2015年12月7日 12月定例県議会・本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)
【高田議員】
日本共産党の高田一郎でございます。
1.TPPと岩手の農業について
まず、最初にTPPと岩手の農業について質問します。
安倍政権は13年2月、オバマ大統領との会談で「一方的にすべての関税撤廃をあらかじめ求められるものではない」との約束でTPP交渉に参加をしました。そのもとで衆参の農林水産委員会では「米、麦、牛肉、豚肉、乳製品などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象にすること」「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も認めないこと」「交渉により収集した情報は速やかに報告すると共に幅広い国民的な議論を行うよう措置する」との国会決議を行いました。しかし、大筋合意した内容は、「除外または再協議の対象」どころか、米の78400tの別枠輸入を認め、牛肉は、関税率を38.5%から9%へ、豚肉は低価格品でキロあたり482円の関税が50円へ、高価格品は関税率4.3%がゼロへ、乳製品も7万トンの輸入を認めるとともに、重要5品目では586品目のうち約3割に当たる174品目で関税を撤廃するものです。
今回の大筋合意は明らかに国会決議違反と考えますが、知事はどう受け止めているのでしょうか。
次に、本県の農業への影響であります。農林水産省は11月4日に影響分析を発表しました。そこで示されたのは、多くの品目は「輸入急増は見込みがたいもので影響は軽微」というものです。この影響予測はきわめて楽観的です。農家からは「生産費にもならない米価、飼料、肥料などの経費増大で規模拡大、コスト低減の努力が間に合わない」と悲痛な声が寄せられ、水産関係者は、「牛肉の輸入が増えれば魚の消費が減少し水産物価格が下落する」と危機感を表明しています。今度の大筋合意についての影響をどう見ているでしょうか。北海道などではすでに影響を取りまとめ公表しています。岩手県も早く影響を示し国に対応を求めるべきですがいかがでしょうか。
岩手の農業生産額の2433億円のうち畜産は1352億円(13年)55%を占め、全国4位の畜産県になっています。一番の打撃を受けるのが畜産分野であります。畜産農家から「素牛価格が70万円では飼料代すら稼げない、『俺の代だけだ』とみんな言っている」と離農を考える農家が広がっています。畜産県として深刻な実態をどう把握しているのでしょうか。肥育農家への素牛導入への助成など県としても再生産対策への支援を行うべきですがいかがでしょうか。
現在の農業の危機は、農産物の価格維持政策を大幅に削減し生産費にもならない農産物価格になっているからです。しかし、農業所得に占める直接支払いは、日本は15.6%で主要国の中で最低、米国は日本の1.69倍、フランス、イギリスは5〜6倍となっています。農業生産額に対する農業予算は27%と主要国の中で最も少ない国となっており、「農業の過小保護」の国となっています。関税撤廃・引き下げではなく、価格保障・所得補償こそ国に求めていくべきですがいかがでしょうか。
飢餓人口の増大、地球温暖化による農地の減少などで、食糧生産の増大を国連は世界に呼びかけているときに、国内農業を衰退させて一層の輸入大国に進むことは食料主権を求める世界の流れにも逆行するものです。食料自給率を45%まで引き上げるとする「食料・農業・農村基本計画」にも逆行するものです。
大筋合意をしましたが、TPP交渉は決着したわけではありません。協定調印、批准、国会承認があります。政府にTPP協定書の作業の撤退・調印中止を求めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
【達増知事】
TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業をはじめ、県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。このため、交渉にあたっては、25年4月の衆参両院農水委員会における決議も踏まえて、十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くした上で慎重に判断することなどについて、国に対して繰り返し要請してきたところだが、今般そうした説明や議論がないまま大筋合意がなされたことについては残念である。今回の大筋合意にあたり、国からは具体的な影響や対策など全容が明らかにされていないので、それらを早期に明らかにするよう求めていく。
協定書の作業の撤退・中止については、今後TPP協定の批准発効には、交渉参加国による署名と国会承認手続きを経る必要があるが、今般政府が決定した総合的なTPP関連政策大綱の内容を見ると、農林水産業の体質強化対策と主要5品目関連の経営安定対策等が示されるなど、これまで要請してきた内容が一定程度盛り込まれていたものの、国民生活に及ぼす影響や具体的な対策などの全容が明らかにされてはいない。このため県としては今月2日、関係省庁に対して、TPP協定に関する合意内容や農林水産業・商工業・国民生活等に及ぼす影響について十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くすこと、大綱に示された対策を早期に具体化するとともに必要な予算を確保することなどの要請をしたところであり、協定の全容とその影響、国による具体的な対策を早期に示すよう引き続き政府に求めていく。
【農林水産部長】
大筋合意の影響について。TPP協定が発効し、安価な輸入農地産物の輸入が増大した場合には、米や牛肉・豚肉の価格下落が懸念されるなど、本県農業への大きな影響が見込まれる。国では、品目ごとの農林水産物の影響を示したところだが、政策的な対応策などを踏まえた経済効果分析結果については、年内に公表することとしている。県では、国の影響分析や大綱等を踏まえ、想定される主な農林水産物の当面の影響について取りまとめることとしているが、農林業業者等から不安の声が多く寄せられていることなどから、近々中間とりまとめを公表することとし、現在作業を進めている。これらの影響分析結果なども踏まえ、引き続き国に対し必要な対応を強く求めていく。
本県の酪農および肉用牛経営は、配合飼料価格の高止まり等により、生産コストの削減が困難な状況で、特に飼育農家は全国的な繁殖雌牛の減少により、子牛価格の高騰から収益性が悪化するなど、厳しい経営状況となっている。このため県では、優良雌牛の導入や畜舎等の整備に加え、公共牧場と預託施設であるキャトルセンターとの一体的活用を支援してきており、さらに今年度からは、県独自に増頭意欲のある肥育農家にたいし、飼育素牛の導入に必要な経費の一部を補助しているところであり、引き続き経営の安定化が図られるよう支援していく。
