2016年3月3日 商工文教委員会
山田町NPO事案の再検証報告書に対する質疑(大要)
【斉藤委員】
会計検査院の調査報告書が出て、県が第三者委員会を県議会の決議に基づいて設置して調査したことは評価したい。同時に、この中身を見ると、この検証委員会は1月28日に第1回を行い、第3回が2月22日と1ヶ月も経っていない、回数もたった3回。
中身も、総論のまとめはかなり無理があったと思う。それぞれの意見を丁寧に見ると、具体的な問題が厳しく指摘されており、総論では「検証結果としてはおおむね妥当だったと認められる」というのは全然一致しない。きわめて中身的には不十分なものになったと率直に指摘しなければならないが、十分な検証がやられたと思うか。
【商工労働観光部副部長】
「検証結果としておおむね妥当だったと認められる」ということの中身の問題だが、先の委員会に提出した報告書の内容について、検証の中身をおおむね妥当という形で述べられているものであり、それについては、どの程度時間をとるということはあったと思うが、5人の有識者の方々は非常に精力的に研究をしていただき、議論いただいた結果であるので、これ以上のものを我々事務局としては有識者の方々に求めるものはないと思っている。
【斉藤委員】
5人の方々の総括的所感が出ており、それぞれ丁寧に見たが厳しく指摘されている。
内田氏は「『通常の処理としては適切であった』とのまとめは違和感がある」「さらに踏み込んだチェックが義務となる」「リースの実態がないことまでを確認することができた。そうすれば平成24年度の目的外支出を防止できた」と。
竹中氏は「責任逃れに見える」と指摘したうえで、「少なくとも御蔵の湯が完成した段階で、県が別な対応をとっていれば被害を最小限に食い止められていたと考える」「NPO法人が受託者として不適格だった」ということも指摘している。さらに「県に注意義務違反の責任がある」「山田町から提出された実績報告書を調査・確認しなければならなかった」「会計検査院の指摘は今回の事案にも当てはまる」と言っている。
田村氏は「県は市町村にたいし補助金を交付した後、補助金が契約通り使われているかを何らかの形で確認する必要がある」「県は市町村にたいして補完機能を積極的に果たしていく必要がある」と。いわば震災直後の人材もいない沿岸市町村にたいして、問題のある報告書をそのまま認めるような監査ではいけないと言っている。
山内氏は「『通常の処理としては適切であった』と結んでいる部分は違和感がある」「一番残念に思うのは、税金を適切に執行できなかったということである」「山田町は事業主体であり間接事業者、県は補助事業者としてそれぞれの責任を果たす必要があった。特に平成23年度の完了確認は、事案発覚後に再調査を行ったレベルで実施しなければならなかったと考える」と。「言い訳に見える書きぶりのために印象が良くなかった。県の責任をゼロにしては県民の納得が得られないであろう。責任については道義的責任、政治責任、行政責任、改善責任など、法的責任に限らずさまざまなものがある」「平成23年度事業の完了確認について、確認に時間を要するのであれば、交付決定を留保して、繰越明許や自己繰越とする方法もあったと考える。平成24年度事業の認定も留保できたのではないか」と。
ここまで指摘されていて、総論のまとめで「検証結果としてはおおむね妥当だった」と、なぜこうなるのか。無理してこういうまとめをしたのではないか。5人の意見をそのまま報告すればよかったのではないか。大変違和感を持ったが、いかがか。
【商工労働観光部副部長】
ご指摘いただいたさまざまな論点については、前回の報告書においてもおおむね同様の記載があり、そういった問題点の指摘は前回の報告書で指摘を受けているところである。それについて、改めて検証委員会で、結果として委員がご指摘したような、改めて前回の検証委員会で指摘されたことはまた浮き彫りになったということである。それについて、委員の一人が「そういったこともあり、おおむね妥当ではないか」というご発言もあり、確認と中身については妥当ではないかと。ただし、この項目についてはいかがかというような流れ、議論になっているということを整理させていただいたものであり、この記載内容については、ぎりぎりのところまで5人の委員にご確認いただき、その結果こういった報告書でまとめさせていただいたものである。
【斉藤委員】
岩手県の26年3月3日の検証委員会の報告書は、県の責任を認めなかったきわめて不十分だったものである。指摘されたように、通常の事務処理としては適切だったとか、責任逃れに終始した。だから県議会は、第三者の検証を求めた。ところがこの検証報告書も、全体が妥当だとなってしまったら、噛み合わない。実際にそれぞれの5人の方の総括的所見から見ても、無理に「おおむね妥当」という総論は一致していない。
