2016年3月1日 2月定例県議会本会議
一般質問(大要)
1、戦争法廃止と野党5党首合意に基づく野党共闘について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。日本共産党を代表して、達増知事に質問します。
昨年の9月19日、安倍政権は、憲法学者の9割以上が憲法違反と指摘し、多くの国民が反対の声を上げる中、戦争法、いわゆる安保関連法を強行成立させました。戦争法は、政府与党の「数の暴力」で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは絶対にできないものであります。何よりも、戦争法は、日本国憲法に真っ向から背く違憲立法です。「戦闘地域」での兵站、戦乱が続く地域での治安活動、米軍防護の武器使用、そして集団的自衛権の行使―そのどれもが、憲法9条を蹂躙して、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものとなっています。
戦争法の発動によって「殺し殺される」現実の危険は、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊の任務拡大と対IS軍事作戦への自衛隊の参加という問題です。戦争法の発動は絶対に許されません。戦争法を一刻も早く廃止することは、憲法の根幹、国政の根幹にかかわる問題であり、憲法に基づく政治という立憲主義を取り戻す課題だと考えますが知事の見解を求めます。
戦争法廃止を求める各界各層の運動は、総がかり実行委員会、シールズ、ママの会、学者の会など、戦後かつてない規模で広がっています。この声にこたえて、2月19日、野党5党首の党首会談で、4項目にわたる重要な合意が確認されました。第一に、安保関連法の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。第二に、安倍政権の打倒をめざす。第三に、国政選挙で現与党及びその補完勢力を少数に追い込む。第四に、国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う―というものです。これは「戦争法は廃止を」「野党は共闘を」という国民の願いにこたえる画期的な内容です。
日本共産党は、岩手県においてもこの合意に基づいて誠実に、真剣に野党共闘の実現に取り組む決意です。知事はこの野党5党首の合意内容についてどう受け止めているでしょうか。昨年8月の岩手県知事選挙では、画期的な野党共闘が実現しました。岩手ではこの野党共闘をさらに市民運動・市民団体との共闘という点で、さらに発展させる条件と可能性があると考えますが、知事が果たす役割を含めて答弁を求めます。
【達増知事】
安保関連法の根拠として、安全保障をめぐる国際環境の変化が言われているが、日本を取り巻く安全保障環境については、安保関連法のようなものが必要になる状況ではないと考える。また、安保関連法は、集団的自衛権を容認する内容であり、多くの憲法学者からも憲法違反だという指摘がなされている。昨年多くの国民が安保関連法を疑問視して行動を起こし、マスコミの調査等でも、先の国会での可決・成立に反対する声の方が多いという状況の中、あのような形で採決されたことは遺憾であり、安保関連法は廃止が適当と考えている。
野党5党首の合意について。安保関連法の廃止を軸に民意を結集し、新しい政治の動きを生み出そうとする各党の志は評価に値するものと考える。
昨年の知事選と岩手での知事の役割について。昨年の知事選においては、県内のさまざまな団体・政党・個人など、多くの方々に推薦・支持をいただき、県民党的な力の結集ができたと考えている。この力の結集は岩手を守り、日本を変える大きな可能性を有していると思う。私としては、東日本大震災津波からの復興とふるさと振興を軸に、希望マニフェストの実現を図りながら、岩手県民の皆さんの大きな思いが形になるよう力を尽くしていきたいと思う。
2、県政最大の課題―東日本大震災津波からの復興の課題について
1)被災者の命を守り、被災者の孤立化と「孤独死」を出さない具体的な対策を
【斉藤委員】
東日本大震災津波から丸5年を迎えようとしています。今、被災地では、災害公営住宅の整備や区画整理事業など、復興事業はピークを迎えています。一方で、被災者は、1月末現在、応急仮設住宅に16583人、ピーク時の52.2%の方々が生活しています。民間アパートなどのみなし仮設を含めると21464人、ピーク時の48.6%となります。丸5年が経とうとしているのに、ピーク時の約半数が仮設暮らしを強いられていることは、本当に心が痛む事態です。被災者は「仮設の生活が長引き、身体にも疲れが来ています」「仮設に3人で入っています。今はストレスがたまり、圧迫感があり、頭が変になりそうです」などと訴えています。狭い仮設での生活で心身ともに疲労は限界に達しています。
災害公営住宅の入居者は、1月末現在、1910戸、3795人となっています。来年3月末までには5771戸の整備計画に対し5075戸・88%が整備される見込みです。仮設住宅から災害公営住宅に大規模な移動が進みます。しかし、災害公営住宅の入居者の現状は、高齢者世帯が約4割、1人暮らし高齢者が約3割を占め、重い鉄のドアに閉じ込められ、外に出る機会が減って、仮設団地以上に孤立化・孤独化しています。126世帯が入居しているある災害公営住宅の自治会長は、「高齢者が閉じこもっていて10人から20人くらいしか顔を見ない」と話していました。どこでも「同じ階にだれが入居しているかわからない」と訴えられました。阪神淡路大震災から21年がたちましたが、この間1030人の孤独死を出しています。昨年1年間でも33人が孤独死しています。
私は、「津波で助かった命、再び犠牲にしてはならない」の決意で取り組んできました。東日本大震災では、こうした「孤独死」の事態を起こしてはならないと考えます。知事は取り残される仮設住宅の被災者、孤立化している災害公営住宅の入居者の実態をどう受け止めているでしょうか。この間の「孤独死」、震災関連の自殺の状況を含めてお聞きします。仮設団地にも、災害公営住宅にも1人暮らし高齢者など、見守りが必要な被災者をしっかりと支える支援員を配置すべきと考えますが、県・市町村の取組はどうなっているのでしょうか。
