2015年10月16日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)


・中小企業振興条例について

【斉藤委員】
 まだ検討委員会は1回しか開催されていないと。ところが来年2月県議会には基本計画案を提案すると。その前には、商工観光審議会での審議やパブコメもあるということで、せっかく中小企業振興基本計画検討委員会を設置して、本当にここで各界の知恵を結集することが必要だと思う。その点では、きわめてタイトである。何回ぐらいこの検討委員会を予定しているのか。
 第1回でどういう議論がされたのか。

【経営支援課総括課長】
 外部検討委員会の回数について、今後2回を予定している。
 1回目の検討委員会での議論だが、県内中小企業者の現状や施策の方向性・考え方など議論いただき、委員の方からは、主な意見として「企業が持続的に発展成長していくには、経営革新に取り組むような企業風土の醸成などが必要であり、めざす姿にそういったことを盛り込むことを検討していただきたい」というものや、「高校生の地元就職を推進するための取り組みや、農林水産物とエネルギーを活用した取り組み、後継者確保のための取り組みなども盛り込んでもらいたい」「中小企業振興のためには女性の活用も大切であり、女性の力を引き出すことも必要」といった意見をいただいている。

【斉藤委員】
 私も第1回の資料をいただいた。基本計画のまとまった案が出されて議論されている。それに対して、項目だけでも24項目ぐらいの意見と資料をいただいているが、やはり内部で作ったものを基本に議論するのはいいが、せっかく実際の中小企業団体の方々が集まって議論しているので、時間をとってやるべきで、あと2回程度で県が出した素案に+アルファという程度では、本当に頼りになる基本計画にならないのではないか。
 すでに全国の都道府県ではかなりの振興条例が制定されている。政令市でも川崎市や横浜市などが制定し、毎年年次報告を出して、かなり私たちが参考になるような条例を出している。そういう全国の中小企業振興条例・基本計画、実践の取り組み、すべて先進的なものは取り込んで、これからつくる中身は岩手が一番充実しているというものにすべきだと思うが、そういう比較対照しているか。

【経営支援課総括課長】
 計画素案をまとめる段階、委員のみなさんに説明する段階でも、全部というわけにはいかないが、いくつか他の県の条例等もお示ししてお話しており、1回目の委員会を開催する時にも、事前に資料をお渡しして、内容を説明してお話をうかがったりしながらやっており、委員からも、なかなか一斉に集まる機会がとれないとしても、個別に意見をやりとりするということで中身の充実につなげてもらいたいという意見もいただいているので、我々もそういった取り組みをしていきたい。

【斉藤委員】
 他県や政令市も含め、どういう基本計画がつくられて、どういう特徴があるのか、先進事例などを整理しているものがあれば、我々にもきちんと情報提供していただきたい。
 中小企業振興条例の制定自身が、中小企業の皆さんの切実な要望に応えて、一時は商工振興条例という異質な中身が提案された経過があったが、これは今年の2月県議会で大きく変わった。こういう経過があるだけに、それに基づく基本計画はこれからの実践課題で、条例の具体化の方が重要である。特にふるさと創生の問題で、岩手で働く、岩手で暮らす、岩手で育てると。岩手で働くといった場合に、中小企業は事業所の99.8%、従業員の85%を占める。この中小企業が元気にならなかったら、岩手で働くという戦略的な課題がうまく進まない。だから中小企業振興条例、これに基づく計画というのは、ふるさと振興戦略の要の一つを成す。それだけに、つくったというだけでなく、本当に喧々諤々議論し、英知を結集したものに、そしてすでに先行事例があるわけなので、良いものは取り入れ、岩手的なものも加えて、岩手らしく本当に活用できるものにしていただきたい。
 ぜひそういう喧々諤々の議論、充実した検討ができるように検討委員会でも検討し、必要なら3回4回とやってもいい課題だと思う。12月県議会でも議論する場があると思うので、必要な資料は我々にも全面的に提供していただくようにお願いしたい。

【商工労働観光部長】
 ご指摘の通り、県民計画、今般のふるさと総合振興戦略とも相まって、中小企業振興基本計画は大変重要な位置づけをもった計画と認識している。ご指摘のあった点を十分踏まえ、2回の予定ではあるが、検討委員会の委員の皆さんの意向も確かめながら、もう少し議論したいということであれば、もう少し柔軟にやらせていただきたい。資料等の提供についても努めていきたい。

・県が締結する契約に関する条例(公契約条例)について

【斉藤委員】
 契約審議会が2回開かれていると。最大の問題意識は、適正な賃金の確保である。公契約条例の制定を求めた方々も、最大の目標はここだった。県が発注する事業で労働者が適正な賃金が保障されるようにということで、条例制定に至ったわけだが、条例そのものには、最低賃金・適正な賃金の確保ということ自身は盛り込まれなかったが、目的・理念の中に「適正な労働条件の確保をめざす」と明記された。
 その点で、この間岩手県契約審議会ではどういう議論がされてきたのか。資料にある取りまとめの素案の議論が2回やられているが、取りまとめの内容はどういうものか。

