していく。専門学校生も岩手の場合かなりの比率を占めるので、専門学校生も活用できる制度に拡充するということが必要ではないか。その辺の動きはどうなっているか。

【企画課長】
 県が実施している給付制の奨学金2つ申し上げたが、いわての学び希望基金については専門学校等も対象にしている。高校生の就学給付金は、国の補助をいただきながら実施しており、この制度は、国庫補助の根拠が予算措置ということで、毎年予算を計上していただき補助をいただき、県が実施するということになっているものであるので、まずこれを引き続き来年以降も実施するという方向で考えており、6月に実施した28年度予算の政府予算提言要望においても、財源の確実な確保を要望しているところである。

【斉藤委員】
 今度の奨学金に関わる請願というのは、大変タイムリーで、今の深刻な状況を打開する大変重要な請願ではないかと思うが、長野県が、給付制の奨学金導入を県レベルでは初めて行ったということだが、承知しているか。

【企画課長】
 すいません、承知していませんでした。

【斉藤委員】
 若者に本当に希望が持てる、学生がブラックバイトに侵されず、学びに専念できるような状況をつくるためにも、奨学金制度の抜本的な改善は必要ではないか。この採択を強く求めて質疑を終わります。