2015年12月9日 商工文教委員会
DIOジャパンコールセンター問題に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 会計検査院の最終結果報告が出たわけだが、この時点で出たとすれば、年度内できちんと解決するというのが筋だと思うので、その立場で立ち入ってお聞きしたい。
 今回、不正として4378万円余が返還を求められた。この不適正支出の主な項目を示していただきたい。

【雇用対策課長】
 指摘された項目としては、冷蔵庫・電子レンジ等の事業に関係ない機器のリース、あるいはOJT研修ではない出張先の業務の従事、免税事業者に対する消費税相当額の支払い、USB梱包作業など無関係業務への従事、譲渡特約を付した過大なリース料といったものが指摘されている。

【斉藤委員】
 不適正支出の中心はリースだったと思う。1年リースが最大の焦点になったが、会計検査院はどのように指摘しているか。岩手県の場合、本来過大だと認定した額は総額いくらか。そのうち返還を求められたのはいくらか。基金事業と対象となったリース料はいくらか。

【雇用対策課長】
 会計検査院が過大と指摘した今回のリース事業について、国の実施要領等で期間についての定めがなかったという指摘をしており、その上で、今回、事業終了後も継続してリース物品を使う見込みがある場合において、合理的な基準=耐用年数に基づいてリース期間を設定して実施要領に明示することが必要ということを指摘しており、会計検査院報告によると、過大額として指摘しているのが合計で4億9900万円余になっている。これは、DIOジャパン関係以外の事業を含めた金額となる。なお、措置済み事項とされたものについては、当該県にたいして返還を求めるというものではない。当事業で、リース料として支出された金額の合計は6億1173万円余となっている。

【斉藤委員】
 常識的に考えれば認められないというのが過大リースである。基金事業で6億1173万円支出して、免れたのが4億9900万円と。これまでもこの委員会でずっと指摘してきたが、例えば、盛岡コールセンターの場合、什器一式2993万円が翌年は0円で取得されている。コールセンター業務用機器は1億3800万円のリースが翌年は88万9900円とリース料の0.64%で取得されている。ほとんど同じような形で、何千万円単位のリースが翌年に数十万円で取得され、50万円以上の財産取得が禁じられている緊急雇用創出事業からいったらあり得ない話である。しかし事業主体と県はこれを認めてしまった。これ自身が重大なミスだったと思う。ただ、厚労省も県に便乗したから、基本的には請求されなかった。それだけの話である。1年のリースで翌年はほとんど無償に近い譲渡だと。だいたいこんなリース契約を事業計画で認めたことが問題だったと思う。
 唯一返還が求められたのが釜石だった。釜石は、契約に特約事項で「1年後に無償譲渡」とあったからである。しかし残りは密約だった。こっちの方が罪が大きいと思う。契約がないのに、事実上無償譲渡されているのだから。そういう意味では1年リースはきわめて重大で、二戸の場合には、見積書にこの特約が書いていた。しかしこれは契約書に書いていなかったから見逃された。国民の常識から見たら考えられない。そしてそのリース料は物品価格より高い。考えられない。ひどいのは、二戸コールセンターの場合、1年で元を取ったのに、2年目もリース契約で事業計画を立てた。厚労省から何も言われなかったから2年目も1千数百万円のリース料を儲けようとした。こんな悪質な事業はなかった。
 この点について、一義的には事業主体がそこをチェックできなかったということが一番の問題だが、県もこのことを見逃した。この責任は重大だと思うがどう受け止めているか。

【雇用対策課長】
 事業計画におけるリース料の計上だが、事業実施時点ではリースを経費として計上し、2年目においてもリース料が計上されていたということをもって市町ではこのリースがその後も継続されるものだと思って2年目の事業に入ったということであり、そういった市町からの話を聞いて県としても計画を認めたということである。
【商工労働観光部長】
 会計検査院がこの点について検査結果を出している。その中に「発生原因」という項目があり、「このような事態が生じていたのは、厚労省において基金事業に必要となる機器等をリースにより調達する場合に、基金事業の対象経費となる機器等のリース料の算定に用いるリース期間の設定方法を実施要領等に明示していなかったことなどによると認められた」と記載されている。

【斉藤委員】
 厚労省にも責任はある。しかし、常識で考えればこんなリースは認められない。数千万円のリースで翌年は無償譲渡である。見積書に物件価格も書いており、物件価格より高いリース契約を結んでいる。第一義的には市町がこういうところをチェックできなかったのが大問題だが、県もチェックしなかったのは二重の問題だった。厚労省にも責任があるから今回返還額に入らなかっただけの話である。こんなリース契約を認めたことに県は責任がないのか。

【商工労働観光部長】
 そのような見方があるということだが、我々が客観的に書いたものとして、公に認定された発生原因としては、先ほど述べた通りである。

【斉藤委員】
 釜石は、契約書にあったので返還を求められている。県はこれもチェックできなかった。二戸は、見積書に全部書いていた。よく二戸は見逃されたと思う。こんなことは許されない。釜石が返還を求められたことについてはどういう責任を感じるか。

