2015年10月19日 復興特別委員会
交通確保・コミュニティ維持等に関する質疑(大要)


・被災地の交通確保について

【斉藤委員】
 上限6000万円で9市町村が活用している。昨日の新聞では、田野畑村で、デマンドタクシーの国の補助が今年度で打ち切られ、バス運行と合わせて約2300万円は来年度以降村が負担しなければならないと。私は昨日山田町に行ってきたが、通院バスをかなりの本数無料で行っている。もちろん各市町村が仮設と病院や仮設商店街を結ぶきめ細かいことをやっているが、これは来年度以降、6兆5000億円の財源が確保されたが、これは5年間継続されるのか。

【交通課長】
 6000万円上限の事業というのは、国の調査事業であり、特定被災地域公共交通調査事業というものである。これについては、沿岸の12市町村を対象として、仮設住宅と医療機関や商業施設を結ぶ交通を確保するために、ルートの調査や実際にバスを走らせてみるといった運行などを支援するものである。上限が6000万円となっており、23年度から始まり今年27年度までの5カ年事業となっている。
 来年度以降については、これがないと、まちづくりが刻々と変化している中で、住民のニーズや仮設住宅の形態なども変わってくるので、まだまだ必要だということで、国に対しても継続を要望してきたが、今のところ、来年度は継続する見込みだという意向が示されている。

【斉藤委員】
 来年度は継続の意向だと。
 仮設住宅と病院を結ぶというのは当然だが、いま復興公営住宅と病院・商店街を結ぶ路線も必要である。いま建っているところは高台なので不便である。だから新しい路線もきちんと入れたものにすべきではないか。そういう議論はされているか。

【交通課長】
 その点も非常に重要であり、どんどん高台にいろんな住宅がある中で、一方で高齢者も多く、バス路線や乗り合いタクシーなど新しい交通手段も入れていく必要があると思っている。そのためにも、こういう国の調査事業は有益であり、制度がある間に既存のバス以外に、新しい交通手段―デマンドバスやタクシーなどを組み入れた形で、適切な交通体系がしけるように地元でも考えていると聞いている。

・仮設住宅の集約化、コミュニティの維持について

【斉藤委員】
 いまだにピーク時の6割近く、19000人ぐらいが応急仮設住宅で生活している。一方で、災害公営住宅や自立再建などで仮設住宅を出ていく方々もいる。集約化の計画を聞くと、3市でつくり3市でまだだと。計画をつくるまでに至らないような復興の状況があるのではないかと思うが、県土整備部で集約化を前提にした大規模改修は何市町村何戸でやったのか。それで十分なのか、それは一部なのか。

【建築住宅課総括課長】
 基礎の改修について、今年度始めたところだが、今年度約5000戸について行う予定になっている。改修を行っているのは、宮古市以南の6市町である。さらにそれだけでは十分ではないので、来年度も引き続き残ったものについて行う予定だが、それについては集約計画を踏まえて長期間残るものについて行う予定である。

【斉藤委員】
 行く先々で聞くのだが、復興公営住宅に入った方が、仮設住宅の方が良かったと。一番の問題は、コミュニティの崩壊である。復興公営住宅に入って、家賃の発生等もあるが、一番は人とのつながりがなくなったと。仮設の自治会長さんが、「ここまで待っていたがもう限界だ」と。自治会長として最後まで頑張っているが、自分の住宅が建てられる宅地造成は4年5年かかると。こんなに待ったら住宅ローンももらえなくなると。また、「仮設を渡り歩くのがつらい。寄せ集めの人間でコミュニティの維持などできない」と。3年4年かけてコミュニティをつくってきたのに、またバラバラになり寄せ集められて、コミュニティはできないと、これは自治会長さんの声である。
 仮設住宅の集約化は本当に慎重にやらないと、2度3度コミュニティが破壊されてきたときに、被災者に寄り添いやるべきではないか。

【復興局長】
 現場の仮設住宅の集約化については、慎重にやらなければならないと思っているが、一方で学校グラウンドに仮設住宅が建っている状況があり、子どもたちが自分たちの校庭を使えないという状況もあり、そこは何とか子どもたちにより良い環境でのびのびと勉学に励んでいただきたいという要請もあるので、十分に丁寧に対応しつつ、集約化についてはしっかり計画通り進めていきたい。

