2015年10月28日 決算特別委員会
農林水産部(林業・水産)に対する質疑(大要)
・TPPの林業・水産への影響について
【斉藤委員】
TPP大筋合意の林業・水産に関わる内容と、本県林業と水産への具体的な影響をどう把握しているか。
水産も林業も、現状でどれぐらいの国内の輸入額・率になっているか。
【企画課長】
林産物については、関税が16年以降に撤廃されるということになっており、安価な輸入品が大量に国内市場に流入されるといった場合には、国産材や県産材の価格の下落が懸念される。
水産物については、TPP参加国から日本に輸入されている約350品目のうち、ワカメ・コンブなどの海藻類を除き関税が撤廃されるとされており、同じく安い輸入品が大量に国内市場に出回るといったことになると、価格の下落となり漁業経営への影響が心配されるといった状況である。
【林業振興課総括課長】
26年の国の木材輸入量は5105万4000立方メートルということであり、国内木材総需要の7割を占めている。丸太・製材・合板等、パルプチップ、いずれも10年前と比較すると減少傾向にある。
【水産担当技監】
輸入量・額だが、26年度の我が国全体で254万トン・1兆6569億円である。
【斉藤委員】
農業はもちろん、林業・水産に関わっても致命的な打撃を与える。
TPP交渉の初期に、岩手県が国の基準に基づいて試算したときは、林産物で10億円の生産額の減少、水産物は106億円の減少。経済波及効果を含めると合わせて157億円と試算された。16年経ったら関税撤廃である。ほぼ当初試算した規模での影響が考えられるのではないか。
【企画課長】
影響額については、いろいろとこれから国でも試算するということで、関税撤廃ということにゆくゆくはなるということではあるが、国の動きも見ながらきちんと試算したい。
【斉藤委員】
大事なことは、TPPは「大筋合意」で、決まってもいない。これからである。アメリカの動向を見ると、大統領候補の一人クリントン氏も反対だと。カナダでは政権が交代した。アメリカには90日ルールがあり、批准する前に議会に説明しなければならない。これはまったく見通しがない。こんな状況で、日本政府は譲歩に譲歩を重ねて丸裸になったような交渉をしたが、今までのように国内対策を求めるだけではこの問題は解決できない。この影響を徹底して明らかにして、交渉からの撤退・調印中止を視野に入れて国に対して求めていくべきではないか。県も対策本部をつくったので、そういうスタンスで対応すべきである。
【農林水産部長】
やはり影響がどのようなものなのかと、まず国がしっかり説明すると。そこが明らかでない段階で、TPPからの撤退・調印中止を要請するのは次の段階だろうと思っている。
【斉藤委員】
私は「視野に入れて」と言ったので。そもそも、常識的に見たら農家はみんな国会決議違反だと思っている。重要5品目でさえ3割、農林水産物で81%関税撤廃である。こういうのを国会決議違反と言わずして何と言うのか。政治的な解決は国会かもしれないが、やはり地方の立場、農家・漁民の立場から見たら国会決議違反は明らかである。
そして、国は食料自給率39%を50%にすると言っているのに、上がるわけがない。これは国益に反する。
地方創生と言っているが、農林漁業が衰退して地方創生できるのか。こんな地方に背を向けた、国益に反したTPPは許せないと思うが、国の施策からも逆行・矛盾するやり方ではないか。しっかり撤退・調印中止を視野に入れて、提言や問題提起すべきではないか。
【農林水産部長】
県でTPP対策本部を設置したところである。ここでは、影響の調査や分析、それにかかる対応ということで、まず一義的には影響の調査分析が先行されるものと思っている。
TPPについては、さまざまな意見がある。たしかに農林水産分野に着目すると、影響・懸念は非常に大きいと思っている。それ以下については幅広く国民的議論の中で国会で判断していただきたい。
・漁業・水産業の復興状況について
【斉藤委員】
震災前と比べて、漁船の確保、養殖施設の整備、漁獲量と漁獲高はどのように推移しているか。
ワカメ・コンブの生産量と生産額はどうなっているか。
サンマ・サケの漁獲量・漁獲高とその状況、今後の見通しはどうか。
【漁業調整課長】
震災前の漁船登録数は12303隻にたいし、9月末現在で補助事業で整備した漁船と震災を免れた漁船等を合わせて、稼働可能漁船数は10582隻となっている。
震災前の養殖施設は26514台にたいし、14383台の整備が完了している。
魚市場の水揚げについては、20年〜23年の3カ年平均で17万トン222億円にたいし、26年度は13万8000トン、228億円となっている。
ワカメ養殖状況は、27年の生産量は15222トンで生産金額は23億1000万円、震災前の3カ年平均と比較し生産量で69%、生産金額で55%となっている。
コンブ養殖は、生産量が6729トンで生産金額は8億5000万円、震災前の3カ年平均と比較し生産量で59%、生産金額で56%となっている。
サンマについては、27年10月20日現在での県内の産地魚市場への水揚げは、サンマ棒受網漁船の漁獲量は水揚げ量で12000トンで前年同期比で45%、水揚げ金額は26億円で前年同期比80%となっている。
サケについては、水揚げ量が1300トンで前年同期比で95%、水揚げ金額は7億円で前年同期比102%となっている。
【斉藤委員】
漁船の確保と養殖施設の整備は、昨年度の実績でどのように整備されたのか。