農家の所得対策について。本県農業農村の振興を図っていくためには、農家が将来にわたり安心して営農できるよう経営の安定が重要である。国では、経営の安定化に向けて、これまで数量調整などによる価格支持政策を中心として進めてきたが、近年経営所得安定対策や農地維持のための日本型直接支払いなどの所得補償政策の充実を図ってきており、平成24年度の農業産出額に占める農業予算の割合は約33%となっている。現在国では、農業経営全体の収入に着目した収入補てん制度の導入に向けた検討を進めており、その検討状況も注視しながら、本県農家の経営安定を図る上で、効果的な対策が講じられるよう国に求めていく。
2.東日本大震災津波からの復興について
【高田議員】
次に、東日本大震災津波からの復興の課題であります。
東日本大震災から4年9ヶ月になろうとしており、5度目の厳しい冬を迎えています。いまなお、応急仮設住宅には10月末現在18370人、みなし仮設を含めると23469人、ピーク時の55%であります。ある被災者は、「建設費が値上がり、資金が足りない、仮に家を建ててもその後のくらしが不安で、胃が痛くて眠れない。年のせいかと思って近所の方に話したらみんな『俺もだ俺もだ』」といわれたというのです。いま多くの被災者が眠れぬ夜をすごしています。知事は、12月までとなっている被災者の医療費などの免除措置を継続するとともに、被災地福祉灯油を予算措置し5年連続実施となりました。被災者を励ますものです。被災者一人ひとりの生活再建と生業の再生に取り組むこと、引き続き県政の最大の課題であります。
知事に質問します。
・住まいの再建について
第一に、住まいの再建についてであります。
戸建ての災害公営住宅は入居の5年後に買取ができることになっています。しかし、被災者生活再建支援金(加算支援金)は2018年4月10日までとなっており、申請期限の延長がどうしても必要です。野田村の被災者からは「買い取り価格が当初の800万円から1300万円と村から言われ、申請期限を延長されなければ購入できない」と訴えられました。被災者生活再建支援金の500万円への拡充と申請期限の延長を国に求めるべきです。同時に県と市町村で行っている被災者住宅再建支援事業100万円も30年度までとなっており、申請期限の延長を行うべきですがいかがでしょうか。
県がおこなった「内陸・県外に移動して避難する被災者アンケート」結果では、「現在地に定住したい」が53.1%、「現在住んでいるみなし仮設住宅に引き続き居住したい」は22.9%となっています。被災者の半数は65歳を超えているだけに住み慣れた地域で生活したいと願っています。現在のみなし仮設住宅を災害公営住宅として対応することが最も合理的で被災者の声にもこたえるものですがいかがでしょうか。また、内陸に避難する被災者の災害公営住宅への希望は16.7%となっています。沿岸市町村とはどんな話し合いが行われているのでしょうか。整備の見通しについても伺います。
内陸で住宅被害を受けた被災者のみなし仮設の期間は5年間となっており、期限内に住宅再建できない被災者、民間賃貸住宅で避難する被災者にとってはまもなく家賃が発生します。沿岸被災地と同じように自立再建できるまで災害救助法が適用できるように国に求めていくべきですがいかがでしょうか。
【達増知事】
支援金の拡充については、持ち家による再建は復興に弾みをつけることであるので、これまで繰り返し国に対して増額を要望してきており、今月2日にも高木復興大臣に改めて要望した。国では、資材高騰等の物価上昇等に対して、災害公営住宅の建設費を含む公共事業費やグループ補助金の額については引き上げているので、被災者の住宅再建支援についても同様に扱うべきと考えられることから、今後も増額について国に対して強く要望していく。
被災者生活再建支援金および住宅再建支援事業の申請期限の延長については、住宅再建の前提となるまちづくりの進捗状況等を踏まえて、被災者の方々が安心して自立・再建できるよう検討を進めていく。
みなし仮設住宅の災害公営住宅化については、みなし仮設住宅は物件ごとに築年数や面積、設備、利便等の条件が大きく異なるので、災害公営住宅としての利用には公平性の観点から問題があると考えている。また、みなし仮設住宅は広域に点在しているので、公営住宅としての管理が難しくなるほか、アパート等の一部だけが公営住宅となることで維持・修繕にも制約が生じる。現在、内陸での災害公営住宅の建設を含めた具体の支援策について、関係市町村から意見をうかがっているところであり、内陸に定住を希望する方々の住宅再建にかかる不安を解消するために必要な取り組みを行っていく。
みなし仮設住宅を含めた応急仮設住宅の供与期間は、内陸・沿岸に関わらず、災害公営住宅の建設や面的整備に時間を要する場合、市町村と県が協議して、国の同意を得て1年ごとに延長しているものである。一関市および奥州市で被災された方のみなし仮設住宅については、5年間で供与期限が終了となるが、災害公営住宅等に入居が決まり完成を待っている方々については、入居が可能となるまでの間は特定延長という方法により延長している。県では、供与期間の終了時期については1年前に公表し、公営住宅への入居あっせんや生活再建支援金の制度説明と、被災者の方々が一日も早く恒久住宅へ移行できるよう市町村と連携して支援してきたところであり、引き続ききめ細かな支援をしていく。
・被災者の見守り支援について
【高田議員】
第2に、被災者の見守り支援です。
社会資本復旧・復興ロードマップでは、災害公営住宅は28年度までに5074戸、88%が完成の見通しとなっており、ここ2年で多くの被災者が応急仮設住宅から災害公営住宅へ移動する時期となっています。応急仮設住宅に取り残される孤独感、集約化による不安、災害公営住宅への引越しに伴う経済的な負担、マンション型の高層集合住宅という孤立感も強まります。阪神大震災では20年間で孤独死は1097人となり、その原因が@低所得、A慢性疾患、B社会的孤立、C劣悪住環境です。阪神淡路大震災の教訓を踏まえ、これ以上岩手で孤独死を出さない被災者に寄り添ったきめ細かな支援が必要です。生活支援相談員は、各社協に178人配置され、月約8000件の相談件数となっていますが、充分な体制になっているのでしょうか。睡眠障害や生活習慣病をもつ被災者が多くなっており、仮設住宅や災害公営住宅などの活動範囲も広がっています。災害公営住宅ではすでに4人が孤独死となっており、一人ひとりの見守りとコミュ二ティの確立が必要です。災害公営住宅への支援員の配置を提起してきましたが、県は、「常駐できることは制度上可能であり、被災者に寄り添った対応となるよう市町村に要請している」と答弁していました。市町村の受け止め、対応はどうでしょうか。すでに完成している災害公営住宅への集会室、備品配備状況はどうなっているのか伺います。
【保健福祉部長】
生活支援相談員は、県社協が各市町村社協の意向を踏まえながら地域の実情に応じて適切な配置に努めてきたところであり、今年度は188人の計画に対し、10月末で178人の配置となっている。今後においても、被災者の生活の変化にともなう見守りや相談のニーズに応じた配置となるよう、県としても引き続き必要な支援を行っていく。
