2015年10月21日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑(大要)


1.昨年度の決算と震災復興について

【斉藤委員】

 達増知事におかれましては、第3期目の当選おめでとうございます。復興与党として自主的な支援をして頑張りました。心からお祝いを申し上げます。
 普通会計決算額9751億円に対して、震災復興対応分はどうなっているか。
 震災復興分の中で県単独事業の主な内容と決算額とその財源、累積決算額はどうなるか。

【達増知事】
 26年度普通会計歳出決算額は9751億円であり、うち震災対応分は3321億円で34%となっている。
 震災復興における県単事業は、26年度における震災対応分事業のうち、国費等を原資とする基金事業を除く県単事業の決算額は約980億円で、主な財源は、貸付金の償還金762億円、震災復興特別交付税等80億円、東電からの賠償金46億円、寄付金11億円、その他の一般財源45億円となっている。主な事業としては、中小企業者に対して、事業を再建するために必要な資金を融資する中小企業東日本大震災復旧復興資金貸付金が約762億円、県産畜産物の安全性の確保のため、飼料の放射性物質調査や牧草地の除染等を行う放射性物質被害畜産総合対策事業が約42億円、応急仮設住宅の維持・修繕や保守点検などを実施する災害救助費が約7億円、国内外からの皆さまからの寄付金を基金として積み立て、被災した児童・生徒のくらしと学びを支援するいわての学び希望基金奨学金給付事業費補助が約2億円などとなっている。
 震災対応分県単事業の23年度以降の累積決算額は、約4405億円となっている。

【斉藤委員】
 震災復興の取り組みは、県政最大の課題だが、全額が国の負担で行われているのではなく、県独自の事業もやられているということをしっかり把握しておくべきだと思う。
 こうした中で、安倍政権による一部負担の導入について、県は73億円の負担と試算されているが、発表から数ヶ月経っているが、精査されているか。

【達増知事】
 6月に決定された復興事業にかかる地方負担拡大の方針と、その時点の県の復興事業費試算に基づいて、新たな県負担額を73億円と試算したが、復興事業費はさまざまな要因により常に変動しているので、今後とも定期的に見直しを行っていく。
 新たな負担分については、国から地方債の発行を認める方針が示されているので、この活用を視野に入れつつ、復興事業や財政運営に支障をきたすことのないよう対応していく。

【斉藤委員】
 4400億円余の県単事業をやりながら復興に取り組んでいるときに、73億円の負担を押し付けて、借金でまかなえという安倍政権のやり方はゆるせない。これだけの財源があったら多様な対策がとれる。


2.被災者の命とくらしを守ることは復興の中心課題

【斉藤委員】
 この間の震災関連死、震災関連の自殺、仮設住宅・災害公営住宅での孤独死はどうなっているか。その現状について知事はどう受け止めているか。

【達増知事】
 発災から27年8月末までに震災関連死が454人、震災関連の自殺者が34人、仮設住宅・災害公営住宅での孤独死が34人となっている。
 震災後においても貴重な命が失われていることは、きわめて残念なことであり、重く受け止めるとともに、引き続き被災者の方々の見守りや心のケアなどに丁寧に取り組んでいく必要があると考えている。

【斉藤委員】
 震災関連死は9月末で455人となっているが、震災関連の自殺が34人、仮設住宅の孤独死が30人、災害公営住宅ではすでに4人孤独死している。これ自身が大災害だと思う。震災後も災害が続いていると。こういう立場で対応しなければならない。
 阪神淡路大震災から1月で20年が経過した。この最大の教訓の1つが孤独死だった。20年で1097人の孤独死、昨年1年間でも40人が災害公営住宅で孤独死している。これから岩手県は災害公営住宅への入居が本格的に進むが、災害公営住宅での孤独死を出さない対策をどう講じるか。一定規模の公営住宅には、仮設住宅のように支援員の配置が必要ではないか。

