2015年12月11日 12月定例県議会・最終本会議
議案に対する反対討論


 日本共産党の斉藤信でございます。議案第7号から第9号について採択とする総務委員長報告について反対の討論を行います。
 議案第7号から第9号の議案は、「行政手続きにおける個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆるマイナンバー法の来年1月1日からの実施に伴う条例の改正を行うものであります。
 マイナンバー制度は、赤ちゃんからお年寄りまで外国人を含め日本に住民登録している人に1人残らず番号を付け、納税や社会保障の行政手続きなどで利用させるものです。戸籍・収入など大量の個人情報を結びつけることが可能なマイナンバーには、情報漏えい、国による国民監視の強化などに国民の不安と疑念が消えていません。
 マイナンバーの通知が10月から全国で実施されていますが、本日の新聞報道では、日本郵便が昨日明らかにした12月9日現在の状況では、500万9千通、8.9%が各市町村に返送され、郵便局で保管中も110万通あるとのことです。実に1000万人を超える国民に届いていないことになります。県内では12月4日時点の速報値で、送付された54万7792通のうち、3万7046通、6.8%が返還されています。7万人を超える県民に届いていない状況です。特に大槌町や陸前高田市など沿岸被災地の5市町村では1割を超えています。極めて深刻な事態です。全国でも誤配達や一時紛失、第三者の手に渡った事例などの問題も発生しています。マイナンバーの仕組み自体が、ちょっとした操作ミスによって容易に他人に番号を知られるリスクと一体であることを浮き彫りにしています。
 マイナンバー制度の一番の問題は、個人情報の漏えいを100%防ぐシステムの構築が不可能なことです。日本年金機構での125万件の個人情報の流出、ベネッセなど民間企業の情報漏えい事件などでも明らかです。また、意図的に情報を盗み売る人間がおり、一度漏れた情報は流通・売買され取り返しがつきません。情報は蓄積されればされるほど利用価値が高まり攻撃されやすくなります。
 ところが安倍政権は、先の延長国会の9月4日に、まだ実施もされていないのにマイナンバー法の改悪を強行し、プライバシー性の極めて高い個人の預貯金や特定健診情報なども利用対象に拡大しました。
 すでに実施されている諸外国でも問題が発生しています。アメリカでは、2006年から2008年に、成りすまし犯罪の被害が1170万件発生し、その損害額は約2兆円、年間では7000億円に及んでいます。
 事業者にも行政機関に提出する税や社会保障関係の書類に、従業員やその扶養家族の個人番号を記載することが求められます。事業主に、個人情報を管理・保管することへの不安とそのための経費増の不安も広がっています。
 マイナンバー制度は、国民にとってほとんどメリットがありません。一方で、情報漏えいの危険と国家による監視が強化されます。すでに初期費用として約3000億円が投入されていますが、大企業には数兆円規模でマイナンバー市場が提供され、厚生労働省の担当職員が収賄で逮捕されたように、利権・癒着まみれの実態も明らかになっています。
 12月1日には、マイナンバー制度は、個人情報漏えいの危険が高く、憲法が保障するプライバシー権を侵害するとして仙台、新潟、東京、金沢、大阪の全国5つの地裁に、「マイナンバー違憲訴訟」が起こされました。今後さらに全国に広がる状況です。
 マイナンバー制度は、国民の願いから生まれたものではありません。国民の所得・資産を厳格につかみ徴税や社会保険料徴収の強化などを効率よく実施・管理したい政府と、マイナンバーをビジネスチャンスにしたい大企業の長年の要求から出発したものです。
 今、緊急に必要なことは、マイナンバー制度の実施について、来年1月1日からの実施の延期を求めることです。さらに、大企業の利益のために個人のプライバシーを危機にさらすなど、国民に不利益をもたらすマイナンバー制度の凍結・中止を求めることが必要です。
 以上申し上げ、議案第7号から第9号についての反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。