2015年7月6日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・教育分野における震災復興の取り組みについて
【斉藤委員】
被災児童生徒の状況はどうなっているか。応急仮設住宅・みなし仮設住宅からの通学の状況について。
学校施設の復旧状況はどうなっているか。グラウンドが使えない学校、この間2つ解消されたということがあったが、現状と今後の見通しについて。
児童生徒の心のケア、どのぐらい専門的な相談などを受けているか。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置状況等を示していただきたい。
【学力復興教育課長】
仮設住宅から通っている児童生徒について。小学校においては、27年度776名が通っており、昨年度は1134名であり358名の減となっている。中学校においては、27年度497名が通っており、昨年度692名で195名の減。県立学校では、27年度601名、昨年度は736名であり135名の減となっている。
【学校施設課長】
高田高校については、27年3月に完成し、4月9日に新校舎で入学式を行っている。主要施設はすでに完成しているが、その他の施設については、市の土地区画整理事業や仮設住宅等との関係から、着手・完成にはなお時間を要する見通しである。第一グラウンドは、仮設グラウンドとしてすでに整備済みで供用開始しているが、今後、市の土地区画整理事業との兼ね合いにより、元来の面積を確保できる見通しである。換地が年度内に完了した場合、今後2年程度には完成できる見通しである。部室については、仮設住宅撤去後に建設できると思うが、今年度中に仮設の部室を建設予定である。艇庫・漁具庫については、漁港工事がこれから28年度に工事着工となっている。県としては、陸前高田市や所管の部局と連携し、少しでも早く事業着手が可能となるよう努めていく。
市町村立の学校について。現在までに完成したのは、山田町立船越小学校1校のみであり、現在5市町村13校において整備事業を鋭意実施している。その計画・スケジュールのみ1年遅れているものとなっている。遅れの原因としては、移転用地の決定、用地交渉に時間を要したこと、入札不調、建設計画策定に時間を要したことなどがある。
現時点における進捗状況は、小本小学校・中学校は、建設工事実施中で27年度末に完成予定。大槌小中学校は、2度の入札不調があったが、現在大槌高校グラウンドに校舎を建設中であり、基礎工事の段階にある。並行して、隣接地にグラウンドを造成しており、28年度までに完成を目指している。釜石市の鵜住居小学校、釜石東中学校は、現在用地造成工事の最終段階にあり、今後建設工事に着手し、27年度末に完成予定である。同じく釜石市の唐丹小学校・中学校だが、現在用地造成工事の初期段階にあり、今後建設工事に着手し、28年度末の完成を予定している。大船渡市の越喜来小学校は、用地造成については、ほぼ完成しており、27年度5月に建設工事の入札が成立し、現在工事の準備期間にあり、28年度中ごろの完成を予定している。大船渡市の赤崎小学校・中学校は、用地収用の手続きにより遅延しており、現在用地造成中。入札を経て下半期に建設工事に着手し年度末に完成予定である。陸前高田市の高田東中学校も、下半期に完成予定であるが、これらの学校については、児童生徒・保護者をはじめ、地域の新校舎の早期完成に期待する声がきわめて高いものであるので、県教委としては、これらの市町村にたいし、それぞれの状況を踏まえながら、関係各方面に働きかけながら少しでも早く新校舎の完成に努めていきたい。
【生徒指導課長】
児童生徒の心のケアに関わるスクールカウンセラーの配置だが、小中高に74名配置しており、沿岸被災地においては、県外からの有資格者ということで13名の巡回型カウンセラーを今年度も継続して配置している。また、県内の3大学の臨床心理士の先生方からも協力いただき、13名沿岸被災地に出向いており、スクールカウンセラーについてはそのような配置になっている。
スクールソーシャルワーカーについては、今年度沿岸部に2名増員し計14名を県内の6つの教育事務所に配置している。
要サポートの児童生徒の割合は、26年度の心と体の健康観察の結果によると、県全体として11.9%、これに対し沿岸部の小中高全体の要サポートは14.1%となっており、沿岸部の割合が高くなっている。
【斉藤委員】
高田高校は我々も調査に行ってきたが、そのときに校長先生から、できるだけグラウンド整備を早く、かさ上げが早く進む見込みもあるので早くやってほしいということだった。その点で、いま大船渡市の旧農業高校のグラウンドも使っている。あの場所の解消の見通しはどうなるのか。
