2016年3月2日 2月定例県議会本会議
高田一郎県議の議案に対する質疑(大要)


・人事委員会の勧告に基づく県職員の給与等の引き上げについて

【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。
 議案第1号、36号、65号、66号、84号、121号、134号〜137号について質問します。
 議案第1号、36号、66号は、人事委員会の勧告に基づく県職員の給与等の引き上げを行うものです。15年度の勧告内容は、給与表で若年層に重点を置き0.2%の引き上げを行うものです。県職員一人当たりの引き上げ額、全体の影響額はどうなるのでしょうか。医療局、企業局含めて示してください。
 今回0.2%の引き上げ勧告を行いましたが、一方では「世代間の給与差を見直す」(給与制度の総合的見直し)として給与水準を平均1%の引き下げを行おうとしています。これは県職員の賃金抑制につながり、景気回復・地域経済にも大きな影響を与えるものであり、同時に公務員の賃金決定の原則やルールをないがしろにするものです。3年間の現給保障(経過措置)もありますが、この影響額はどうなるのでしょうか。退職金への影響はどうなるのでしょうか。
 復興事業に取り組む任期付職員の期末手当は3.1ヶ月と0.15ヶ月増となります。特定任期付職員は「顕著な業績を上げた職員には1か月分支給できる」規定になっていますが、実績はどうなっているのでしょうか。

【総務部長】
 今年度の給与改定について。職員一人当たりの引き上げ額は、行政職の40歳主査級職員をモデルに試算した場合、年間給与額で95000円程度となる。その総額は普通会計および企業会計を合わせ29億円程度と見込んでいる。
 給与制度の総合的見直しについて。経過措置が終了する平成31年度における影響額は、経過措置期間中の昇格・昇給等もあり試算が困難だが、仮に昇給等が一切ないものと確定した場合、普通会計で13億1000万円程度、企業会計で1億5000万円程度と計算される。また退職手当への影響については、今議会に提案している職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例案において、退職前の職責に応じて基本額に加算される調整額を国に準じて増額改定を行うこととしており、給与制度の総合的見直しによる影響はない。
 特定任期付職員業績手当については、特定任期付職員が採用当初に、期待された以上の特に顕著な業績をあげたと認められる場合に支給されるものであり、国に準じて平成14年度の特定任期付職員の制度創設時に設けたものだが、これまでのところ支給実績はない。

・職員の超過勤務手当について

【高田議員】
 次に、職員の超過勤務手当について質問します。これまで県職員は通常の仕事にくわえ、東日本大震災津波での復旧・復興で超過勤務を強いられる中で、残業代も満額支払われてきませんでした。部局ごとの超過勤務の実態と残業手当の支給状況はどうなっているのでしょうか。満額支給されているのでしょうか。

【総務部長】
 平成27年4月から28年1月までの知事部局の一人当たりの月平均超過勤務時間数は、13.6時間、部局別では復興局が24.5時間、商工労働観光部が21.3時間、国体局が20.7時間などとなっている。
 一人当たりの支給額は、2月補正における予算額を27年4月1日現在の職員数で単純に割ったものだが、年額で43万1000円となるところであり、部局別では復興局が79万2000円、商工労働観光部が58万1000円、国体局が75万7000円などとなっている。
 なお、超過勤務手当については、事前命令を行い、その実績を確認した上で、実績に応じた適正な支給を行っている。

・簗川発電所について

【高田議員】
 議案第65号、電気事業及び工業用水道事業の設置などに関する条例の一部を改正する条例は、県営簗川ダムの右岸直下に簗川発電所を設置するものです。
 簗川ダムは、全国的にも清流と評価され、専門家もダムに頼らない治水対策への政策転換をすべきと指摘されてきた、ムダな公共事業でもあります。この間、ダム建設に伴う関連道路が整備され、堤体工事が行われてきましたが、わが党は、不要・不急のダム建設の見直し・中止を求めてきました。簗川発電所はかつて計画を断念した経過がありますが、その理由と設置に至った経過について示してください。また、建設費および採算の見通しも示してください。

