2016年3月4日 2月定例県議会・議会運営委員会
新教育長の人事案件に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
新しい教育長の人事議案ということで、初めての議論ということになる。
実は、教育委員会制度が改悪されて、国会の議論を踏まえて、文科省から26年7月17日に通知が出ている。その通知では「教育長の任命の議会同意に際しては、新教育長の担う重要な職責に鑑み、新教育長の資質・能力を十全にチェックするため、候補者が所信表明を行った上で質疑を行うなど、丁寧な手続きを経ることが考えられる」と。この間の議論で、残念ながら本人の質疑ということにはならず、従来型の議運での提案者に対する質疑ということになる。
この重みを踏まえて、まず最初に、新教育長の役割と仕事はこれまでとどう変わるのか。
【達増知事】
今般の法改正により、新教育長の職務は、地方教育行政の組織および運営に関する法律第13条第1項により、「教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表する」と規定されている。これにより新教育長は、現教育長の職務である「教育委員会の権限に属する全ての事務を司ること、および事務局の事務を統括し、所属の職員を指揮監督すること」に加え、現教育委員長の職務である「教育委員会の会議を主催すること」を担うこととなる。
【斉藤議員】
教育委員会制度が変わった。実は重要なことがあり、当時安倍内閣の下で、教育委員会制度を廃止するということが目指された。しかし最終的には教育委員会は、今までと同じような形で残った。教育委員会が残ったということは私たちは高く評価しているが、教育委員会の役割、これは教育行政の最高意思決定機関であり執行機関、この役割は従前と同じように維持されると思うが、この役割に変化はあるか。
【達増知事】
今般の法改正においても、教育委員会の職務権限は従来通りとされており、また知事から独立した道義性の執行機関として引き続き存置されたところであり、教育委員会の役割に変化は生じない。
【斉藤議員】
新教育長制度で、知事の権限は強化される。大変責任の重い権限の大きな教育長は、知事が議会の同意を得て任命すると。新しい教育長というのは教育委員ではない。新しい教育委員会は教育長と教育委員で構成されるとなった。そういう点でかなり重要なことだと思うが、教育長・教育委員会の自主性は守られるべきだと思うがいかがか。
【達増知事】
教育委員会は、今般の法改正においても、地方教育行政の組織および運営に関する法律第3条第1項の規定により、教育長および委員をもって組織される合議制の執行機関として引き続き組織され、規定する教育委員会の職務権限についても改正がなされていないところである。
【斉藤議員】
教育委員会制度というのは、戦前国民を教育によって侵略戦争に動員したという反省から、行政からも独立した教育委員会制度がつくられた。実はそこには3つの大きな根本方針があった。@教育行政の地方分権A教育行政の民主統制B教育行政の一般行政からの独立―という、これが新しい教育委員会制度でも残ったと思うが、知事もこのような認識か。
【達増知事】
今般の法改正においても、教育委員会の職務権限は従来通りとされており、また知事から独立した合議制の執行機関として引き続き存置されているので、そういう趣旨と理解している。
【斉藤議員】
今度の新教育長は任期が3年となっている。国の通知では、計画性をもって一定の仕事を行うためには3年は必要だということだが、今までの行政職と違い、3年間は新しい教育長として仕事をされると認識するが、そういうことか。
【達増知事】
新教育長の任期は、地方教育行政の組織および運営に関する法律第5条第1項において3年と規定されており、高橋氏には、これまでも教育長の経験等を生かしながら、任期中その力を発揮してもらいたいと考えている。
【斉藤議員】
高橋氏は現教育長だが、これまでの実績を具体的にどう評価して提案されたものか。
【達増知事】
高橋氏は、平成26年4月に教育委員会委員および教育長に就任以来、少人数教育の推進や新たな県立高等学校再編計画の検討など、適切な教育環境の整備に取り組むとともに、岩手の復興教育の推進や幼児・児童・生徒の心のサポート、県立高田高校の移転・新築など、被災地の教育環境の整備にも取り組んできたところである。
いじめ問題に対しては、事案に対する迅速かつ適切な対応を行ったほか、いじめ対策関連条例の制定や、岩手県いじめ問題対策連絡協議会の設置など、重大事案等に迅速かつ機動的に対応できる体制・整備に力を発揮したものと考えている。
このほか、本県2例目の世界遺産となる橋野鉄鋼山の世界遺産登録の実現、希望郷いわて国体に向けた選手強化、家庭・地域の連携による教育環境の充実等にも尽力するなど、高橋氏は教育長として知事や他の委員と連携しながら、教育行政全般にわたり精力的に取り組んでいると考えている。
【斉藤議員】
高橋氏は、平成22年4月から教育次長だった。ちょうど震災時は法貴教育長の時代だったが、震災のときに教員の人事を凍結するなど、震災復興に大変重要な役割を果たしたと思う。同時に、今回も35人学級を中2まで拡充するなどの取り組みは評価できるのではないか。
しかし、中学生のいじめ自殺事件が2年連続で発生してしまった。異常な事態だと考えるが、この教育行政、教育委員会の取り組みに問題はなかったのか。
【達増知事】
教育委員会においては、滝沢市における事案の発生を受けて、市町村教育委員会にたいして、学校いじめ防止基本方針の策定の徹底や取り組みの強化等を助言してきたところだが、結果的に、滝沢市での教訓が矢巾町では生かされず、痛ましい事案が連続して発生したことは、本県におけるいじめ防止の取り組みが不十分だったということであり、県全体として重く受け止めなければならない。
これらの痛ましい事案を教訓に、同じような事案を二度と発生させないという強い思いで、今後においても総合教育会議における協議や具体的な取り組みなどを通じて、県も総力をあげていじめ防止対策に取り組んでいきたい。
【斉藤議員】
私は、新教育長は、憲法、子どもの権利条約に基づいて教育行政を進めるべきと考えるが、新教育長にはこうした認識と決意はあるか。どのように所信を把握しているか。
【達増知事】
新教育長は、地方教育行政の組織および運営に関する法律第4条第1項の規定により、人格が高潔で教育行政に関し識見を有する者のうちから任命することとされている。同法第11条第8項により、新教育長は、その職務の遂行にあたり同法第1条に規定する基本理念および知事が定める大綱に即して、かつ児童生徒等の教育を受ける権利の保障に万全を期して教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならないとされている。
高橋氏は、平成26年4月に教育委員会委員および教育長に就任以来、知事や他の委員と連携しながら、重要課題にたいし精力的に取り組んでおり、教育委員会の会務を総理する新教育長に適任と判断したものである。
【斉藤議員】
高橋氏は、今の高校再編でも大変丁寧な取り組みを進めており、バランス感覚もある人材だと思う。
憲法、子どもの権利条約に基づく取り組みを強く求めて質問を終了する。