2015年10月26日 決算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・県立病院の決算状況について

【斉藤委員】
 経常損益では11億6814万円の黒字で、黒字幅は減少したが22年度以来5年連続黒字となった。この黒字の主な要因は何か。

【経営管理課総括課長】
 前年度の比較で申し上げると、外来収益の伸びにより医業収益がわずかに増加したものの、医業外収益が減少したことから、特別利益を除く収益全体では6億2600万円余の減収となった。
 一方費用においては、給料の減額支給の終了、職員の増加などにより給与費が増加、および薬品等の増加にともなう材料費の増加などにより医業費用が増加している。特別損失を除く費用全体で11億7800万円余の増加となったものである。
 これにより経常損益が前年度より18億400万円余減益となったが、11億6800万円余の経常黒字を確保した。

【斉藤委員】
 昨年度から消費税が8%に上がったが、昨年度の消費税転嫁できない負担分と累計の負担総額はどうなっているか。

【経営管理課総括課長】
 昨年度において消費税の負担額および固定資産の取得において負担した消費税を取得の翌年度以降に費用処理する長期前払い消費税の償却額の合計で、46億1400万円余となっている。
 また消費税が導入された平成元年度から26年度までの累計の消費税負担額は、総額で496億円余となっている。

【斉藤委員】
 496億円は純粋な負担額か。

【経営管理課総括課長】
 これは診療報酬などの引き上げにともない補てんしたという扱いになっているので、これらの補てん額は329億円と推計しており、実質的には累計で167億円余の試算となっている。

【斉藤委員】
 消費税だけで167億円も負担せざるを得なかったと。県立病院の経営にとってこのぐらい大きな障害はない。10%増税など本当に許されない。

・医師確保状況について

【斉藤委員】
 監査委員の審査意見書の中では、医師が前年度と比べ26年度は7名減となっている。9月1日現在での前年比では11名減ということで、医師確保に取り組んでいるのに減というのはなぜなのか。
 昨年度の医師確保の状況、臨床研修医の確保や定着の状況、即戦力医師の確保の状況はどうなっているか。

【医師支援推進監】
 即戦力医師の確保の状況だが、医師支援推進室においては、県出身医師や岩手医大卒業医師、全国の大学医学部などを個別訪問し、平成18年9月の室設置以降これまで延べ3100名を超える医師等と面談を行うとともに、ホームページの活用、医学情報雑誌への広告掲載などにより、医師の招へいに取り組んできたほか、招へいした医師の定着が図られるようフォローアップ面談等の実施をしてきた。こうした取り組みの結果、26年度は県立病院に9名の医師を招へいし、室設置以降9月末までの累計で、県立病院に103名の医師を招へいしている。医師の絶対数の確保においては一定の成果があったものと考えている。
 臨床研修医の確保は、今年度の県立病院における初期臨床研修医の採用数は59名となっている。25年度は57名、26年度は56名であり、臨床研修制度開始以降もっとも多い採用数となっている。定着状況については、4月1日現在で、県立病院においては初期臨床研修終了後に後期研修医として残った医師は58名中24名となっている。
 医師が減少している理由は、県立病院医師の派遣元である関係大学の医局自体においても、医師の絶対数が不足していること、震災支援を目的とした新たな招へい医師が減少していること、これまで招へいしてきた医師の退職、専門医取得等を目的とした大学院進学等による後期研修医の減少などによるところが大きいものと認識している。
 今後においては、医師の絶対数を確保するために、引き続き関係大学への派遣要請、即戦力医師の招へい活動に取り組むほか、奨学金養成医師の効果的な配置等により県立病院の医師の充足に努めていきたい。

【斉藤委員】
 即戦力医師の確保や臨床研修医の確保ではかなり努力され成果をあげているが、結果的には減になっているということも、きわめてシビアな状況である。これが増になるよう引き続き頑張っていただきたい。来年度から奨学生が配置されるので、ぜひ医師の確保というのが県立病院にとって一番の課題であり地域医療の要をなす問題なので、取り組んでいただきたい。
 そういう中で、大槌病院・山田病院は、来年度に入院病床、新しい病院が整備される。365日の宿直や当直の体制も必要になって本当に大変なことだと思うが、当直医の具体的な確保対策はどうなっているか。

