2015年10月23日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・JR大船渡線の復旧について
【斉藤委員】
JR東日本の提案の中身と国交省の対応はどうなっているか。
【交通課長】
今年の7月に国交省主催による大船渡線沿線自治体首長会議が開催され、JR東日本から「大船渡線は利用者が減少しており、鉄道の特性が十分に発揮できる状況にはない」ということで、「地域の復興に貢献する持続可能な交通手段としてBRTによる本格復旧」といった提案があった。これを受け、現在沿線自治体において大船渡線の今後の復旧のあり方について、住民懇談会などを開催して意見の集約を図っている。
国交省においては、各自治体における検討状況を踏まえ、年内に次回の首長会議を開催したいと聞いている。
【斉藤委員】
JRの提案の中で、山側ルートにすると400億円かかり、270億円は地元負担だと。それに対し国交省は「地元負担には対応できない」と答えている。そういうことをきちんと答弁しないといけない。
今まで1年間、JR大船渡線の復興調整会議をボイコットして、突然2回目の首長会議でBRTによる本格復興だと。いまBRTがやられているが、BRTの本格復興という新しい中身は何かあるのか。
【交通課長】
JRの第2回目での提案の中身については、鉄道特性が発揮できる水準ではないということと、BRTによる仮復旧が進んでおり、住民の方々の交通手段になっている。さらには、交流人口や産業観光活性化にも取り組んでいくということを踏まえ、BRTの提案があった。これにたいし国では、鉄道を復旧するための経費についての支援は困難だという話があった。そして市ではこの提案を受け、持ち帰って住民からの意見集約を進めたいということであり、BRTの本格復旧の提案にあたって、新しい提案といったような部分は、JR側からは、交流人口や産業活性化に取り組むこと、ますます使いやすいBRTの路線にしていくといったような、ある一定の具体性をもった提案があったと認識している。
【斉藤委員】
BRTは基本的には仮復旧でやられた。大船渡線の利用客は減少しているが、1日420人だったのがBRTだと250人だと。BRTで半分しか利用できなくなったというのが現状ではないか。こんなので本格復興になったら、地域の方々の足を確保できないと思う。
この実態を部長はどう考えるか。
【政策地域部長】
利用人員については、BRTの特性上、一車両あたりの定員が少ないということもあるので、あるいは町づくりがまだ進んでいない中で、BRT駅周辺に町ができていないことなどもあるので、一概にBRTだから乗らないということではないのではないか、私どもとしてはまだ分析しきれていない。今後仮に町づくりが進めば、乗車人員は基本的には増える方向だと思っている。
【斉藤委員】
三鉄の社長さんは、「鉄路がなくなって栄えた町はない」という立場で、三鉄を一日も早く復旧した。県政調査会でもそういうお話を聞いた。
鉄路がなくなって栄えた町はあるのか。
【交通課長】
12年度以降24年度までの13年間で、全国で廃止された地方鉄道路線は35路線にのぼるが、廃止路線の自治体については、鉄道に代わる公共交通により住民の生活の足を確保しており、地域外からの観光客の移動手段の確保に努めながら、さまざまな地域活性化に一生懸命に取り組んでいると認識している。
鉄道が失われるという部分については、影響は少なからずあると思うが、鉄道の廃止と地域活力との関係については、もう少し分析が必要ではないかと考えている。
【斉藤委員】
鉄路が廃止されるわけだから、それに対して必死で対応するのは当たり前のことである。しかし鉄路がなくなることのダメージはきわめて大きいのが現実である。
JR大船渡線について、あらゆる選択肢を検討すべきだと思う。JRがBRTでいくということで、これが良いか悪いかという単純な選択肢ではいけないと思う。
陸前高田市でいま懇談会がやられて、市長直送便というのもあるが、少なくない意見の中で、「陸前高田までは鉄路で復旧できる」と。その部分は被害が少なく経費はそれほどかからないと。せめて陸前高田までは鉄路で復旧すべきではないか。こういうことも主張する必要がある。
そして、山側ルートで多額の費用がかかるというのなら、例えば大船渡〜陸前高田間は三鉄で現状のルートで通すとか、そうすると鉄路はつながる。あらゆる可能性を検討してやるべきだと思うがいかがか。そういう声が現実に出ているので、県としてもしっかり受け止めて対応すべきではないか。
【政策地域部長】
基本的に大船渡線については、事業者であるJRからの提案という形で、現在検討が進んでいるというところであり、これに対し県から委員ご指摘のような提案をするのは、山田線とは違うので、現時点ではそのような提案は考えていない。
