2016年1月15日 復興特別委員会
灰IOジャパン問題に関する集中審議での質疑(大要)
【斉藤委員】
県の責任について。今回の会計検査院報告というのは最終結果である。きわめて重いものがあって、変更されるものではない。緊急雇用事業における不正支出は4378万円余で、山田町の大雪りばぁねっと。の1300万円余を含めると5692万円余の不適正支出が指摘された。この不正支出は、事業主体ではどういう責任なのか。県はどういう責任があるか、分けて答えていただきたい。
【商工労働観光部長】
答弁としては、本日配布している資料の3ページの表にあるところが、不適正な事実の記載であり、下の部分に書いてあるのが、それに対する会計検査院の責任の表現だと考えている。
【斉藤委員】
会計検査院の指摘はその通りで、県はどう受け止めているのかと。あなたはそれを解釈しているだけである。この指摘を受けて、県はなぜこれだけの不正支出が発生したのか。どこに原因があるのか。
【商工労働観光部長】
県に対する会計検査院の指摘の内容については、甚だ残念だが、その通り受け止めざるを得ないと思っている。会計検査院は、事業主体である市町、基金設置の県、厚労省、それぞれについて指摘をしており、その内容は指摘の通りだと考えている。
【斉藤委員】
部長がその答弁しているようではいけない。もっと責任をもって対応しないと集中審議の意味がない。
会計検査院の検査結果は大甘だったと思う。こんな甘い検査があるのかと思うぐらい驚いた。会計検査院の報告の中では、過大額は4億9305万円だと。過大なリースはこれだけあったのだと、本来これは不適正なものだということである。しかし逃げ道があって、厚労省にリースの適正な基準がなかったから見直された。こんな甘いものはないと思う。緊急雇用事業では50万円以上の財産取得ができない。7ヶ月や1年で物件価格より高いリース料を設定して、翌年無償譲渡したと。こんな不正をなぜあなた方は見抜けなかったのか。だから問題が拡大した。
山田町のNPO問題のときに、何が転換点になったかというと、御蔵の湯である。建設事業だったものを県は認めてしまった。それから不正が拡大した。だからリース料はきわめて重大だとなっていた。今回もリース料である。物件価格より高いリース料を7ヶ月で設定していた。なぜこれを不正だと見抜けなかったのか。
【雇用対策課長】
緊急雇用創出事業では、事業を実施するうえで必要な財産取得については、50万円以上のものは認めないという取り扱いにはなっている。そういった物品については原則としてリースで対応するとなっている。
県・市町村では、要項・要領に照らし合わせながら、疑問な点等については厚労省に照会しながら対応してきたところであり、25年5月13日の厚労省のリース契約の取り扱い通知もあったことから、その通知によってその時点で適当な判断として実施してきたものである。今般、会計検査の中で、それについては措置済み事項となり、今後の制度の改正、全体としては緊急雇用事業の実施要領の中でそういった部分が明確になっていなかったということが指摘され、措置済みになったと理解している。
【斉藤委員】
実は、25年4月23日に、県が厚労省に問い合わせた文書がある。「買い取り費用と同額を1年以内のリース料で支払うという点で、分割払いでの財産取得とも考えられるが、当該リース料を事業対象経費として認めて良いか」と。厚労省の回答は「受託業者の会計処理で、賃貸借処理とする場合は、リース料全額を事業対象経費として構わない」と。厚労省も共犯だと言っている。何千万円ものリースを翌年無償譲渡、こんなことが緊急雇用事業で認められるわけがない。しかしあなた方はチェックしないで、厚労省を巻き込んだ。だから結果的には、4億9000万円過大だが、不適正にならなかった、返還を求められなかった。求められたのは10分の1である。不正の出発点はここにあったと思う。こんなデタラメなことをやる委託事業者だった。ここが一番の問題である。あなた方は1年後に、物件価格より高いリース料と把握していた。こうやって市町村の誤りをあなた方は認め、厚労省まで認めたから不正が不正でなくなった。だから問題が拡大したのではないか。
【商工労働観光部長】
その評価については、私からのコメントは差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
不正の実態について、なぜ過大額という風に会計検査院が指摘したか、そのことをあなた方が重く受け止めなければいけない。