【医師支援推進監】
 現行の外来機能を維持しながら、かかりつけ患者の回復期等における入院に対応することとしており、現在の常勤医および大学や基幹病院等からの診療応援により必要な診療体制を確保することを目標としながら、引き続き関係大学への派遣要請や即戦力医師の確保に努めていく。
 当直医については、関係大学等に応援の要請を強く行っているところであり、こうした取り組みと並行しながら、圏域の基幹病院および圏域を超えた県立病院、地元医師会との連携について、病院と緊密に連携を図りながら、必要な支援に努めていきたい。

【斉藤委員】
 大槌病院と高田病院の院長にお会いしてきたが、いまの常勤体制を基本にということで、ただ率直に言って年配の医師が多いと。年配の医師が頑張っていることは評価しなければいけないが、入院を含めてこれから対応するという点でいくと、大学や基幹病院からの支援が必要だと。万難を排して取り組んでいただきたい。

・看護師確保の状況について

【斉藤委員】
 監査委員の資料を見ると、看護師の場合は31人が増員となっているが、現場は増員になったという感覚がほとんどない。採用試験も深刻な実態を打開していないと思う。26年度の通常試験は、185人の採用予定人員で受験者189人、採用者160人である。結局採用人数を確保できず中途採用せざるをえない。中途採用といっても中途退職が同じぐらいいる。24名。思い切って抜本的な増員を図る必要があるのではないか。

【職員課総括課長】
 25年度の採用試験において募集定員を大きく下回ったということもあり、看護職員確保対策検討委員会を設置しながら、受験者の確保や離職防止の両面で検討を進めてきた。例えば、職員採用試験の見直しや積極的な情報発信、県内就業への働きかけ、今年度から配置した教育担当専従看護師による若年層へのフォローアップ、代替職員の適正配置などをしてきたところであり、5月1日現在では、現場での正規看護職員数は26年度の3136名にたいし27年度は3186名と50名の増となっている。

【斉藤委員】
 看護師確保の方針には、勤務環境の改善、年次休暇の取得、超過勤務の縮減、正規職員による欠員補充、代替職員の適正配置というものがある。これは実際にやられているのか。
 看護師から聞くと、「年次休暇がとれない」「月9日夜勤も増えている」と本当に深刻な状況で、医労連が行った2100人分のアンケート、これは県立病院と岩手医大でほぼ8割だが、「仕事を辞めたい」が79.6%にのぼる。その一番の理由は、「人手不足で仕事がきつい」45.4%、「思うように休暇がとれない」43.3%、「夜勤がつらい」35.8%と、仕事の厳しさを訴えている。だいたい全国の調査では、「賃金が低い」というのが上位だが、それ以上に仕事の厳しさが岩手における実態である。
 看護師確保方策に出ている改善の課題はどう進んでいるか。

【職員課総括課長】
 看護師確保検討委員会の中で、代替職員の見直しということで、これについて見直しをして、産育休の部分に関してプラスしている。今年度においては、常勤換算で239名の産育休等の欠員にたいし246名の正規職員を代替職員として措置している。

【斉藤委員】
 全然現場はそう受け止められていない。産休に入っても補充されないのが生の声である。20病院6診療センターある中で。
 看護部門では、産前産後の休暇が52人、育休125人、短時間勤務者351人で常勤換算で62人になる。常勤換算で239人、必要な看護職員を確保すべきだと思う。そうなっていないのではないか。
 9日夜勤はどうなっているか。年次休暇の取得はどうなっているか。生理休暇を取得している病院はいくつあるか。

【職員課総括課長】
 9日夜勤の発生状況は、26年度は15病院で延べ425人となっており、25年度の延べ628人に比べ203人の減となっている。
 年次休暇は少し減っており、常勤換算での代替職員で措置している。

