2015年10月20日 9月定例県議会・本会議
議案に対する反対討論


 日本共産党の斉藤信でございます。議案第12号、第20号に反対の討論を行います。
 いじめ対策の条例の制定は、昨年・今年と県内で中学生のいじめ自殺事件が発生した本県においては極めて重要なことであります。それだけに、この間のいじめ自殺事件への対応と第三者機関による調査の経験と教訓を踏まえたものとするべきであります。この立場から見ると、二つのいじめ対策に関する条例案には、改善・見直しすべき問題があると指摘しなければなりません。
 議案第12号は、岩手県いじめ再調査委員会条例であります。これは知事の付属機関として、岩手県いじめ再調査委員会を委員5人以内をもって設置するものであります。具体的には、私立学校における学校設置者が行ういじめ重大事態、いわゆるいじめ防止対策推進法第28条第1項の規定にかかる調査について、知事に報告がなされ、知事が必要と認めた場合、再調査を行う第三者機関の役割を果たすものであります。また、県教育委員会が県立学校の設置者として行ったいじめ重大事態に関する第三者機関としての調査結果に対して、知事が必要と認めた場合、再調査を行うというものです。
 第一の問題は、私立学校の場合は問題ありませんが、県立学校の場合、いじめの重大事態が発生した際に、学校の調査を踏まえて、県教育委員会の付属機関としての第三者委員会である「いじめ問題対策委員会」が調査を実施します。その調査結果に対して、知事が必要と認めた場合、知事のもとに設置した第三者機関で再調査を行うとしている点であります。委員の構成団体等がほぼ同様となる二つの第三者委員会で二度にわたる調査が行われることは、第三者委員会の信頼性を疑わせることになりかねません。知事が何を基準に再調査を判断するのかも商工文教委員会の審議では示されませんでした。
 第二の問題は、いじめ再調査委員会が知事の付属機関として恒常的に設置されるとしていることであります。いじめ自殺事件などいじめの重大事態は本来あってはならないことですが、県立学校、私立学校を対象とした場合、いじめの重大事態の頻度は極めて少ないと思われます。2年の任期で恒常的に設置するよりは、重大な事態が発生した場合に、機敏に設置できるようにした方が現実的であります。
 滝沢市によるいじめ調査の第三者委員会は、昨年の9月末から3月末まで6カ月の間に20回の会議が開かれました。このほかにも委員や専門委員による生徒、教師、遺族等への面談やアンケート調査などの調査が60回以上も行われています。短期間に、集中的に行われる調査委員会は、恒常的な組織より、重大事態に対応した機能的な組織とすべきであります。また、機敏に設置する方が、遺族の希望にもこたえて設置することが可能となります。
 議案第20号は、岩手県いじめ問題対策委員会条例であります。この条例は、県教育委員会の付属機関として、いじめの重大事態等に対応して調査を行う第三者機関を設置しようとするものであります。
 第一の問題は、県教育委員会の付属機関として恒常的に第三者委員会を設置することとしていることです。これは、先ほど知事の付属機関として設置する岩手県いじめ再調査委員会条例の問題点と同じように、機能的でありません。重大事態が発生した場合に機敏に設置することができるとすべきです。委員の構成も10人以内としていることも多すぎて機能的・実践的ではありません。
 第二に、教育行政の機関である県教育委員会の付属機関として恒常的に設置することが、県民、遺族から第三者機関として見られるのかという問題もあります。県教育委員会から独立した第三者機関とすべきであります。
 第三に、恒常的な機関としていじめ対策委員会を設置した場合、遺族の要望にこたえられないことになります。矢巾町の第三者機関の設置に当たっては、遺族の要望を踏まえて設置されました。この経験を生かすべきであります。
 日本共産党は、いじめ自殺事件等の重大な事態に際して対応する第三者機関の設置は当然必要と考えるものであります。同時に、第三者機関の設置のあり方、その取り組みについては、滝沢市や矢巾町における取組と教訓を踏まえて、実効性のある第三者機関を設置すべきであります。短期間に集中的に調査することが求められている第三者機関は、恒常的な組織より、重大事態が発生した際に機敏に、適切な委員を選考し設置することが現実的であります。何よりも遺族の要望にこたえ、遺族に寄り添った第三者機関とすべきであります。
 こうした立場から、議案第12号、第20号の二つの条例案について、改善をはかるべき問題点を指摘し反対の討論といたします。
 ご清聴ありがとうございました。