【斉藤委員】
私が話したのは、せめて気仙沼から陸前高田まで鉄路で復旧することは可能ではないかと。財政的に見ても。陸前高田から大船渡までBRTにしても、気仙沼から大船渡までBRTが走るのでは全然違った効果がある。そしてそういう方向で議論が進むなら、大船渡〜陸前高田間も三鉄で結ぶということもあるのではないか。
東海新報に、気仙医師会の会長代行をやられた大津先生が、「この議論の大前提として、JR大船渡線の復旧は鉄路であるべきだ」と述べ、大船渡線の歴史を紹介している。「大船渡線は盛岡出身の原敬が首相のとき、大正9年に着工した。大正14年に一関〜摺沢間が開通し、気仙沼までは昭和4年に、終点の盛までは昭和10年に開通して、今年は開業から数えて90年、全線開通から80年になる」と。80年前に大船渡線は全線開通し、BRTでいいということは80年前に戻すということである。これだけ重大な問題なんだという立場で、あらゆる選択肢を真剣に考えるべきである。大船渡線の歴史を踏まえて、部長はどう思うか。
【政策地域部長】
大船渡線の歴史、三陸縦貫鉄道という先人の鉄道に対する思いというのは十分私も理解しているつもりである。
ただ一方で現実を見ると、現実の中でどのような選択をしていくかと。JRの提案や大船渡市・陸前高田市の住民がどのような利用をして、これからどのような交通体系を望んでいるかというところは、80年前とは違うので、すぐにでもJRが現状に戻してくれるのであれば良いとは思うが、現実問題なかなかそのようなことになっていないというのがあるので、大船渡・陸前高田の住民の方々の議論を見守っているところである。
【斉藤委員】
それだけの歴史を踏まえた議論をやるべきである。
そしてJRは不当である。震災の年の4月に、当時のJR東日本社長は、「全線復旧させる」と言明した。ところがそれを翻して、八戸線は1年で復旧して、大船渡線は山側ルートでなければダメだというダブルスタンダードで、1年間ボイコット、サボタージュして、4年かかってBRTという提案をしてきた。
大津先生は、「大船渡線はなぜ使われないのか。時間がかかるからだ。107kmのJR線でなぜ2時間半もかかるのか、1時間で走れるのではないか。なぜそういう改善もしないのか」という提起もしている。改善することはたくさんあると思う。そして、陸前高田の人も大船渡の人も、一関や水沢江刺から新幹線を使って、黒字に貢献している。大船渡線だけの赤字が問題ではない。そういうことも含めて、80年前に開通した鉄路をどう守るのか、そういう検討を県も市町村と一緒になりやるべきだと思う。ぜひ専門家からも知恵を結集して、JRの言いたい放題のやり方は許してはならない。JRは昨年度末決算で純利益1800億円、経常利益で3000億円を超えている。こういう利益は本来国民や地方に還元されるべき利益である。民営化されたJRといえど、公共交通機関を担っているので、やはり言うべきことはしっかり言って、議論を進めるようにしていただきたい。
・JR山田線について
【斉藤委員】
復旧の具体的見通しと現状はどうなっているか。
【交通課長】
10月1日に、宮古に工事事務所を開設し、工事が本格化の段に入っている。ただ、やはり55キロの路線について、詳細な設計・測量が必要という全段階があるので、今年度はそういった設計・復旧を中心に行うことにしている。
見通しだが、釜石でのラグビーW杯が平成31年9月にあるが、その以前、できれは30年度末を目安にしたいということだが、具体的な開業日についてはこれから工事の進捗を見ながら、近くになってから関係者と協議して設定することとしている。
・人口減少対策、ふるさと振興について
【斉藤委員】
大学生や、関東その他で就職した若者のU・Iターンが人口減少を食い止める上でも、きわめて重要な課題だと思う。ふるさと振興総合戦略案の中で、岩手県Uターンセンター平成26年度実施で、就職支援件数で1906件となっているが、これはどういう件数か。どういう取り組みが行われているか。
【県北沿岸定住交流課長】
Uターンセンターについては、雇用対策労働室で所管しているところだが、東京事務所にUターンセンターを設置し、そちらでの窓口での相談業務、大学や企業等を訪問して、本県出身の学生や本県の就職・企業情報を発信しながら就職につなげていくということで、それらの相談等の件数や、U・Iターンフェアやイベントを展開しているので、そういったイベントの件数が入っているものと考えている。
【斉藤委員】
あまり評価する件数にはならないと思う。就職に結び付けるような件数で評価しないといけない。