・災害公営住宅への入居者への支援について

【斉藤委員】
 阪神淡路大震災をしっかり生かすべきだと。20年間で1097人が復興公営住宅で孤独死している。昨年も40人。岩手県は今復興公営住宅に入ったばかりだが、孤立感がすでに出ている。思い切って一定の大規模な公営住宅には常勤の支援員を配置して、一人一人訪問して見守る、コミュニティをつくるまで支援すると。自治会をつくるのは当然だが、自治会をつくるのは被災者である。それは大変困難な課題ではないのか。ここへの支援策は本気で県が音頭をとってやるべきではないか。

【復興局長】
 支援員の配置そのものも、制度上は災害公営住宅にも配置可能である。生活支援相談員の方々にも災害公営住宅を回っていただきながら、被災者の方々をフォローしていただいているという状況もあるので、その辺はいろんなやり方を組み合わせながら、被災者の方々により丁寧に、特に災害公営住宅に移った直後、最初の期間についてはまだまだ知らない同士ということもあるので、ただそれをずっと続けるということも一方で難しいところもあるので、できるだけ入っている方々がお互いに知り合うような機会なりそういった場を行政としても設定しながら、自分たちが自立的に相互扶助・支援できるような体制にももっていく必要があるのではないかと考えている。そういったところをしっかり丁寧に進めていきたい。

【斉藤委員】
 今日の新聞で、「隣近所の付き合いもなくなり、仮設住宅の方がまだよかった。何よりも重い鉄の扉が嫌い。さびしい」と。私が釜石に行ったときも言われた。災害公営住宅の扉が重い、閉めたら刑務所のようだと。住宅は立派だが。山田町でも同じことを聞いた。
 千葉大学の陸前高田市での62人の調査で、困りごとの第1位が「住民のつながりがない」が27人・43.5%。ここをしっかり受け止め、一人たりとも孤独死を出さないという先駆的な取り組みを岩手からやっていただきたい。
 市町村は住宅をつくることが当面の課題になっているので、つくった後まで気持ちが及んでいないのではないかと。そこに被災者との差を感じるが、復興公営住宅をつくったから終わりではないので、その後のフォローがますます重要になるということを指摘したい。

・内陸避難者の今後の災害公営住宅について

【斉藤委員】
 知事は、内陸の災害公営住宅を検討すると。沿岸市町村と協議しているということで、協議の状況、いつ頃までに方向を出すのか。もう4年7ヶ月経過した。待っている人たちも限界に近づいている。内陸被災者の方々も悩み苦しんでいるのは事実なので、こういう方々にも新たな住居の見通しの一定の目途を示す必要があるのではないか。
 また、今みなし仮設で生活している人たち、これを自治体として借り上げて公営住宅にするということも1つの方法ではないか。そうすれば同じ場所で生活できる。こういう手法はすでに全国でやられている。

【建築住宅課総括課長】
 9月から今月中旬にかけて沿岸6市町と気仙沼市を訪問し意見交換した。内陸で建てることにより、避難されている方が戻って来なくなるということについて、沿岸の市町村は気にしているので、そこについてそうならないような入居の考え方等について市町村と協議をつめていきたい。
 スケジュールだが、理解を十分いただいてからということになるが、その後内陸の避難者への意向調査を行った上で、建設戸数や建設場所を考えていくということになるので、できるだけ年度内には一定の方向性を得たい。
 みなし仮設の借り上げについては、こちらで把握している限りでは、東日本大震災の災害公営住宅で、みなしをそのまま借り上げて災害公営住宅にすることは予定がない。その考え方だが、みなし仮設に入っておられる方、民間の賃貸住宅ということだが、広さや築年数がバラバラで、それをそのまま災害公営住宅にするということになると、比較的悪い条件の民間賃貸住宅に入っている方との格差が出てしまうので、公平性の観点でみなし仮設をそのまま災害公営住宅にというのは難しいと思っている。

【斉藤委員】
 内陸部の公営住宅については、内陸または県外での居住希望が716世帯で52.1%と軽視できない実態だと思う。
 みなし仮設については、条件のあるところ、希望によって行うので、できれば今のところでという希望もあるので、それはそのままコミュニティが維持されるメリットもあるので、ぜひ検討していただきたい。