【達増知事】
 阪神淡路大震災の発災から20年が経過した現在まで毎年多くの方が孤独死されている現状を踏まえると、災害公営住宅の入居において、被災者同士や周辺住民とのコミュニティを確立し、孤立を防ぐ取り組みが重要だと認識している。
 本県では、生活相談支援員等が災害公営住宅の被災者の戸別訪問を行い、安否確認や相談・見守りなどを行ってきたほか、地域との交流の機会をつくるためのイベント開催などにも協力してきたところである。
 災害公営住宅における見守りについては、生活相談支援員等による個別支援に加え、同じ地域で暮らす方々が互いに助け合う仕組みづくりが重要なので、被災者が新たな居住環境で安心して生活できるよう、市町村や関係団体と連携してコミュニティ形成支援についても取り組んでいく。

【斉藤委員】
 1月に孤独死を出した陸前高田市の災害公営住宅で話を聞いた。住まいは立派だが、隣や同じ階に誰が住んでいるか分からないと。重い扉を閉めたら本当に孤立してしまう。9月に釜石の災害公営住宅で懇談した際も、やはり同じようなことが出された。この孤独感、人との付き合いがなくなっている。これが生活再建にとって本当に重要な問題である。
 大船渡市の仮設住宅には支援員が2名ずつ配置されている。仮設の人たちの状況を一番知っているのは支援員だと自治会長さんが言っている。やはり災害公営住宅の初期の時期には、そういう形で支援員を配置して、一人一人を見守り、人と人との関係をつくる、コミュニティをつくることに真剣に取り組む必要があるのではないか。それが阪神大震災の教訓を生かす道ではないか。

【達増知事】
 生活支援相談員の配置については、これまでも、県社協が市町村社協の意向を踏まえながら、地域の実情を踏まえて適正な配置に努めてきた。今後においても、被災者の生活の変化にともなう見守りや相談のニーズに応じた配置となるように、県としても必要な助言を行っていきたい。
 国では、来年度、被災者支援総合交付金により、被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援の実現を図るとしているので、市町村における支援員の配置についても連携して対応し、しっかりした見守り体制の構築に努めていきたい。

【斉藤委員】
 県は、復興支援員制度も活用できるとか、さまざまな形で市町村にも通知しているが、まだ県と市町村の認識に差があるのではないか。丁寧にこの問題をやっていただきたい。今の時期が大変大事なので、これまで以上に取り組んでいただきたい。
 在宅被災者の実態をどう把握しているか。大船渡市のNPOによる在宅被災者調査では、700世帯のうち160世帯が健康や家計に不安を抱えており、見守りが必要だと判断されている。在宅被災者というのは、15000人・7000世帯あるが、ここは震災直後から支援がなかった、今でもないと言われているが、実態調査と具体的な対策をどう考えているか。

【達増知事】
 大規模半壊により、生活再建支援金の加算支援金を受けて自宅を補修した世帯は約3000世帯で、生活支援相談員が訪問して支援が必要と判断された660世帯について、見守りや生活相談等を行っている。訪問の結果、健康や家計に不安を抱いている世帯に対しては、生活支援相談員が必要な支援を担当する機関につないでいるほか、保健師も被災者の健康状態の把握を目的とした健康調査や家庭訪問を行っている。
 今後も、市町村や社協など関係機関と連携し、支援を必要とする在宅の被災者の方々に対しても、的確な支援が行われるようにしていく。

【斉藤委員】
 ぜひ市町村とも協力して、実態調査を行い取り組んでいただきたい。


3.子どもの医療費助成の拡充について

【斉藤委員】
 せめて小学校通院まで拡充をすべきだと思うが、ふるさと振興戦略の3つの柱の中で、「岩手で育てる」取り組みにとって、子どもの医療費助成をさらに拡充すべきだと考えるがどうか。

【達増知事】
 人口減少対策としての総合的な子育て支援策の一環として県では、厳しい財政状況にはあるが、市町村等と協議のうえ、8月から助成対象を小学校卒業の入院まで拡大するとともに、来年8月から未就学児および妊産婦を対象とした窓口負担の現物給付を行うとしたところである。
 総合的な子育て支援施策については、今般策定する「ふるさと振興総合戦略」における重要なテーマであると考えている。国においても、子育て支援や地方創生の観点から、子どもの医療制度のあり方等に関して、有識者で構成する子どもの医療制度のあり方等に関する検討会を設置し、見直しに向けた検討を開始した。
 本来、子どもの医療費助成は、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきであり、本年6月に実施した県の政府予算提言要望において、全国の一律の制度を創設するよう要望している。
 全国知事会からも、子どもに対する医療費の全国一律の助成を要請しているところであり、今後とも国に対する働きかけに積極的に参加していきたい。