【復興局長】
災害公営住宅への支援員の配置にかかる市町村の対応等について。県では市町村に対し、地域で必要とされる見守り等の支援体制が総合的に確保されるよう要請しているほか、復興庁においても、市町村にたいし、平成28年度に拡充予定の被災者支援総合交付金を活用し、災害公営住宅も含めた一体的な支援が行われるよう直接依頼している。これらを受け、市町村では、来年度に向け、現在応急仮設住宅や災害公営住宅などに住んでいる被災者の見守り体制について、総合的に検討を行っている段階と聞いている。
【県土整備部長】
災害公営住宅の集会室の備品について。釜石市の平田団地と大船渡市の上平団地については、ストーブ・ガスコンロ・机・座布団等の備品の配備が完了している。宮古市と山田町の9団地については、一部の備品を除き配備を終えており、残る備品も順次納入される予定である。10月に入居を開始した大槌町の屋敷前団地については、配備する備品について入居者の方々や町と調整している。
・水産加工業の振興策について
【高田議員】
第3に、水産加工業の振興策です。
東北経済産業局が実施したグループ補助金交付先アンケートでは、東北地域で44.8%の事業者が震災直前の水準以上に売上が回復する中、水産・食品加工業は最も低い25.9%となっています。大船渡市の水産加工会社では「サンマの水揚げが前年比5割、原材料価格は170%増となっている」と訴えられました。沿岸地域の産業と雇用を支える水産加工会社の経営が大変になっていますが、県としてどう把握しているでしょうか。販路を失った事業者では販路開拓、新商品開発に難儀しています。「今年に入り商談会、展示会など8ヶ月間で150日間かけまわり交通費が震災前の10倍、840万円となった」会社もあります。新商品開発、販路開拓へ更なる支援を行うべきではないでしょうか。
水産加工業の雇用は63%が震災前まで回復しておらず、売り上げが回復しない要因になっています。有効求人倍率は2倍を超え復興需要で建設業に人材が流失しています。外国人研修生の確保も大事な課題ですが、何よりも、地元の高校生にとって魅力ある職場環境にすることが大事ではないでしょうか。人材確保の現状と県の対策、対応についてお聞きします。
【商工労働観光部長】
県が本年8月に実施した被災事業所復興状況調査において、水産加工業については、業績が震災前と同程度以上と回答した割合が42.6%だが、前回2月と比べ14.6ポイント増加しており、着実に回復してきているものと受け止めている。また企業訪問によるヒアリング結果によると、経営上の課題として、人材の確保・育成をはじめ、魅力ある商品づくりや、販路開拓などを挙げる事業者が多く、これらの課題への対応が必要だと認識している。
県では、水産加工業の復興を重点的に推進するため、沿岸各地域で専門家による個別相談会を開催し、売れる商品づくりを支援している。また、販路開拓に向けては、県内外で食の商談会を開催するとともに、岩手希望ファンド等の助成事業により、商談会等への出店を資金面で支援している。さらに大手量販店等と連携した岩手フェアを各地で開催しているほか、今年度新たに沿岸の商工会議所や、岩手産業振興センターに販路拡大アドバイザー等を設置したところであり、引き続きこうした取り組みを充実させ、水産加工業の再生を着実に推進していく。
沿岸4公共職業安定所分の雇用保険被保険者数では、産業全体では平成27年10月は66495人と震災前の23年2月を上回る状況となっているが、水産加工業を含む食料品製造業では1455人減少しており、水産加工業関係の有効求人倍率は他の産業よりも高い状況となっている。県としては、水産加工業の人材の確保対策として、DVDを活用して水産加工現場のイメージアップを図るとともに、中高生やその教員を対象とした事業所見学会や、若手社員向けの職場定着研修会の開催、採用力強化に向けた企業PRスキルの向上などの支援を行ってきた。また人材の確保のためには、雇用条件の改善も重要なので、今年度においても岩手労働局と連携し正社員転換や待遇改善等について経済団体等への要望を行っている。
・仮設店舗への支援について
【高田議員】
第4に、仮設店舗への支援についてです。
仮設店舗に入居している商業者などは577事業所、県が実施した調査では本設再開予定は71%となっています。少なくない事業者が仮設店舗での継続を求めています。また、テナントで被災した事業者はグループ補助金や県の中小被災資産復旧費補助を活用できず再建支援を求めています。釜石市では単独での支援を始めましたが、県としても補助対象外の事業者にも支援すべきと考えますがいかがでしょうか。
仮設店舗の撤去費用への補助は5年以内となっており、まもなくこの時期を迎えようとしています。面整備などの遅れなどで本設再開できない店舗等はどのくらいになっているのでしょうか。釜石市では撤去費用が2億円と試算しています。撤去費用について国の対応はどうなっているか伺います。
【商工労働観光部長】
仮設店舗については、特区制度による期間延長が可能であるほか、中小企業基盤整備機構が整備し、市町村に譲渡した施設店舗にあっては、一般建築物として長期間利用するために必要な修繕費等に対する国の助成制度もあり、所有者である市町村が地域の実情を踏まえながら、関係者と十分協議し対応していくものと考えている。テナントで被災した事業者については、所有していた設備等の復旧費用はグループ補助金や県単補助金の対象となる。また、大家である被災事業者と同一のグループを組む場合や、組合等が設置する協同店舗に入居する場合は、建物を含めてグループ補助金を利用して復旧することが可能である。県ではこうした補助制度に加え、市町村等と連携して専門家派遣などによる本設移行に向けた事業計画の策定や、商店街の賑わい創出のためのイベントなどに支援してきたところであり、引き続き支援に取り組んでいく。
撤去費用については、面整備の遅れなどを理由として、本設再開していない店舗等については把握していないが、8月に実施した被災事業所復興状況調査によると、本設再開を予定している事業所のうち、用地確保を本設再開の課題としているのは34.2%となっている。仮設店舗の撤去費用については市町村に負担の生じることのないよう、完成後5年を超える施設の撤去等も助成対象とすることについて、国に対して要望を行っており、今後も引き続き要望していく。
・原発被害を受けたしいたけ農家への対策について
【高田議員】
第5に、原発被害ではしいたけ生産農家が大きな被害を受け、いまも出荷制限が続いています。一部再開で希望の光が見え再開を希望する生産農家も出ています。しかし、国はいまだに汚染された落葉層の処理方法を示さず、ほだ場に一時保管し一関地方森林組合の低温倉庫には汚染され処分できない乾燥しいたけが25トンがあります。これから出荷制限解除されても再開できるほだ場が十分確保できず、生産されても保管する場所の確保等大きな問題を抱えています。落葉層の地中埋設、保管対策など具体的な対策を講ずるべきですが県はどう対応されてきたのでしょうか。