【斉藤委員】
 9日夜勤は本当はあってはならない。8日夜勤が原則なので。今年はわずか3ヶ月で266回、去年の半分以上夜勤が発生している。去年1年間より多い9日夜勤が出たところが二戸95件、久慈49件、大船渡48件。わずか3ヶ月で去年1年間より多い9日夜勤が3つの県立病院で発生している。
 年次休暇は、看護師の場合で平均7.8日、生理休暇をとっている病院は釜石と南光しかない。生理休暇がとれないような職場になっているのではないか。

【職員課総括課長】
 休暇に関しては、取得促進について毎年各病院にも通知してきているところであり、職員が年次休暇を取得しやすい環境づくりに今後も努めていきたい。

【斉藤委員】
 そういう適当なことだから看護師確保が進まない。
 今年度の採用試験は173人で昨年より応募者が減っている。だまっていたら来ない状況である。一番の問題は、休みがとれるか、職場環境・労働環境が良いかどうかである。そういう職場を率先してつくっていかなかったら必要な看護師確保はできない。そういう危機感をもって取り組んでいただきたい。
 中央病院の一番の矛盾は7対1看護体制である。この9月、7対1看護体制で看護師不足で、どのぐらいの病院から何人応援を受けているか。

【職員課総括課長】
 中央病院については、5病院8名の応援を受けている。

【斉藤委員】
 あの中央病院が7対1看護体制をとるために、釜石2人・山田2人・一戸・久慈・二戸から応援を受けている。1週間・2週間・1ヶ月と。看護師が足りないからそうなる。中央病院で他の病院から応援を受けなくてはならない状況でいいのか。自前で7対1看護体制を維持できるよう増員を図るべきではないか。

【医療局長】
 中央病院は前年度と比較し6名の増員となっているが、産育休等の発生により、9月においては7対1夜勤に必要な配置がなかなか難しかったと。
 産前産後休暇や育児休暇の取得者にかかる代替職員の正規職員による配置を来年度さらに拡充する予定である。そうした強化を行い、ご指摘のあった年次休暇取得のための提言も委員会からいただいているので、そうした勤務環境の改善にも取り組みながら、看護師が働きがいを持って働ける職場づくりを進めていく。

【斉藤委員】
 思い切ってやっていただきたい。中央病院が矛盾の集中点であり、胆沢病院でもやはり7対1体制で、外来から病棟へ、病棟から外来へしょっちゅう動かされると。7対1やるんだったら、それに必要な看護師を確保してやると。これは看護師のためにも患者の安全のためにも絶対重要である。
 いま看護師が増員されているといっても、大槌病院の入院体制のために今年兼務発令で採用している。実際の数は本当にわずか。来年は山田病院の看護師の分も採用しなければならない。そうした点からも思い切って、看護師に魅力のある県立病院になるよう頑張っていただきたい。

・無床化された地域診療センターについて

【斉藤委員】
 無床化された6地域診療センターの方々の地域住民アンケートというのが、地域医療を守る連絡会の方々により取り組まれた。3255通の回答が寄せられ、声の欄を見ると、「やはり地元で安心して入院できるベットがほしい」という切実な声が寄せられている。「近くに入院できる病院がない」というのが54%を占めた。「土日夜に具合が悪くなったら遠くまで行かなければならなく不安だ」が45%だった。
 医療局長にもこのアンケート結果は届けられていると思うが、この地域住民の声をどのように受け止め対応しようとしているか。医師不足の状況で簡単にはいかないかもしれないが、しっかり地域住民の声を受け止めて取り組む必要があるのではないか。

【医療局長】
 地域診療センターが、地域の県民の命を守る地域診療の拠点であるということは十分認識しており、今回直接アンケート結果をいただき、紹介のあった声の欄も全て拝見させていただいた。まさにアンケートで寄せられた声は切実なものと受け止めている。
 県立病院の医師不足ということで、なかなか地域病院に医師が回らないという状況にあるので、今後においても医師の確保に努めるとともに、県立病院全体での一体的な運営を行うことで医師不足解消に取り組んでいきたい。