【斉藤委員】
 知事選のアンケートで達増知事は、「今年8月から助成対象を小学校卒業の入院のみ、来年現物給付にするが、現時点でさらに拡充する考えはあるか」という問いにたいし「拡充したい」と答えている。「すべての子どもの医療費を中学校卒業まで現物給付とし全額無料とすることに賛同するか」という問いに「賛同する」と答えている。これは知事の公約と受け止めていいか。

【達増知事】
 アンケートの質問にあったような状況が実現することを私も望んでいる。

【斉藤委員】
 6月議会の冒頭に、拡充を求める会のみなさんが7万筆の署名を集めて知事に直接届けた。本当に切実な課題で、小学校卒業の入院まで拡充して、現物給付に戻したということは、評価したい。しかし入院までとなるとわずかである。せめて通院まで拡充して現物給付化もそこまでやると。ぜひ「ふるさと振興戦略」の中で、実現をめざすべきではないか。残念ながら文章の中には、県が決めたことしか書かれていない。拡充を目指すと書かれていない。これだったら中身がないということになるのではないか。

【達増知事】
 今年度からの実施、また来年度からの実施について、しっかり市町村と協力しながらやっていくことが重要と考えており、国の方で地方創生ということに、新三本の矢、一億総活躍ということで、国全体として出生率も向上させ、子育て支援にも取り組んでいくという新機軸を出そうとしている状況でもあるので、国に対する要望・提案に力を入れていくべき局面と考えているが、いずれにしても、日本の出生率の低さは異常であり、さまざまな困難に若い世代が直面していることを、国をあげて克服していかなければならないと思っており、また岩手においても独自の努力をしていかなければならないと思っている。

【斉藤委員】
 県内市町村では、沿岸被災地を含めてかなり独自に高校までとか中学校まで、遅れているところでも小学校卒業までやっているが、この状況、県内市町村の取組をどう把握し評価しているか。

【達増知事】
 本年8月1日現在、対象年齢を小学校通院まで拡充しているのが6市、中学校卒業まで拡大しているのが入院通院とも12市町、高校卒業までが入院通院とも10町村となっている。これらの市町村においては、医療福祉政策全体の中で検討した上で、総合的な子育て施策の一環として地域の実情に応じた取り組みをそれぞれの判断で実施しているものと認識している。

【斉藤委員】
 切実な課題なので、県内市町村が頑張っている。小学校卒業以上で見ると、28市町村がやっている。県が小学校卒業までやれば、上乗せして市町村は拡充できると思う。
 26年度末決算は、261億円の黒字だった。その半分を基金に繰り入れるとしても、財政課から聞いても40〜60億円は県政課題に使えるということなので、本気になって取り組むべきではないか。

【達増知事】
 県として、ふるさと振興、あるいは医療・福祉の大きな枠組みの中で、生きにくさを生きやすさに転換していかなければならないという中で、例えば、医療局の県立病院ネットワークを維持していくためには、毎年200億円くらい、うち交付税措置される国から出る分を引いて80億円ぐらいの規模の予算を県立病院ネットワークに使っているというような、まさに県独自の施策を展開しているということもある。そういった中で、県内の市町村が判断し努力していること、県として行っていること、今回今年度・来年度の子どもの医療費助成拡大についても、県と市町村でかなり情報共有・協議したところだが、そういったことを続けながら、県民がより生きにくさを生きやすさに転換していくことができるように努めていきたい。

【斉藤委員】
 ふるさと振興の大きな柱で「岩手で育てる」と。ぜひ知事も公約していることなので、小学校卒業の通院まで、さらに中学校までと拡充を決断して進めていただきたい。


4.高齢者の貧困対策について

【斉藤委員】
 高齢者の貧困率が19.7%と深刻な事態である。1人暮らし高齢者世帯、高齢夫婦世帯の実態はどうなっているか。収入・生活実態はどうか。1人暮らし高齢者の生活保護受給の状況を示していただきたい。