【商工労働観光部長】
 11月25日に厚労省に行った際に、事前に市町から「この辺の確認をきちんととってほしい」という話をいただいた上で行ってきたわけだが、釜石市からも当該部分について厚労省にきちんと話してほしいと言われたが、そこの部分については厚労省としても譲歩はできないということであった。

【斉藤委員】
 釜石は1年リースを認められずに返還を求められた。そういう契約書があったのに県はチェックミスした。二戸は見積書に特約事項があった。本来同罪だと思う。見積書と契約書の違いで対応は違ったが。そういう物件価格より高いリースを認めたところに一番の問題があった。返還するかしないかはその後の話である。
 釜石は返還を求められている。これはなぜ県がチェックできなかったのか。

【雇用対策課長】
 事実関係をご説明したい。釜石については、今回会計検査院、厚労省の調査を受ける中で、特約の存在が明らかになったということであり、完了検査時点でそういったものが明確になったというものではない。ですので、今回の調査の中で県として了知したということである。

【斉藤委員】
 とんでもない。この問題は初めて取り上げたわけではない。以前から取り上げ新聞報道もされている。何を言っているのか。あなた方が把握したのかいつか、正確に言っていただきたい。

【雇用対策課長】
 記憶が確かならば、昨年の決算特別委員会の議論の中でそういった話が出たと記憶している。

【斉藤委員】
 いずれ、そういうチェックができずに、釜石は返還になり、二戸は見積書に書いていたが助かったという違いである。
 その点では、返還額は厚労省の責任も認めて大幅に棒引きされたのだと思う。それはそれで県が努力したことは認めるが、そもそもそういう交渉をしなければならなかったという原因は、本来認められないような異常なリースを認めたところに根本の問題があると指摘している。
 消費税の問題だが、盛岡コールセンターは計上しなかった。なぜ他のところは免税業者に対する消費税相当分を支払ったのか。県こそこういうことがチェックできる立場にいたのではないか。大雪りばあねっと。の事件だってあった。なぜ見逃したのか。

【雇用対策課長】
 消費税については、当事業をする前から注意すべき点で、各市町村に注意喚起を図っていたものだが、そういった中でこういうことが起こったという事実である。当該市町でチェックしていたものと思っている。そういった中で県も見逃していたことになると思う。

【斉藤委員】
 初歩的ミスである。注意喚起までしていて。決算書類を見たら分かるはずである。第一義的には市町の責任は大きいので、県と市町の責任は同列だとは思わないが、しかしこの程度のチェックはしておくべきだった。
 冷蔵庫・レンジ等の事業に関係のない機器のリースはどこでも出ているが、なぜこれが見逃されたのか。

【雇用対策課長】
 事業実施当時は、リース全体について事業に必要な物という認識で市町も認めていたものであり、今回改めて確認・調査したところ、事業との関連性が薄いということでこういった指摘を、改めて全国共通的な考えの中でされたと受け止めている。

【斉藤委員】
 これも常識の範囲で、冷蔵庫が緊急雇用事業に入るかと言ったら入らない。
 本会議の答弁で部長は、「1年リースの返還は本県の考えを認められた。しかし一部において認められないものがあった」と。一部において認められなかったものは何か。

【雇用対策課長】
 冷蔵庫やレンジ、OJT研修ではない出張業務等である。

【斉藤委員】
 OJT研修ではない出張等というのは、当時働いていた方々から詳しい内部告発をたくさんいただいた。2ヶ月3ヶ月東京や九州に行って働かされたと。今回の返還額は少ないとは思わない。市町も調査したと思うが、なぜこれが県は基金事業の対象になると思ったのか。それはどれだけの額か。私は、今回の返還額の対象は少ないと思う。緊急雇用事業というのは人材育成の研修なので、ほとんど3ヶ月で研修が終わり、4ヶ月目からは仕事をさせられている。その点では、この人件費は本当にわずかなものしか返還が求められていないが、県が認めるといったのは何か。

【雇用対策課長】
 我々としては、当時完了確認をする際に、研修日誌等があるということをもって、研修計画と照らし合わせて、そういった研修が行われたということで認めたものである。しかしながら、今回全国的な問題となった中で、国が改めて調査する中で明らかになったということである。総括的に言えば、当時、どこまでが事業として認められるか否かという非常に曖昧な部分があったが、要項・要領に照らせばここまでは認められるのではないかということで完了検査をしたものだが、今回全国的な共通的な見方をする中で、今回指摘されたような額が不当と言われたものと受け止めている。

