2016年1月13日 商工文教委員会
18歳選挙権、観点別評価、統合に関わる校舎制についての質疑(大要)


・18歳選挙権―主権者教育について

【斉藤委員】
 18歳選挙権が今年の参院選から適用されると。主権者教育が大変重要なテーマだと思っている。その際、憲法、教育基本法、国連子どもの権利条約―この大原則に基づいた主権者教育が行われる必要がある。その点では、高校生の政治活動は条件をつけず全面的に保障されるべきだと考えるが、文科省から新たな通知も出されているが、その中身と県教委としての主権者教育の進め方についてお聞きしたい。

【高校教育課長】
 通知については、1つは、主権者教育を高校の教育においてしっかり進めるようにと文科省から県教委・高校に対する教育の内容を通知しているものである。それにともない、教材が作成され、教材の活用について示されたものである。そして政治的活動に関する、昭和44年に出された政治的活動についての見直しを図る新たな通知である。それに基づいて、学校に対しては通知を行い、適切に3年生については卒業までに主権者教育を行うことを通知している。県としては、県の選管や市町村選管とも連携し、模擬投票などを通じて具体的に生徒に投票についての理解を深める、あるいは選挙についての理解を深める教育を行っている。卒業を控えた時期で、学校においては時間をどのように捻出するかというところは苦労しているかと思うが、卒業までには何とか時間を見つけて指導されるものと思っている。
 政治的活動については、いろいろと昭和44年の通知が見直されたが、校内における政治的活動については従来通りしない、できないものと。ただ校外については、生徒・保護者の判断で参加できるとされている。ただし、学業に影響を及ぼすような行き過ぎた活動についてはそれなりの制限が必要だとされている。学校においては、政治的活動は禁止されているが、主権者教育、政治的教養を育む教育の中身においては具体的な政治的事例を取り上げて学ぶこととしているので、政治的活動は校内では禁止はされているが、具体的な政治の中身について学ぶことにより生徒が一人一人主体的に政治的な判断ができるように力を育むことは可能と考えている。

【斉藤委員】
 主権者教育の大前提は、憲法であり、憲法に基づく教育基本法であり、国連子どもの権利条約だと指摘した。憲法19条は、「思想良心の自由はすべての国民の内面の自由を保障」し、21条では、「集会・結社および言論・出版その他一切の表現の自由はこれを保障する」と。これは高校生も同じである。高校生だけ規制される法的根拠はない。学内で政治活動が規制されるのは憲法違反だと思う。法律上その根拠はないと思うがいかがか。
 日本政府も批准している子どもの権利条約は、18歳以下のすべての子どもに政治活動の自由を認めている。具体的には、12条「意見表明権」、13条「表現、情報の自由」、14条「思想・良心・宗教の自由」、15条「結社・集会の自由」―これがグローバルスタンダードである。日本政府も、国内法に優先して本来実施しなくてはならない国連子どもの権利条約はこのようになっている。いまの答弁だと、学内は規制されると。これは法的根拠はあるか。

【高校教育課長】
 ご指摘の通り、日本国憲法等において、国民すべてに政治活動の自由が保障されていることは承知しているが、一方で政治的中立性の確保、政治的な学習環境の確保の必要性の観点から、教育においては学内の活動が制限されることはやむを得ないことであるということだと思う。

【斉藤委員】
 法的根拠はあるのかと聞いた。憲法に違反する法律があったら、これは効力を発しない。高校生と国民に違いはない。そのことをはっきり答弁ができなかったら、答弁不能ということになる。法的根拠はないのではないか。

【高校教育課長】
 政治的活動の自由は保障されているが、一方では政治的中立性の確保といった要請もあるので、教育基本法第14条第2項にある政治的中立性の確保をすることが求められているので、そういったことが根拠になるかと考えている。

【斉藤委員】
 政治的中立性の確保は、学校と教員に求められているもので、生徒に求められているものではない。そこの違いが分かるか。

【高校教育課長】
 教員に求められる政治的中立性だが、教員が行う教育活動であるので、その教育活動の一環として政治的中立性が求められるということで、授業においても政治的中立性が求められるし、その教育活動が行われる学校という中では、生徒も同様に政治的活動が制限されるものと考えており、学校教育法第50条および第51条と、学習指導要領で定められている、目標・目的を達成するうえで学校というのは生徒を教育する公的な施設であり、学校の政治目的を達成するために高等学校の各校長は必要かつ合理的な範囲内で包括的な機能を有しているとなっている。

【斉藤委員】
 政治的中立性の確保というのは、学校・教員の授業に求められているもので、高校生の政治活動を規制する根拠にはまったくならない。法的根拠がないから、新通知はどういう仕組みで政治活動を規制しようとしているかというと、法的根拠はないので結局は学校長の責任で規制しなさいという仕組みである。規制したら憲法違反である。そういう意味で、文科省の通知は、今までの一律の規制は見直したが、残念ながら憲法・教育基本法に基づいて、国民一人一人と同じように高校生の主権者としての権利が規制されるとしたらきわめて重大だと思う。
 今の議論を通じて、高校生の政治活動は憲法上、そして国連子どもの権利条約からみて全面的に保障されるべきで、規制されたら憲法違反だと。そういう立場で正確に主権者教育に取り組むべきではないか。