【達増知事】
 22年国勢調査で、本県における65歳以上の高齢単身世帯数は43479世帯、高齢夫婦世帯数は50191世帯となっている。
 高齢者世帯の収入状況は、厚労省の26年国民生活基礎調査によると、全国の高齢者世帯の平均所得金額は300万5000円となっており、うち公的年金本給が67.6%を占めている。
 本県の生活保護受給世帯における高齢者単身世帯は、16年度が2922世帯、26年度が4501世帯と10年間で1600世帯増加している。
 本県の高齢者の状況については、今後とも国勢調査や介護保険事業状況報告など、各種統計調査等により動向を把握していきたい。

【斉藤委員】
 いま老後破産や下流老人という、下流老人という新書は10万部を突破している。高齢者の貧困問題が大きな社会政治問題になっている。その中で矛盾の集中点になっているのが、一人暮らしの高齢者であり、岩手県は22年度で43479人だが、27年の見込みは51000人である。この中で、65歳以上の高齢者で生活保護を受給しているのはわずか6350人である。600万人一人暮らし高齢者がいて、その半分は生活保護基準で生活している。全国的に見て生保需給は70万人、そうすると200万人以上が生活保護を受けずに生活保護基準で生活している。岩手でいけば、2万人近くが生活保護基準で厳しい生活を強いられているということになると思うが、一人暮らし高齢者の実態調査を行うべきではないか。

【達増知事】
 先ほど申し上げた国民生活基礎調査では都道府県別のデータは公表されておらず、一方で介護保険料は市町村民税の課税状況等により段階が決まるので、65歳以上の高齢者の各所得階層の分布状況が把握でき、例えば25年度の非課税世帯に属する高齢者の割合は県では32%と、全国とほぼ同程度ということが分かる。老齢年金の平均支給月額から高齢者の年金収入状況の傾向をおおむね把握することができ、例えば25年度における本県の平均支給月額は約76000円、全国平均より約1万円低いことが分かる。

【斉藤委員】
 ぜひ一人暮らし高齢者の実態を把握して、必要な支援策を検討してほしい。
 今年1月、奥州市で親子共倒れの事件が発生した。NHKスペシャル「老人漂流社会」で真っ先に紹介された。知事はご覧になったか。いま介護が必要な親を、仕事を辞めて介護する、親の年金だけで生活する。結局、月8万円で親子生活して、息子が先に倒れて、母親も凍死してしまったという事件である。こういう事件を絶対繰り返してはならないと思うが、現状をよく把握し、対策を講じるべきではないか。

【達増知事】
 番組は見てはいなかったが、奥州市の事案を通じて、高齢者が子どもと同居していることで近親者が安心してしまって、生活の維持が困難になっていることに気づけなかったというケースがあるということを改めて認識した。
 こうしたケースに対応していくためには、地域住民や関係機関・団体、市町村が一体となって協力しながら、さまざまな制度を活用して支援が必要な高齢者等に寄り添い支えていく地域ごとの仕組みが必要と考えている。
市町村では、多様な生活支援サービスが重層的に提供されるよう、生活支援コーディネーターの配置や、地域福祉活動コーディネーターとの連携に取り組んでおり、県ではその養成・研修の実施などにより、市町村を支援している。
 今後とも、関係機関・団体と連携しながら、高齢者への生活支援の取り組みを進めていきたい。

【斉藤委員】
 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、低所得者が入れる特養ホームの現状と増設が必要ではないか。

【達増知事】
 4月1日現在、県内養護老人ホームは17施設で定員967人、経費老人ホームが24施設で定員993人、特養ホームが160施設定員8003人となっている。
 27年度から29年度までの市町村における高齢者福祉介護保険事業計画において、養護老人ホームについては開設見込みがなく、経費老人ホームは20床相当、特養ホームは991床相当の開設見込みとなっている。
 今後、単身高齢者や高齢者世帯の一層の増加が推計され、市町村は高齢者の住まいのニーズを的確に把握し、施設整備を計画的に行っていく必要があると考えている。県としては、各種施設整備に対して補助を行うことにより、低所得者を含む高齢者の住まいの確保を支援いく。また、各地域で医療・介護予防住まい生活支援サービスが切れ目なく提供される地域包括ケアシステムが構築され、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活し続けることができるよう、関係機関と取り組んでいく。