2016年2月10日 復興特別委員会
灰IOジャパン問題に関する集中審議での質疑(大要)
【斉藤委員】
この間、決算特別委員会・商工文教委員会・復興特別委員会での集中審議が行われ、今回知事を迎えての集中審議となった。この間の論戦を踏まえて、総括的に知事に質問したい。
DIOジャパンコールセンター問題とは何だったのか―。1つは、企業誘致の失敗・破たんであり、もう1つは、緊急雇用事業―国民の税金を食い物にして労働者を解雇・雇止めにして破たんした問題だったと。事業主体である市町とともに、知事・県が深くかかわった問題だったが、知事としてどう関与して、その二つの破たんに対してどう責任を受け止めているか。
【達増知事】
誘致について。DIOジャパンでは24年1月6日に、盛岡市および花巻市の物件を視察するとともに、1月23日には、DIOジャパンの社長が盛岡市長を訪問するなど、本県への進出をほぼ決めたという報告が所管部局からあり、できるだけ早い時期にDIOジャパン本社を訪問すべきと判断し、上京の機会があった1月26日に訪問した。企業誘致においては、トップセールスが企業側の意思決定に大きな影響を与えると考えられることから、これまでもさまざまな企業の方々と面会させていただいているところであり、DIOジャパンに対しても同様の対応を行ったものである。
DIOジャパンから本県への進出の打診があった際には、同社は緊急雇用創出事業を宮城県登米市のコールセンターでもすでに導入し開設していたことから、本県の進出にあたっても、緊急雇用創出事業の導入を望んでいたものである。県は、市町村に対して、広域的・専門的立場から、企業情報や業界動向などの情報提供を行い、その上で市町村が主体的に誘致を決定したものと考えている。
今回の事案は、企業誘致にあたって、被災地の復興を掲げて進出する一方、立地市町および県民に多大な被害を及ぼしたものであり、きわめて遺憾である。一方、会計検査院からは、市町は受託者から提出された委託事業に関する実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったこと、県は市町から提出された実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったこと及び市町に対する指導監督が十分でなかったこと、厚労省は本県に対する指導監督が十分でなかったこと―との指摘がなされており、県にたいする指摘については十分に真摯に受け止めるものである。
このため、緊急雇用創出事業の中間段階における検査の徹底を図るとともに、補助事業等の適正執行に向け、会計事業等のスキルを有する職員による内部考査や、本庁と広域振興局の双方の職員で事務処理を確認するダブルチェック、さらには補助金等審査委員会を設置して制度設計段階で補助事業の内容等を審査するなどの対策を講じてきているところであり、引き続きこうした取り組みにより再発防止に努めていく。
【斉藤委員】
DIOジャパン問題というのは、最初は企業誘致の問題として県から全市町村に情報提供されただけに、関係市町村は大変期待して取り組んだ。しかし結果的に7つのコールセンターが破たんした。この結果責任はきわめて重大だと思う。
DIOジャパンの企業誘致に当たって、知事がDIOジャパンを訪問し、小島社長と面会するなど、結果として前のめり・行き過ぎだったのではないか。この時点では具体的な企業誘致は正式に一つも決まっていない。
そういう中で、解雇・雇止めされた労働者の把握と賃金未払いはどうだったか。その後の対応はどうだったか。現在の雇用状況はどうなっているか。
【達増知事】
26年6月以降、事務所の閉鎖により解雇された従業員は、岩手労働局によると、DIOジャパン関連コールセンター7事業所のうち6事業所において離職者135人が発生、うち求職申し込みを行った122人にたいし職業紹介等が行われた結果、27年9月末時点で未就職者は0となった。
県内の事業所に勤務されていた元従業員への未払い金の状況は、当時の受任弁護士からの情報では、DIOジャパン本社の所属となっていた方々の分も含めて、総額約3400万円・延べ315人となっており、すべて国の立て替え払い制度による立て替え払いが完了したと把握している。
【斉藤委員】
7つのコールセンターで新規に雇用されたのは838人だった。本来なら、838人の雇用を守らなければならなかった。しかし緊急雇用事業が終わった途端に雇い止め・解雇と。実際に閉鎖する時点で首を切られたのは135人だが。そこの事態の重大性はあるし、未払いは3400万円・315人分、立て替え払い制度は8割で、全額払われたわけではないので、この点でもDIOジャパンの破たんの責任はきわめて重大だと指摘しておきたい。