【農林水産部長】
本県においてシイタケは、山村地域の生業を支える重要な栽培品目であり、一日も早く産地の再生を図ることが重要であることから、県ではこれまで、ほだ木造成に対する助成や、生産者の事業継続のための資金の無利子貸付など必要な支援を行ってきた。ほだ場については、生産者が生産再開を希望するすべての箇所について、落葉層の除去などの環境整備を進めてきたところであり、一時保管されている落葉層の処理方針の早期掲示については、国に対し働きかけを続けている。また、新たに生産される干しシイタケの保管場所については、現時点では支障はないものと把握しているが、低温倉庫に保管されている干しシイタケの管理経費等については、引き続き東京電力にたいし強く求めていく。
3.介護保険制度について
【高田議員】
次に、介護保険制度改悪、介護報酬引き下げによる影響と県の対応についてお聞きします。
8月から施設入所者の食事代・部屋代などを軽減する補足給付は、世帯が別でも配偶者が課税されていれば対象外となりました。「入所料が月6万円から13.4万円となり2人の年金20万円でとても生活できない」と怒りの声が寄せられました。盛岡市では、8月から949人が補足給付の対象外となり、介護保険利用料が1割から2割となったのは1675人、うち29%がサービス利用を減らしています。岩手県全体ではどのような影響になっているのでしょうか。
介護予防サービスの一部は保険給付からはずされ、市町村の総合事業になりました。介護認定をさせないで事業費を削減する狙いもあります。希望する高齢者への介護認定をさせるべきです。同時に要支援への介護サービスを後退させるべきではないと考えますがいかがでしょうか。
介護現場で特に深刻なのは介護従事者不足です。ある施設長から「内定は高卒1人だけ、小規模特養に手をあげたが見通しがない」と訴えられました。4月から事業所の休止・廃止は46事業所となっており、うち介護人材不足を理由にした事業所の休止・廃止は23事業所もあり、今後さらに事業所閉鎖、奪い合いが起き、施設整備に遅れが出てくることは避けられません。介護崩壊を一層加速させないという基本姿勢にたって人材確保に取り組む必要があります。県は現状と原因をどうとらえているのでしょうか、今後の取り組みについても伺います。
次に、第6期介護保険事業計画についてであります。
第6期計画の特養ホームの施設開設見込数は991床で地域によっては待機者よりも少ないものとなっています。低所得の高齢者と一人暮らし老人の増加などにより施設入所が必要な高齢者が増加することが予想されますが、待機者の解消になる計画になっているのでしょうか。第6期での開設見込数は地域密着型が496床、広域型特養が495床となっています。広域型を増設し低所得者が入れる多床室ももっと増やすべきと考えますが、いかがでしょうか。
【保健福祉部長】
施設入所者の補足給付については、本年8月末までに申請を行った約15000人のうち、約500人が資産要件や世帯分離している配偶者の住民税課税という新たな要件により対象外となっている。一定以上の所得を有する方の利用料・自己負担割合の引き上げについては、8月1日時点での市町村データでは、負担割合証を交付された約77000人のうち約4500人が2割負担となっている。
市町村の介護予防等にかかる総合事業について。市町村においては、高齢者やその家族が希望する介護予防サービスの内容に応じて、要介護認定を受けての予防給付もしくは認定を受けなくてもサービスを利用できる総合事業につなげていくこととされている。また介護予防サービスが総合事業に移行した後も、ケアマネについてはこれまでと同様、地域包括支援センターが実施する仕組みとなっており、利用者の意向や心身の状況等に応じて必要な身体介護や生活援助・機能訓練サービスなどが提供されるものである。
本県における10月の介護職の有効求人倍率は1.87倍と全産業の1.28倍を大きく上回り、人材不足が顕著となっている。人材不足の原因は、平成26年度介護労働実態調査結果によると、仕事の内容の割に賃金が低いとの印象を持たれていることなどが考えられる。県では、県内各地に介護人材キャリア支援員を配置し、介護人材の新規参入や求人とのマッチング支援などを行っており、さらに介護の仕事の魅力を発信するテレビ番組の製作・放映なども行う予定であり、今後とも介護に関係する方々の協力を得ながら介護人材の確保に努めていく。
第6期介護保険事業計画について。市町村では、地域の実情や将来的に高齢者人口が減少に転じることなどを考慮し、施設居住系サービスだけでなく、在宅サービスを充実させ、高齢者のさまざまなニーズに応える計画を策定し、特養ホームの待機者解消に努めることとしている。多床室整備については、市町村が地域におけるニーズに応じて検討すべきものだが、県では、多床室についてもユニット型個室と同額の整備費補助を行っており、また27年度からは既存の多床室のプライバシー保護のための改修費を補助対象に加えたところであり、市町村の計画的な整備を支援していく。
4.障がい者施策について
【高田議員】
次に、障がい者問題について質問します。
第1に、障がい者福祉サービス等報酬の改定はこの4月から行われました。生活介護事業と就労移行支援、就労継続支援等がマイナス改定となりました。障がい者施設では「加算措置があっても人材を確保できず600万円の減収となり、介護現場より深刻です」と訴えられました。県としてどう影響を把握しているでしょうか。
第2に、高齢化が進む入所施設である、指定障がい者支援施設では介護保険サービスの支援が必要になっています。しかし、指定障がい者支援施設では介護サービスが受けられず、介護認定を受けるため一度退所して在宅待機となります。在宅待機中に亡くなる障がい者も出ています。施設入所者も介護サービスが利用できるよう改善を求めていくべきですがいかがでしょうか。
第3に、障がい福祉サービスの拡充についてです。
自閉症の子どもを持つお母さんから「夫婦で頑張ってきたが高齢となりつらい、息抜きもできない、ショートステイなどは緊急時にも即利用できない」と訴えられました。一方、就労継続支援事業でも「事業所を回ったがなかなか空きがなく孫が入れるか心配だ」「進路説明会でも就労支援になかなか入れないと説明されとても不安です」という訴えもありました。就労継続支援事業も不足しており、障がい者の就労支援の確保も課題です。就労継続支援事業、ショートステイ、グループホームなどの整備、増設が必要となっていますが現状と課題は何でしょうか。
第4に、精神障害者の公共交通機関の割引制度についてです。事業者の取組により、身体・知的障がい者に対する移動手段であるバス・鉄道運賃の割引がありながら、精神障害者は対象外になっています。とりわけバスの運賃割引については、全国で岩手と大分県のみが未実施です。2013年12月県議会で精神障害者への交通機関の割引を求める請願を採択しました。全国障がい者スポーツ大会前に解決すべき課題です。県としてこの間どう取り組んできたのでしょうか。
