2015年10月26日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)


・地域医療の現状と地域医療構想について

【斉藤委員】
 地域医療の現状について―機能別病床数と病床稼働率はどうなっているか。医師の充足率、患者数の推移、医療圏ごとの完結率の状況はどうか。

【医療政策室長】
 本県における機能別病床数は、26年度の病院機能報告によると、高度急性期2083床、急性期6388床、回復期1547床、慢性期3555床、計13573床となっている。病床稼働率は、病床の機能区分ごとには把握していないが、25年病院報告によると、県内の精神科病院も含む病床利用率は77.3%となっている。
 医師の充足率については、国から明確な基準が示されていないが、厚労省の22年必要医師数調査によると、本県の病院に勤務する医師数は1600名にたいし640名の医師が不足している。
 患者数の推移は、外来患者が20年544万人から25年には約480万人と5年間で約64万人減少しており、入院患者については、20年15万人から25年には15万3000人と約3000人増加している。
 入院患者の完結率は、病床機能ごとに異なるので一概には言えないが、やはり盛岡圏域は確率が非常に高く95%を超えている。その他の圏域についても、おおむね80%前後を維持している。

【斉藤委員】
 地域医療構想がめざすものは何か。一言でいえばベット数の削減、医療費の削減ということで出されているのではないかと思うが、国の機能別病床数の推計が出されて全国に衝撃を与えた。この数はどういう性格のものなのか。

【医療政策室長】
 地域医療構想の目的だが、地域医療構想はいわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、医療事務の変化に対応した効率的で質の高い医療提供体制を構築していくことを目的として、昨年6月に制定された医療介護総合確保促進法により、都道府県に策定が義務付けられたものである。
 国が示したベット数の削減については、今年6月に、内閣官房の専門調査会が2025年には全国約15万床、本県では約4400床が過剰になるとの推計を公表したことを受け、報道機関において4400床削減されるとの報道があったものと理解している。一方この報道を受け、地域医療構想を所管している厚労省からは、試算は参考値であること、現行の医療法では都道府県知事が稼働している病床を削減する権限は有していないこと、地域医療構想の実現に向けては地域の医療関係者等による話し合いを通じた医療機関の自主的な取り組みが基本であることなどについて、改めて理解を求める通知があったところである。
 県としては、地域医療構想の実現に向けた取り組みは、高齢化の進展などにともなう医療需要の変化に対応した効率的かつ質の高い医療提供体制を構築していくことを目的としたものであると考えており、そのような認識のもと着実に進めていきたい。

【斉藤委員】
 国の方針というのは、必要病床数の算定式を出しているので、機械的に必要病床数が出るようなやり方で、だから減る。しかし一方で、厚労省の医療政策課長がこの点について、あくまでも参考値で、稼働している病床を削減させる権限はないと。2025年に向けての取り組みなので、今すぐ減らすものでもないと。こういう通知も出された。
 県内の機能別病床数でどういう報告がされているか。
 審議会等で地域医療構想の策定にあたり審議が進んでいるので、現段階で医療圏の考え方、ベット数の考え方はどういう形で、いまの到達点で地域医療構想の中身は検討されているか。

【医療政策室長】
 病床機能別の病床数については、先ほどご質問いただきお示しした数字がその成果に基づく数値である。
 地域医療構想の審議状況だが、県では7月に県医療審議会に諮問し、同審議会の医療計画部会で策定作業を進めており、現在は構想区域の設定の考え方や構想期間の入院患者の流入や流出の見込みなどを主な論点として検討している。今後、構想区域ごとの必要病床数やその確保のための施策を取りまとめることとしており、引き続き県内の各保健医療圏ごとに、医療介護関係者や市町村、住民代表等の方々の意見をうかがいながら、あわせてパブコメ等を行ったうえで今年度中の策定を目指していくものとしている。

【斉藤委員】
 構想区域の設定については、調整案として「現行の二次保健医療圏を構想区域とする」という形で進めるということが確認されている。もう1つは、必要病床数の算定にかかる算定方法というのがA・Bのパターンがあり、Bパターンを採用するということも、具体的な根拠も示して議論されているので。
 機能別病床数については、先ほどの答弁が報告数だと。そうすると、現状と報告数ではどのようなかい離があるか。現状の機能別病床数は分かるか。