【教育長】
 今般の法改正を受けて、具体的な各都道府県に対する通知のあり方について、国会の場でも議論がなされてきたと承知している。本来それぞれの法令というのは上位規範である憲法や条約等を踏まえつつ策定されるべきものと考えており、その中で例えば、憲法で基本的人権が保障されていると、それは日本国民固有の権利としつつも、これが公序良俗に反するだとか社会の安定に反していないかと、そういう中で一定の規制がなされるということは、合理的な理由があればそれは可能であると思っている。
 今回、文科省からそういう通知を受けたということであり、今後その運用についても全国での動きがさまざま出てくるかと思うので、まずもってこれを円滑に導入するということを踏まえつつ、今後のあり方についてはさまざま研究していきたい。

【斉藤委員】
 教育基本法はどのように規定されているかというと、第8条で「良識ある公民たるに必要な政治的教養は教育上これを尊重しなければならない」と。第2項として、「法律で定める学校は、特定の政党を支持し、またはこれに反するための政治教育その他政治活動をしてはならない」と。規制されているのは学校であり、そこの違いをしっかり把握して。教育基本法の解説では、「教育基本法で定めた政治教育とは、国民に政治的知識を与え、政治的批判力を養い、もって政治道徳の向上をもって施される教育である」と。政治活動の自由が保障されなかったら、こういうことは達成できない。
 副教材の中でも、「政治的に対立する見解がある現実の課題を取り扱うことは、生徒が現実の政治について具体的なイメージを育むことに役立つ」と。一部にこういうことがあった。北海道の選挙管理委員会が、出前講座で集団的自衛権をテーマにしたら、それは問題だと。あとで撤回されたが。憲法の問題をテーマにしたら偏向教育だと。いま異常な自粛が学校の中にはある。そして本来の精神から逸脱したこともあるので、憲法・教育基本法に基づいて、そして何よりも国連子どもの権利条約に基づいて高校生のこうした権利が全面的に保障されてこそ、社会人としての力をそのことにより初めて身につけることができると思う。
 実際、集団的自衛権、戦争法に反対するさまざまな諸活動で高校生も自主的に声を上げ始めている。新しい進歩だと思っている。そういうことは規制されてはならない。

・高校教育での観点別評価について

【斉藤委員】
 観点別評価が来年度から実施されると聞いて大変びっくりした。観点別評価というのは義務教育の段階では、意欲・関心・態度と、抽象的な評価で生徒を評価するやり方で、義務教育の段階ですでに破たんしていると思う。それを高校教育で来年度から進めると聞いて大変驚いた。観点別評価をなぜ高校教育で来年度から実施することになったのか。
 そのためにどういう取り組みをしているのか。これからするのか。現場では、今までの生徒の出欠状況を全部パソコンに入れ直したりと深刻な多忙化になっている。いま学校の先生が子どもたちと向き合う時間がないというときに、なぜこんな新たなムダな仕事をしなければならないのか。本当に子どもたちを中心にした高校教育を進める上では、障害にしかならないのではないか。
 観点別評価の具体的中身、どういう観点別評価をして、それは何に役立つのか。何のためにやるのか。

【高校教育課長】
 経緯については、観点別評価については、小中については導入され定着している状況である。高校においては、文科省における中教審の指摘にもあるが、高校については小中より遅れていると。観点別評価については、現行の学習指導要領の前の学習指導要領、平成15年近辺から小中高において段階的に導入されているが、前学習指導要領において観点別評価に基づいて指導した内容が生徒にどの程度定着しているかということを評価し、それをさらに教員の指導力の改善につなげるように、指導と評価の一体化と言われているが、それに資するようにということで導入されている。前学習指導要領においては、小中高において観点別評価を導入するように言われていたが、小中については定着しているが、高校についてはまだ不十分なところがあり、現行の学習指導要領においても引き続き観点別評価をするということが強く求められており、現在検討が進んでいる次期学習指導要領においても、この考え方についてはさらに深める必要があるとされている。ただし、教員の負担については軽減する配慮が必要だという風にもなっているので、今後の観点別評価については、教員の指導と評価の一体化を進める上でも必要とされる評価と考えている。
 本県においては、前学習指導要領の際には、なかなか導入が進まなかったわけだが、生徒の学力の状況、教員の指導力の状況等も踏まえ、23年度に本県において導入を決定した。完全実施は28年度と定め、5年間にわたり段階的に準備を進めてきた。具体的な取り組みとしては、各教員に対する研修を通して観点別評価の理解を図ってきたし、各学校で定めている担当者を集めた研修会も行ってきた。
 教員の負担への配慮だが、たしかに負担は増えるので負担軽減のために校務支援システムを導入して負担軽減を図ろうとしている。それについても、3年間にわたって段階的に、25年度においては7校、26年度においては27校、28年度に残りの高校にすべて導入して全面稼働という日程としている。なかなか校務支援システムについても、今までなかったものが入るので、慣れるまでの間はたしかに負担が増すと思われるが、現在運用している教育行政ネットワークも、導入当初はなかなか定着されなかったが、現在は完全に定着しており、これなしでは校務は成り立たないほど定着しているので、校務支援システムについても、導入後は慣れることによって観点別評価の負担軽減につながるものと期待している。
 観点別評価の中身だが、従来のテスト、期末考査をやって点数をつける、それだけの評価ではなく、もう少し目的・目標を踏まえて、観点別に4観点、評価によっては言い方が変わってくるが、一般的には4観点というのは、関心・意欲・態度、思考・判断・表現、技能、知識・理解といったものに、分析的に生徒の学習の状況を評価して、その評価に基づいて、生徒・保護者にとっては今後の学習活動につながるように、教員にとっては自分の授業等の改善につながるようにということで、指導と評価の一体化ということを目指して行われる。
 導入にあたっては、形だけにならないよう、目的を踏まえてしっかり意義のあるものになるよう取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 教員の負担は増えるということは認めた。校務支援システムをやっても、だいたい生徒一人一人を関心・意欲・態度などで評価するというのは、毎日生徒を評価しなければならないということになる。だいたい小中学校で子ども一人一人に接する時間がない、いじめも実態も把握できない事態が起きているときに、そんなことができるわけがない。できないし、まったく必要もないことだと思う。
 高校で80時間以上、100時間以上超過勤務している先生はどのぐらいか。