被災者の命と健康を守る上で、大きな役割を果たしているのが、被災者の医療費と介護保険利用料等の免除措置の継続であります。今年の12月末まで継続されたことは高く評価します。被災者のこころのケアの相談件数は12月末までで9695件、いわてこどもケアセンターの受診は3260件となっています。こころのケアの取組は中長期の課題であり、これからが大事な時期を迎えます。こころのケアセンターの副センター長は「5年近くがたち、1年ごとに加わるストレスで消耗しているのが実態。長期的ケアをしていく必要がある」「医療費の免除措置を継続することが重要」と指摘しています。さらなる継続が必要と考えますが、知事はどう受け止めているでしょうか。
【達増知事】
仮設住宅や災害公営住宅の入居者の実態等について。生活支援相談員に寄せられる相談内容を見ると、生活再建の目途が立たず仮設住宅に取り残される不安感や災害公営住宅入居後における孤独感を訴える声があるほか、県こころのケアセンターにも、健康上の問題などから身体症状や睡眠の問題等が寄せられている。また仮設住宅や災害公営住宅での孤独死は、平成27年12月末時点で37人、震災関連の自殺者は35人となっており、よりきめ細かな対応が必要と受け止めている。現在、仮設住宅や災害公営住宅の見守りは、生活支援相談員や市町村が配置する支援員等により行われており、県では市町村に対し地域で必要とされる見守り等の支援体制が相互的に確保されるよう要請している。
被災者の生活再建のステージに応じた切れ目のない支援の実現を図るため、国においても、平成28年度、被災者支援総合交付金を拡充することから、この制度も活用しながら、国や市町村、社協等の関係団体とも連携し、引き続きしっかりとした見守り体制の構築に努めていく。
医療費・介護保険利用料等の免除措置について。県では、多くの被災者の皆さんが、いまだ仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされ、健康面や経済面に不安を抱えており、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要があることから、28年12月まで県内統一した免除措置を講じるための財政支援を継続することとした。29年1月以降の対応については、被災地の生活環境や被災者の受療状況等を総合的に勘案しつつ、市町村の意向を踏まえて改めて判断したい。
2)住宅再建へのさらなる支援、住宅確保対策について
【斉藤議員】
第二に、住宅の再建は被災者の最も切実な要望です。しかし、住宅の建設費が高騰し、地元の大工さんに頼んだ場合でも坪56万7千円、震災前と比べて約8万2千円も引きあがっています。30坪の住宅で246万円の高騰です。大手ハウスメーカーの場合は坪70万円以上と言われています。住宅再建の最大の不安が資金問題です。
具体的な問題について質問します。
@国に被災者生活再建支援金の500万円への引き上げを求めるとともに、県独自にも住宅再建がピークを迎える今こそさらなる支援策を講じるべきと考えますがいかがでしょうか。
A低所得の被災者の場合、上限350万円の災害援護資金が活用できます。厚労省は「保証人は必要ない」としていましたが、その後の県の通知で原則保証人が必要となり、事実上の貸し渋りの状況が起こっています。住宅再建の場合は、保証人なしで借りられるようにすべきと考えますが、この間の活用と貸し渋りの状況を含め答弁を求めます。
B宮城県の東松島市では、防災集団移転事業の宅地について、30年間無償貸与できるとしています。こうした取り組みを広げ、住宅再建を最大限支援すべきと考えますがいかがでしょうか。
C住宅確保の見通しが立っていない被災者の状況はどうなっているでしょうか。
みなし仮設住宅に1月末現在、1885戸・4881人が生活しています。災害公営住宅や区画整理事業などの宅地造成が完成するまで、みなし仮設住宅は継続されるべきと考えますが、どうなっているでしょうか。すでに終了の期限が決まっている市町村とその世帯数、その後の住宅確保の見通しを示していただきたい。
県は、被災地に戻れない内陸の被災者に対して、内陸にも災害公営住宅を整備する方向を示しています。評価できるものです。この間の意向調査の概要はどうなっているでしょうか。
【復興局長】
住宅再建支援について。県ではこれまで、国に対し、繰り返し被災者生活再建支援金の増額を要望してきたが、依然として国は慎重な姿勢を示している。県では現在、市町村と共同で最大100万円を補助する被災者住宅再建支援事業を実施しているが、県独自でのさらなる支援の拡充については、復興基金の状況等厳しい財政状況を勘案すると、現時点ではきわめて難しいものと考えている。県としては引き続き国に対し、被災者生活再建支援金の増額等について強く要望していく。
災害援護資金について。1月末時点で、市町村において992件・約25億1300万円の貸付を行っており、うち保証人を立てた割合は約44%となっている。なお、貸付金の使途については、国の通知により、生活再建が目的であれば申告不要とされているが、市町村の担当者からは、ほとんどが住宅再建が目的と聞いている。保証人については、国からは、発災直後、保証人を立てなくてよい旨が通知されたが、これは国に確認したところ、「災害援護資金は貸付金なので返済していただくことが前提であり、返済能力のある方は保証人を立てなくてよい」という趣旨であった。これを受け、県では、高齢者等で償還が困難と判断される方等であり相続財産がない場合は、原則として保証人を求める旨市町村に通知した。なお、この保証人を求める趣旨については、先月開催した市町村担当者会議において改めて説明し、相談の際は丁寧に説明を行うよう依頼したところである。
住宅確保の見通しについて。平成27年12月末現在、市町村が把握しているうち、約400世帯が再建方法未定と回答している。現在市町村では、個別訪問等により、被災者の方々の意向把握を行っており、決めかねている方々に対しては、県としても、住宅再建相談会や専門家による個別相談を行うなど、1日も早く恒久的な住宅へ移行できるよう支援していく。
みなし仮設住宅について。建設型応急仮設住宅と同様、みなし仮設住宅についても、災害公営住宅の完成や区画整理の終了までの間は供与され、野田村・宮古市・山田町・大槌町・釜石市・大船渡市・陸前高田市で被災された方については、現時点では一律6年まで延長となっている。供用期間が5年で終了するのは、久慈市・岩泉町・田野畑村・奥州市・一関市で被災された方だが、奥州市・一関市については、新たに建設される災害公営住宅等に入居予定の方に限定し、入居可能となるまでの間延長する「特定延長」としている。供用期間が終了する5市町村のみなし仮設住宅の入居世帯は、1月末現在で118戸となっており、ほとんどの方は再建先が決まっているが、数戸が未定となっている。再建先が未定の方については、市町村の支援に加え、県においても直接訪問し相談に応じるなどの支援を行っているところであり、引き続き供用期間内に恒久的な住宅に移行していただけるよう支援していく。