【医療政策室長】
 現状の行動急性期・急性期・回復期・慢性期というものが示されていないために、病床機能報告ということで昨年度示された。一方で昨年調査した病床機能報告については、いわゆる定量的な基準、こういった機能を以って高度急性期とすると、見込みが示されなかった関係もあり、本年度も実施しているが、この機能別病床数というのはさらに精査が進むものと理解している。
 現時点で病床数どうなのかということだが、病院報告では、一般病床・療養病床・精神病床といった機能区分では把握しているところだが、今後検討を進めるベースのものは先ほど示した病床機能報告に基づく高度急性期・急性期・回復期・慢性期といったものがベースと理解している。

【斉藤委員】
 概念は変わっているかもしれないが、今でも高度急性期とか急性期とかあると思う。

・国保の現状と広域化について

【斉藤委員】
 悪法も法で、2018年度から都道府県が国保の保険者になると。国保の大改編が進むと思うが、国保の現状について、26年度の一人当たりの国保税と負担率、一般会計からの繰入状況、滞納者・率はどうなっているか。

【健康国保課総括課長】
 国の公表データをもとに把握しているところだが、昨年度の数値についてはまだ公表されていないことから、25年度の数値で申し上げる。25年度における1世帯当たりの総所得金額は127万3000円であり、基礎控除33万円を差し引いた課税所得額は94万3000円、国保税額は15万4000円となっており、1世帯当たりの課税所得額に占める国保税の割合=負担率は16.3%となっている。
 25年度末で滞納世帯数・率は、24053世帯・12.1%と、前年比3455世帯・1.4%減少している。
 一般会計からの繰り入れは、26年度において14市町村で総額9億7000万円余となっている。

【斉藤委員】
 国保は、地方にいけば重税感の高い、悲鳴のあがっている状況である。負担率は16.3%と、社保と比べると倍である。国保というのは、加入者の職業状況の所得を見ると、100万円未満が56.9%、所得なしが25.7%で4分の1が所得なし。いわば職のない人から締め上げる制度になっている。だから滞納者も12%、無理して払っている方々もいる。どんどん国保が上がるので14市町村が9億7000万円もの繰入をやって値上げ幅を抑えているのが現状である。
 国保の広域化で何が変わり、何が変わらないのか。

【健康国保課総括課長】
 今回の制度改革により、毎年約3400億円の財政支援の拡充により、財政基盤を強化したうえで、都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保など、国保運営の中心的な役割を担うこととされている。一方、市町村においては、保険料の賦課徴収・資格管理・保険給付・保険事業など、地域におけるきめ細かい事業を引き続き担うこととなっている。
 制度の詳細については、国と地方3団体との協議の場である国保基盤強化協議会において検討が行われている。

【斉藤委員】
 国保の構造的な問題というのは、低所得者から高い国保税を徴収しなくてはならない。ここに一番の構造的問題があって、市町村は国保の事務は今まで通り、給付は都道府県だという仕組みになる。3400億円の財政支援はあるが、これは全国の一般会計からの支出とほぼ同額である。一般会計の支出が継続されれば、3400億円の財政支援というのは、一人当たり1万円引き下げの額になる。3400億円の財政支援があるというのなら、これを高すぎる国保税の引き下げに回すべきではないか。このように使えないのか。

【健康国保課総括課長】
 3400億円の国による財政支援の拡充だが、1700億円については、27年度から低所得者対策で国からの支援が行われるものであり、残りの1700億円については30年度からということになるが、例えば医療費の適正化やそういったことに努力した市町村にたいし支援が行われるといったものと聞いている。

【斉藤委員】
 1700億円は低所得者対策で、一人当たり約5000円程度になるが、そこに回せると。あとの1700億円は30年度からしか出てこないということか。3400億円来年度から出ないのか。

【健康国保課総括課長】
 1700億円については27年度からの低所得者対策であり、合計で3400億円については30年度からということである。

【斉藤委員】
 3400億円は来年度から財政支出されると聞いているが違うのか。
 全国知事会は、1兆円の財政支出をずっと求めてきた。逆にいえばそれが3分の1に値切られた。やはり1兆円ぐらいの財政支出がないと、今の国保の構造的問題は解決できないという立場に知事会が立っていたからである。引き続き求めるべきである。
 国会の答弁で、一般会計からの繰入を止めさせることはできない、市町村の権限だと。そういうことなので、いま大変厳しい中で県内14市町村がやっているので、雫石や野田村など値上げしないために毎年大変な繰り入れをしている。住民の命と健康を守るという点で素晴らしい立場だと思う。市町村が引き続き独自に一般会計からの繰り入れができるということでいいか。