【教職員課総括課長】
 今年度第二四半期ということで申し上げると、80時間以上100時間未満が3.8%、100時間以上が5.2%となっている。

【斉藤委員】
 合わせると9%が過労死水準である。本当にいま高校教育全体が過労死水準にあるという中で、また新たな複雑な課題を押し付けるとなったら、本当に高校教育、高校再編をやる意味がなくなるぐらい矛盾を抱えることになると思う。
 全国的な実施状況はどうなっているか。

【高校教育課長】
 47都道府県の実施状況は把握していないが、本県における導入にあたっては、神奈川県が先進的に取り組んでいる県であり、神奈川県に視察に行き、いろいろ情報提供を受けている。

【斉藤委員】
 全国の実施状況を把握していないのは無責任である。やっているところはいろんな課題や問題が出ているので。小中、高校も含めて、先生方はゆとりをもって子どもたち一人一人に寄り添った教育ができるかどうか、いまはそれができていない。いじめ問題の根本にあるのはそのことである。さらに観点別評価だと。これは上から目線である。寄り添うという発想ではない。そういう意味で、この観点別評価の実施は大変問題があると思う。

・統合に関わる校舎制について

【斉藤委員】
 岩手型の校舎制と言っているが、分校と本校とも違うと。青森県では、校舎制が実施された経過があるが、青森県の校舎制とも違うということだと思うので、岩手型の校舎制とはどういう中身をもつものなのか。

【高校改革課長】
 本県で導入しようとする校舎制は、学校運営において統一した基本方針のもとに複数の校舎を使用し、1つの学校として機能させるというもので、従来の本校・分校とは異なり、大学におけるキャンパス制のイメージである。校歌・校章・制服については、1つの高校として共通のものを使用し、それぞれの校舎での授業を基本とし、必要に応じて教員が校舎を移動して行う校舎ごとの授業と、生徒が移動して授業を合同で実施することで、多様な交流機会、社会体験の場を広げる複数の校舎の合同事業を効果的に組み合わせていくことを想定している。この他に、生徒数増にともなう部活動の活発化や専門学科高校の実験・実習施設の有効活用等のメリットがあると考えている。
 青森県の校舎制については、実情としては、これまでの本県における本校・分校の関係に近いものと認識している。

【斉藤委員】
 本校・分校と今回の校舎制はどこが違うのか。例えば、久慈東と久慈工の場合、結局工業科1学科になる。そうした場合、教員の確保という点でメリットがあるのかないのか。

【高校改革課長】
 校舎制は、専門学科高校が小さくなる際に、その学科の専門性を維持して、生徒の選択肢を確保するための1つの方法として考えている。本校・分校では、それぞれ1校としての運営になっているが、校舎制として複数の校舎を1校として運営し、それぞれの校舎を有効活用することにより、学校の規模を生かした学校運営が可能になるということで、小さくなった専門高校を専門学科なり実習のみに使うのではなく、普通科教諭の他校舎への派遣など、それぞれの校舎での学習を行いながら、多様な交流機会や社会体験の場を広げる合同学習を組み合わせることによっての活性化ということを考えている。
 こうした形で学校規模を生かした学校運営が可能となることで、普通科と専門学科の校舎制の場合、普通科で就職を希望する者が専門学科の教諭による就職指導を受けられることによる進路の幅が広がることや、専門学科同士の商業・工業の場合では、工業科で進学希望者への対応が可能となること、そして工業科への求人を学校全体で活用できるなど、就職指導の幅が広がること等も想定される。
 教員の配置だが、本校・分校では、分校であれば1学級規模での教員配置ということになるが、校舎制になると、2つの校舎だと、例えば4+1ということになると、5学級規模の教員配置の中でA校舎B校舎という形での学校運営が考えられるということでメリットが出てくるのではないかと考えている。