2015年12月8日 12月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、第5号、第7号から第9号、第14号、第19号から第26号について質問します。
・被災地福祉灯油について
議案第1号は2015年度岩手県一般会計補正予算(第3号)であります。総額4億7200万円余の補正であります。この中に被災地福祉灯油等特別助成事業費補助として、5037万円余が新規で計上されています。被災者の生活苦が深刻になっている中で、5年連続の実施となることは重要なことです。福祉灯油等を含めた昨年度の県内市町村の実績と、今年度の実施予定はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
昨年度、被災地福祉灯油等特別助成事業費補助を実施した沿岸12市町村では、17198世帯にたいし1億1113万7000円を助成し、うち県の補助額は4299万1千円となっている。
内陸部の市町村における単独事業の実施状況は、低所得世帯を対象に灯油購入費の助成や、使途を限定しない商品券の交付を実施した市町村が3町村、被災者を対象とした被災者支援灯油を実施した市町村が6市町となっている。
今年度の被災地福祉灯油等特別助成事業費補助については、11月末時点で沿岸12市町村においてすべて実施予定と聞いており、助成対象世帯は20149世帯で県の補助額は5037万円余を見込んでいる。また内陸部の市町村による単独事業は、低所得世帯を対象とした福祉灯油等の助成を実施する予定の市町村が2町村、被災者を対象とした被災者支援灯油の実施予定あるいは検討中の市町村が5市町と聞いている。
・いわての森林づくり県民税条例の一部改正について
【斉藤議員】
議案第5号は、いわての森林づくり県民税条例の一部を改正する条例であります。これはいわての森林づくり県民税、いわゆる超過課税を2020年度まで5年間延長しようとするものであります。これまでの税収総額、これまでのいわて環境の森整備事業確保面積の実績、必要な整備面積に対する比率とその経済効果はどうなっているでしょうか。今後5年間の整備計画はどうなっているでしょうか。
【農林水産部長】
この税は、多様な公益的機能を有する森林環境を保全し、良好な状態で次の世代に引き継ぐことを目的に、18年度に創設したものであり、これまで10年間の税収見込み額は約72億円となっている。公益的機能の高い森林へ誘導するための間伐を行う、いわて環境の森整備事業の確保面積は、今年度末までに約15500ヘクタールを見込んでおり、公益上重要で緊急に整備が必要な森林約26000ヘクタールのうち約6割となっている。
事業効果は、平成25年度までの実績で、水源涵養機能の向上など約400億円と試算され、加えて間伐を行うことによる雇用の創出などの経済効果があったものととらえている。
今後第二期が終了する今年度末においても、整備が必要な森林が約10000ヘクタール残ると見込まれることから、早期解消に向けて整備を進めていく考えである。
・マイナンバー制度について
【斉藤議員】
議案第7号から第9号は、「行政手続きにおける個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆるマイナンバー法の実施に伴う条例の改正であります。
マイナンバー制度は、国民に対する十分な説明も準備もなく進められています。最大の問題は個人情報が漏えいする危険に対して万全の対策がないことであります。すでに住民に番号を通知するカードの郵送が始まっていますが、配達の間違いなどの事故が続出しています。12月1日現在、岩手日報の調査では、マイナンバー通知カードが県内自治体に返還された数は、県内全体で32543通、盛岡市で10755通、全体の8%、大槌町では780通・14%など全県で6%が返還されているとしています。さらに市町村に保管されているのが県内全体で23814通、盛岡市では9568通など、少なくない県民に届けられていない実態が報道されています。県はこの実態と原因をどう把握しているでしょうか。今後の見通しを含めて示していただきたい。
全国では、自治体の窓口でマイナンバーを間違って発行したケースや第三者に渡った事例も起きています。マイナンバーの仕組み自体が、ちょっとした操作ミスによって容易に他人に番号が知らされるリスクと一体であることを浮き彫りにしています。県として、来年1月1日からの実施の中止・延期を求めるとともに、マイナンバー制度の凍結・中止を求めるべきと考えますがいかがでしょうか。
【政策地域部長】
通知カードについては、県内でおおむね11月中に住民の方々に市町村から送付され、12月4日時点の送付状況の速報値では、配達される市町村に返還されたものは、54万7792通中37046通で返還率は6.8%となっている。沿岸部の市町村の返還率が高い傾向にあることから、仮設住宅に住んでいる方で住民票を移していない方や、住民票を移していない被災者の方々、移さずに転居された方々なども一定数いるものと考えている。この他、不在で受け取ることができず、郵便局で保管期限を過ぎて通知カードが返還される例もあると承知している。全市町村の調査結果は、再送付等の状況も含め12月14日までに取りまとめて総務省に報告することとしている。市町村においては、返還された通知カードは、窓口での交付や居住地を確認の上、再送付の作業を行っているところであり、受取が今後増加していくものと見込まれる。国・県においては、通知カードの返還状況や再送付状況等について、当面2週間に1回調査を行い、今後も状況把握に努めていく。