【保健福祉部長】
報酬改定の影響について。4月の報酬改定では、施設職員の処遇改善を図るため、福祉介護職員処遇改善加算の拡充がなされたほか、各サービスの収支状況や事業所の規模等に応じ、加算の単価を増減するなどし、改定率は±ゼロとされた。これにともない、県内の障がい福祉サービス事業所から、加算の取得が難しくなったことなどにより減収となったとの声を聞いている一方、事業所によっては増収となったところもあると聞いている。
障がい者支援施設入所者の介護保険サービス利用について。障がい者支援施設は、障がい者にたいし夜間は施設入所支援、日中は生活介護などを行っており、国では、当該施設入所者に介護保険サービスに相当する介護サービスが提供されていることなどの理由から、当分の間、介護保険の被保険者とはならないこととしている。一方、当該施設入所者が介護老人福祉施設等へ入所しようとする場合には、関係者間での密な情報共有や連携を図るなど、柔軟な対応により、障がい者支援施設から介護老人福祉施設等へ入所することも可能となっている。現在国において、障がい者総合支援法施行3年後の見直しを行っており、その中で障がい福祉制度と介護保険制度の連携についても検討されていることから、その動向を注視していく。
障がい福祉サービスの拡充については、24年度から26年度までの第3期障がい福祉計画では、雇用契約を結び就労する就労継続支援A型は、平成26年度の見込み756人にたいし実績は699人、雇用契約に寄らない就労継続支援B型は、見込み3589人で実績は3545人。また短期入所は、見込み541人で実績は364人、グループホームは見込み1908人で実績は1673人である。今年度を初年度とする第4期計画では、各市町村計画をもとに、29年度の見込みを就労継続支援A型は922人、B型は4135人、短期入所は586人、グループホームは2006人としており、見込みに見合ったサービス供給体制を着実に整備していくことが課題と認識している。県としては、事業者が取り組みやすくするため、報酬の引き上げについて引き続き国に要望していくとともに、市町村や事業者と連携しサービス提供体制の確保に努めていく。
精神障がい者のバス運賃割引について。県では、毎年度継続して岩手県バス協会および県内の主要バス事業者にたいし、身体障がい者および知的障がい者同様の割引が適用されるよう要請している。精神障がい者については、通院などの日常生活においてバスを利用することも多く、社会参加の促進のためにも移動手段の確保は重要であり、県としては精神障がい者へのバス運賃割引が実現されるよう今後とも要請を継続し、理解が得られるよう協議を進めていく。
5.児童虐待と子どもの貧困問題・医療費助成について
【高田議員】
次に、児童虐待と子どもの貧困問題について質問します。
貧困と格差の広がりを背景に2014年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待件数(児童相談所が受けた件数)は、前年比20.5%増の88931件と過去最高に、県内では390件となり、今年度は昨年度を超える勢いとなっています。こうした急増する児童虐待問題に対応するためにも関係機関が情報共有して早期発見し対応することが重要です。すべての市町村に要保護児童対策地域協議会が設置されていますが、活動状況はどうなっているでしょうか。
児童相談所は、家庭などからの相談対応機能のみならず児童の判定機能、一時保護機能をもっています。しかし、近年は困難事例が多く、職員の体制が伴わないために児童虐待対応に特化せざる得ない現状にあります。児童福祉司、児童心理司などを抜本的に増員すべきです。一関児童相談所は沿岸被災地も抱えていて、大阪府から2人の応援職員が派遣され被災地を中心に対応をしています。調査・懇談しましたが、あまりにも広域過ぎると感じました。一関、盛岡、宮古の3児童相談所体制の現状と課題は何でしょうか。
児童養護施設は、職員の配置基準が低く心理的ケアが十分にできないなどで入所できなくこれ以上入所できない現状にもあります。家庭的な環境で養育できるようグループホームや児童養護施設のユニット化などの対応も必要です。県の対応はどうなっているのでしょうか。里親委託推進員はわずか1人となっており、児童相談所では非常勤や兼務職員で対応しているのが実態です。里親は実の子ではないがゆえに様々な悩みを抱えながら子育てしています。支援と相談体制を強化すべきではないでしょうか。
児童虐待や子育ての困難の背景には、若い世代の雇用破壊と貧困の広がりがあります。母子世帯数12,110世帯のうち66%が平均就労収入月15万円未満、生活保護世帯はわずか4%(492世帯)、生活保護以下でダブルワークしても貧困から抜け出せません。貧困の連鎖は放置できない問題であり、まず実態把握をすべきではないでしょうか。また、県の計画策定に当たっては、基本方針に「どんな環境に育っても生活と学習が保障され人間らしく成長できる権利の保障」を明記すべきですがいかがでしょうか。
次に、子どもの医療費の無料化の拡充についてであります。
子どもの医療費無償化の拡充を求める署名は6月までに県に届けられた署名は約7万人となっています。6月以降さらに3万4046人の署名を集め今月3日に「子どもの医療費助成制度拡充を求める岩手の会」が副知事へ要請を行いました。私も同席しました。参加した若いお母さんから「3人の子どもがみんなアレルギーで眼科、耳鼻科、小児科、と通院しなければならず通院費が大変です」、「子どもが病気になると家族が病気になり病院に行くのも順番になってしまいます。財布と相談するのではなく安心して通院できるよう無料化の拡充をしてほしい」との訴えもありました。今年の8月から小学生の入院まで対象も広がり来年8月からは現物給付となります。せめて小学生の通院まで無料化を拡充し、現物給付とすべきです。知事も先の知事選挙で公約をしており決断するべき時期ですがいかがでしょうか。
【保健福祉部長】
市町村要保護児童対策地域協議会の活動状況だが、協議会の運営については、国の指針において、代表者会議、実務者会議、個別ケース検討会議の三層構造による運営を標準としているが、三層構造となっていない市町村があるほか、すべての虐待ケースの進行・管理を行う実務者会議を、国の指針通り3ヶ月ごとに開催していない市町村もあるなど、市町村によっては必ずしも十分とは言えない活動状況にある。
本県では、3つの児童相談所を設置しており、県北広域振興局への駐在を含め4ヶ所に児童福祉司28名、児童心理司14名を配置している。昨年度児童相談所における虐待相談受付件数および虐待対応件数が増加したところであり、増大する児童虐待に的確に対応するため、職員の専門性のさらなる向上が必要だと考えている。