【県土整備部長】
防集事業における宅地の無償貸与について。宮城県東松島市における事例は、関係市町村にたいし、会議で情報提供を行っている。防集事業については、市町村事業であり、土地の売却・貸与等についても各市町村が状況に応じて適切に判断されるものと承知している。
内陸避難者への支援について。県では先月から住宅の確保がまだ終わっていない内陸避難者等2324世帯にたいして意向調査を行っており、現在回答がない世帯にたいし調査票を再送付するなどの対応を行っている。
3)防災集団移転促進事業・区画整理事業など、住民が主体のまちづくり事業について
【斉藤議員】
第三に、防災集団移転促進事業、都市再生区画整理事業、漁業集落強化事業は着実に進んでいるものの、今年3月末で2851区画、8012区画の計画に対して36%にとどまります。来年3月まででも4645区画・58%です。
@この面的整備事業の遅れの要因は何でしょうか。
A時間の経過の中で被災者の意向が変化しています。当初の計画と現在の計画はどう推移しているでしょうか。
B防災集団移転促進事業は3月末で1433区画、2205区画の計画に対して65%の整備となります。現時点で住宅が再建されない区画の状況はどうなっているでしょうか。
C区画整理事業は3月末で1157区画、計画の22%と最も遅れています。最大の問題は、宅地の区画が造成されても住宅が再建される保証がないことです。住宅再建の見通しを把握すべきだと考えますが、どうなっているでしょうか。
D津波浸水地域の宅地等を自治体が買い上げることができるとなっています。しかし、土地の売却代金が被災者の所得とみなされ、住民税、国保税、介護保険料・利用料が増税・負担増となり、特に介護施設入居者が非課税だった場合、課税世帯となります。居住費・食事代などの補足給付の軽減措置がなくなり、80万円から100万円余の増税・負担増となっています。私は昨年、この問題を取り上げました。県も国に改善の要望を行いました。やっと厚労省は、1年経った2月17日、土地売却の収入を介護保険料でも控除できることになりました。2015年1月以降の売却収入に適用されますが、対象者をどう把握しているでしょうか。対象にならない人数はどうなるでしょうか。周知徹底をはかるべきですがどう対応しているでしょうか。
【復興局長】
面的整備事業の遅れについて。復興まちづくりの計画策定や、関係機関との調整、住民との合意形成、用地の確保などが挙げられるところである。なお区画整理事業において面積が広く大規模な土工をともなう地区では、盛土かさ上げ工事や道路・下水道等のインフラ施設の切り替え、整備等に、また建物が多く残っている地区では、権利関係の調整や物件等の移転等に時間を要している。
計画区画数の推移について。社会資本の復旧復興ロードマップにおいて、面整備事業の区画数を初めて記載した25年3月末時点と27年12月末時点を比較すると、3事業合計で9722から8012に1710区画・18%減少している。
【県土整備部長】
防集事業で完成した団地は1月末で59団地・922区画で、うち契約の見込みがない区画は21区画と聞いている。これらの区画は現在各市町村において住宅再建支援策などを説明しながら、移転者の再募集を行うなどの対応を実施していると聞いている。
区画整理事業における住宅再建の見通しについて。事業主体の市町村において必要に応じて個別面談やアンケート調査等を通じて住宅再建等の意向を把握し、換地設計や工事工程調整等に活用していると聞いている。引き続き事業主体である市町村を支援していく。
【保健福祉部長】
介護保険料等における土地売却収入の控除について。県ではこの問題について、昨年度から繰り返し国に要望を行っていたところ、今般社会保障審議会介護保険部会において、制度見直しの方向性が了承され、今後厚労省において必要な政省令改正が行われることになったものである。具体的には、介護保険料の算定や施設入所者の食費・居住費にかかる補足給付の決定に際し、土地売却収入等を所得とみなさない扱いとし、原則平成30年4月施工とするものであり、制度設計が明らかになった段階で、各市町村が対象者を把握することになる。県では、市町村が制度の見直しについて住民の方々に周知するとともに、条例改正等の手続きを適切に行い、対象者がもれなく必要な対応を受けられるよう助言していく。
4)生業の再生と安定した雇用の確保について
【斉藤議員】
第四に、被災地の生業の再生と安定した雇用の確保は、被災地でくらし続ける不可欠の課題です。漁業・水産加工業と商店街の再生は当面の焦眉の課題です。
漁業・水産加工業は沿岸被災地の基幹産業であります。9分の8補助等で漁船の整備は震災前の74%まで、養殖施設は65.5%まで整備されましたが、昨年はサケやサンマなど主要魚種の漁獲量が半減し、漁業経営体は5年間で1948経営体、36.7%減少しています。小型漁船業者は「取る魚がない」と深刻な経営危機に直面しています。漁業の振興策、担い手対策、小型漁船業の振興策を具体的にどう進めるのでしょうか。
水産加工業は、グループ補助金などによって約8割が再建されました。しかし、販路が断ち切られ、魚が取れず、原材料が高値になって、従業員も確保できないという三重苦に直面しています。抜本的な支援策が必要ですがどう取り組むのでしょうか。
商店街の再生は正念場を迎えています。@商工団体会員事業者の被災と営業再開の状況はどうなっているでしょうか。A仮設店舗・仮設商店街の現状と本設への意向はどう把握されているでしょうか。一番の課題は資金問題です。グループ補助金だけでない資金援助、テナントで被災した事業者への支援が必要と考えますがどうでしょうか。
中心市街地での商店街の再生はまちづくりの中心課題です。中心市街地での商店街の再生にどれだけの商店が集約される見込みでしょうか。魅力ある商店街を再生するためには、公共施設の整備を含め、商業者と商工団体、行政が一体となって取り組む必要があります。県は強力に支援すべきですがどうなっているでしょうか。
仮設店舗について、「やむを得ず撤去せざるを得なくなった施設の撤去費等を国が助成する期間が平成30年度末まで」2年間延長されることになりました。しかし、条件が付けられ、陸前高田市などでは適用できるのか不安の声も寄せられています。仮設店舗の継続使用ができるよう取り組むべきですが、県はどう実態を把握し対応しているでしょうか。
