2015年12月9日 商工文教委員会
中小企業振興基本計画(素案)に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
前の委員会で、せっかくつくった検討委員会がわずか2回しか開かれておらず、もっとやるべきだという話をしたが、残念ながら2回だけ開かれてこういう素案が出た。
この間私も、中小企業団体や中小企業家の方々からさまざまな意見や要望を聞いてきた。もっと中小業者の話を聞いてほしかったというのが共通した特徴である。中小企業振興条例というのが初めて制定されて、中小企業がまさに地域経済の主役と、やっと自分たちに光が当たるというときに、実態や意見や要望をしっかり聞いてほしいというのが第一の声だった。
今回の素案は、中小企業振興条例に基づき計画されているので、その点では全体としては評価できるが、中小企業の情勢分析は大変詳しくされているが、具体策に乏しいと。特に、中小企業と言っても圧倒的には小企業である。中小企業対策というのは、ある意味では小企業対策と言ってもいいので、小企業が本当に光が見えるような計画にしてほしいというのがもう1つの声だった。
具体的な中身だが、素案の20〜21ページに、中小企業団体および中小企業へのヒアリングアンケート結果というのがあり、経営上の課題として第一に指摘されているのが、人材の確保・育成である。そして2番目が既存の営業力・販売力の維持・強化ということで、中小企業が人材を確保することに大変苦労している。苦労している以上に、確保できなくなってきているというのが共通の声だった。大卒はほとんど半減し、高卒も今首都圏の求人が増え、今まで出してくれたところも出さなくなってきた。かなり深刻である。中小企業の人材・雇用の確保の現状をどう受け止めているか。この点について具体的な対策は、素案や今後の取り組みではどう考えているか。
【経営支援課総括課長】
検討委員会の開催については、中小企業者の方や中小企業団体の方々が代表として委員に入っており、団体を通じても意見をいただくということで、それから現在パブコメもやっているので、そういったことも踏まえて年明けには3回目の委員会を開催したいと思っている。また個別に委員をまわって意見交換等を行っている。もっと意見を拾い上げる機会をというのはごもっともだと思うので、そういう機会も通じてなお意見をいただけることができるように、年明けの計画取りまとめに向けて引き続き取り組んでいきたい。
人材確保については、一番の課題ということで、検討委員会でも委員の皆さんから人材確保ということについて多くご意見をいただいている。この計画とりまとめにあたっては、商工労働観光部はもちろん、教育委員会など庁内関係部局にも政策の取りまとめ等についての照会を行っており、そういう意味で、学卒者に向けての取り組みだとか、岩手で働くということについての新しい取り組みをしようとか、そういった動きを庁内的にもやっているので、現段階ではアクションプランと連動した形で素案ということで整理しているので、来年度に向けては各部局で新規事業を検討している部分もあるので、そういったことも踏まえてこういう条例の項目に沿った形での施策の整理と、毎年度の事業の具体化という部分等をうまく組み合わせるということで、そういう過大に対応していきたい。
【斉藤委員】
人材、雇用の確保は簡単ではない。というのは、何よりもまず賃金水準が違うと。首都圏と比べると6〜7割ではないか。岩手は、都会ほど生活費がかからないから住みよいと私たちは分かるが、新卒の高校生や大学生は6〜7割の給料だとそれだけで選択から外れてしまう。そういうハンデはあるが、例えば岩手大学で、企業の説明会で200社がきたが県内の1割にも満たない。県立大学で約半分が県内だったという話はあるが、やはり県内の高校・大学・専門学校、専門学校は県内就職率が高いというが最近下がっているので、ここにどういう形で岩手の中小企業の魅力や役割を押し出すのか。ここは中小企業任せにしないで知恵を出す必要がある。中央とのハンデキャップがあるんで、魅力が分からなかったら岩手の企業を選択するとならない。そういう意味で、人材確保の問題については、高校・大学・専門学校と中小企業と連携して、岩手の中小企業の魅力や働き甲斐を一緒になって知らせていくという場を努力してつくっていかないと、本当にこれからは人材確保できないのではないかという諦めと、絶望感が県内中小企業に生まれているので、基本計画は良いが、現状はきわめてシビアになっているので、切迫感を持ってやっていただきたい。県立高校の場合、ショックだったのは、今まで送ってくれた先生も送らなくなったと。おそらく条件の良い求人が増えているということはあると思うが、県立学校の先生がそれでは困るので、子どもは減っているので、例えば県内就職率60%を維持したとしても県内就職者数は減る。だから67%とか70%に高めないと、確保する人材は減っていくことになるので、そういう努力を県教委とも一緒になって知恵を出してやっていただきたい。改めてお聞きする。
【経営支援課総括課長】
教育委員会とキャリア教育とかそういった部分での検討をやっているので、今後そういった部分については庁内全体で取り組んでいきたい。
【雇用対策課長】
県内就職の拡大に向けた関係者との一体的な取り組みということで、ご指摘の点については、仮称ではあるが、岩手で働こう協議会というのを今年度中に設ける予定である。その中では、大学・高校・専門学校や中小企業関係者等も含めた総合的な推進体制を構築すると。その中で、関係者が知恵を寄せ合って県内就職の拡大に向けどう取り組むかということを協議することにしている。