児童養護施設への県の対応は、社会的養護を必要とする子どもたちを健やかに育成するため、国においては、社会的養護は原則として家庭養護を優先するとともに、施設養護もできる限り家庭的な養育環境の形態に変えていく必要があるとして、都道府県および児童養護施設等において計画を策定し、取り組みを推進することとされた。県においては、これまでも施設のユニット化等の取り組みを進めてきたところだが、3月に策定した岩手県家庭的養護推進計画に基づき、施設の小規模化やグループホームの整備などに計画的に取り組んでいくこととしている。
里親への支援については、県においてはこれまでも児童相談所の児童福祉司と里親委託推進員を中心とし、児童養護施設等の里親支援専門相談員や、県里親会とも連携しながら、里親への研修やレスパイト・ケアの実施、家庭訪問による相談対応等の支援を行ってきた。虐待による影響など、さまざまな課題を抱えた子どもを養育する里親の果たす役割はますます重要となっていることから、岩手県家庭的養護推進計画等に基づき、各施設への里親支援専門相談員の配置促進など必要な相談体制を整備し、里親へのさらにきめ細やかな支援に努めていく。
子どもの貧困にかかる実態把握について。子どもの貧困率は、国民生活基礎調査に基づき算出されているが、都道府県別のデータは算出されていないことから、本県では公的支援の対象となっている子どもに関する統計資料等により実態把握を行ってきている。子どもの貧困対策推進計画の基本方針だが、現在策定している計画は、子どもの貧困対策の推進に関する法律や、国の子どもの貧困対策に関する大綱、さらには子どもの権利尊重を基本理念とする岩手の子どもを健やかに育む条例の趣旨を踏まえつつ、総合的に子どもの貧困対策を推進しようとするものである。基本方針においては、この法律の目的や条例の考え方に基づき、子どもの将来が生まれ育った環境に左右されることのない社会の実現を目指すことを掲げる方向としている。
【達増知事】
子どもの医療費の無料化の拡充について。人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、県では、厳しい財政状況ではあるが、市町村等と協議の上、本年8月から助成対象を小学校卒業の入院まで拡大するとともに、来年8月から未就学児および妊産婦を対象とした窓口負担の現物給付を行うこととしたところである。
総合的な子育て支援施策については、今般策定したふるさと振興総合戦略を展開していくうえで重要な施策だが、本来子どもの医療費助成は、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても、同等な水準で行われるべきであり、本年6月に実施した県の政府予算提言要望において、全国一律の制度の創設を国に要望した。全国知事会からも同様の要請を行っている。
国においては現在、子どもの医療制度のあり方等に関して、有識者による検討会を設置し、見直しに向けた検討を行っているところであり、その動向を注視し、今後の状況を見極めながら国に対する働きかけに積極的に参加していく。
6.子どもの教育と県立高校再編計画について
【高田議員】
次に、子どもと教育、県立高校再編問題について質問します。
県内の高校進学率は99.4%となっています。高校教育は準義務教育となっており、すべての子どもたちに高校教育を保障して成長を保障するとともに高校中退を作らない体制を構築するべきであります。人口減少が議論されている中、少人数学級を本格的に検討すべきですがどう検討されていますか。県立高校の43%が3学級以下であります。「4〜6学級が適正規模」となれば大規模な統合になりかねません。地域を挙げて努力して頑張っている学校は残すべきと考えますがいかがでしょうか。
県立花泉高校は県境にあり、宮城県の通学エリアになっています。今年の入学体験は63人が参加し地元の中学生が部活に関わって花泉高校へという動きもあり、ブロックでは地元就職率が一番高く地域貢献する学校となっており、地域では進学にも応えられる魅力ある学校を作ろうとの議論が行われています。今年の学級減に続き廃止となれば統合廃止のための学級減だとの批判が出てくるのではないでしょうか。地域にとって魅力ある学校をどう作るかの議論が大事で、性急に結論を出すべきではないと考えるが、どう検討されているでしょうか。
【教育長】
県立高校における少人数学級だが、1学級の定員は、高校標準法により学級編成の基準が40人と定められており、本県でも40人を1学級の定員としているが、これまで行ってきた地域での意見交換会等においては、県北沿岸地域や中山間地域等において、少人数学級の導入を求める意見もいただいている。現在は、中山間地域の小規模校や被災地の高校を中心に、復興加配定数等を活用し、比較的手厚く教員を配置し、実質的な少人数教育を行っている。しかしながら復興加配は、今後縮小していく可能性があり、仮に正規の学級定員を少人数とした場合、高校標準法に基づく算定基礎定数にも影響が及び、地方財政措置が減少することなどの懸念がある。このような状況を踏まえ、今後とも国に対しては復興加配の継続および教員定数の改善について要望を行っていくが、現在大きな議論となっている教員定数の削減問題や、本県における小中学校の少人数学級の取り扱い等のバランス等をも見据えつつ、検討しなければならないものと考えている。
県立高校の統合については、5月から11月に開催してきた地域検討会議などにおいては、今後の高等学校教育の基本的方向で、望ましい学校規模としている1学年4〜6学級に満たない学校を中心に、高校の存続に関して多くのご意見をいただき、合わせて人口減少対策に取り組む市町村の現状も踏まえるべきではないかとの意見もいただいている。県教委においては、これまでのご意見等も踏まえ、10月から11月に開催した地域検討会議、意見交換会において、望ましい学校規模に満たないことのみを理由に、統合等を行わない考えのもと、再編計画の検討を進めている旨を説明してきており、現在高校教育の質の保障という視点に加え、教育の機会の保障の観点も十分考慮しながら、再編案の公表に向けた具体的な検討を進めている。
花泉高校については、26年度入試において、40名を上回る欠員が生じたことから、地域における同校の志願者増への取り組みなども参考とさせていただきながら、27年度入試の志望状況を確認した上で、本年度から1学級の募集としたものである。地域において、同校の存続に向けさまざまな努力がなされていることは十分承知しており、今後の中学校卒業予定者数の推移や、地域の状況等も踏まえ、現在慎重に検討を行っている。
7.沖縄の地方自治と民主主義が問われる基地問題について
【高田議員】
最後に、地方自治と民主主義が問われる沖縄新基地建設問題について質問します。