【健康国保課総括課長】
 先に答弁の訂正をさせていただきたい。3400億円の財政支援の拡充だが、29年度以降にさらなる国費、毎年約1700億円投入されるということで、29年度以降は毎年3400億円の財政支援の拡充ということになる。
 一般会計への繰入だが、今年5月の参院厚労委員会において、保健局長が、「一般会計への繰入自体は市町村に判断いただくことなので、政府によりこれを禁止することはできない。各自治体で判断いただきたいと思うが、国保財政の健全性の確保をお願いしていきたい」と答弁している。
 いずれ、30年度以降の制度の詳細については、現在国保基盤協議会において詳細が検討されている状況なので、国の検討状況などを踏まえ、市町村や関係団体と連携を図りながら準備を進めていきたい。

【斉藤委員】
 国保問題で問われているのは、国保の構造的問題を解決するということなので、決定的な問題は、国庫負担率を引き上げる以外にない。全国知事会が1兆円の財政支援を求めてきたのに、3分の1に値切られたままに絶対してはならない。低所得者対策にしても、財政支援にしても、それが負担軽減につながるよう県もしっかり進めていただきたい。所得100万円未満が56.9%、所得なしが25.7%なので。そして所得が多い人からも、均等割で人頭税のように取り立てる国保は抜本的にこの機会に見直すべきである。

・子どもの貧困対策について

【斉藤委員】
 県内の子どもの貧困の現状はどうなっているか。
 岩手の子どもの貧困対策の推進計画について、貧困家庭の実態、母子家庭の生活水準と生活保護の受給状況はどうなっているか。

【子ども子育て支援課総括課長】
 本県における法的支援の対象となっている子どもの状況については、例えば18歳未満の子どもの総数に占める生活保護を受給している子どもの割合は24年度0.91%、25年度0.82%、26年度0.81%である。公立小中学校の児童生徒総数に占める就学援助の子どもの割合は24年度14.12%、25年度13.73%、26年度は13.45%で、3カ年の状況ではおおむね横ばいとなっている。
 母子家庭の生活水準だが、25年度に実施した岩手県母子世帯等実態調査の結果では、母子家庭の月額の就労収入は10万円未満が25.3%、10〜15万円未満が40.7%、15〜20万円未満が21.4%、20万円以上が8.8%で、この割合は前回20年度の調査とほぼ同様の結果となっている。
【地域福祉課総括課長】
 本県において生活保護を受けている母子世帯は27年7月現在で494世帯となっている。

【斉藤委員】
 母子家庭の収入状況、15万円未満が66%を占めている。15万円未満というのは生活保護基準である。しかし494世帯しか生活保護を受けていない。66%の母子家庭の子どもの数を示していただきたい。494世帯はそのうちの何%か。
 みなさんの報告書で、母子家庭の就業率は8・9割、ほとんど働いているが収入は少なく、わずかな人しか生活保護の対象になっていない。だからダブルワークして、夜も子どもの面倒が見れず子どもが放置されている。この問題をきちんと解決すべきである。

【子ども子育て支援課総括課長】
 494世帯の母子世帯に占める割合は、母子世帯は25年度で12110世帯であり4.08%となる。

・岩手医大への補助、医師派遣の状況、教授の覚せい剤疑惑について

【斉藤委員】
 岩手医大への県の補助、医師派遣の状況はどうなっているか。
 若林教授の覚せい剤疑惑の調査はどうなっているか。

【医療政策室長】
 医大に対する補助額は、26年度においては、高度救命救急センターやドクターヘリの運営費補助など、地域医療の確保を図るための通常分として20件について約9億8000万円。震災対応分として、災害時に継続的な医療体制を維持するためのエネルギーセンターの整備にたいし約8000万円、計21件について10億6000万円の補助となっている。
 医師派遣の状況は、大学からの報告では、県内公的医療機関への派遣は、27年5月1日時点で334名で、ここ数年横ばいで推移している。
 医大の元教授の調査だが、医大に確認したところ、調査委員会の調査に関しては外部に公表していないとのことであり、県としては聴取していない。