実は釜石だけは返還が求められた。契約書に特約事項があったからである。あとは無罪放免である。二戸は見積書に特約事項があった。あとのところは特約事項がなかったが無償譲渡した。契約に書いてあってやった方がマシである。あとは密約で行っているのだから。契約にもないのに、翌年無償譲渡されている。こんなことを厚労省が認めたこと自身が異常だと思う。契約にあったらダメ、密約だったらOKなどという、これが今度の実態である。会計検査院の報告にはこういう重大な問題点がある。その点についての認識はどうか。
【商工労働観光部長】
会計検査院の検査報告書以上のコメントをする立場にないと思う。
【斉藤委員】
過大額という風に指摘したのは、会計検査院のせめてもの良心だと思う。しかし厚労省が認めたものを悪者にできなかった。ある意味でいけば、会計検査院と厚労省が結託したと思っている。そういう中身である。だから厚労省は一言も反省していない。
そもそもこの緊急雇用事業がまったく実態に合っていなかったことを指摘したい。最初どのように始まったかというと、オペレーターの研修の基本期間は4ないし6ヶ月で始まった。実際は、3ヶ月研修して4ヶ月以降は仕事をさせられている。しかし、最初は4ないし6ヶ月だった。それに加算して1年間に延長した。その理由は何か。いわば正規職員の確保のためだと。正規職員になるべき能力を確保するために1年に延長した。しかし、今までもコールセンター事業はあるが、緊急雇用事業でやったところは1つもない。今回初めてである。盛岡は、DIOジャパン以外に3つがコールセンター事業をやった。不当なリース料を計上したのはDIOジャパンだけだった。1億8000万円、あとは数百万円である。今回のはおかしいと気づかなければおかしい。コールセンターなど基本は3ヶ月で、それを1年に延長してしまった。だから結局研修でなく仕事をさせられる。委託事業とは違った事態が起きた。コールセンター事業というのが、実態としては緊急雇用事業の名に値しないものだった。この指摘をどう受け止めるか。
【雇用対策課長】
コールセンターの研修事業については、コールセンター側から立地市町に提示された研修計画に基づいて、コールセンター人材の育成を目的として研修事業が実施されたと理解している。立地市町では、DIOジャパンがすでに宮城県内で開設していたコールセンターで、長期の人材育成事業が行われていたという前例もあったことから、DIOジャパン側から提出された1年間の研修計画を必要な研修計画と認めて実施したものである。
【斉藤委員】
結局不正が起きてしまったということは徹底的に検証すべきである。そもそもこの緊急雇用事業に無理があったということである。今までコールセンター事業でこんな例はないのだから。そして盛岡は、他に3つのコールセンター事業をやっている。リース料は全然額が違う。
そしてDIOジャパンは企業誘致で来た。企業誘致で何でも仕事をするというところが、コールセンターの機器を全部税金で整備することはあり得るか。他の事業はそんなことはやっていない。これが企業誘致の実態ではないか。そういうところに気づかなかったところが大問題である。盛岡の4つの違いを分かっていたか。コールセンターの機器を全部税金で整備しようとするという実態は分かっていたのではないか。そこに異常さを感じなかったか。
【雇用対策課長】
リース料の取り扱いについては、制度上特に明確なものがなかったということで、経費として認めざるを得なかったということである。
【斉藤委員】
質問に答えていない。リアルに言うと、盛岡は、BPO人材育成事業で、パソナ、ライフパートナー、ISFネットライフが同じ事業をやっている。リース料はどうなっているかというと、パソナ910万円、ライフパートナー845万円、ISFネットライフ892万円、DIOジャパンは1億8222万円である。同じコールセンター事業でなぜこんなに違うのか。この違いに気づかなかったからチェックの意味をなさない。ましてや企業誘致で、そのままコールセンター事業をやるというところが、こんなやり方で本気なのかと。あなた方は節穴だったということにならないか。
【雇用対策課長】
リース料の取り扱いについては、すでに行われていた先例等も参考にして、他の県で認められていたというような例もあったと聞いているので、そういったものを参考にしながらDIO側から出された事業内容について審査して支援対象として認めたということである。
【斉藤委員】