沖縄県が辺野古の新基地建設を法と沖縄県民の民意に基づいて承認を取り消したことに政府は、行政不服審査法を悪用して知事の決定を執行停止しました。さらに代執行の裁判を起こし、知事の権限を奪い去ろうとしています。理不尽のきわみです。戦後多くの沖縄県民が収容所に収容され、その間に銃剣とブルドーザーで土地を強制的に取り上げて作られたのが沖縄の米軍基地であります。それを返還するからといって環境を無残に破壊して新基地建設をすることは県民の民意を踏みにじるものです。2日の代執行の口頭弁論で翁長知事は、「これは沖縄への過重な基地負担の継続であり、憲法と地方自治・民主主義へのあり方への挑戦であり、国民すべてに問いかけたい」と訴えました。
沖縄県は、岩手県が未曾有の大冷害に見舞われ種籾確保が困難になった時に温かい支援で種子確保にご協力していただき、以来20年以上に及ぶ架け橋交流が行われています。沖縄県民に連帯し、地方自治をないがしろにする政府の対応を岩手からもただしていくべきと考えます。達増知事の見解を求めこの場での質問を終わります。
【達増知事】
昨年11月に翁長知事が当選して以来、沖縄県と国では、さまざまな対話の場が設けられてきているが、両者の対立がエスカレートして訴訟が提起されるまでに至ったことは誠に残念である。
今後、沖縄県と国がしっかり話し合い、沖縄県民が納得できるような解決が図れることが望ましいと考える。
≪再質問≫
・TPP交渉について
【高田議員】
11月25日に、政策大綱が発表された。私も中身を読んだが、牛や豚のマルキンの法制化や補てん率の引き上げも明記され、これは農家の皆さんの強い要望だが、しかしよく見ると、TPP発効に合わせて措置をすると。つまりTPPに参加したら措置するということになっている。全体がそういう中身で貫かれている。これはまさに農家とっては、こんな厳しい現実はないのではないか。今回の政策大綱は、大筋合意の全容も影響試算も全く明らかにならない中での対策であり、その具体化は来年の秋だと。こういう中で、2日に知事が国に申し入れた中身は、政策大綱に示された対策を早期に具体化するとなっている。そうではなくて、今は大筋合意という段階なので、国に対しては、やはり農家が生産費にもならないような米価、畜産もそうだが、そういう状況の中で、しっかりした価格対策を求めていくと。そして国会決議を順守してほしいという立場で国に申し入れるということが現段階での県の対応ではないか。
【達増知事】
まずは合意内容や、国民への影響の部分をしっかり情報開示・説明をしていただくこと
が必要だと思っており、またそれを踏まえた国民的議論というのもまだこれから必要になってくるのではないかと考えている。そういったことを踏まえたうえで、必要な対策を早期に具体化または必要な予算を確保ということであり、内容不明・影響不明のままで決めて突っ走るのは良いとは思っていない。
・シイタケ生産対策について
【高田議員】
落葉層の除去については国に要請しているということだが、その内容はどうなっているか。今はそういう状況ではない。昨日も生産農家とお話したが、一時保管されている落葉層は、袋が劣化していて積み込み作業ができないと。生産施設や人工ほだ場に、塵やビニールの劣化物が飛んでしまうという状況になっている。ほだ場が確保されないだけではなく、生産が再開されてもそういう状況が続けば大変なことになる。対策が急務だと思うが、部長は現場に行って現状をよくつかんでいただいて、関係機関等に申し入れて対策をとっていただきたい。
ほだ木の確保の問題だが、全国的に原木が不足して価格が高騰していると。震災前の2倍である。シイタケというのは先行投資型なので、本当に将来が不安だと。自治体によってほだ木に対する補助をしているところもあるので、流通が混乱していると。ですから長期的にほだ木を安定的に確保することは、生産再開をしていく上で大変大事な課題である。こういう対応がしっかりなされているのか。
【農林水産部長】
県としても、落葉層の抜本的な対策はご指摘の通り急務であると認識している。県では、林野庁にたいし何度となく対策について繰り返し要望しているが、林野庁からは「対応を検討中」という言葉しか返ってきていないのが現状である。また抜本的な対策について、環境省とも協議・調整が必要だと、ここが進んでいないとも把握している。しかしながら、生産再開に向けては、落葉層の処理について、抜本的な方針が示されない中で、県として法令に反しない範囲において何が可能なのか、現在関係部局とも協議を進めている。
ほだ木造成への補助、原木購入への補助については、県としてこれまでも進めてきており、昨年からは、ほだ木自体が不足しているといったような状況もあるが、これについても受給の調整を行っており、いま現在ではおおむね確保されつつあると把握している。引き続き原木購入、ほだ木の助成、ほだ場の環境整備については、いずれトータル的に県として引き続き支援していきたい。
・介護保険制度について
【高田議員】
補足給付の関係で、7月と8月の比較で、食費・居住費の負担にかかる認定数、全県で3000人減っている。そして利用料が増えて大変になっていることは先ほど述べたが、6万円の入所料が8月から13万円になったと。この方は年金が月20万円で、施設に利用料を払うと7万円で生活しなければならない。生活保護以下である。こういう方は生活保護の対象になるのか。やはりこういった方々に具体的な支援が必要だと思う。
住民税非課税のボーダーラインにいる人たちが大きな負担増になっている。だから世帯分離をしても、配偶者に課税をするという介護保険制度の見直しはどうしても改善させなければいけない課題だと思うが、この点についていかがか。
そして介護現場では、介護報酬が大幅に引き下がったことにより大変な減収である。それを挽回するために、どこの施設でも経営改善をしている。加算措置を受ける、重度の高齢者をたくさん入所させると重度加算といってたくさんの加算が受けられる。しかし仕事がきつくなると。そして中には、経営が大変になり、今まで事業としてやっていた、市から委託されていた地域包括支援センターが赤字で撤退をするという状況が起こっている。こういう実態があることを県はどう把握しているか。
【保健福祉部長】
補足給付や自己負担割合の見直し等によるサービス利用への影響については、今後とも、介護給付費の動向分析や、事業者および市町村等からの聞き取りなどにより状況把握していく。
介護報酬改定の影響だが、事業者団体からは、改定内容が厳しく、加算取得による対応にも限界があるなどの声も聞いている。県としては、国が行う介護報酬改定影響調査や、事業所団体との意見交換会等を通じて実態把握に努め、その状況に応じて必要があれば国に対する要望をさらに行っていく。本年6月に実施した28年度政府予算提言要望においても、介護従事者全般の処遇改善を図るための介護報酬設定を国に要望した。
・子どもの医療費無料化について
【高田議員】
知事は国の動向を見て対応するということだった。ぜひ来年度予算編成の時期なので、一歩でも実現できるように努力していただきたい。
この間、岩手県保険医協会が行った学校歯科診療調査報告書を見たが、一度診察を受けた改めて治療が必要な児童が実際に病院に行ったという受診率は46.6%と、半分以上の子どもたちが病院に行っていない。いま口腔格差が広がっているという指摘がある。これは、親の歯科保健への意識の低下、経済的な負担の問題が横たわっていると保険医協会が分析している。そのためには、窓口負担を無料化することが大事だと、保険医協会が指摘している。