赤崎の小中学校の完成の見通しはいつか。高田東中学校の完成見通しを示していただきたい。
【学校施設課長】
高田高校の第一グラウンドだが、27年度に土地の区画整理事業、ハードの工事が完了する予定と聞いている。その後年度内に仮換地を終了させると。もし仮換地が終了すれば、以降2年程度で設計、本整備ということで整備が進む計画になろうかと思う。ただ問題となる点があり、市の都市計画の中で、排水や水道関係の設備が果たして追い付いていくかという部分もあり、市の土木の方とも入念に打ち合わせし、少しでも早く完成するよう対応していきたい。萱中校舎の見通しだが、当該第一グラウンドは、完成すると、陸上とサッカーに主に使われる予定と考えている。萱中グラウンドについては、主に野球部で使用しており、野球については、もともと第二グラウンドが野球場であるので、そちらの使用については、仮設住宅の撤去と密接に関連してくるものである。こちらの予定ははっきりしたことは言えない段階にあり、もう少し時間がかかるものと考えている。
赤崎小中学校は、現在用地造成中だが、年度の中盤でほぼ終了予定であり、年度後半に入札を行い、28年度内に完成させる予定である。
高田東中学校は、用地造成が終了しており、現在建設工事の準備期間中である。今後整備を開始し、28年度に完成・移転予定である。
【斉藤委員】
グラウンドに仮設住宅があるところの解消というのは、復興の進み具合がないと、学校の都合だけでは何ともならないので、おそらく年度内に各市町村も集約計画をつくると思うので、その段階で示されるのではないかと思う。
・高校再編について
【斉藤委員】
盛岡の検討委員会の意見交換会を傍聴したが、だいたい全体共通しているものと思うが、小規模校の存続の要望は強く出たと。今後第2回目の議論は、そういう小規模校のあり方、地域との連携といった、具体的な議論をするというのが主要なテーマと。このようにテーマを定めて行うということになるのか。
必要な小規模校を残すのは大事なことだが、今の学区の中で、高校全体をどのようにしていくのかということも、残す話は大事だが、全体のバランスも真剣に議論していかないと、生徒は全体として大幅に減るわけだから、そういうことも含めて高校のあり方が検討される必要があると思う。戦後の高校教育の原点の1つは総合性だった。生徒急増期に工業高校などが出ていった。いま逆にいけば生徒の数が戻っているので、あり方についても、今の学校をそのままということではなく、どういう形で残していくのかということもしっかり議論しないといけないのではないか。
通学支援という話があった。この間浄法寺に行ってきたが、浄法寺高校は今年3年生が卒業する。何が起きているかというと、あの地域は、福岡・福岡工・一戸高校がある。一戸高校の通学ルートがないと。二戸にはバスがあるが。たとえば、そこから一戸高校に行きたいという人たちにたいして、そういう通学支援は考えられるべきではないか。この点は検討された経緯があるのか。
【高校改革課長】
ご指摘の通り、小規模校の維持・存続ということで、多くの意見をいただいているところだが、一方で、小規模校には教員の数という部分でも、生徒の選択肢が少ないという部分での教育環境の確保というような課題もあることから、次回の検討会議の中では、他県における学習活動の取り組みなどを示しながら、それぞれの地域においてどのような連携ができるのかということも含めて検討していきたい。
高校全体のバランスを考えた上での検討ということだが、当然そういう視点も持ちながら、今出ている意見はそれぞれの町の学校をどうするかという意見もあるが、教育としてどうするのかということはこれから十分意見交換しながらつめていきたいと考えている。
通学支援の関係だが、今までは、山形とか田野畑などで、学校がなくなるということで公共交通機関がないという場合に、市町村や保護者団体等で何らかの形でのバスを運行するという場合については、県でも合わせて補助するという形をつくったところだが、今回の浄法寺についての対応ということだが、そういった形ではとられていないというところである。
【斉藤委員】
浄法寺の件については、現場で出てきた意見なので、浄法寺高校は今年でなくなるので、別な高校に行かざるをえない。そのときの通学支援を真剣に、言葉だけにしないでしっかり保障していただきたい。
・18歳選挙権―主権者教育、政治教育について
【斉藤委員】