例は登米市で、登米市は岩手どころではなく大失敗した。それを真似したのである。自分たちでチェックしなければいけない。
企業誘致で、コールセンターの機器類を全部税金で整備することはあり得るか。これがまともな企業だと思えるか。
【企業立地推進課総括課長】
コールセンター事業については、初期投資がかなりかかることは承知している。県でも、14年から16年度に、コールセンター事業に対して直接補助をした経験もある。その際、設備投資については10分の2、通信費や家賃については2分の1それぞれ補助したということで、1社あたり平均すると、記憶だが5200万円ぐらい補助をしたこともある。そういった意味で、初期投資軽減のために制度活用するという認識の中で誘致したところである。
【斉藤委員】
高額な価格が物件価格を超えていたのが実質の買い取りでなくて何なのかと。そういうのが実態である。これがまともな商取引だと思うか。企業の善し悪しはそこで分かる。
この緊急雇用事業は、事業計画の段階でチェックされなければならなかった。例えば二戸コールセンターは、1年間は緊急雇用事業、2年目は1億6000万円の事業収入をあげる、3年目は2億円の事業収入をあげると言っている。1年間全て税金でみて、2年目3年目に事業収入をあげると、何の根拠もなかった。もしこの事業収入がまともだったら、1年目にそれなりの事業収入があるはずで、それがなかった。隠したものもあったが。事業として成り立たないというのは1年目で分かったはずである。完了検査をやるときにこの事業計画は破たんしていた。そういうことをチェックするのは県の完了検査の前提ではないか。そういうことはチェックしたか。
【雇用対策課長】
完了検査にあたっては、実施要項に定められている基準にしたがい、基準に合致するかどうか、その対象と認められる経費が計上されているかといった観点で審査し、基準にあったものは対象経費として認めたということである。
【斉藤委員】
企業誘致で来て、1年間は税金で全額面倒をみて、2年目から事業をしようというときに1年目の事業収入がなかったら、なぜ2年目に1億6000万円の事業収入となるのか。破たんするのははっきりしているのではないか。なぜそういうことをチェックしなかったか。事業の見通しが1年目でなくなったのではないか。
【雇用対策課長】
緊急雇用サイドにおいては、補助金としての審査をして、その中で収入があるのかどうかといったあたりは、市町村とコールセンター側の契約書に、収入があった場合には報告するようにということでやっていた。収入については、DIOジャパンから報告がなく、収入はなかったものとして、その前提で各経費について清算したということである。
【斉藤委員】
これは企業誘致と一体でやったということが特徴で、だいたい1年間税金でみること自体が正しくなかったと思う。
そして実際、働いている従業員からたくさんの内部告発を受けたが、3ヶ月の研修、それはまともな講師ではなく素人の講師だと。そして4ヶ月目からは別の仕事、東京や九州への出張がやられている。研修事業としても実態がずれていたと思う。そういうことは把握しているか。
【雇用対策課長】
今回国の調査を進めるにあたり、厚労省の指示により従業員の調査を行っている。コールセンターの元従業員のうち、市町村で連絡が取れる方に聞き取りや郵送等で研修の状況等について調査をした。その結果、今回の会計検査院の報告として、研修とは認められない業務があったという指摘にまとまったということである。
【斉藤委員】
秋田県は、破たんする前にDIO本社に確かめて、4千数百万円の収入を確定させている。あなた方はそれをしなかった。盛岡市の調査では、98人の従業員の調査をして37人から回答があり、16人が30日を超える長期出張を行っていた。これは市長が記者会見で明らかにした。市町が全部調査をしているが、何人の調査をして何人から回答があって、別な仕事をさせられたという報告は何人からあったのか。
【雇用対策課長】
ご質問の点については、厚労省調査で公表されていないので、我々としては答弁を差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
不正の実態を明らかにしないと責任が明らかにならない。具体的に指摘して聞いている。この緊急雇用事業としてまともにやられなかった、それを事業主体も県もチェックできなかったのが一番の問題があると思う。本当にこの責任は重大だと思う。