ワカメ・コンブについては、今年度は3カ年平均の68.8%で、生産額は55.2%なので、価格はかなり落ち込んでいるのではないか。これは風評被害と合わせてどのように原因と対策を考えているか。コンブも生産量で59.4%、生産金額で56.2%、生産量は落ち込み価格はさらに落ち込んでいる。
サンマも今年大不漁で、この原因と対策について。特に一番被害を受けているのは、大船渡を中心とした水産加工だと思う。ここはどのように対応しているか。
【漁業調整課長】
漁船については、25年度末で6324隻を整備しているので、26年度は152隻増となっている。養殖施設については、25年度末で17329台整備され、26年度は48台となっている。
ワカメについては、今年・昨年度の収穫シーズンに、塩水が沿岸域まで接岸し、非常に生産面では不利な年だったということで、生産量もそうだが品質的にも良いものではなかったということで単価が下がっているものと認識している。
コンブについては、同じようにワカメの施設を使って養殖しており、岩手県の養殖コンブが生産される前に、北海道のコンブが出てきて、それらの影響により生産量なり金額がかなり左右されるということで、このような金額になっていると認識している。
サンマについては、サンマは太平洋に広く分布する魚種で、サンマが日本で好不漁になる大きな原因は、資源量そのものもそうだが、漁場がより陸地に近いところに形成されるのか、漁場が濃いものであるのか、魚体の型が良いなどの理由で大きく左右される。ただ、水産庁の報告等では、資源量そのものも減少には向かっているということで、そのようなことが重なり、サンマは不漁が続いていると認識している。水揚げそのものの対策については、対応のしようがないということで、近くに濃いサンマの群れが寄ってこないと、岩手では水揚げが少ないという状況なので、それについては対応できない。ただ、岩手県水産技術センターの岩手丸が、先週頭に陸前高田の約5マイル沖で試験操業し、その頃にサンマの群れが三陸に近づいてきたのもあり、5トン強ほど水揚げした。すると、小型漁船等が集まってきて、水揚げが少し活気づいたということがあったので、そういう情報提供などを漁業者に提供していきたい。
水産加工業への影響だが、今年のサンマは魚体も小さく量も少なく単価が昨年度と比べ2倍近く高く、加工業はなかなか厳しいと考えている。加工業者の今後の対応をどうするか県も一緒になり考えていきたい。
【斉藤委員】
災害復旧費で、共同利用漁船復旧支援対策事業費が6億8000万円、水産業共同利用施設復旧費が16億円。この中身は何か。
サンマの不漁で、河北新報の社説で、「水産総合研究センターによれば、昨年の北西・太平洋のサンマの資源量は、約253万トンで03年の502万トンのほぼ半分の水準に悪化している」と。本当に深刻だと思う。資源量が半減しているところに大きな問題がある。こうした中で、台湾が大型漁船で公海で先獲りする、中国もそこに進出し始めていると。国際的な資源管理をやらないと、サンマの未来はなくなってしまうのではないか。
【漁業調整課長】
水産業経営基盤復旧支援事業費の内容だが、共同利用施設となる養殖施設などの整備にかかるものである。これにたいし、水産業共同利用施設復旧支援事業については、このような施設の中の基地整備や修繕となっている。
【水産担当技監】
国の方の調査や報告を見ていると、たしかに沖合で台湾・中国漁船などが漁獲しているということで、水産庁などが各国に資源管理を呼びかける動きをつくって進めている。我々としても、一緒になり本県のサンマ漁にどういう影響があるか、その辺もしっかり押さえながら対応していきたい。
・軽米町における大規模太陽光発電計画について
【斉藤委員】
林地開発協議書が出ているようだが、その中身はどうなっているか。
山林を伐採して太陽光発電を大規模にやると。軽米町は、町全体の森林面積の10%まで開発可能だという計画まで出しているが、環境影響評価などきちんとやられているものなのか、やれるものなのか。県の対応についてお聞きする。
【森林保全課総括課長】
林地開発協議については、軽米町長から今年9月4日付で、農山漁村再エネ法に基づく林地開発にかかる同意協議の提出があった。協議については、軽米町大字山内地内において太陽光発電施設を設置しようとするものであり、事業区域面積は155ヘクタール、開発行為にかかる森林面積は約77ヘクタールとなっている。
県の対応については、提出があった同意協議については、現在林地開発により災害が発生しないよう、森林法に基づく審査を継続している。また農山漁村再エネ法において、協議に同意する場合は、県の森林審議会の意見を聞くことになっていることから、県知事から今回の同意事案について、岩手県森林審議会長に諮問したところであり、同会長からは、岩手県森林審議会林地保全部会を11月19日に開催する旨通知されている。
環境影響調査については、太陽光発電については、環境評価法および岩手県環境評価条例のいずれにおいても、環境評価調査の対象外となっている。軽米町が農山漁村再エネ法に基づき策定した、軽米町再生可能エネルギー発電の山村活性化計画において、太陽光発電において開発面積が10ヘクタール以上となる場合については、生物の多様性を確保するため、独自の環境調査を実施することが明記されている。今回の案件についても、10ヘクタール以上となることから、土地の造成、森林の伐採、調整池などの設置、周辺環境への影響調査を実施すべく、町から計画業者へ要請し、環境影響調査を実施している。