沿岸被災地での雇用保険の被保険者数は、12月段階で、震災前と比較し、全体で2963人増加しているものの、水産加工業など食料品製造業では1418人減少しています。地場産業の雇用・人材の確保にさらに一層取り組むべきですが、県の対策はどうなっているでしょうか。
【農林水産部長】
県では、東日本大震災津波からの復興に向けて、漁協を核とした漁業・養殖業の構築を図るため、漁業者の要望に基づき、漁船や養殖施設などの整備を支援してきたところであり、これらの施設等を活用してサケや養殖ワカメ等の生産回復を促進し、漁業の振興を進めている。
担い手対策については、漁協の地域再生営漁計画に掲げた新規就業者の確保に向けた取り組みを着実に進めるため、今年度中に新たな漁業担い手育成ビジョンを策定することとしており、ビジョンに基づき市町村協議会の設置を促し、各地域に新規就業者の受け皿作りなどの取り組みを支援する。
小型漁船漁業については、経営の規模が小さく収入が不安定なことから、減収補てんを受けられる国の経営安定対策事業の導入や、毛ガニなどの資源管理の取り組みを支援するほか、マダラなど資源状態の良い魚種の情報提供により、魚種の転換を促すなどにより経営の安定化を支援していく。
【商工労働観光部長】
水産加工業への支援について。県ではこれまで、水産加工業が直面するさまざまな課題に対して、魅力ある商品づくりによる付加価値向上をはじめ、県内外での商談会の開催等を通じた販路開拓、設備等の高度化やカイゼンの導入による労働生産性の向上などの支援に取り組んできた。加工原料の確保に向けては、県外漁船の水揚誘致に対する緊急的支援や、原料調達等に対する国の補助事業の活用など、必要な支援を行ってきた。今後、こうした取り組みを充実させるとともに、産学官金の異業種連携、経営革新による新たな商品化や仕入れ等の協業化を支援するなど、付加価値や生産性を高め、経営力を強化することにより、働きやすく魅力ある産業として確立していきたい。
商店街の再生について。事業者の被災・営業再開の状況は、沿岸地区商工団体の震災前の会員7701事業所のうち、被災事業所は4341、2月時点の営業再開事業所は3146、再開率73%となっている。仮設店舗等の商業者は、昨年9月時点で574事業者となっている。本設再開を予定している仮設店舗等事業者は71%となっている。
テナントで被災した事業者については、共同店舗に入居する場合等にグループ補助金の利用が可能なほか、所有していた設備等の復旧費用は、県と市町村が行う復旧事業費補助の対象となっている。また市町村においても、地域の実情に応じた支援策を進めており、県としては市町村と連携し事業者の支援に取り組んでいく。
中心市街地への商店の集約については、具体的な数は把握していないが、市町村において、公共施設や商業施設の集約化等、新たなまちづくりを進めているところである。県としては、グループ補助金により、商業施設の整備に加え、駐車場やコミュニティスペース等の整備についても支援していく。また本設移行に向けた事業計画づくり等の支援も引き続き行い、市町村や商工団体等と一体になり生業の再生に取り組んでいく。
仮設店舗の継続使用について。建築基準法の特例を適用することにより、市町村の実情に応じて継続使用することが可能だが、撤去費用等が市町村の負担とならないよう、この費用を国が助成する制度の期間について、県と市町村で要望を行い、今般延長が決まった。また、陸前高田市をはじめ、各市町村は、制度を生かして仮設店舗を継続使用できるよう、利用見通し等を精査しながら、仮設店舗の集約化や事業者への譲渡などにも取り組んでおり、県としては、市町村や国と情報共有しながら必要な対応を行っていく。
被災地における地場産業の雇用・人材確保について。県ではこれまで、関係機関と連携した企業見学会や面接会の開催などによるマッチングの促進、企業向けセミナーの開催による職場定着支援、県の就職情報サイトによるさまざまな就職関連情報の発信、水産加工業のDVDによるイメージアップや従業員宿舎整備等への補助など、人材の確保や定着に向けた取り組みを進めてきている。また人材確保のためには、雇用条件の改善も重要であることから、今年度においても岩手労働局と連携し、正社員転換や処遇改善等について関係団体等への要請を行っている。こうした取り組みに加え、今般設立した「いわてで働こう推進協議会」において、若者や女性等の県内就業の促進や働き方の改善に関する協議、情報共有、啓発等を行うなどにより、人材確保に引き続き取り組んでいく。
5)丸5年を迎える大震災津波からの復興の取り組みの検証を
【斉藤議員】
復興の課題の最後に、丸5年を迎える東日本大震災津波からの復興の取り組みを検証することは、今後の取り組みを進める上でも、今後の全国的な大災害に備えるためにもきわめて重要な課題です。
知事にお聞きします。なぜ6254名に及ぶ大きな犠牲者を出したのか。なぜ復興事業に大きな遅れが生じたのか。今後に生かすべき教訓・課題は何かを示していただきたい。
【達増知事】
大震災津波により多くの犠牲者を出した主な要因としては、防潮堤・防波堤などへの過信や今回の津波の大きさに対する過小評価、過去の津波警報等発令時の「空振り」による油断などにより避難しなかったことや、避難した場所が結果的に被災したことなどが挙げられる。
また、復興事業の遅れと呼ばれる事態の主な要因としては、今回の大震災津波が、その規模の大きさや被害の深刻さにおいて未曾有の大災害であったこと、復興まちづくり計画や国等の関係機関との調整、住民との合意形成や事業用地の確保に時間を要したこと、施工業者の労働力や資機材の不足などが挙げられる。
今後に生かすべき教訓・課題としては、再び震災で命を失う人が出ないよう、確実な避難行動を行える防災意識の向上や、被災した市町村に対する迅速な行政機能支援体制の整備、ハードだけに頼らずソフト対策も適切に組み合わせた多重防災型まちづくりの推進、復興に要する土地等の私有財産の制限のあり方の検討などが必要と考えている。
3、子どもの医療費助成の拡充について
【斉藤議員】
次に、子どもの医療費助成の拡充について知事に質問します。この1年余の間に中学校卒業までの医療費助成の拡充と現物給付化を求める10万筆を超える署名が知事に提出され、先の12月県議会では請願が、再び全会一致で採択されました。このことを知事はどう受け止めているでしょうか。昨年8月の知事選挙で知事は「中学校卒業までの医療費助成の拡充は必要」と答えました。この公約をどう実現しようとしているでしょうか。県のふるさと創生戦略にとっても、若い世代を支援し、岩手に若い世代を呼び寄せることは戦略的課題です。私は当面、緊急に小学校卒業までの医療費助成の拡充と現物給付化を実施すべきと考えますがいかがでしょうか。また、そのために必要な財源を示していただきたい。年次計画でさらなる拡充を進めるべきと考えますがいかがでしょうか。