【企業局長】
 過去の発電計画を断念した理由については、企業局では平成5年度以降電力会社と協議を行ってきたが、平成15年9月に電力会社から「電力の需要が低迷しており、中長期的な供給力も十分に確保される見通しにあることから、受電できる状況にない」との回答があり、開発の同意が得られなかった。今般設置に至った経緯だが、東日本大震災津波を契機として、再生可能エネルギー導入の機運が高まり、固定価格買い取り制度が創設されたことを踏まえて計画を見直した結果、簗川地区は経済性に優れた有望な地点であるという見通しが得られたことから、他の共同事業者の同意や電力会社から送配電線への接続が可能である旨の回答を得て、昨年6月に設置を表明した。
 建設費および採算見通しは、総事業費は17億2800万円で、うち工事費12億4500万円、負担金その他が4億8300万円と見込んでいる。また運転開始が平成33年度を予定しているが、採算については運転開始から9年目で投資資金を回収し、固定価格買い取り機関が終了する20年後の累積損益は約22億円の黒字と見込んでいる。

・震災関係予算の減額補正について

【高田議員】
 次に議案第84号、一般会計補正予算(第5号)は、国の一億総活躍対策やTPP関連対策など80億円余の増額補正を行うとともに、県税及び事業の確定に伴い全体として637億円の減額補正になっています。そこで質問します。
 第1に、減額補正のうち604億円余は東日本大震災津波関係分となっています。主な事業と減額補正の理由は何でしょうか。災害公営住宅は35億円の減額となっていますが、復興計画に影響はないのでしょうか。

【総務部長】
 一般会計補正予算第5号の震災分のうち減額補正の主な事業は、河川等災害復旧事業費203億円余、地域連携道路整備事業費63億円余、中小企業東日本大震災復興資金貸付金42億円余、直轄道路事業費負担金38億円余などであり、計604億円余の減額となっている。
 減額補正の主な理由は、復興まちづくり等の調整等により工程等を見直したことに伴う減などによるものである。
【県土整備部長】
 災害公営住宅整備事業費の減額補正だが、今回の減額は、事業の進捗に応じた委託料や工事請負費の精査および買い取り型事業に事業手法を変更したことにより、完成時点での支払いとなったことが理由であり、完成時期が遅れるなどの復興計画への影響はない。

・地域しごと支援センター運営事業について

【高田議員】
 第2に、地域しごと支援センター運営事業1164万9千円は、「地域しごと支援センター」を設置し地方で仕事を見つけて暮らせる希望者に対して情報などを提供するものです。今年度は、人口減少問題に対応するため、移住推進体制や地域資源を活用した地域づくり、集落の再生のための支援事業(いわて地域力活性化推進事業費1億408万3千円)などを実施し、U・Iターン対策などを行ってきました。これまでの実績、課題は何でしょうか。どのように事業が拡充されるのでしょうか。事業内容および運営主体はどこが担うのでしょうか。U・Iターンの現状はどうなっているのかも示してください。

【政策地域部長】
 移住の推進に向けて、今年度は市町村や関係団体と連携した全県的な推進体制であり専門職員を置く「いわて定住交流促進連絡協議会」の体制の拡充や、首都圏における移住相談窓口を整備するとともに、ホームページやパンフレットのリニューアルなどにより情報発信機能を強化したところである。近年は移住者がおおむね1000人を超えるなど増加傾向にあり成果があがっている。
 取り組みにあたっては、市町村や関係機関が実施する各種の施策や、仕事・暮らしなどの移住に関する情報を一元的に発信していくことが課題と考えている。このような中で国においては、地方創生加速化交付金のメニューとして、移住情報を一元的に発信する地域しごと支援センターの設置を推奨していることから、本県においては、いわて定住交流促進連絡協議会をこのセンターに位置づけ、その運営事業費を補正予算案に盛り込んだ。
 本事業においては、移住情報の発信に加え、移住促進のための研修会やシンポジウムの開催、移住者と移住希望者とのワークショップの開催、モニターツアーの実施を通じた仕事や暮らしの情報発信など、交付金を有効に活用しながら移住促進を強化しようとするものである。
 また平成26年度におけるU・Iターンによる就職や新規就農市町村窓口等を通じた本県への移住者数は1107名となっており、うちU・Iターンとしての就職者は794名となっている。

・仮設住宅の改修計画の進捗状況について

【高田議員】
 第3に、救助費は11億8515万円も減額補正されています。減額の主な理由は何でしょうか。
 応急仮設住宅設置から4年半以上が経ちますが、不具合が生じています。県は応急仮設住宅の改修計画を作成し、今年度約5000戸の改修計画を予定していました。改修計画の進捗状況はどうなっているのでしょうか。

