2016年3月8日 予算特別委員会
総務部に対する質疑(大要)
・震災関係予算、復興事業費の一部負担について
【斉藤委員】
来年度予算1兆661億円の中で、震災分が4005億円となっている。この財源の内訳はどうなっているか。
来年度予算では、復興事業費の一部負担が導入されると。震災分で25億円の負担と言われているが、その主な事業の中身を示していただきたい。
【財政課総括課長】
震災分予算4005億円の主な財源の内訳は、国庫支出金1554億円、震災復興特別交付税888億円、県債78億円、基金繰入金500億円のうち復興交付金基金繰入金317億円。その他では、主に諸収入であり、貸付金元利収入が主なものだが、その他の部分が985億円となっている。
一部負担事業の主な内容だが、28年度当初予算における県負担の拡大分は約25億円となっており、主な内訳は、直轄道路整備事業負担金で約6億円、地域連携道路整備事業で約4億円、港湾高潮対策事業で約3億円、三陸高潮対策事業で3億円などとなっている。この県負担拡大分のうち約24億円については、県債の発行により対応することとしている。
【斉藤委員】
来年度予算も含めると、震災分は2兆2118億円になる。この累積で見ると財源はどうなるか。
25億円の一部負担、これはきわめて大きなものだと思うが、24億円が起債、借金だと。これはすべて一般財源なのか、交付税の措置があるのか。
【財政課総括課長】
震災予算のトータルにおける財源内訳については、国庫支出金7471億円、震災復興特別交付税4050億円、県債261億円、基金繰入金3890億円、その他6446億円となっている。
県債24億円の部分だが、こちらについては資金手当債であるので、交付税等の今年度の措置はない。
【斉藤委員】
24億円の起債は何の手当もないと。本当にこれは被害が大きく復興が遅れているところに対するいじめのようなものである。本当にこれは許されない。
2兆2118億円の累積の復興予算だが、復興交付金の繰り入れがそのうちわずか1676億円である。一部負担というのは、復興交付金事業の効果促進事業というのがあったが、復興交付金事業以外にも一部負担はあるということか。
【財政課総括課長】
あります。
・東日本大震災津波の教訓について
【斉藤委員】
丸5年が経過するが、一般質問でも取り上げたが、なぜ6255名の犠牲者を出したのか。そして復興が5年経ったにも関わらず計画通りには進まなかったと。この点で教訓を浮き彫りにしなくてはいけない。
県は、地域防災計画に基づく各課題ごとの検証は行った。これはこれで良かったと思うが、ただ、これだけの大災害、なぜこれだけ大きな犠牲者を出したかということは改めて詳細な検証・分析をすることが必要ではないか。
陸前高田市の検証報告書を見たが、昨年7月にまとめられたもので、かなり緻密に犠牲者の調査なども行っている。
いま岩手日報にも掲載されているが、犠牲者・行方不明者の震災時にどこで亡くなったのかというかなり詳細な調査をしていた。そこで浮かび上がった問題は、自宅にいて津波の被害に遭われたという方々が54.9%(岩手日報調査)に上ると。これは大変重要な調査だと思うが、なぜこれだけの大きな犠牲者を出したかということを県としてどう受け止めているか。このことについての検証、各地域ではやられているが、県としてはどう進めようとしているか。
【総合防災室長】
多くの犠牲者を出した主な要因としては、防潮堤・防波堤などへの過信や、今回の津波の大きさに対する過小評価、過去の津波警報の空振りによる油断などにより避難しなかったことや、避難した場所が結果的に被災したことなどが挙げられると存じている。また、消防団員などの避難支援従事者が自らの退避すべき基準が不明確であったことなどから犠牲になったことが指摘されている。
県では震災後、データや事例を収集するとともに、庁内はもとより市町村や関係機関へのアンケート調査やヒアリング等を重ね、問題点の抽出、原因分析、課題改善の方向性を整理し、24年2月に検証報告書をまとめた。この中では、犠牲者を多く出した要因としての避難行動についても分析し、防災対策の方向性を示している。県では、この報告書を基に、地域防災力の向上に向け、さまざまな制度や対応の基となる地域防災計画の修正を行い、それを踏まえた計画制度の新設・改正等を順次行ってきている。