「世界で一番大企業が活動しやすい国をつくる」という安倍政権のアベノミクスのもとで、大企業は空前の利益を上げる一方で、労働者の実質賃金は4年連続マイナスとなりました。
私は、働いても生活保護基準以下の世帯には生活保護受給を進め、ダブルワークで子どもの面倒が見れない事態は打開することが必要だと考えるものであります。
【達増知事】
子どもの医療費助成の拡充と現物給付を求める10万筆を超える署名が提出されるとともに、県議会12月定例会に提出された請願についても全会一致で採択されたことについては重く受け止めている。県では、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、厳しい財政状況にはあるが、市町村等と協議のうえ、まずは昨年8月から助成対象を小学校卒業の入院まで拡大し、現在本年8月からの未就学児および妊産婦を対象とした現物給付の実施に向けて取り組んでいる。
総合的な子育て支援については、昨年10月に策定した、ふるさと振興総合戦略を展開していくうえで重要な施策だが、子どもの医療費助成は本来自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきであり、昨年6月に実施した県の政府予算提言・要望において、全国一律の制度を創設するよう要望したところであり、全国知事会からも同様の要請を行っている。
国においては現在、子どもの医療費制度のあり方等に関して、有識者による検討会を設置し、見直しに向けた検討を行っているところであり、今後の状況を見極めながら、国に対する働きかけに積極的に参加していきたい。
小学校卒業の通院まで拡充する場合、年間約2億9000万円と多額の財源を確保する必要があり、本県では県立病院等事業会計負担金が多額になっている事情もあることから、今後国の動向を注視しながら、県の医療福祉政策全体の中で総合的に検討する必要があると考えている。
5、介護保険の改悪・介護報酬の引き下げの影響と対策について
【斉藤議員】
介護保険の大改悪と介護報酬の引き下げによって、高齢者も介護事業者も大きな影響と打撃を受けています。介護保険の改悪によって、世帯分離が崩され補足給付が削減された高齢者はどうなっているでしょうか。
第5期の介護保険事業計画による介護施設の整備は未達成になりました。計画に対して未達成になった実態とその要因を示してください。
【保健福祉部長】
第5期介護保険事業計画における特養ホームの入所定員総数8291人にたいし、開設実績は7987床となっており、差が生じた要因としては、建設費の高騰や作業員確保が困難などの理由により、公募にたいし応募がなかったと聞いている。
6、TPPの影響試算と岩手の農林漁業について、TPPからの撤退を
【斉藤議員】
次に、TPP大筋合意の内容と岩手の農林水産業への影響について質問します。
第一の問題は、ペテンに近い政府の影響試算の内容です。2年前の政府の試算と比べて、農林水産業の生産減少額は1300億円から2100憶円で、約20分の1に縮小しました。一方で実質国民総生産は4倍の13.6兆円に増える。そのからくりは、関税撤廃・削減の影響は、政府の対策によって、国内生産量は維持されると言うものです。外国から安い農林水産物が輸入されれば、国内の生産量が維持されるどころか減少し、価格も下落するのは明らかではないでしょうか。こんなごまかしの試算からは、まともな対策が出てこないと思いますが、知事はこの試算をまともだと受け止めているでしょうか。
東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は、2年前の政府の試算の手法で、今回の大筋合意の内容を当てはめれば、米で1197億円、豚肉で2827億円、牛肉で1738億円など、農産物で1兆2614億円の生産減少、林水産物を含めると1兆5594億円の生産減少となると指摘しています。私は、この試算の方が妥当だと考えますが、知事の認識をうかがいます。
第二に、大筋合意では、農林水産物の8割が関税撤廃となります。米、麦、畜産物などの重要5品目については3割が関税撤廃となります。
協定発効後7年たてば関税とセーフティーネットについて再協議する規定が盛り込まれました。結局、関税撤廃がつらぬかれる仕組みです。
ISDS条項も盛り込まれました。まさに、日本のルールを破壊するものであり、全国の農協組合長アンケートでは、92%がTPPは国会決議違反と答えています。知事はこうしたTPPの内容をどう見ているでしょうか。日本と岩手の農業を守るためにもTPPからの撤退を国に強く求めるべきではないでしょうか。
【達増知事】
国では、大筋合意の内容や、総合的なTPP関連政策大綱に基づく政策対応を考慮し、生産額は減少するものの、国内対策により所得が確保され、生産量が維持されることを前提とした試算を行った。一方、東大大学院の鈴木教授は、大筋合意の内容を反映しつつ、国内対策の効果を考慮せず試算したものであり、それぞれ意味があるものととらえている。
TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業をはじめ、県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。県ではこれまで、国に対しTPP協定の交渉にあたっては、十分な情報開示と説明を行い、国民的な議論を尽くしたうえで慎重に判断するよう要請してきたが、そうした説明や議論が不十分なままにTPP協定の署名に至ったことは残念である。今後協定の発効には、参加国における国会承認手続きを経る必要があるが、詳細な影響分析や具体的な対策などが明らかにされ、平成25年4月の衆参両院農林水産委員会における決議も踏まえ、国会を中心に十分な国民的議論に付されるよう、引き続き政府に求めていく。
7、深刻ないじめ事件の教訓と高校再編問題について
【斉藤議員】
2年連続で県内の中学生がいじめを要因とする自殺事件が起きました。この教訓をどう受け止めているでしょうか。
同時に2件の重大事案とされた一方、1件は、県が設置した第三者機関である「いじめ問題対策委員会」にも報告されませんでした。なぜ報告されなかったのでしょうか。