そして副知事要請でも、1年間で10万人を超える署名が集まっている。この県民運動や実態調査を踏まえ、知事はどう受け止めているか。
【達増知事】
今年8月からの助成対象の小学校入院までの拡充、そして来年8月からの未就学児および妊産婦を対象とした窓口負担の現物給付を決めたことをまずしっかりやっていくことが大事であり、国に対してもしっかり申し入れて訴えていくわけだが、県としてもやるべきことをしっかり進めていくという発想は必要だと思っている。
子どもの医療、歯科医療のところも、格差社会化や貧困問題の深刻化などが、弱いところに出てきているという実態の深刻さはしっかり受け止めなければならない。医療の体制を充実させていくこと、また広く格差社会化や貧困問題の深刻化などに県としてもしっかり取り組んでいかなければならない。
≪再々質問≫
・TPP交渉について
【高田議員】
知事の答弁としては、情報をしっかり開示して、国民的な議論を行い、その結果地域経済や国民生活に大きな影響を与える場合は、撤退も視野に入れてということをずっと述べてきたが、現時点においてもその認識に変わりはないか。
食料の安全保障に関わる点で、知事は外交官も務められていたので、今度の大筋合意の中身を見ると、協定発効から7年後に再協議をしてさらなる開放という方向になっている。TPPそのものが関税撤廃が原則で、今でも主要国の中でも最大の輸入国になっていると。こういう状況の中で、世界的な食料不足が言われ、そしてアメリカの大統領や要人も、「食料はアメリカが持つ外交上の手段だ」「餌や穀物を供給すれば日本の食肉供給をコントロールできる」という発言があるが、やはり自由化、市場開放に向かうということは、食料の安全保障政策からしてもやるべきではないと思う。その点から考えても、TPPは問題ではないかと思うが、知事はどうお考えか。
【達増知事】
交渉の過程においては、基本的に秘密交渉の原則で行われたわけで、その間国民の民主的なコントロールがおよぶ度合いが弱かったと思うが、結論が出て、その結論が良いかどうかというのは当然国民の民主的コントロールのおよぶ下で判断されなければならないわけで、この合意の内容や影響の部分について明らかになり、これではダメだということになれば、当然日本としてTPPに参加しないという選択肢はまだあり得ると思っている。
通商や国際的な経済ルールに関してさまざま決めていくというのは、つまるところ国民の命や生活を守るためにやるわけであり、食料安全保障の観点から、国民の命や生活が脅かされるような形の貿易・条約、経済ルールの条約に参加するというのは、政府として本末転倒であるので、そういうことはあってはならないと思う。
・シイタケ生産対策について
【高田議員】
いま農家の皆さんは、国への対応を求めているが、落葉層やほだ木を地中に埋設できないかと言っている。これは例えば、学校の校庭の除染も地中埋設した。なぜシイタケはできないのか。これから生産再開しようとしている、出荷制限解除も次々出てくるといったときに、ほだ場がないと。そして劣化するビニールなどがどんどん風で飛んでしまうというときに、こういった対策を国にも求めて一刻も早く対応していくべきである思うがいかがか。
そしていま農家の皆さんが願っているのが、山の除染である。シイタケ生産農家の皆さんは、高いほだ木を買って生産するのは今までやったことがない。自分の山を冬に伐採して、コストを極力下げて、規模を拡大して今日の産地をつくってきた。そういう点で、里山の再生も農家の皆さんの強い要望である。この点の県の対応、国の動向も含めて答弁いただきたい。
【農林水産部長】
落葉層の件だが、県では生産現場の実情は十分理解しているが、国の方で落葉層の法律上の位置づけ、それに基づく取り扱いについて示されていないと。その段階で落葉層を地中に埋設した場合、不法投棄として法令違反になる恐れがある。したがい、なかなか県独自で処分を行うことは困難だが、まずはいずれ国に対して落葉層の法律上の位置づけを早期に示していただきたいと。また、管理・処分の基準を明らかにするよう引き続き強く求めていく。
山の除染だが、国においては、当初山林についても除染方針を示すとしていたが、対象が広くコストもかかるということで未だ方針が示されていない。県では、牧草地・農地とできるところから順次除染を進めているが、山林については引き続き国に対して確認するなど、シイタケ産地の再生に向けて努力していく。
・介護保険制度について
【高田議員】
県社会保障推進協議会が、この間通所介護事業所の実態調査を行った。61.9%の事業者が収入が減少していると。驚いたのは、今後の対応では、「人件費の削減を考えている」が27.2%と深刻な状況である。この間の部長の答弁を聞いていて、「処遇改善についての加算を、事業所の86%が対応しているが、もっと引き上げたり、あるいは介護職以外も賃金が引き上げれるように、国に求めていきたい」と述べていた。それは大事だが、いま大事なことは、介護報酬を大幅に引き上げることが一番だと。これが3年後の改定を待たないまでも、ただちに国に対して処遇改善だけではなく、介護報酬全体をもっと引き上げるように求めていくべきだと思う。
そして第6期計画についても、一関の事情を聞くと、計画では123床ぐらいだが、手を上げる法人がないと。その理由の1つに、施設の建設費への補助が少ないと。つくっても経営が大変だと。50床つくると12億円かかり補助金は2億円しかないと。小規模特養だと5億円で補助金は1億2000万円しかない。補助金をもっと引き上げて、施設整備に対する支援をもっとやっていくべきだと思う。
【保健福祉部長】
介護保険制度において、各種サービスが継続的に安定して供給できるような介護報酬の設定になることが必要だと考えている。繰り返しになるが、6月に行った政府予算提言要望においては、介護労働を取り巻く状況に鑑みて、介護従事者全般に対する処遇改善を図るための適切な水準の介護報酬を設定するよう要望した。
介護施設等の整備への補助だが、今年度からは、医療介護総合確保基金を活用して補助している。補助単価については、従来国庫補助制度であったときの単価等を参考に設定している。基金の総額の制約等もあるが、今後とも事業者の方々のお話を聞きながら、補助単価についても必要があれば見直しをしていく。
・子どもの医療費助成について
【高田議員】
知事は、前向きの答弁をしてきたと思うが、もっと踏み込んで対応していただきたい。
この間知事答弁をずっと調べてみたが、知事は、人口減少対策にとって大事な課題だと。岩手においても独自の努力をしなければならないと言っている。この独自の努力とはどういうことか。
【達増知事】
まさに今年8月、来年の8月に、対象の拡大や現物給付の導入というところが独自の取り組みであり、やるべき時にはしっかりやっていくということである。