2015年10月29日 決算特別委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・いじめ対策について
【斉藤委員】
昨年度の教育問題の最大の事件は、滝沢市内における中学生のいじめ自殺だった。第三者委員会が設置されて、今年の3月末に調査報告書が出されているが、どういう調査が実施され、どういう調査結果を示したか。今後の教訓にすべき課題はどう提起されているか。
さらに、残念ながら今年4月5日に、矢巾町内でも中学生のいじめ自殺事件が発生した。第三者委員会の取り組みはどのように進められているのか。
【生徒指導課長】
滝沢市の第三者委員会については、昨年9月に設置され、20回の委員会を開催し、生徒や教職員向けのアンケート・聞き取り、ご遺族等への面談など6ヶ月におよぶ調査を実施している。調査の結果、からかう行為、頭や背中を叩く行為を含む2件についていじめと認定した。自殺との関係の考察では、「いじめが直接的原因になったととらえることはできないが、いじめと自死との間に、ある一定の関連性があったものと考えられた」と見解を示している。今後の教訓については、調査報告書では4つの提言がなされ、その1つとして、「個々の生徒を理解することの重要性の再認識」が示され、その具体として「表面的な言動から生徒を理解するのではなく、個々の生徒の発達段階や個別特性を踏まえた、多面的・重層的な生徒理解が改めて求められる」と記されている。
矢巾町における学校・町教委の対応だが、学校では4月26日に調査結果を終え、その中身の一部を紹介すると、いじめが自殺の一因であったとする調査結果を遺族等に報告している。この後になるが、町教委としては、総合教育会議を開催したり、もしくは町長部局との教育委員会との情報共有等の連携を図りながら、条例を設置し、第三者委員会を9月7日に第1回目の初会合を開き、現在は9月末にもう1回開催し、現在進行中だと。当初の予定では、今年度中に調査結果を終えたいという予定を立てていたようだが、その通りいくかどうかは未定だという情報を得ている。
【斉藤委員】
滝沢市の第三者委員会は6ヶ月やって、徹底した調査が行われたと思う。ただ、その中身は、いじめがわずか2件しか認定されなかった。いじめと自死の関係は一定は認めたが、直接的要因ではないと。これはきわめて不十分だと思う。だとしたらその他の原因は何なのか、それが解明されないといけない。ただ、提言で一番大事なのは、答弁にあったように、「個々の生徒を理解することの重要性の再認識」すると提起され、「実際に生徒が見聞きしていたいじめが少なからず存在していた。しかしこの情報や見聞についての教職員のとらえ方は、生徒間でよくある、からかいやイタズラ等といった認識であった。小さなサインを軽視しないことがいかに重要であるか―」と。この教訓が生かされていたら、矢巾の事件は食い止めることができたと思う。残念ながら生かされなかった。その点で、2年連続という重大な事態になったわけだが、それだけに、すべての学校がこの2つの事件の教訓を深く受け止めていじめ対策に取り組まなければならない。
そこで、昨年のいじめ調査の再調査結果がつい先日発表された。いじめの認知件数は1774件で、前年度の倍以上になったが、いじめのない学校はどのぐらいあるか。
【生徒指導課長】
小学校が345校中、今回いじめと認知した学校が197となるので148校となる。
中学校が169校中、110校がいじめを認知しており59校がゼロとなる。
高等学校は76校中、54校がいじめを認知しており22校がゼロとなる。
特別支援学校は14校中、8校がいじめを認知しており6校がいじめの認知がゼロとなる。
【斉藤委員】
小学校では再調査で197校がいじめを認知したが、148校がいじめゼロと。まだいじめ認知の徹底というのは途中ではないか。文科省の外郭団体の国立教育政策研究所の滝充さんが「『いじめはどの学校でもあって当然だ』という考え方がなかなか浸透しない。いじめの認知件数がゼロや少ない場合は見直しを考えるべきだ」「小学校5年生のときから中学校卒業まで600人以上を6年間を追跡した調査で、仲間はずれや陰口の被害経験のある子ども、加害経験のある子どもがともにほぼ9割に上った」と。これだけの事件があって、いじめの認知がされない学校がまだまだ残されているということは、引き続き徹底すべきことではないか。
いじめ再調査の結果の中で、いじめの対応は、冷やかし・からかい・悪口・脅し文句・嫌なことを言われる―これが一番多かった。しかし、この悪口や嫌がらせで自殺に追い込まれているケースが多い。今回もそうだと思うし、天童中学校もそうだったように、身体的暴力はなかったが、悪口で孤立化され自殺に追い込まれると。この問題は絶対に軽視してはならないと思うがいかがか。
【生徒指導課長】
今回の再調査の結果によると、ご指摘のいじめの対応の部分での冷やかし・からかい・悪口・脅し文句を言われるというのが45.4%と、ここ何年間かはだいたい5割弱ぐらいの数字になっており、これが学校のいじめの対応の中で一番多いということになる。いずれこれは、重い軽いということはないわけで、そのような積み重ねが重大事件につながるということは当然考えられるわけで、ここはやはり学校としてもしっかり認知しながら取り組まなければならないものと考えている。
【斉藤委員】
総合教育センターがつくった「岩手いじめ問題防止対応マニュアル」のダイジェスト版、やはりいじめの解釈が重要で、いじめの基本認識というところでいろんなパターンを出しており、「子どもが自分自身で解決を練習すべきトラブル」「教師が介入して解決を練習すべきトラブル」「いじめとして扱いその基準を教えるべきトラブル」「犯罪として適切な措置をすべきトラブル」と。これは解釈で、いじめというのは、経過を見ていじめと認定できるケースがたくさんあると思う。やはり小さなサインを継続的に把握して共有して、いじめをなくしていくと。そういう点では、きわめて分かりにくい。今回の文科省の定義や再調査も含めて、もっと分かりやすいものにすべきである。
今回の再調査で、いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する重大事態の発生件数がたった2件だった。1つは矢巾の事件、もう1件は何か。これについてはなぜ公表されないのか。学校全体で取り組んでいるのか。生徒や保護者にも明らかになっているのか。
【生徒指導課長】
ご指摘の1件については、高等学校におけるいじめが原因で不登校になったという事案であり、これについては、県教委も学校に関わりながら、保護者等とも話しながら、現在対応している。
【斉藤委員】
不登校になったきっかけがいじめと考えられる件数がどうなっているか。先ほどの質疑で、小中高で1288人が不登校と。このうち、いじめがきっかけになった件数が何件あるか。
滝沢市にしても矢巾町にしても、徹底して情報公開すると。生徒自身、保護者全体が一緒に協力して、重大事態は打開するべきである。当事者の保護者だけ話をするだけでは、本気になって学校を変えようとしてないのではないか。
【生徒指導課長】
この事案については、PTA全体の会でも話題にして取り組んでいる。
不登校のきっかけとして、いじめであるという風に回答している人数は、26年度で小学校が2件、中学校9件、高等学校が3件となっている。
【斉藤委員】
小学校が2件、中学校9件、高等学校が3件、これはなぜ重大事態と認定されなかったのか。教育長の見解もお聞きしたい。
【生徒指導課長】
先ほどの高校の件はこの3件に入っているが、その他のきっかけについては、これがずっと長期的に休んだことの本当のきっかけにいじめがなっていないという風に、当該学校もしくは当該市町村で判断したということで、いじめの重大事態には含めないという見解に至った。
【教育長】
今回の再調査について、いずれ本県での自殺事案がきっかけとなり再調査がなされたということで、重く受け止めなければならない。
なによりも、このような自体を再発させないということに教育界をあげて全力で取り組んでいきたい。