わずか3回の検証なので限界があったと思うが、3つの区分で検証したということはたしかに中心的な問題だった。
平成23年度補助事業の審査および進捗管理で何が問題だったか。実はこの事業計画は5回変更された。第4回は12月に5000万円、第5回は1月25日1億6900万円の増額補正だった。私は労働者からも聞いたが、23年12月は賃金未払いで、当時前払いで事業費がいっていて、それを全部使って12月は未払い、そのときに要求したら補正で簡単に5000万円出て、労働者に賞与まで出した。そして一番重要なのは、1月25日の増額補正、このときは雇用人員一人も増えなかった。そもそも事業費を精査する時期に1億6900万円もの増額補正を行った。4回目も5回目も実態は不足払いだった。1月25日のものは、県との関係は3月25日になった。県がミスした。こんなデタラメな、23年度から使い切って不足になっていた状況で、5000万円、1億6900万円と増額補正を認めた。ここに一番の県のチェックすべき責任の問題があったと思う。その点についてどう答えるか。
【商工労働観光部副部長】
報告書にかかる再検証の過程においての議論という形で答えると、ご指摘のようなおかしな面といいますか、疑問、明らかに精査すべき時期といったようなものが出てくる時期があっただろうと。それは前回の報告書でいうと「兆候」という言葉を使わせていただいていたが、そういった兆候があったと、あるいはそういったものを気づいた時点でしっかりと踏み込んだ指導と対応をすべきだったという指摘をいただいている。
【斉藤委員】
残念ながら今度の検証委員会は現地調査がやられていなかった。おそらく現場の労働者の聴取や現地の調査をしたら、もっとリアリズムで県の23年度の事業計画の審査・進捗管理の問題点は浮き彫りになったと思う。
2つ目の論点は、御蔵の湯で、これはきわめて重大な今回の問題の転換点になったと一貫して指摘してきた。御蔵の湯というのは、11月の段階で県の担当者は「これは建設工事ではないか」と疑いをもって、これを本庁にも報告し確認した経過がある。ところが、御蔵の湯は2億円を使って建設されたと、落成式のときに町長がそのようにあいさつした。これがリース・材料費・組み立て費の3つのごまかしの論理で認められた。このときにきちんとごまかしをはっきりさせていたら、23年度の乱脈経理というのもストップできたと思う。御蔵の湯の建設をリース料という形で認めたことに、県のチェックの重大な問題になったと思うがいかがか。
【商工労働観光部副部長】
御蔵の湯は有識者会議における検証においても大きなテーマとなり焦点となった事項である。この御蔵の湯の扱い、先ほどのそういった兆候、気づいた時点で対応すべきことがあったのではないかという指摘をいただいている。
【斉藤委員】
指摘を受けただけではすまない。
実はこの問題については、県は「御蔵の湯は補助事業の対象にならない」と町に述べている。巻き返しがあって、トップ同士の話があり、これを認めることになってしまった。どういうことかというと、宮古地域振興センターから山田町に、「御蔵の湯は建設土木事業に該当するため補助対象外となる。県庁から回答があったので連絡する」と。これは山田町の文書である。山田町は返そうとしたが、これでは困るというので、トップ同士が話し合い、4月25日に県と山田町で4項目の合意を交わして認めるというごまかしをやった。そのごまかしというのは、「御蔵の湯というのはリース料および材料費で組み立てられるものであるから補助対象になる」「御蔵の湯の建物の所有者はオールブリッジである」「建設土木事業でない」「浴場整備は財産取得に当たらない」という確認である。この4項目は県が町に求めたもので、町が回答したら認めるという出来レースを行った。所有者がオールブリッジというのなら、オールブリッジの実態を調べなければいけない。オールブリッジというのは全く存在しない架空の会社だった。オールブリッジが発注した形跡もなかった。落成式にも出ていないのだから。御蔵の湯の問題は、山田町の責任は重大だが、県が一緒になって認めてしまった。ある意味では共同責任が発生したと思う。そういう指摘はなかったか。そういう責任は現段階で感じているか。
【商工労働観光部副部長】
ご指摘の通りのやりとりについて、有識者の方々で意見が交わされている。リースとしての実態があるのか、リースとしてみなし得るのかといった意見があった。これらについてしっかりとその時点で対応すべきであったという指摘を受けている。
今こうして一連の経過と2回の検証委員会の結果ということで私なりに受け止めているのは、やはりしっかりとそこでチェック、気づくべきだったと感じている。