【復興局長】
 救助費の減額補正の主なものについて。仮設住宅の解体撤去費が、市町村の集約化計画の変更により約5億2700万円の減額、仮設住宅の基礎補強工事において単価が見込みを下回ったことにより約3億8200万円の減額、みなし仮設住宅の賃借料が年度中途の退去により約2億3000万円の減額などとなっている。
 仮設住宅の改修計画の進捗状況は、今年度ほぼ当初の予定通り4740戸の改修を行ったところであり、来年度についても2500戸の改修を予定している。

・閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の請負契約について

【高田議員】
 議案第121号、閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の請負契約の変更を求めるものです。
 当初契約70億3652万円から178億8005万円と108億4353万円、154.1%の増となっています。これまでもインフレスライド条項や地質調査等による契約変更はありましたが、議案第121号は当初契約をはるかに超える108億円増となるものであります。当初契約に問題があったのではないでしょうか。変更契約にいたる経過と対応について具体的な説明を求めるものです。

【県土整備部長】
 当該工事は、被災地の復旧・復興を最大限早めるため、入札公告において、詳細設計に伴う工事費の変動については、設計変更にて対応するという条件を明示したうえで、概略の図面数量で発注する標準断面図等による発注方式により進めてきた。この方式については、積算の開始時点で得られる情報をもとに、最善の設計により発注したもので、詳細設計による十分な耐震性の確保や工事着手後に当初想定できなかった地盤条件等に対応するための方法変更などにより工事費が増額となる場合が多くある。
 閉伊川水門については、他の水門に比べ著しく深い水深での工事であり、詳細設計や地質調査の結果、水門本体の形状や重量が増大するとともに、これにともない基礎工や仮設工の範囲や数量も増工となったものである。
 議案については、十分内容を精査した上で提案しているものであり、ご理解いただきたい。

・災害公営住宅について

【高田議員】
 議案第134号〜137号・財産の取得に関し議決を求める議案は、県が公募・選定した事業者が建設する災害公営住宅を買い取りしようとするものです。
 事業者の提案戸数51戸に対し買取戸数は37戸と減少している理由は何でしょうか。
 災害公営住宅は空き戸数が361戸、空き室率は13%となっています。入居する被災者等の要望にどう対応がされたのでしょうか。
 一戸あたりの建設費は、1300万円台〜1600万円台になっています。用地等の条件があれば、木造戸建ての災害公営住宅を建設すべきですがいかがでしょうか。

【県土整備部長】
 今回山田町の2団地で実施した買い取り型事業においては、中小工務店が参加しやすくなるよう団地の整備戸数のすべてを建てることはできなくても、一部の戸数だけを建てるという提案も認めていたところである。事業者の選定については、提案戸数の合計が整備戸数に達するまで審査順位が上位のものから選定するが、その結果、提案戸数の合計が整備戸数を超過した場合には、選定された事業者のうち最下位の者が提案戸数よりも少ない戸数を建てることで整備戸数に合うよう調整することとした。今回の山田町の2団地37戸については、震災順位1位の者が14戸、2位が37戸を建てる提案をしたため、2位の者が建てる戸数を23戸に減らすことにより整備戸数が37戸となるよう調整した。
 災害公営住宅の空き戸数について。建設戸数・場所については、市町村が被災者に対して行っている意向調査に基づき決定するとともに、入居される方々からの要望を受け、漁業従事者の合羽置き場の設置、ペット飼育に対応した災害公営住宅の整備、支援員が活用できる事務室の設置などに取り組んでいる。現在発生している空家については、災害公営住宅の入居か持ち家再建するか、いまだに決めかねている方がいること、仮設住宅から災害公営住宅に入居することにより新たに家賃負担が発生することなどが要因と考えられることから、引き続き入居の促進に努めていく。
 木造戸建ての災害公営住宅の建設について。県内では現在957戸の建設計画となっている。今後も十分な敷地面積が確保でき市町村が希望する団地にあっては積極的に取り組んでいく。

≪再質問≫

・人事委員会勧告について

【高田議員】
 今回の人事委員会勧告の問題点は、やはり給与制度の総合的な見直しが導入されようとしていることで、これについて、公務員の賃金決定の原則・ルールを逸脱するような中身だと思うが、どのような見解か。
 今回の勧告内容を見ると、長時間労働の解消や健康管理の支援に重点的に取り組むという中身になっている。県職員に対する長時間勤務の解消策およびメンタルヘルス対策はどうなっているのか。