教育長に質問します。高校再編計画について、県教委から具体的な5年間の統合・学級減の計画案が示されました。
日本共産党はすでに教育委員長、教育長あてに申し入れを行いました。第一に、高校の統廃合計画については、地域自治体と地域住民の合意と理解が得られることを前提に十分な協議と検討がなされること。第二に、学級減の計画については、地域の取組を踏まえて検討すること。第三に、1学級の高校も存続するとしたことは評価しますが、進学にも就職の進路指導にも対応できる体制を構築することが必要だと思いますがいかがでしょうか。
【教育委員長】
2年続けていじめを一因とした中学生の痛ましい自殺事案が発生し、調査の結果、滝沢市の事案については、教職員がいじめを認知できなかったこと、矢巾町の事案については、学級担任がいじめのサインに気づきながら組織的対応につなげられなかったことが明らかになっている。
県教委としては、これらの痛ましい事案を教訓に、同じような事案を二度と発生させないという強い思いで、今後においても関係機関や地域等との連携のもとに、教育界の総力をあげていじめ防止対策に取り組んでいく。
具体的には、校長・生徒指導主事を対象とした研修の実施、初任者研修等における「いじめ問題に関する実践的な研修」などを通じて、各学校におけるいじめの未然防止や早期発見、学校の組織的対応の強化を図るとともに、各学校が策定している「学校いじめ防止基本方針」の取り組み状況の定期的な点検などを行いながら、学校体制の充実に努めていく。
不登校事案について。この事案は、県立高校に在籍する生徒が、不登校となっている事案である。当該校においては、本人および保護者からの相談を受け、学校調査を行った結果、同級生から受けた暴力などのいじめの存在が明らかとなっているものであり、この事案のこれまでの経過については、教育委員会議等での報告も受けている。現在県教委においては、当該生徒の学校への復帰に向け、学校とともに、保護者と生徒の理解を得るべく、話し合いを重ねている。何よりも、当該生徒の学校復帰のための環境整備に努力する必要があると考えているが、今後の推移によっては、いわゆる第三者委員会である「いじめ問題対策委員会」における対応も検討する必要があると考えている。
【教育長】
高校再編について。先般の日本共産党岩手県議団からの申し入れについては、私が対応させていただき、さまざまな意見交換をさせていただいた。県教委においては、新たな高等学校再編計画案を公表後においても、パブコメやブロック単位での地域検討会議を通じて、丁寧に地域の声を聞いてきた。意見交換の中では、統合や学級減の対象地域においては、地域での努力の時間がほしいとの強いご意見がある一方、統合による学校の充実に一定の理解を示すご意見などもいただいている。
県教委においては、総合的な検討を進め、年度内における策定に向け取り組んでいるが、成案の策定にあたっては、こうしたさまざまなご意見も踏まえ、さらには、地方創生に向けた市町村の今後の方向性なども見据えつつ、丁寧な対応を図っていく。
小規模校においては、習熟度別に応じた指導や、進路希望への対応をきめ細かに行うとともに、教員体制の制約もあるので、近隣の高校間での教員の相互派遣やICTの活用による遠隔授業の実施に取り組むなどにより、教育の質の維持・向上に取り組んでいく。
8、県警本部の不祥事等の対策について
【斉藤議員】
県公安委員長に質問します。岩手医科大学の元教授の覚せい剤疑惑はまともな捜査が行われた形跡がなく、昨年には4月には、捜査を担当する県警の幹部職員が岩手医科大学に天下ると言う事態が起きました。この件について公安委員会では報告を受け、対応をしたのでしょうか。
【公安委員長】
岩手医科大学の元教授の覚せい剤疑惑については、県警察から捜査状況に関する報告は受けていないが、この疑惑が週刊誌に掲載されたことや昨年の9月定例会における斉藤議員からの質問とこれに対する答弁の内容については報告を受けている。
天下りについては、定義が明確ではないが、退職職員の個別の再就職状況については報告を受けていない。ただし、岩手医大への再就職については、9月定例会における斉藤議員からの質問とこれに対する答弁の内容について報告を受けている。
公安委員会としては、退職者の再就職について、民間企業等がどのような人材を必要とし、どのような採用を行うかは、あくまで当該企業等の独自の裁量と努力によるところであり、再就職は雇用主と退職職員本人との雇用契約に基づいているものと承知している。
≪再質問≫
・被災者の孤立化・孤独化、心のケアへの対応について
【斉藤議員】
復興の問題でいま一番切実で重大だと思っているのは、仮設団地に取り残されている被災者、一層孤立化と生活難を抱えている。もう1つは、災害公営住宅に入居した方々は、仮設住宅以上に孤立化・孤独化を進めていると。そういう意味でいけば、今の段階で、本当に一人暮らし高齢者や見守りが必要な被災者をしっかりフォローしないと、阪神淡路大震災の1000名を超えるような孤独死が出かねない。
被災者総合支援交付金事業があって、これは仮設団地にも災害公営住宅にも支援員を配置できる、活用できるとなっているので、今の段階できちんと県・市町村が議論して、必要な手立てをとることが必要ではないか。阪神の教訓を踏まえ、災害公営住宅には集会室や支援員の事務室が整備されているが、最初は集会室に机もイスもストーブもなかった。これは繰り返し私たちが指摘して年内には整備されたが、支援員はいまだに配置されていない。やはり一定規模の災害公営住宅には、きちんと配置し、一人の孤独死も出さないという取り組みが必要ではないか。
心のケアの取り組みはこれからきわめて重要である。1年1年のストレスが加わっているというのが専門家の指摘である。12月末までで県こころのケア相談センターの相談件数は9695件、子どもの心のケアというのは医師への受診で3260件。これから重要になっているときに、医療費の免除というのがこれからも継続されるということが、こういう被災者の心のケアにとって決定的な役割を果たす、これまで果たしてきたのではないか。
【達増知事】
本格復興を完遂年と位置付けた今年、被災者の方々の体と心のケア、コミュニティ支援、こういった復興の質の向上ということがきわめて重要な段階だと考えている。そういう中で、医療費・介護保険利用料等の免除措置についても、28年12月まで県内統一した免除措置を講じるための財政支援を継続することとしたところだが、29年以降については、被災地の生活環境や被災者の受療状況等を総合的に勘案しながら、市町村の意向を踏まえ改めて判断したい。