【労働課長】
 条例第6条による県の取り組みの取りまとめについてだが、条例の基本理念の実現を図るために必要な取り組みをとりまとめて、この結果を契約の性質等に応じ、契約のその後の締結・履行に際して反映させるというものであり、これに沿い、この契約審議会で県の会議で調整した素案について説明している。現時点では、審議会で示した素案としては、全部で取り組み項目118項目についての素案となっており、うち今後新たに実施を検討していくというものが24項目ある。そして審議会の場でも、労働条件の確保・向上を条例の取り組みを通じて図ってほしいという意見もあったところだが、この118項目の中でも、例えば入札において低入札価格調査制度の導入だとか、まだ導入されていない業務についての新たな導入の検討という項目も含まれており、そういったところから労働条件の確保等を進めていくということで検討を進めている。

【斉藤委員】
 条例制定の過程でも議論したが、例えば、公共工事の設計労務単価があるが、これは暫時引き上がってきたというか、かなり落ち込んだところからやっと戻ってきたと。大工でいくと2万円ちょっと、これは実際の大工さん・建設労働者がもらっている給料は12000円程度でかい離がある。あまりにもひどいのではないかと。そういう意味では、現場の実態をきちんと踏まえて、適正な労働条件の確保ということが理念・目標なので、実態調査を踏まえて必要な是正策なり対策を検討する必要があるのではないか。項目はたくさん出されているようだが、やはり実態がどうかということ、それを踏まえた是正策が検討されるべきだと思うが、県としてはそういう実態をどう把握しているのか。その上で是正策を考えているのか。

【労働課長】
 条例第6条の規定による県の契約に関する取り組みの取りまとめの素案の契約審議会での審議においても、設計労務単価が実際の賃金に反映されにくいのではないかという意見についても紹介させていただいたところであり、そういったところも踏まえ、県としては予定価格の適正な設定などによりダンピング防止などに取り組むというところも入れており、さらに今後取り組むことを検討するものとして、お話いただいたような実態調査の実施についても検討するというところを盛り込んでいるところである。
 この条例については、労使の関係の皆さんの意見や実情を聞きながら策定したところであり、今後も審議会の場やその他の場でも労使の皆さんの意見を聞きながら、実態把握についても調査検討しながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 賃金条項が結果的には明記されない公契約条例になった。私はそのときに、契約審議会で適正な労働条件の確保というのが協議事項になっているので、その議論を踏まえて対応したいというのが県の答弁だったので、ぜひ切実な実態があるわけなので、実態もしっかり調査した上で、契約審議会がそれを踏まえた具体的な是正策を、必要なら条例の改正も含めて検討されるべきである。

・グループ補助金について

【斉藤委員】
 グループ補助金の最新の実績、復興事業との関わりで決定されたが補助金が使えない実態、繰越・自己繰越などの状況を示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 23年度から制度始まり、27年度に1回目の公募が終わって採択しており、その段階では、交付決定1303事業者・807億円となっている。2回目の公募を9月に実施しており、それまで計画を出していただいたところなので、まだ審査しているので確定はしていないが、5グループ・20社程度から要望が出ている。
 26年度までに交付決定を受けた事業者で26年度中に終わらないといった事業者で繰越手続きを行ったところが86社、再交付194社なので、280社が繰り越している。

・中小企業被災資産修繕・復旧費補助について

【斉藤委員】
 これはどこまでいっているのか。累計も含めて。

【経営支援課総括課長】
 23年度に修繕の事業があり、その後26年度まで資産復旧事業という形で実施しているが、23年度の修繕で427件、23〜25年度に資産復旧事業を実施したところが274件、昨年度実施したところが26件となっている。今年度も実施しているところがあるが、交付決定事態は市町村がやっており、正確な集計はできていないが、現在10件程度実施していると聞いている。

・仮設店舗の撤去費用について

【斉藤委員】
 釜石に行ったときに、野田市長からも強く要望されたが、5年間で施設の移設・撤去の財政負担がなくなると。釜石の場合、215区画あり、これを市がやれば2億円弱ぐらいかかると。復興事業の遅れで本設展開したくてもできないのが主な理由なので、本会議の答弁を聞いても本当に継続されるのか見えなかったが、継続されないと大変なことになるので、国の対応状況はどうなっているか。
 仮設店舗で71%が本設展開を希望して、あと3割近くは最後まで仮設で自分の代は頑張りたいということだと思う。最後まで仮設で頑張りたいということもきちんと受け止めてやっていく必要があるので、5年過ぎても仮設でがんばりたいという方々への対応・支援策はどうか。