【斉藤委員】
 市町が独自に調査して、厚労省に報告したと思うが、その時の、研修に当たらない人件費総額は分かるか。私に対する内部告発では「3ヶ月東京で仕事をさせられた。さらにその後の2ヶ月は宮崎に研修で派遣され、この仕事は楽天の仕事の研修だった。仕事の日報は『研修と書け』と虚偽報告した」と。市町がどれだけ厳密に仕事の実態を調査したか、市町が人件費で不適正と出したのはどのぐらいか。そのうち認められたのはどのぐらいか。

【雇用対策課長】
 市町が調査する中で不当と認めたものが結果としてこういう数字になっている。

【斉藤委員】
 今回のDIOジャパンの破たん問題で、どれだけの労働者が解雇・雇い止め、賃金未払いになったのか。それは現時点で解決されているのか。

【雇用対策課長】
 27年9月末現在で、合計135名が離職し、うち求職申込した方は122名で未就職者は0である。賃金未払いとなっていた方、これは花巻・釜石・奥州・洋野だが、その方については国の未払い賃金立て替え制度による立て替え払いが終了している。また本社の所属となっていた県内事業者の方についても、当該制度が活用され、27年3月には終了している。

【斉藤委員】
 県がどう関わったのかということで、当時11月24日に県から全市町村にたいし、コールセンター設置の情報を提供し、12月1日期限で物件の回答を依頼したと。これが県の取り組みからいけばスタートだった。それ以前に花巻との関係がいろいろあったが。大事なことは、全市町村に照会したということである。そこで手を挙げたのが7市町だったので、決して県がやらせたわけではないと思う。実際に手を挙げなかった市町村が多数なので。それはそうなのだが、11月24日に紹介して、信用調査会社の情報を入手したのは29日なので、後から信用調査会社の情報を入手したので順番が逆だと思う。ただこの時点で、DIOジャパンがどういう会社かということを把握することは難しかったと思う。
 国・県・市町の責任の度合いだが、やはり会計検査院の報告書を正面から受け止める必要がある。「このような事態が生じたのは、上記の10都道府県および23市区町村において、市区町村または受託者から提出された委託事業にかかる実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったこと。10都道県において、23市区町村に対する指導・監督が十分でなかったこと。厚労省において10都道県に対する指導・監督が十分でなかったこと―などによると認められる」と。それぞれの責任が厳しく指摘されている。厚労省の責任も指摘されたからあれだけの棒引きがされた。しかしここには「県の指導・監督が十分でなかった」とも指摘されている。まったくその通りだと思う。この会計検査院の報告を正面から受け止めるべきではないか。

【商工労働観光部長】
 会計検査院報告で、委員が引用された部分の読み方については、大きく3点になる。
 1点目として、これは本県は対象になっていないが、委託事業の事業主体である3道県および23市区町村において、受託者から提出された委託事業に関する実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったこと。
 2点目。基金を設置する10都道県において、23市区町村から提出された実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったこと、および23市区町村に対する指導・監督が十分でなかったこと。
 3点目。厚労省において、都道県に対する指導・監督が十分でなかったこと―である。
 これが補助金なり基金への繰り戻し、このあり方・スキームというものとリンクするものとして会計検査院が書いたものではないと理解している。

【斉藤委員】
 そんなことを聞いたのではない。ここにそれぞれの責任が明確にされているのではないかと。「このような事態が生じていたのは―」ということで書いてある。返還額などについて聞いていない。厚労省の責任も指摘されているから今回の棒引きになったと言っている。だからといって県の責任が曖昧にされているわけではない。
 「県の指導・監督が十分でなかった」と、この指摘を正面から受け止める必要があるのではないかと言っている。

【商工労働観光部長】
 書いてある事はその通り受け止めざるを得ないと思う。ただ、厚労省の責任に言及してあるから棒引きされたのだというところまでは、この文面からは引き出せるものではないと考えている。

【斉藤委員】
 厚労省がこれだけ棒引きすることもない。それは厚労省の責任があるからこれだけの棒引きになった。それは私の意見として述べたので。
 大雪りばぁねっと。についても山田町は1300万円の返還が求められた。山田町はすでにこの返還の意思を示している。やはり事業主体の責任はきわめて大きい。山田町は大雪の件で6億7000万円も返還している。この問題については、県の責任もあるということで厳しく追及してきた。それでも山田町は6億7000万円を払い、今度の1300万円も払うと言っている。それだけ事業主体の責任は重い。
 しかし、大雪りばぁねっと。以上に、DIOジャパンの問題については県の関与は大きい。大雪りばぁねっと。は、ある意味では県の言うことを聞かずに引き込んだが、今回は県が紹介して、そして市町村のさまざまな問い合わせも受けながら、こういう不適正支出が出てしまった。この問題に対する県の関わりは徹底的に、大雪りばぁねっと。の時と同じように検証される必要がある。引き続き、常任委員会の場でやるのは当然だが、この間の県議会や予算・決算特別委員会での審議や決議を踏まえれば、徹底した検証が必要だと思う。