高校教育のあり方で本会議でも議論になったが、18歳選挙権が来年の参議院選挙から適用になる。高校3年生が主権者として投票ができる。この主権者教育をどのようにやるのか。今までは高校生の政治活動というのは規制されていたのではないか。子どもの権利条約からいっても問題だと思う。子どもの言論の自由、意見表明権は全面的に保障されなければいけない。これは国際的な到達点である。ましてや、これから国政・地方政治に参画するということになったら、そういう政治教育だけではなく、政治活動も当然保障されるべきだし、きちんとした憲法に基づく主権者教育というか、政治教育というのがいろんな形でやられるべきだと思うがいかがか。
【高校教育課長】
現在、文科省でも昭和41年に、高校生の政治活動についての文書が通知されているが、その中身を選挙権の引き下げにともなう実態に応じて見直しを図っているところであるので、その中身を見て、県としても適切に指導・助言していきたい。
【斉藤委員】
深刻な事例が全国であった。ある高校で、朝日新聞と日経新聞を使って政治教育、模擬投票をやったと。これが県議会で大問題になり、自民党が問題にした。それに対して教育長が「問題だった。偏向教育だった」と。とんでもない話である。「マスコミを懲らしめる」などという発言もあったが、教育の分野にまで干渉して、それに言及する事態が起きたことは許し難い。朝日と日経を比べたら何も偏向していない。そういう事例が起きているので、生徒に対してきちんと政治活動、政治的主張ができるような教育をやるということが大事だと思うがいかがか。
【教育長】
今回の公職選挙法の改正については、選挙権が大きく拡大するということで、大きな転換期だと考える。これまでは、高校生については選挙権がなかったということで、学校教育において、基本的な政治の仕組みだとか、民主主義の考え方等の基本的な認識は発達段階に応じてやってきたが、これからは、来年の国政選挙からは高校生が直接投票活動に参加するということになるので、具体的な対応を学校教育でやっていくのはきわめて大事だと思っている。
学校教育での指導については、政治的な中立性を確保するというのはきわめて大事だと思う。一部の子どもたちの考え方で、全体が大きく誘導されるということは、主体的に考えることを尊重するような、政治に参加するという意識をもってもらうのが大事だと。
昭和41年に文科省の通知が出ている。これは、学校内での指導の仕方、子どもたちの基本的な姿勢、学校外での子どもたちの活動と、さまざまな分野から、いわば既成的な考え方ではなく、文科省でそれを主体的に動かすにはどうしたらいいかということで具体的な検討がなされているので、きちんと状況を踏まえて上で生徒に指導することが大事だと思っている。いずれ投票率、政治活動も含め、大きな権利であるので、そういうものを主体的に発揮できるよう指導していきたい。
【斉藤委員】
子どもの権利条約というのは、国際的な1つの基準なので、子どもの意見表明権を全面的に保障することが憲法の立場でもあると思うので、しっかりやっていただきたい。
・教科書採択問題について
【斉藤委員】
中学校の社会科の教科書の採択の時期を迎えている。これについて、綿密な調査・研究が必要だとなっているが、綿密な調査・研究というのは、どういう形で作成され示されているか。
教員の役割の重視というのもポイントの1つで、現場で教科書を使うのは先生なので、先生方がどういう教科書を使いたいのか、使うべきなのか、教員の意見をしっかり聞く、役割をしっかり果たさせるということが必要だと思うがどうなっているか。
そして残念なことに、太平洋戦争を「大東亜戦争だった」と、「アジア解放の戦争だった」と、美化する育鵬社の教科書が文科省の検定を通ってしまっている。こんなものは採用されるべきではないと思うが、今までそういう実績も県内ではないと思うが、それについての評価はきちんと書かれているのか。評価は点数制、評点がついてやられているのか。
【義務教育課長】
昨年度は小学校の教科書採択、今年度が中学校の教科書採択ということになるが、法律に基づき県教委としては、教科書採択にかかる審議会を設置している。さらに審議会の下部組織として調査委員会を設置するということになっており、詳細については8月31日まで非公表、9月1日公表と法律で決められているので、調査委員については県内各地さまざまな資格等をもっている方々にお集まりいただき、各教科・科目、複数の人数で調査し、かなりの字数をかけて調査している。それはすべて文章表記で、それぞれの検定を通った教科書について、特徴をどうまとめると、県の場合は採択の権限がないので、市町村の採択に資するような資料提供をするということになっている。過日、その調査内容について審議会で報告し、審議会から県教委に答申がされたというところまで現在進んでおり、教科書展示については、県内18ヶ所で一般県民の方々もご覧いただけるようになっている。これについてはホームページ等でも公表している。現在、各地域において、県内9ヶ所採択地区があるが、それぞれのところで県と同様の調査・研究を進めながら、採択業務にあたることになっている。なぜ8月末なのかというと、だいたい各地区の審議会の終了が8月を目途としているので、それまではさまざまな問題等が起きないよう進めることが法律で決められているので、そのように進めている。