会計検査院の報告でも指摘された緊急雇用事業における不適正支出の実態とその責任について。不適正支出とされた主な支出項目とその総額はそれぞれどうなっているか。その具体的な要因と県の関与、完了検査はどうだったか。
【達増知事】
これは詳細にわたるもので、担当部から答弁させたい。
【雇用対策労働室長】
不適正支出とされた主な支出項目等だが、事業に関係のない機器のリースが595万7925円、OJT研修ではない出張先への業務への従事が1381万8891円、免税事業者に対する消費税相当分の支払いが1608万4913円、譲渡特約を付した過大なリース料が375万7302円であり、その他の指摘事項を含め総額4378万6651円となっている。
具体的な要因と県の関与について。リース関係では、研修と直接関係のない物品は対象除外とするよう取り扱いを定めていたところだが、この取り扱いが徹底されていなかったもの。出張先の業務従事については、県・市町とも業務日誌に記載された内容でOJT研修として認めていたが、今般の一連の調査により、市町が当時の従業員への聞き取り調査等で「営業業務に従事していた」との回答があったものや、厚労省からも情報提供を受けながら、全国的な基準のもとOJT研修と認められないものは全て対象外としたもの。消費税については、24年4月に県内市町村および各振興局宛に免税事業者の取り扱いに注意するよう周知し徹底を図っていたところだが、コールセンターからの提出された実績報告書に消費税分の報告があったことから、課税事業者であると誤認し事業対象としたものととらえている。
譲渡特約を付したリース料については、立地市町が24年度事業の完了確認にかかる事務を行う中で、リース満了後物件を無償譲渡する特約があることに気づき、当該リース契約を事業対象とすることの可否について、25年4月中旬、関係市から県に相談があり、その取り扱いについて厚労省に照会した。厚労省では、25年5月13日付の通知により、今後契約を締結する事業については、リース契約終了後に無償譲渡する旨の特約のあるリース契約は認められないものとしていたが、会計検査院の指摘により、通知以前の24年度事業についても不当事項と指摘されたものである。
【斉藤委員】
総額で4378万円の返還が求められた。不正の中心は過大リースだったと思う。これはわずか375万円しか請求されていないが、そんなものではない。会計検査院の報告で過大額と指摘されているので実態をあとで示していただきたい。
この間何度もここで明らかにしてきたが、この過大リースというのは、物件価格を超えるリースだった。そして翌年度無償譲渡というのがほとんどだった。これは厚労省の基準がなくても、本来不当として対応しなければならなかった問題だと思うが、知事はこの過大な物件価格を超えるような異常なリースの実態について、いつ把握してどのように担当部局に指導したか。
【達増知事】
立地市町が24年度事業の完了確認を行う中で、リース満了後物件を無償譲渡する特約がある契約内容となっていることに気づいて、当該リース契約を事業対象とすることの可否について、25年4月中旬に関係市から県に相談があり、その取り扱いについて厚労省に照会した。厚労省では、25年5月13日付通知で、今後契約を締結する事業についてはリース契約終了後に無償譲渡する旨の特記のあるリース契約は認められないものとしていたが、会計検査院の指摘により通知以前の24年度事業についても不当事項と指摘されたわけだが、こうしたことを私が把握したのは26年夏の所管部局からの報告によってである。
【雇用対策課長】
過大と指摘された額は、7市町のほかに北上市・山田町も含む金額だが、4億9930万7722円となっている。
【斉藤委員】
この問題はきわめて深刻で、繰り返し実態も明らかにしてきた。二戸のコールセンターの場合、例えばデスクトップディスプレイ、物件価格が348万円にたいし7ヶ月リースで362万8100円である。物件価格を超えるリース料になっている。ノートパソコン物件価格108万4900円が7ヶ月リースで113万500円、軒並みこうなっている。二戸コールセンターのコールセンター関係機器のリース料、物件価格の総額は4610万円だった。リース料は4803万8000円、これがリースなのか。買い取りではないか。それを担当課が25年7月中旬に把握していた。これを認めたことがコールセンターの不正を野放しにした、問題を拡大した一番の問題だったと思うが、知事はどう受け止めているか。
【達増知事】