マイナンバー制度については、番号法に基づき、28年1月1日から法に規定された事務において個人番号の利用を開始することとなっている。実施にあたっては、個人情報等の流出・漏えいがあってはならないことであり、県としてはマイナンバー制度に関するシステムの整備・改修にあたっては、個人情報の安全が保たれるよう確認をしながら作業を進めているほか、情報セキュリティの管理体制の明確化などセキュリティ対策の厳格化に取り組んでいる。
マイナンバー制度では、行政手続きにおける所得証明書の添付書類の承諾など、住民の利便性の向上の効果も期待されているものであるので、個人情報の保護に取り組みながら、制度の運用開始に向け準備を進めていく。
・災害公営住宅(釜石市片岸地区)の新築工事の請負契約について
【斉藤議員】
議案第14号は、災害公営住宅(釜石市片岸地区)の新築工事の請負契約に関し議決を求めるものであります。契約金額5億1246万円で請負率は95.31%であります。17戸の建設戸数ですから1戸当たり3014万円となりますが、高すぎるのではないでしょうか。
プロポーザルによる随意契約となっていますが、この方式はなぜ採用されたのでしょうか。これまでの災害公営住宅の建設費はどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
1戸あたりの建設費については、人件費や資材価格の動向を反映して全体的に上昇傾向にあるほか、特にこの片岸地区については、戸数が17と少ないこと、1階部分を物置や自転車置き場としたピロティ形式としたことなどにより単価が高めとなっている。
プロポーザルによる設計・施工一括選定方式については、設計と施工の受注者を一括して選定する方式で、施行者の選定に要する期間が2ヶ月程度短縮されること、設計期間中に労働者や資材の調達など施工準備が可能となることにより、工期の短縮が期待できることなどの理由から、24年度以降特段の理由がある場合を除き採用してきた。
これまでの災害公営住宅の建設費は、県が整備した鉄筋コンクリート造の災害公営住宅では、外工工事および造成工事を除いた建物本体工事価格で算定すると、1戸あたりでは、24年度発注分は約1420万円、25年度分は約1920万円、26年度分は約1960万円、27年度分は約2300万円、これまでの平均で約1910万円となっている。
・県有施設の指定管理者の指定について
【斉藤議員】
議案第19号から第26号は、県有施設の指定管理者を指定することに関し、議決を求めるものであります。
指定管理者制度の最大の問題は、競争により委託費が毎回削減され、そこで働く職員・労働者にしわ寄せがされていることです。今回提案されている8施設の正規職員数、非正規職員数とその比率、賃金水準はどうなっているでしょうか。委託費はどう推移しているでしょうか。
今回の指定管理に当たって事実上1事業者しか応募しない事例はどうなっているでしょうか。
指定管理者制度によって、何が改善され、何が改善されずにいるか示していただきたい。
2月県議会で、岩手県契約に関する条例が制定されました。これは、適正な労働条件の確保を目的・理念としたものです。岩手県が実施する事業で非正規労働者、低賃金労働者を大量につくる指定管理者制度は、根本的に検証し見直すべきではないでしょうか。
【総務部長】
指定管理者の職員数は、今回提案8施設の指定管理予定者からの提出があった配置計画によると、職員数の合計は158名、うち雇用期間の定めのない正規職員は60名、有期採用職員は98名の計画となっており、正規職員の割合は約4割となっている。職員の配置については、基本的には各施設ともそれぞれの機能・性質・設置目的に応じ、運営に必要な職員を確保しているものと理解している。
賃金水準については、各個人の給与に関わる資料まで提出を求めてはいないが、指定管理者制度においても、指定管理者が労働法令等関係法令を順守することは当然求められているところであり、各所属部局において、事業完了後の事業報告や実地調査等により、その状況について適宜確認を行っている。
指定管理料の推移は、今回提案8施設のここ3カ年の年総額では、25年度6億5706万円、26年度6億8400万円、27年度6億8871万円となっている。
今回の応募状況は、全施設において1事業者からの応募となっている。
指定管理者制度導入による改善内容は、指定管理者による自主事業等の開催や開館時間の延長による施設利用の促進など、利用者のニーズに応じたサービスの向上が図られている。制度導入時は、応募する者が複数あったところだが、近年は応募者が1者となることもあることから、募集内容の見直しなどにより、多くの団体の応募による競争性を高め、さらなる施設の利用促進と行政サービスの向上を図っていく。