【復興局長】
災害公営住宅における支援員の配置だが、来年度国でも新たに被災者支援の総合交付金を設置するということで、現在県でも市町村と協議しながらこれを積極的に活用していただき、できるだけ仮設だけではなく、災害公営住宅の方々にも寄り添った見守りができるように要請している。これについては引き続き市町村ともしっかり協議していきたい。
・災害援護資金について
【斉藤議員】
実際に現場では、連帯保証人を付けなければ貸さないという貸し渋りの状況である。これは件数の推移にはっきり示されている。厚労省の通知では、保証人をつけなくていいとなっているのに、それに反する県の通知で貸し渋りをすることが妥当なのか。本末転倒ではないか。国が通知の中身を変えるのならともかく、県の通知で原則保証人付きというやり方はおかしいのではないか。そして県の通知の中にも、この資金を使って住宅を確保したり資産形成の場合は連帯保証人を求めないとなっている。だから住宅再建のために災害援護資金を活用したいという方には、もっと柔軟に災害援護資金は活用されるべきである。今年度の補正でも、約半分減額補正、10億円計上したのに5億3000万円ぐらいしか活用されていない。現場でこの問題は改善されるべきだと思うがいかがか。
【復興局長】
たしかに発災直後に国から「保証人を立てなくてよい」という通知が出ているが、これについては、貸付金なので、国としては返していただけなければならないということが前提ということも別途述べている。仮に保証人を立てないで貸して、それが返還されない場合には、市町村が結局かぶるということになってしまうので、ここは国とも引き続きその制度でいいのかということも含めて調整をさせていただきたい。
・東日本大震災津波から丸5年―復興の検証について
【斉藤議員】
丸5年にあたり、いま冷静にこの大震災の検証ができるのだと思う。
昨年7月に、陸前高田市が東日本大震災検証報告書を、かなり議論して、住民のアンケートをとって、専門家の助言も受けながら作った。ここには、「本市では平成16年度に、当時発生の確率が高いと言われた宮城県沖地震を想定し、岩手県において作成された津波シミュレーションを基に、平成18年度に地域防災計画を見直し、防災訓練の実施や防災教育などを通じて地震・津波に対する備えをしてきた。今回のような大きな被害が発生したことは誠に残念であり、市長として改めてお詫び申し上げる」と。平成18年に津波シミュレーションに基づき避難場所を指定した。その避難場所で300〜400人が犠牲になった。そういう意味では、全国的にも共通する問題だったと思うが、本来きちんとこの津波は一定の想定をしなければならなかったのに、宮城県沖地震を想定したために避難した場所で犠牲になったことは重大な教訓だったのではないか。県も、検証報告は地域防災計画の各項目に基づき検証されている。しかし指摘したように、なぜこれだけの大きな犠牲を出したのかという検証はしっかりすべきではないか。そして5年経っても仮設住宅に52%もとどまるような状況になっているのかということもしっかり検証すべきではないか。
5年経って、改めてこういった検証が必要ではないか。
【復興局長】
発災の翌年に一度県としても検証はしているが、必ずしもそれで網羅されているのかということもある。いろいろどういう対応が必要なのかということも含め、検討させていただきたい。
・みなし仮設住宅の継続、災害公営住宅への借り上げについて
【斉藤議員】
県の内陸避難者へのアンケートでも、「今のみなし仮設住宅に住み続けたい」が一番多い。宮城県議団が国交省で交渉したら、「みなし仮設住宅を災害公営住宅にすることはできる」という答弁があった。引き続きみなし仮設住宅で生活できるような対策も視野にいれるべきではないか。
そして同時に、災害公営住宅、61世帯の方々が相談になったとあったが、再調査もしているようだが、どれだけの意向が示されているのか。被災者の場合は、場所によってその災害公営住宅に入りたいかどうか決まると思う。盛岡にはつくると思うが、その他奥州市などにも整備を検討するのか。
【県土整備部長】
みなし仮設を災害公営住宅として借り上げることについては、物件ごとに築年数や面積・設備等の条件が大きく異なるので、災害公営住宅としての利用には公平性の観点から問題があると考えている。みなし仮設住宅については、広域に点在しているため、公営住宅としての管理が難しく、アパート等の一部だけが公営住宅となるので、維持修繕にも制約が生じ、これも課題だと思っている。
みなし仮設住宅の供用期間終了後に入居者が負担する家賃について県が補助等を行うことについては、みなし仮設住宅は、災害救助法により緊急避難的に供与されたものであること、みなし仮設住宅から民間賃貸住宅に転居した方には家賃補助を行っておらず、公平性の観点から問題があることなどから難しいと考えている。
内陸の災害公営住宅の建設場所については、現在行っている意向調査の結果を踏まえ検討していく。
≪再々質問≫
・子どもの医療費助成の拡充について
【斉藤議員】
知事が知事選で選挙公約としたと。また昨年の12月県議会で全会一致で中学校までの現物給付、当面は小学校までということが採択された。10万人余の署名も寄せられた。このことを重く受け止めるべきである。就学前までの現物給付は8月から始まるが、若い世代はこれでは中途半端で、2人3人子どもを抱えていると1人風邪ひくとみんなひいてしまう。3人一度に病院にかけられないので1人ずつという事態があり、せめて小学校卒業までの現物給付は、本当に若い世代を岩手に呼び込もうというのだったら緊急に実施する必要がある。
秋田県は来年度、小学校卒業から中学校卒業まで拡充する。たしかに岩手県は県立病院を抱えているが、若い世代をどう岩手に引きつけるかという点では、緊急に小学校卒業までの拡大と現物給付化が必要ではないか。
【達増知事】
昨年8月から助成対象を小学校の入院まで拡充し、今年8月から未就学児と妊産婦を対象とした現物給付の実施ということを着実に進めさせていただきたい。
国における子どもの医療費制度のあり方の検討については、報道によれば前向きな結論を出さなければならないのではないかというような議論も進んでいるようであり、この国の動向を注視しながら今後県の医療福祉政策全体の中で総合的に検討させていただきたい。
・浸水地域の宅地売却の収入による補足給付打ち切りについて
【斉藤議員】