個別の社名が出た部分については、審議会・調査委員会では、それぞれの教科書の科目の特徴をまとめるというような取り組みをしているので、それによって採択がどうなるかというような考え方で進めるので、それぞれの教科書がどういう部分で、良い悪いではなく、こういうようなまとめ方をしている。
・滝沢市内のいじめ自殺問題について
【斉藤委員】
3月25日に調査報告書がまとめられ公表された。この間ここで取り上げてきた経過もあり、じっくり読ませていただいた。結論的には、「いじめが直接的な原因になったととらえることはできないが、いじめと自死との間にある一定の関連性があったものととらえられる」というものだった。
その上で、提言として4つの提言がされている。@個々の生徒を理解することの重要性を再認識するA相手の立場を理解し思いやることの意味を再認識するB生徒が小学校・中学校・家庭・地域社会の中で、家族や友達と関わりながら連続して成長するという視点を再認識するCいじめ防止や相談に対応できる仕組みや気軽に利用できているかを再認識する―と。
この事件に関していけば、伏線があったということをこの委員会でも指摘した。校内で生徒が逮捕されると、これ自身が教育・学校の敗北だと思うが、そういう点では、学校が荒れていたと思う。そういう中で、いじめを早期に見つけられなかった、子どもたちに寄り添った調査ができなかった。そういうことが大変大事な教訓だったのではないかと思うが、この報告書を受けて、県教委は何を教訓にしてやっているのか。滝沢市では、この提言を受けてどんな取り組みが進められているのか。
【生徒指導課長】
県教委として、滝沢市の第三者調査委員会の報告を受けての取り組みだが、4月21日に、県教委と市町村教育長との意見交換があり、この場において調査結果の概要を各市町村教育長に報告している。5月8日、4月下旬に滝沢市から調査報告書の提供があったので、県教委から各市町村教育長あてに調査報告書を送付している。また、4月中旬から7月上旬までのところで、県立学校長および各市町村の校長の研修会があるので、その中で、私の方から調査報告書の概要を周知するとともに、やはり今回の事案では、いのちの大切さというものを改めて訴えていかなければならないと、これは自分自身はもちろんのこと、他人の子ども含めて、生命尊重、いじめの未然防止、今回は危機管理の部分でもさまざまな課題等の報告書で指摘があったので、そういうところについて指導を行っている。
また今年の5月に総合教育センターで作成した、岩手いじめ問題防止対応マニュアル、これは平成21年3月に策定したものを、いじめ防止対策推進法の施行にあわせて改定したものである。これを各学校にすでに配られているので、この積極的な活用を進めている。
滝沢市の取り組みとしては、調査報告書に実際に学校のさまざまな取り組みについての評価というものがあり、そこは調査委員会の方々も評価しており、それをもとにしながら学校の取り組みとしてやっており、先日、学校訪問した課長の話では、大変落ち着いて授業が取り組まれていたとの報告もされている。
・滝沢中央小学校の建設延期について
【斉藤委員】
滝沢市では、子どもたちがどんどん増えて、滝沢中央小学校を建設するというときに、財源がないので2年間延期したと。だから滝沢小学校・鵜飼小学校では、マンモス校で、学芸会をやると、学年ごとに父兄が入れ替わってやるという事態になっている。
2年間もなぜ建設を延期せざるを得なくなったのか。最優先課題ではなかったのか。
【学校施設課長】
この建設事業は、資材高騰などによる事業費の増加により予算確保が困難となり、最大2年間の延期とのことである。
建設予算だが、最近における建設物価の高騰を反映させ、落札事例の工事費を参考にした積算とうかがっている。
今回の予算確保困難ということを受け、滝沢市の教育委員会においては、その後、建築設計の見直しによる事業費の縮減などの取り組みを行っている。
県教委としては、滝沢市教委における見直しの状況を注視しながら、必要な情報提供など最大限早期着工へ支援していきたい。