県・市町においては、要項・要領に照らし合わせながら、疑問な点等について厚労省にも照会しながら対応してきたところであり、25年5月13日の通知があったので、その時点では事業対象として認められるものと解釈していたわけである。こうした中、いわゆる1年リースについて、岩手県として制度上あいまいな部分を指摘して会計検査院の報告において、厚労省の改善処置済み事項となるという風に、緊急雇用創出事業の制度自体の問題もあったと認識している。
【斉藤委員】
それでは知事の反省が足りない。物件価格を超えるわずか7ヶ月のリース。25年5月13日付の厚労省通知が出て、25年度以降はだめになった。なぜ24年度では認められるのか。ここにも厚労省の矛盾がある。あなた方は厚労省を巻き込んだから共犯関係にあると言っているが、これが問題を見過ごして拡大した。このときに厳しく対応していれば問題を拡大することはなかった。山田NPO問題のときの1つのポイントは、御蔵の湯のリースを認めたことが不正を食い止めるチャンスを失ったと指摘したが、今回のDIOジャパンのリース問題はここが1つの焦点だった。ここであなた方がとんでもないものを認めたから、問題は拡大して破たんした。
委託対象のリース料は全体で4億7000万円だったが、これはほとんど無償譲渡・定額の取得で、翌年無償譲渡になった。二戸コールセンターは、事業計画で1740万円当初は計上されていた。7ヶ月のリースで元をとっているのに指摘されるまでは2年目の事業計画にもリース料を計上していた。それが1740万円。こんな悪質なやり方があるか。こういう事業者だったから破たんした。だからやはり反省しなければならない。
もっと重要なのは、過大リースで返還を求められたのは釜石だけだった。契約書に特約が書いていたからである。他のところは特約を書いていなかった。二戸は見積書に明記されていた。見積書に書いても同じ、ましてや契約に何もないようにして翌年無償譲渡したら密約である。こちらの方が本来は罪が大きい。あなた方はこういうところもしっかり見なければならない。契約にもない無償譲渡を認めた、二重の責任があるのではないか。
【達増知事】
やはり会計検査院の報告にもあったように、厚労省の指導監督も十分ではなかったが、県としても市町から提出された実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったし、市町に対する指導監督も十分でなかったということで、結果として市町が受託者から提出された委託事業に関する実績報告書等の内容の調査・確認が十分でなかったという事態を引き起こしたわけであり、この点を真摯に受け止めなければならないと考える。
【斉藤委員】
25年9月の決算特別委員会の集中審議で、「密約というのは特約事項になるのか」と質問したら、当時の室長が「結果的に無償譲渡されたところは全て特約条項があるものと理解している」と答弁した。驚くべき答弁である。これだったらみんな返還しなければならなかった。それだけの大きな問題だった。だから、今回不適正支出で返還が求められた4738万円と過大額の4億9000万円は、一緒にして不正の深刻な実態を受け止めなければならない。
OJT研修ではない出張先の業務への従事について、1881万円不正だと。働いている従業員の話は、「緊急雇用事業の研修は3ヶ月。4ヶ月目以降は出張に行かされた、仕事に従事させられた」と。研修の実態は3ヶ月、その研修も専門的な講師はほとんどいなかった。実態とすれば緊急雇用事業にあたらなった。この検証も必要である。そして、仕事に従事させられたら収入が発生する。その収入はほとんど報告されていない。なぜか。そして盛岡市が全員協議会に出した資料を見ると、売り上げ高が2497万円あったと。しかしそれ以上の経費があったから返還の対象にならなかったと。それ以上の経費とは何か。税金をたくさん使っておいて。私は市町の報告は全て明らかにすべきだと思う。4ヶ月目以降の仕事の実態をどう把握しているか。
【雇用対策課長】
当事案に関する結果の発表というのは、会計検査院および厚労省から発表されている内容であり、さらなる詳細については国として発表していないことから、県としては発表できかねると考えている。
【斉藤委員】
委員長にお願いしたい。全員協議会で報告された盛岡市の県を通じて国に報告された文書を持っているので、市町の報告書を明らかにしていただきたい。そうしないと検証できない。どれだけの収入があったのか盛岡市は書いているので。そしてなぜこれ以上の経費があったのかも示していただきたい。それは示せるか。
【雇用対策課長】
緊急雇用創出事業については、仮に事業を通じて収入があった場合には、その収入をあげるために要した経費については、適当なものについては控除できる規定になっており、そういったものを見ながら、内容としては事務所の経費だとか管理的な部分の経費が含まれているというものである。