やっと厚労省が介護保険も対象にすると。昨年岩手県が調査して61件で補足給付を切られたと。これはきちんと調査したのか。そしてこういう切られた方も今回の措置で対応されるのか。陸前高田市では約8割の方が土地を売っている。みんな売ってからこれからやるというのでは意味がない。この間売却した方々が新たな再建の資金にもなるように、補足給付の問題というのは対応されるべきだと思うが、実態を含めて示していただきたい。
【保健福祉部長】
事業実施した市町村にお聞きした結果では、26年度において前年度補足給付の対象となった方で、26年度対象外となった方については230名おり、うち防集事業にともなう資産売却者は33名、また27年度は同様に116名中28名が資産売却したということで聞いている。
今後については、現在制度の見直しの方向性が了承された段階であり、今後国において政省令改正が行われ、制度の詳細が明らかになってくると思うので、その状況を踏まえ影響について把握することになると思う。
・介護保険制度の改正の影響について
【斉藤議員】
この間世帯分離、今度の特養ホームなどの介護施設では、今までの考え方が覆され、夫が自宅でわずかな課税世帯であれば補足給付が切られるという事態が起きた。これはこの1年間でどのぐらいの世帯が補足給付を切られたのか。年収280万円以上の年金の方は2割負担になった。どのぐらいの方が2割負担になったのか。全国調査では4割の方が2割負担となり介護サービスを減らしていると。そういう状況を把握しているか。
【保健福祉部長】
昨年8月末までに、補足給付の申請を行った約15000人のうち、世帯分離している配偶者が住民税課税となったことを理由に対象外となった方は約200人である。自己負担割合が2割となった方は、昨年8月1日時点の市町村データでは約4500人であり、2割負担者が1ヶ月あたりの利用者負担上限額に達して高額介護サービス費の対象となっている事例が増えていると聞いている。
・高校再編について
【斉藤議員】
年度内をめざすといっていたが、具体的な再編計画が出てからが本格的な議論になると思う。地域からどれだけの意見が県教委に寄せられているのか。きちんと協議を深めて、地域や関係者との合意をしっかりやりながらこの再編計画は進めていただきたい。
一度地域説明会や住民説明会をやっただけでは足らないのではないか。きちんと議論をこれからも進めることが必要ではないか。
【教育長】
策定時期については、年度内の策定に向けて総合的な検討を進めていると述べさせていただいた。この再編計画については、昨年7月に高校教育の基本的方向の改定を行い、それ以来50回を超える各地域での意見交換会やブロックごとの地域検討会議等においてさまざまな議論をさせていただいた。その中でも、計画案の策定については、年内を目途に公表したい。そして成案の策定については年度内を目途に進めるということで、案の公表も30回におよぶ意見交換会等を各地域で行わせていただき、1000件近い意見をいただいている。そういうことで、さまざま丁寧にご意見をうかがってきたので、それを含めて現在対応を検討中であり、総合的な検討を行った上で地域の声等も踏まえながら成案策定に向けて取り組んでいきたい。
・いじめ問題について
【斉藤議員】
重大事態というのなら、やはりいじめ問題対策委員会に報告はすると。そこですぐ第3者の調査を始めるかどうかは別として、重大事態というのはそういう専門機関の指導・助言も得ながらやると。1年間も報告しないというのは違うのではないか。
2年連続でこういう痛ましい事件が起きたが、すべての学校でいじめ問題について研修をきちんとすべきだと。型どおりの報告ではなく、いじめ問題の本質・対応。何よりも子どもの理解の問題である。いじめを認知する問題。いじめの認知というのは、何ヶ月か経ってみて実態や本質が分かってくる。矢巾では、小さいものも記録しみんなが共有したりという取り組みもしているが、すべての学校で本格的にそういう研修、対策の徹底がされているのか。
【教育委員長】
専門家の第三者委員会の力も借りなければいけないと思うが、我々も教育のプロとして、子どもの微妙な変化などに敏感になるような教師でなければならないと思っている。11月26日に岩手教育の日のつどいを行ったが、そこでも生徒の朗読でいじめ撲滅の宣言を7項目でやったが、その中の1つに大人の世界でもいじめのない世界をつくってほしいという話をした。大人がいじめのないような社会・地域をつくることも大事だと思っている。そして、学校によってはPTAが集まっていじめ問題を話し合っているところもあり、それから子どもを育てるときから、「人をいじめるな、物を盗むな、ウソをつくな」という教育力も必要ではないかと。ほめてばかりではなく、ダメなものはダメという子育ても必要だと思っている。生徒同士によるいじめをなくすという話し合い、これは矢巾の中学校でも滝沢でもやっているので、その力も借りたいと。そして我々教育委員長、教育長、必要に応じて県の考えを直接行って伝えると、先生方も頑張ってほしいと。
ある学校に行ったときに、帰りの会があるが、○○君を話題にして、彼は一日何を僕たちにしてくれたか、良い点だけを挙げると。彼は「僕は当たり前のことをやっただけだが褒められて嬉しい」と。子ども同士で褒め合い伸ばすと。いじめダメ一辺倒の教育だけだと暗くなってしまうので、良いことを伸ばすということも同時にやっていかなかればならないと思うし、引き続き議員からご指摘あったように良い学校をつくるために努力していきたい。
・大震災津波による行方不明者の捜索について
【斉藤議員】
行方不明者の遺族・家族が、沼や湾の捜索を求め、25000筆を超える署名を集めたが、今までどういう捜索が行われてきたのか。さらにこれからどういう方針で遺族・家族の期待に応えていくのか。
・岩手医科大学の元教授の覚せい剤疑惑について
【斉藤議員】
公安委員長は報告を受けていないと。覚せい剤疑惑で注射を打たれたという本人が訴えている問題である。ところがこの方は外国人で国外に行ってしまった、証拠隠滅ではないか。尿検査やったらすぐ分かるような事件を、捜査したかしないかも分からないのか。
そしてその肝心の大学に、県警のトップが天下りすると。こんな不可解なことはないと思うが、公安委員会が私の質疑の報告を受けただけでは済まない。そういうことをきちんとやらなかったら県民の信頼を得られないのではないか。
【公安委員長】
公安委員会は、県警察を管理し、法律の規定に基づきその権限に属せられた事務を司ることとされている。公安委員会が行う管理は、個々の事務執行を含まず、大綱方針を定めてこれによる事前事後の監督を行うものと承知している。
また、退職者の再就職については、雇用主と退職職員本人との雇用契約に基づいているものと承知している。