指定管理者制度の運用について、これまでも労働法令の順守や適性な雇用・労働条件が図られるよう指導を行ってきたが、今般県が締結する契約に関する条例においても、賃金および社会保険に関する法令順守が位置付けられたところであり、条例の趣旨も踏まえ引き続き各所属において、事業完了後の事業報告や実地調査等により、その状況について適宜確認を行うよう指導していく。
≪再質問≫
・マイナンバー制度について
【斉藤議員】
私が指摘したより返還が多かった。37046通もある。これは1世帯ごとに通知されているので、人数でいったら倍以上、7万人以上に届かないと。本会議の答弁では「おおむね順調に進んでいる」と、そういう認識は正確ではない。きわめて重大である。そして戻ったものは役場で発行される。そのときには証明書が必要だと。これは郵便配達より大変である。
そもそも無理をして準備不足でこういうことをやって、すでに2000億円ぐらい税金を使い、国民にはほとんど利益がない。なぜこんなことをやるのか、マイナンバー利権である。数兆円規模で。汚職・腐敗も摘発されたが、そして個人情報が漏れる危険性がある。こんなものを1月1日で強行実施するのは、実態から見ても、せめて1月1日実施は延期を求める必要があるのではないか。そしてその状況を見ながら、中止・凍結ということも視野に入れて対応することが必要ではないか。
【政策地域部長】
マイナンバー制度は、国民の給付の負担の公平性・明確性を確保し、国民の利便性のさらなる向上を図るとともに、行政の効率化・スリム化に資することを目的として導入するものであり、個人番号の利用は1月1日から、さらに国や地方公共団体との連携は29年7月からということである。本会議で答弁したのは、システム全体のお話であり、今回届いていない事例というのがあるが、これについては、再送付等がさらに進むと思われるので、これらについては、さらに返還率は減っていくものと思われる。ただ、確実に届くことが重要なので、これについては国・県において2週間1回調査を行い、留意していく。
・災害公営住宅の建設費について
【斉藤議員】
17戸だから高いということではないと思う。プロポーザルをやって、そして1戸当たり3000万円だと。早くやるということも大事だが、やはり適切な単価というのも、プロポーザルのようなことをやってなぜこんなに高くなるのか。そのことが少しよく分からない。この間の平均で1900万円だと。最近は上がっているがかい離がある。プロポーザルの効果は工期短縮以外にあるのか
【県土整備部長】
今回プロポーザルに対しては、4グループが応募しており、最終的に採用した参加者については、見積もり価格として一番低い額を提案したグループである。
実際の契約額だが、提案に基づき設計した中身について、県で積算を行い、それ以下の額で契約することとなっているので、現時点でこの設計内容で発注するにあたっては、適正な価格になっていると承知している。
・指定管理者制度について
【斉藤議員】
最大の問題は、非正規労働者を増やしていることである。例えば、総合防災センターの委託は、正規職員が1人でこれは445万円ということになっているが、平庭高原の自然交流館で正規職員9人というが人件費総額210万円である。こんなのがあるのか。岩手県民情報交流センター、結グループがとっているが、総括責任者は年間720万円、副責任者は620万円、レギュラースタッフ8人いるが一人当たり325万円、一番多い19人いる補助スタッフは一人当たり87万8000円である。3分の2の補助スタッフは100万円いかない。こういう形で、岩手県が制定した公契約条例の精神にも反するのではないか。
答弁にもあったように、すべて1者しか応募しなかった。やはり指定管理者制度というのはこの間やってきて、行き詰まっていると。総点検をして今後のあり方を新たに制定された条例の精神も踏まえ考える必要があるのではないか。
【総務部長】
正規職員の占める割合等については、それぞれの公の施設の性質や対応、受託団体の指定管理の受託内容や形態等によりそれぞれ異なり、それぞれの性質・機能・設置目的等に応じ、運営に必要な職員を確保されているものと理解している。各所管部局においては、雇用条件等給与の支給実態等の確認について適切に指導するよう、本年2月には改めて周知を図った。
応募者の減少傾向については、やはり多くの応募による競争性を高め、さらなる施設の利用促進や行政サービスの向上が必要と考えており、募集内容の見直しなどに取り組んでいく必要があると考えている。
≪再々質問≫
・指定管理者制度について
【斉藤議員】
総合防災センターだが、パート2人、週40時間だと。こんなのがあるか。チェックが行き届いていないのではないか。こんな事業計画が出ている。もう少し労働者の条件をしっかりチェックしてやっていくべきではないか。
【総務部長】
やはりそれぞれの施設には、それぞれの管理いただいているところにおいて、機能・性質・設置目的等に応じて必要な職員や、どういう配置計画にするかというのは検討の上なされているものと理解している。