【斉藤委員】
盛岡市は全員協議会で、返還する自治体がどういう調査をやったか明らかにしないで返還などできないので、これは明らかにされるものなので、委員長しっかりやっていただきたい。
なぜ厚労省・会計検査院がこのような不十分な報告書になったのか、厚労省を巻き込んだ不正だったというところに問題のもう1つの重大性があったと思う。厚労省の責任もそういう意味では免れない。
企業誘致の破たんについて改めて聞きたい。二戸市コールセンターの場合、1年目は緊急雇用事業、2年目の事業収入は1億6千万円、3年目は2憶円となっていた。1年目に事業収入がまったくなしで、2年目から1億6000万円の収入が突然発生するとは考えられない。企業誘致だったらそういう事業計画をしっかり把握して、1年目で継続できるかどうか判断できたと思う。そういうことをやったのか、やらないのか。その辺についての反省はどうなのか。
【達増知事】
市町がDIOジャパンコールセンターに業務委託した内容は、緊急雇用創出事業を活用した被災求職者の1年間の短期雇用による人材育成事業だったので、市町が確認すべきだった内容は、当該人材育成事業計画であり、企業活動としてのコールセンター事業計画そのものではなかったところである。県としても、市町が作成した当該年度の人材育成事業計画について、緊急雇用創出事業の要件に該当するか否かを確認していたものであり、企業全体の事業計画の内容については知る立場になかったものである。
【斉藤委員】
事実経過はそうだったかもしれないが、反省が足りないと。企業誘致したんだから、記者会見もして、協定も結んで。そういう企業が継続して事業をできるか。1年目丸ごと税金で事業をやって、2年目からまともにやりますなどという。1年目からそれなりの事業収入があって当たり前である。本当に誘致企業として成り立つには。そういうチェック・検証をしないといけない。税金を使ったらあとは知らない、破たんしたと。
例えば、洋野コールセンター、1年経過した25年夏ごろ、雇い止めが発生している。緊急雇用創出事業の期間中である。だから労働組合が10月につくられ、しかしその労働組合をつぶした。洋野町もそういうものに加担したといっても仕方がない。雇い止めが発生して労働者の雇用を守れという告発や訴えが県にも翌年の1月に出された。内部告発も岩手県に4件具体的なものが出された。それに対して県はまじめに対応しなかったのではないか。
【雇用対策課長】
当時、組合のことについて、県に情報が寄せられたと聞いている。それに対しては、事情を聞きながら県としても対応し、告発があった件についても、関係自治体に確認をお願いし、その後の適切な対応をお願いしたということである。
【斉藤委員】
適切な対応をとらなかったから破たんした。そういう訴え・告発があったにも関わらず、県も市町も十分な対応ができなかった。
県の責任と負担の問題について。返還は4378万円だが、不正の実態は4億9000万円の過大額と指摘された重大な中身だった。第一義的に事業主体である市町の責任は重く、県の責任とは次元が違う責任である。自分の仕事で委託したので。同時に県の責任も免れない。今日は知事が責任を認めお詫びするということなので、そういう精神を今後も貫いていただきたい。
同時に負担の問題は別である。岩手県がこの問題について、厚労省も共犯ということもあり、過大リースは返還額から除外された。これは不十分な中でも県の努力があった。もう1つは、雇用確保という点で、奥州・二戸・洋野で別会社で再建させて、4分の3補助という過大ともいえるほど支援した。コールセンターで破たんした地域で雇用を守るという点では特段の対策をとったのも事実だと思う。
その点で、この3つのコールセンターの現状はどうなっているか。どういう支援をしようとしているのか。
【企業立地推進課総括課長】
支援については、DIOジャパンコールセンターで離職した人の救済ということであり、補助として設備投資の部分について、県は市町にたいして投資額の2分の1、そして家賃補助として2分の1を支援するものである。市町からは、県の支援分を合わせて4分の1を負担することで事業者には4分の3を支援していこうとするものである。
現在奥州コールセンターについては約70名、二戸14名程度、洋野20名程度ということであり、補助の要件として、離職した人の半分以上を雇用することを条件にしている。
【斉藤委員】
この解決にあたり、市町は今年度の補正で対応すべきだと思うが、ぜひ今日の議論を踏まえて、きちんと知事を先頭に市町に説明をして、きちんとした合意と納得を通じて解決されるように強く求めたい。