【総務部長】
 給与制度の総合的見直しについては、これまで人事委員会勧告を尊重する立場で給与の取り扱いを決定してきた経緯、また国や他の都道府県との均衡、さらに人事委員会勧告通り実施することが職員給与について県民の理解をいただくことにつながるものと考えることから、人事委員会勧告通り実施することが必要との判断に至った。
 長時間勤務、メンタルヘルスの現状と対策について。1月までの知事部局の一人当たり月平均超過勤務時間数は13.6時間であり、復興業務の本格化や国体関連業務の増加等もあり、前年度同期と比較しやや増加している。このため、超過勤務実施にかかる事前命令と自己確認の決定、原則水曜日を定時退庁日とする「かえるの日運動」の実施、業務の繁閑に応じた事務分担の見直しの徹底などにより引き続き総勤務時間の縮減に努めている。
 職員のメンタルヘルスについて、知事部局では定期健康診断時に全職員に対しメンタルヘルスストレスチェックを行っている。その結果、ただちに精神的な疾病であるとはできないが、高ストレス状態や抑うつ状態にあると判断された職員の比率は、26年度は全体の7.9%となっており、ここ数年横ばい傾向となっている。高ストレス状態や抑うつ状態にあると判断された職員に対し、面談の勧奨を行いながら、申出者に対しては精神科嘱託医による面接指導を行うほか、嘱託医による所属長訪問や個人指導、メンタルヘルス研修会の開催などの対策を実施するとともに、定期的に相談日を設け、精神科嘱託医がメンタルヘルス関係の相談を受けている。

・閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の請負契約について

【高田議員】
 たしかに請負契約の変更はあり得るものだが、今回は154%の大幅な増額と。しかも今の話を聞いていると、設計の変更に関わる問題だと思う。これはやはり再入札だとか新たな契約を見直すなど、そういったことをする事案ではないか。入札制度上瑕疵はなかったのか。

【県土整備部長】
 入札制度上問題はない。今回の変更額・率はこれまで最大だが、結果として当初から大幅な変更になったものだが、今回提案した内容については、決して過大なものとかムダなものはなく、より耐震性に優れた水門を市街地の近傍で安全に構築するために必要なものである。
 大震災津波は未曾有の被害を及ぼし、膨大な工事を一日でも早く完成させるということで、我々も通常行わないような手法を採用しているので、今回の議案についてもご理解賜りたい。

・災害公営住宅について

【高田議員】
 先月釜石と陸前高田に行き入居者と懇談する機会があった。共通して出されたのは、ドアが重いということ、これにともなう孤立感が深まっていること、なにより支援員の配置が重要だということが共通して語られた。釜石では、緊急通報システムの設置の要望が強く出された。陸前高田市では、共益費が高く被災者の雑損控除も5年で終了することから、家賃が高くなるのではないかとの声も出された。災害公営住宅の入居者の4割は高齢者、うち1割は一人暮らしの高齢者であり、この率はどんどん高まっていくと思う。ですからこの要望にもしっかり応えていく必要がある。緊急通報システムの設置はおそらく市町村だとは思うが、共益費の問題は負担の公平性の問題もあるが、現在入居している被災者に寄り添って対応していくべきではないか。

【復興局長】
 災害公営住宅に入居されている方の孤立感、支援員の問題だが、支援員や相談員の方々をできるだけきめ細かく災害公営住宅に入居されている方々に対しても訪問していただき、できるだけ被災者の方々孤立感を味わうことのないよう、また、体・心の面を含めできるだけ丁寧なケアをするような形で対応していきたい。
【県土整備部長】
 いろいろご要望をいただいているので、可能なものについては丁寧に対応させていただき、実現させていきたい。ドアが重い、玄関扉のことだと思うが、現在整備している災害公営住宅は、非常に省エネ設計で気密性が高く、台所の換気扇を使っていると玄関扉が開けにくいという指摘をいただいており、換気扇等の使用にかかる注意事項などの形でお知らせしていきたい。
 共益費については、使った方々の中でご負担いただくのが原則と思っている。空き室があって増額になっているのではという懸念もあると思うが、大半がエレベーター等の電気代であり、使った分だけ払うということなので、公平性の面からなかなか難しいと思っている。これについてもご理解賜りたい。