【経営支援課総括課長】
 今のところの制度では、仮設店舗等が完成してから5年以内に撤去すると決めた場合に撤去費用を国が負担するとなっており、仮設店舗自体は中小企業基盤整備機構が整備しているが市町村に移譲している。釜石などのお話があったが、現地の状況で本設に移れないということもあり、市町村からも撤去費用の補助の期限を延ばしてほしいということで、県としても市町村の状況に応じて延ばしてほしいという要望を国にしている。これからも引き続き要望していきたい。
 仮設店舗にいる方々への支援だが、施設の部分とソフト面両方あると思うが、仮設店舗をどうするかは、市町村の所有管理になっているので、一義的には市町村で取り扱いを考えてもらうということになるが、市町村でも延ばさなければという話が出ているので、ある市町村では、できるだけ早く本設にみんなで移行したいと考えているところもあるので、地域の状況はそれぞれだと思うが、いずれそういう形で市町村でも仮設店舗をもっと使えるようにということを考えているところもあるので、そういった部分については、我々も要望等を通じて国に伝えていきたい。
 仮設でもイベントや集客の取り組みをしているので、そういったものの助成やソフト面での取り組みの支援といったことでもさまざま取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 いま一つ展望が見えてこない。せっかく新しい復興大臣などが来ているので、本当に強く要望しないといけない。これは業者の責任ではなく、復興事業が遅れているから本設展開できないのが主な理由なので、これは政府といえど理解してもらえる内容だと思う。そういうことを早く打ち出していかないと、安心して事業を継続できない。

・二重ローンの支援状況について

【斉藤委員】
 支援決定状況はどうなっているか。

【経営支援課総括課長】
 債権買取について2つの機関が対応しており、8月末で、産業復興相談センターで債権買取支援決定となったのは102件、再生支援機構の方では155件となっている。

【斉藤委員】
 合計で257件まで対象になったのは成果だが、産業復興相談センターの場合は、相談件数842件にたいしての102件で12.1%、再生支援機構では458件のうち155件で33.8%である。どちらも頑張っていると思うが、少し差があるので、もっと積極的に取り組む必要があるのではないか。

・雇用確保状況について

【斉藤委員】
 この間復興事業で、岩手県全体では震災前と今年8月を比べると、雇用保険の被保険者数で19107人労働者は増えている。沿岸も2771人増えている。ところが地場産業である食料品製造業―いわゆる水産加工を中心としたものは沿岸で1522人減っている。全体として復興事業で労働者は増えているが、肝心の地場産業が1522人減少している。復興事業はこれからどんどん減少するので、地場産業が今のうちにしっかり力をつけないと大変なことになるし、この分野が一番人手不足にあえいでいる。この現状をどうとらえて、本当に特別の手立てがないと打開できないし、復興事業が一定の規模あるときに地場産業が力をつける、新産業も展開するということにしないと、加速度的に沿岸は人口減少してしまう。そのあたりの対策を現時点でどのように受け止めてやろうとしているか。

【雇用対策課長】
 ご指摘の通り、雇用者保険の状況を見ると、23年2月に34万3473人だったものが27年8月から36万2580人と19107人増加している。一方で被災地では、一般被保険者数の集計では、23年2月と27年8月の比較では733人の増加と聞いている。うち、食料品製造業については1522人の減少と、全体が増えている中で食料品製造業については減っている状況である。ただ、求人活動自体は非常に活発であり、食料品製造業に関しても、求人倍率は3.10倍ということで、求人を出しても応募する人がいないのが現状だと思っている。そういった意味で、県としては、ハローワークや市町村等と連携した企業見学会などのマッチング、水産加工に関してはDVDの作成等でイメージアップを図るなど、またジョブカフェいわて等でも定着に向けたセミナーも行っている。
 そういった取り組みをしているが、そもそも現状で従業員が不足している状況なので、企業の収益を上げることは大切で、収益の向上を通じて賃金等の処遇の改善を図っていくことも大切だと思っており、改善等の導入を進めている。
 復興局の事業になるが、水産加工業の宿舎整備等を行っており、引き続き被災地の人手不足等に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 人口が減っている中で、全県も沿岸も被保険者数は増えている。これは基本的には復興需要である。しかしこれはいつまでも続かない。そのときに肝心の地場産業が1522人も落ち込んでいるということに危機感を持って、求人が出ても確保できない深刻さがあるので、労働条件の改善にしても会社のシステムの改善などいろいろあると思うが、英知を結集してやらないと、復興事業が終わったら、二重に労働者は減少する。そういう危機感をもってやっていただきたい。