今回不適正と指摘された4063万円というのは、こんなものではない。過大額のリース料4億9900万円は事実上財産取得で不正である。厚労省も共犯になって免罪されただけだと思う。しかしそういうことを見逃してきた。なぜ不正が起きたのか、どういう不正なのか、そのことを自ら解明しないと、お金の問題ではない。
大雪りばあねっと。であれだけ議会で議論しあなた方も苦労をした。全然生かされていない。不正の実態と原因、責任を明らかにしてこそ教訓になる。返還額の問題はその後の話である。
いくつか具体的に指摘したが、部長は不正の実態をどう受け止めているか。それはなぜ発生したと思うか。
【商工労働観光部長】
私の知り得るところでは、会計検査院で指摘のあった内容以外のことについては私は存じ上げないものである。
【斉藤委員】
部長では全然ダメだということが残念ながら議論の中で明らかになってしまった。
消費税については、まったく初歩的なミスだった。消費税については、あなた方は通知を出していて、市町も見逃す、県も見逃すと。こんな初歩的なミスがなぜ起こったのか。どのように反省しているか。
【雇用対策課長】
消費税の取り扱いについては、24年3月に厚労省から、会計検査院の実地検査において緊急雇用事業の受託者が消費税の免税事業者であるにも関わらず、事業費に消費税分を支払っているケースが散見され、消費税の取り扱いを適切に行うよう全国の都道府県に通知があった。県においても、4月に同通知を市町村・振興局宛に通知して徹底を図ったものである。
今回の会計検査院の指摘になったということについては、事業者の実績報告により、消費税が計上されていたという事実があり、また市町村でもそういったことから課税事業者であったのだろうと思っており、また県においてもそういったところを指摘できなかった点はあると思っている。ただ、厚労省の調査によると、他県でも同様の事例があったので、これも全国的な問題であろうと思っている。
【斉藤委員】
反省が足りない。他の県でも間違っていたからなどというのは余計な話である。だいたい事業が始まる前の段階で通知をしていて、事業主体も県も見逃すと。初歩的なミスを通知まで出していてやるというところに重大な問題がある。
事業主体の責任と、補助事業者としての県の責任の違いを明確にしていただきたい。いま厳しくしたように、県の責任・関与はきわめて重大だと思う。しかし同時に、事業主体は市町で、市町の仕事である。市町自ら監査もチェックもして、ここが第一義的な責任を持っていると思う。一関市長の議会の答弁(「県にも応分の責任があると考える」)は、きわめて重大だと思うが、あなた方は甘んじてこれを受け止めるか。
【雇用対策課長】
この事業というのは、県からの補助、市町村からは委託という形で行われたものである。補助事業においては、事業の実施主体というのは補助金の交付を受けた者である。補助金の場合は、実施上の責任というものについては、やはり実施主体で負うというのが一般だと理解している。
【斉藤委員】
責任とどう負担するかは次元の違う話で、分けて考えるべきである。あなた方はまず具体的な責任を認めていない。これでは市町と認識を共有できない。市町も不正の実態について認識がきわめて甘いと思う。「県と一緒にやったから」では済まない話である。この問題は、あなた方自身が、どこに県の責任があったのか明らかにしなかったら市町と共有できない。
負担の問題で考慮しなければならないのは、山田町の問題である。大雪りばぁねっと。で、県の関与が厳しく問われて、重大だったと思うが、6億7000万円も返還した。今回1300万円また不正支出を指摘され、12月の町議会で通った。事業主体はそういう大きな責任を持っていると思う。そことの関わりも考慮しなければならない。だからといって県も負担なしでいいとは言わない。言わないが、やはり事業主体というのはそれだけ重大な責任が本来はある。だから県がどういうところでミスしたのか率直にお詫びしなかったら、本当の意味で解決にならないと思うが、部長はこの質問に答えられるか。
【商工労働観光部長】
我々としては、会計検査院からの指摘を真摯に受け止めるしかないと思っている。
【斉藤委員】
残念ながら責任感がないし、会計検査院の指摘は大甘で、不正はこんなものではない。本当に徹底して検証し、県もそこから教訓を引き出して、真摯に関係市町と向き合うべきである。そうやって信頼関係をつくらなければいけない。責任も認めない、負担もしないというスタンスだったら進まない。そのことを指摘しておきたい。