陸前高田市の報告書や岩手日報の調査といったものがあるが、市町村は市町村として、市町村長の権限として避難指示を出さなければならない、そして避難所・避難場所を設定しなければならないと、まさに現場の対応をしなければならないという中の検証報告であろうかと思うし、県は県として広域自治体としての立場としての検証といったものになるのではないかと思う。それぞれ検証しつつ、参考として、また新たなマスコミの報告等についても参考にしながら、さらにそれぞれの対策を深めていきたい。
【斉藤委員】
例えば、陸前高田市の検証報告書では、「生死を分けたのは避難行動の有無であった可能性が見てとれる」と。まさに避難行動が生死を分けたと。岩手日報の調査で、亡くなった場所が分かる犠牲者が1326人おり、そのうち54.9%が自宅にとどまったことが浮き彫りになった。本当にこれは貴重な調査であり資料だと思う。この問題を深く解明して、いわゆる「津波てんでんこ」、津波対策は高いところに早く逃げるという教訓、結果としてはこれが風化していた、十分浸透できなかったということを改めて深める必要がある。
陸前高田市の場合は、避難場所で犠牲になった方々が303〜411人に及ぶと。67ヶ所の一時避難所のうち38ヶ所が被災した。この一時避難所はどのように指定されていたかというと、岩手県が作成したハザードマップを基に一時避難所を指定している。この岩手県が作成したシミュレーション、これは陸前高田市庁舎の場合で50cm〜1mの浸水だった。だからだいたいそこの地域の市庁舎や市民会館も一時避難所になっていたが、そこは15.8mの津波を受けた。これも大変重要な教訓ではなかったか。ハザードマップがどれだけの効果があったのか、ハザードマップを活用する上で、活用の方向にも問題があったと思うがいかがか。
【総合防災室長】
県が平成16年にシミュレーションした津波のハザードマップということになると思うが、このハザードマップの前提となったのが明治の大津波、昭和の大津波、当時想定されていた宮城県沖の地震ということで、マグニチュードでいうと8クラスの地震を想定したハザードマップとなっていた。実際にきたのはマグニチュード9ということで、マグニチュードが1違えば30倍以上のエネルギーの差があるということだった。そういった意味で、ハザードマップというのはあくまでも想定、明治の大津波、昭和の大津波を中心とした想定になっていた。そういった意味で、これは河川であっても火山であっても、ハザードというのはあくまでも想定だということで、相対的に利用しなければならないといったことを強く意識しなければならないと感じている。そういったハザードマップの活用の方法といったものは、あくまでも相対的なものであり絶対的なものではないといったことを、今後の防災対策の中では十分周知していかなければならないと感じている。
【斉藤委員】
陸前高田市に象徴的に表れた、ハザードマップと今回の津波被害のギャップ、そのために高いところから一時避難所に逃げた人もいる。また、市役所職員や消防団がそこに避難を誘導した。その結果、陸前高田市は臨時職員を含めて111人が犠牲になった。消防団は50人。陸前高田市の職員の25%が犠牲になった。本当に深刻な教訓だったと思う。
そして、そのことに和をかけたのは、気象庁の津波予報だった。当初3m、その後停電になり全然分からない、10mと伝えたのは津波が来た時点である。そういう意味では、気象庁の津波予報も避難に大きなブレーキをかけた要因になったと思う。
これだけ大きな犠牲者を出したということを、改めて浮き彫りにして今後の対策に生かすことが必要である。
もう1つの教訓は、逃げたくても逃げられない方々がいたと。要援護者に対する対策を、地域防災計画、地区の防災計画の中でしっかりやられなければいけないと思うがいかがか。
【総合防災室長】
地区の防災計画といったものは、災害対策基本法の中にも法的な位置づけを得たということで、最近新聞でも紹介されているが、本県においては、大槌町の安渡地区・吉里吉里地区で地区防災計画を策定し、訓練等も盛んに行っていると、大変良い事例だろうと思っている。
地域防災サポーター、自治会の研修といったものを県で行っているが、先般の研修においては、安渡地区の地区防災計画を作った方に来ていただき、県内各地の自主防災組織のリーダーに、地区防災計画の作り方あるいはノウハウを教授していただくということも行っている。そういった地区防災計画の中で、共助の部分を発揮していただきながら、要支援者の援護をしていただくといったことは非常に重要だと思うので、そういった地区防災計画の策定の推進にも力を入れていきたい。