【斉藤委員】
3つ目の論点は、平成23年度補助事業の完了確認および平成24年度補助事業計画の審査。平成23年度補助事業の完了確認、県は12月28日と3月15日にやった。そのときの中身は、現金出納帳や支払伝票が確認できないと。4億7000万円という事業をやりながら、現金出納帳や支払伝票が確認できないと。これが3月の段階である。それが完了確認で通っている。議会で参考人質疑をやったとき、当時の副局長に聞いたが、文書では3月31日に完了確認をやったとなっているが「やっていない」と。これは4月5月に延びた。そのとき山田町の総務課長は、これではまともにできないから人を配置してきちんと指導すべきだと進言したが、当時の町長はそれを却下した。とてもではないが、まともに完了確認できるような、事業費を執行できるような体制でなかったということを県は分かっていたにも関わらず通してしまった。そして同じ時期に、経理能力のない事業者に7億円余の24年度事業費を内定してしまった。二重三重に県のチェックが甘かった、それが傷を広げた。これはどのように検証され、県はどのように受け止めているか。
【商工労働観光部副部長】
有識者会議においても、23年度から24年度に切り替わる、完了確認の時期と次年度の対応というところがやはり大きなテーマとなった。これについては、いろいろな当時の資料等も求められ提示し、議論いただいた。その結果の指摘としては、8ページに書いている通りである。
【斉藤委員】
そういうきわめて具体的な県の責任を指摘したが、実は26年3月の報告書には、そのような責任が明記されていない。だから県議会で決議があげられ、第三者できちんと検証すべきとなった。その検証委員会でそういう指摘があったのなら、「おおむね妥当」ということになるのか。
私が指摘した3つの点は、きわめて重大な県の進捗管理、完了確認に関わる大問題だった。
26年3月の報告書は、そういう問題点・責任は指摘されているか。
【商工労働観光部副部長】
5人の有識者の方々の議論の結果として、5人の方々の見解がこのようにまとまったものであるので、これについては我々実務的に事務作業したものとしては、とりまとめのコメントについてのそれ以上の考えは申し述べることはできないが、「妥当であった」としている先の報告書に、どのような記載があったかということについては、28・29ページの記載が主な根拠として有識者会議の先生方はおっしゃっていると受け止めている。
【斉藤委員】
この26年3月の報告書がきわめて不十分で、県の責任も認めず反省もないから県議会を決議をあげて再検証になったと。
5人の有識者の方々の総括的な所見はまともだと思う。総論のまとめで歪めてしまったらおかしい。
この事件は残念ながら、大雪りばぁねっと。を重用し、それを受け入れたのは山田町長だった。そこに第一義的な重大な責任があったと思う。これは、当時の町長の参考人質疑でしっかり確かめた。3月25日に大雪りばぁねっと。の代表が山田町に行って、翌々日には県の肩書をつけて使った。そして4月の早い時期に、県の社協の専務が「あのNPOは他のボランティア団体といろんな軋轢を起こしているので北海道に帰ってもらった方がいい」と進言したが、その声を聞かなかった。そして重用してしまって問題を引き起こした。
もっとひどいのは、代表の履歴書を提出させなかった。NPOの実態も調べなかった。何千万円何億円の事業をできるような団体でなかったことは、実態を調べればすぐ分かったことだった。山田町の責任は本当に重大だったと思うが、しかし実際事業が進んだときに、そこにきちんと進捗管理をして完了確認して、不当なものがあったら歯止めをかけると。残念ながら県のその役割が果たされなかった。今回の検証の一番の問題はそこだと思う。
結果的に6億7000万円を山田町は自腹で返還した。今回の会計検査院の指摘でも1700万円さらに追加して返還を求められた。本当にこの問題は重大な傷跡を残している。そういう結果にたいし、県が真摯に向き合い対応しなければならない。
検証報告書でも、町だけが悪いということにはならないと。法的責任という点では簡単ではないが、県が政治的、行政的責任を認めて、今後のさまざまな対応にあたる必要があると思うがいかがか。
【商工労働観光部長】
委員おっしゃる通り、さまざま厳しいご指摘も受けたところである。こういった有識者の方々からいただいた意見について、今後県としてどのように具体的な取り組みとしてやっていけるかということをきちんと検討しながら、引き続き再発防止、こういったことが二度と起こらないようにしていくことが重要だと考えており、そういった取り組みを今後も進めていく。