【斉藤委員】
経営課題の第2位は、既存の販売力・営業力の維持・強化で、企業が持続的に成長するためのアンケートでは、第1位が企業の自主的な努力ということだった。企業の自主的努力というのは一番の基本にあってその通りだが、震災復興の中で水産加工の方々は大変厳しい状況だが、グループ補助を契機にして、グループで商品を開発・販売すると。例えば、自分の店のエリアはあるが、5つ集まると自分の得意分野で顧客を広げるという取り組みをしていることは大変特徴的だと思う。やはり中小企業のネットワーク・連携を強めて、個別の事業者の努力だけではなく、良いところを組み合わせて商品開発力や販売力を高めていくと。この取り組みが大事ではないか。ただ実際に聞くと、連携のハードルが高いと。震災の関係はグループ補助ということで新しい力を発揮したのだと思うが、そうでないところも、そういう同業者・異業者のネットワーク・連携が一つのキーワードだと思う。そういう意味で、中小企業者の自主的な努力を支える、販売力・営業力を高める取り組み、そしてその具体策がもっと明記されるべきではないか。
【経営支援課総括課長】
中小企業者の連携については、たしかにグループ補助などで新たな取り組みが始まっていると。中小企業の連携については、中小企業団体中央会やいわゆる協同組合、組織の指導をしている団体とか、各地元の会議所や商工会の会員などを中心に、さまざまな事業の情報交換や指導をしているので、そういった部分にさらにアドバイザーの派遣などの支援を通じて、中小企業者の事業を支えるといったような取り組みをしているので、引き続きそういった部分の強化は必要だと思っている。また、工業技術センターや産業振興センターなどさまざまな指導機関が情報交換しながら、現地指導を行ったりして、企業の必要に応じて連携などの促進も図っているので、引き続きそういったところの取り組みが強化できるように考えていきたい。
【斉藤委員】
後継者問題、事業継承問題について。素案の18〜19ページに、経営者の年齢は一番多いのが60代で38.8%、次に多いのが70代で22.0%で60.8%を占める。後継者の有無について、後継者が決定していると答えたのが57.8%で、4割以上は後継者が決まっていないと。もう譲ることを諦めたという方も20%ぐらいある。事業を継がせる意思がないが20.8%、事業を継がせる候補者がいないが21.4%である。いま中小企業・小規模企業がどんどん縮小・減少しているが、この数字を見たら5年後10年後激減するということである。事業の継承・後継者の確保は、中小企業振興にとってきわめて切実で重大な課題だと。だから後継者の問題では、血縁に頼る時代ではないという声も聞いた。この後継者対策、事業継承の問題についても、県は分析はしっかりやって現状は明らかになるのだが、それに対しての対策がまだ不十分ではないか。
中小企業振興条例では、毎年度実績を報告することになっている。先進的な県や市町村を見ると、毎年度の事業実績を、中小企業者を含めた第三者機関などで検証して、翌年度の方針や予算化に生かしていると。毎年度実績を報告するということになっているが、今回計画をつくるときにつくられた検討委員会というのが、ある意味でいけば引き続きこの計画の検証にも関わっていく必要があるのではないか。どこで検証して次の年度や計画に発展させるのかということも明確にすべきではないか。
【経営支援課総括課長】
後継者の問題は非常に大きくなっており、県でも若手の経営者に向けた創業セミナー等を行っているが、今後はそれに加え、事業承継のための必要なスキルなどを習得するための事業も加えたいと思っており、また事業を譲りたいといったことに対してマッチングするために、盛岡商工会議所の方で事業招へいセンターというのを今年度設けている。そこの活動についても連携して取り組んでいきたい。
事業実績の検証だが、今年度計画をつくるということで検討委員会をつくっているが、毎年度の成果を公表するということについて、委員の方からも、こういった形の委員会があった方が良いのではないかという意見もいただいており、我々としてもどういった形でやればいいのかということを委員の皆さんとも議論しながら、委員会方式も含めて来年度の対応についても考えていきたい。
【斉藤委員】
事業承継の問題については、具体的な目標ということになると、グループ創業支援および若者創業活動支援による支援件数ということで、27年15件、28年30件、29年45件とこの程度でいいのかとなってしまう。目標も中小企業者の方は実現できる目標だと言っていたが、積極的な目標ではないとも言える。本当に岩手の中小企業者を前進させる、振興させるという点からいけば目標が足りないのではないか。盛岡広域振興局で盛岡版のものを聞いたが、県内就職率の目標は60%と全県の平均より少ない。これでは中小企業振興、雇用確保にならない。やはり目標を見て前向きなものだと分かるように、引き続き吟味をしてやっていただきたい。
検証もとても大事なので、検討委員会がどういう役割を果たすのか。やはり計画をつくった人たちが計画の実施状況も検証するというのが一番合理的ではないのか。今回のメンバーもそういうメンバーになっているので、そういうことも踏まえて素案を充実させていただきたい。