このU・Iターンを本格的に進めるために、県外に行っている学生や、県内で就職した若者のリストでいろんな情報を定期的に発していく、結びつきをつくっていくということが重要だと思う。
もう1つは、帰ってくる若者に対して、住居を廉価で良いものを保障すると。今日のニュースで、青森の小さいところだが、10戸の新築の住宅をつくり、20年定住したら譲渡するという取り組みも始まっているが、空家をリフォームして、若者がそういうことを活用できるような仕組みもやるべきではないか。
【県北沿岸定住交流課長】
移住の部分については重要な課題であり、葛巻町でも移住者向けの住宅を整備して安価な家賃で提供しているという例もあり、住宅バンク制度を取り入れている市町村もあるが、それを活用して実際に移住した際に住宅の改修費の補助をしているという市町村もある。本来的に、住宅や移住の具体的なことについては市町村の役割ということで考えているが、県としても市町村と連携し、どのような支援ができるか考えていきたい。
・マイナンバー制度について
【斉藤委員】
マイナンバー制度が県政にどう関わり、経費・維持管理費はどうなるか。
情報漏えい対策はどうなっているか。
【情報政策課総括課長】
番号法では、社会保障、税、災害対策の事務、生活保護の決定、地方税の賦課徴収などの事務40事務について県が実施する事務として規定しており、28年1月から個人番号の利用を開始するものである。これらの事務に関する改修または新規に整備するシステムの経費は、整備費の総額は約2億9000万円を見込んでいる。維持費は、28年度以降年間約1000万円の負担増が生じると考えている。
情報漏洩対策は、マイナンバー制度においては、個別の業務システムにおいては、情報が分散管理され、業務システム間では必要なときに必要な情報だけをやりとりするということで、個人情報を一括して集めることはできない。これに加え、国が策定した特定個人情報適正な取り扱いに関するガイドラインに基づき、さまざまな情報漏えい防止のための安全管理措置を講ずることとしている。
・市町村への派遣職員について
【斉藤委員】
今年来年が復興のピークだと思うが、来年ますます厳しくなると思うが、必要数や取り組み状況はどうか。
【市町村課総括課長】
24年度は、被災市町村必要数366名にたいし確保数321名で87.1%、25年度は628名にたいし596名94.9%、26年度は737名にたいし697名94.6%となっており、今年度10月1日現在の数字では、791名にたいし決定数が725名91.7%となっている。
市町村事業は、今年度来年度がピークとなっており、必要数はまだまだ必要だという状況になっており、現在被災市町村に来年度の必要数の照会をしており、取りまとめたうえで人員の確保に努めていきたい。
・18歳選挙権について
【斉藤委員】
昨年の総選挙で20代の投票率はどうだったか。
議論があったように、来年の参院選から18歳選挙権が導入される。高校生の政治活動も校外では認められると。きわめて限定的で、子どもの権利条約からいったら問題だと思うが、それでも認められると。以前、20歳の成人にたいし、選管主催で各政党の主張を発表する企画があったが、かなり前になくなった。いつなくなったのか、なぜ止めたのか。やはり現実の政治を学ぶことが大事なので、こういう取り組みも選管として復活して、積極的な取り組みを行うべきではないか。
【選挙管理委員会事務局書記長】
全国20〜24歳が29.72%、岩手県の場合31.87%。55歳〜29歳の場合は、全国が35.32%、岩手県が35.85%となっている。
ご指摘の企画については、国の給付金を活用して開催していたが、16年度に交付金が廃止されたことにともない、啓発事業全体の見直しを行った。その際、参加者の減少等に鑑み廃止したものである。
18歳に選挙権が引き下げられたということで、投票率が若い世代が一番低く、徐々に年齢が上がるごとに投票率が高くなっている状況を見ると、若年層の頃からの投票率の引き上げが図られれば、それ以降に続く分の投票率も上がっていくのではないかと考えられるところもある。
普及啓発のお話もしたが、その他どんな手立てが考えられるかということで、18歳選挙権に対応した事業ということで、効果的な取り組みを考えていきたい。
【斉藤委員】
管主催で各政党の主張を発表する企画はぜひ再開すべきである。
いま国会前に集まっているのは、SEALsなど学生・高校生である。新しい政治への目覚めも起きているので、そういう方々の目覚めを投票率の向上に、若者の政治参加に結び付けるように英知を結集して、必要なことは最大限やるとしていただきたい。
【選挙管理委員会事務局書記長】
若年層の政治参加を醸成していくのは非常に重要なことと考えている。選管としても、県教委と連携して効果的な取り組みに努めていきたい。