【斉藤委員】
安渡地区・吉里吉里地区の地区防災計画は、新聞でも紹介されて本当に感動した。ここでは218人の犠牲者、1割を超えるような犠牲者だったと。ここで、「なぜここまで多くの犠牲者が出たのか、そこに向き合わないと地区の防災が前に進まない」ということで、どういう形で犠牲になったか全部調べたと。その結果、地区の防災計画というのは、要支援者を含めて15分以内に避難場所に連れていくという「15分ルール」を決め、いわば助ける人が犠牲になってはいけないという形で訓練もされたと。本当に素晴らしい取り組みだと思う。
陸前高田市も、市職員の誘導も「15分ルール」で、市職員も犠牲にしてはならないと。こういうことも今回の教訓からしっかり受け止めて、地区・地域の防災計画まで生かしていく必要があるのではないか。
この間、こうした教訓を生かした対策、防災教育が進められていると思うが、どういう形の教材、防災教育、役場職員の防災の専門家の養成はどうなっているか。
【総合防災室長】
防災教育については、防災サイドとしては、教育委員会と連携しながら、また岩手大学等の学識者と連携しながら、分かりやすい教材、特に映像であるとか写真であるとか、そういった部分をたくさん駆使して、子どもたちに分かりやすい形で、備えの大切さといったものを理解していただくような教材を作り、また、教育委員会と連携しながら教える先生方への研修といったものも充実させている。
役場職員への研修についても、県の担当者会議も行っており、また昨年からは、防災訓練等あるいは個別の研修等、訓練等の要請があれば、県の方から防災危機管理監等が赴いて、一緒に地域の中で訓練をしていくということで、市町村に呼び掛けている。いくつかの市町村で実施していただいているが、さらに広げて地域防災力を高めていきたい。
【斉藤委員】
先ほど市町村職員の犠牲の問題も触れたが、公務災害、特殊公務災害に認定された状況はどうなっているか。
【総務事務センター所長】
市町村職員については、陸前高田市ほか1市1町、2つの行政事務組合から計108件の請求があった。このほか、警察本部・医療局・県教委の県分が18件あり、計126件の請求がなされており、24年度までに126件すべてを公務災害として認定したところである。
そのうち、特殊公務災害は、市町村分108件のうち104件、県分18件のうち16件、計120件について28年2月までに全て認定した。
・県職員の採用について
【斉藤委員】
この間、県職員の採用は増やしているが、正規職員はあまり増えていない。退職者が多くても増えていない。4000人にも達していないのは重大だと思うが、正規職員の採用数の推移、正規職員の推移、思い切った増員になるようなことをしないと復興にも対応できないと思うがいかがか。
任期付職員の実態、任期付職員については、優秀な方々は主任に登用すると。来年度からは正規職員への登用の道も開くという答弁があったが、どれだけの方が昇任し、来年度正職員の対象になるのか。
【人事課総括課長】
任期の定めのない職員は、現在3900人程度で推移している。職員数は、28年4月の見込みで3891人の予定である。27年4月が3856人、26年が3886人と推移している。
新規採用職員の採用数だが、震災前は毎年60人程度の採用であったが、震災後は徐々に採用数を増やしており、27年度は149人、28年度は171人の採用を予定している。
任期付職員は、24年度から採用しており、28年4月時点では、県配置職員は190人程度となる見込みである。処遇の関係だが、去年主任の発令について答弁したところだが、一定期間継続し勤務した任期付職員のうち、勤務成績が優秀で一定の要件を満たした職員については、勤務意欲の維持・高揚を図るため、任期更新時に主任への任用を行っていた。実際の発令数は、24年度採用の職員は、昨年4月の更新で、更新対象者が90人程度で、うち任期満了で更新を望まない方を除き70人程度が任期更新し、そのうち55人程度を主任に任用している。
任期付職員の選考の上、任期の定めのない職員として採用することについては、昨年11月に、任期の定めのない職員としての採用試験を行う方針を決定し庁内に周知している。今年の夏ごろに試験を実施することとしており、詳細については今年の5月頃に発表する募集要項により示したいと考えている。