2016年3月9日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・JR大船渡線の復旧問題について

【斉藤委員】
 昨年の12月25日の沿線自治体首長会議で、JR東日本からBRTによる本格復旧が提起され、そういう方向で決まったとされている。
 自治体首長会議での議論と経過について、新聞報道では、陸前高田市長は、陸前高田駅までの鉄路の復旧を求めたがJRからは拒否され、やむなくBRTに同意したという印象を受けたが、どういう議論がなされたのか。

【交通課長】
 昨年12月に第3回の大船渡線沿線自治体首長会議が東京で開催された。この際、大船渡市・陸前高田市・気仙沼市は、JR東日本にたいし住民の意見集約の結果を報告した上で協議し、最終的にBRTによる本格復旧を受け入れたということになった。
 なおこの会議において、陸前高田市長から、被災が少ない気仙沼―陸前高田間の鉄路復旧を求める意見が出された。JR東日本からは「鉄道では十分な運行頻度の提供が困難となり利便性が大きく低下する」「駅の設置やルート変更など柔軟な対応が困難になる」といったようなことが示され、「一部区間の鉄道復旧は考えていない」という説明があった。
 沿線自治体においてはこれを踏まえ、また復興まちづくりの進展、人口と利用者の減少する地方の公共交通が置かれている状況、今後の持続可能性等を勘案し、BRTによる本格復旧はやむなしとして受け入れに合意したものと認識している。

【斉藤委員】
 この間の経過というのはきわめて問題だったと思う。
 大震災直後の4月、当時の清野社長が全線復旧を言明した。しかしその後、何ら復旧の方針は示さなかった。その結果、昨年7月24日の第2回沿線自治体首長会議で、JR東日本からBRTによる本格復旧が提起された。4年7ヶ月も過ぎた時点での話で、考えられない。4年7ヶ月経って出されたのがBRTによる本格復旧だと。BRTは「仮復旧」ということで始まったが、結局は既成事実化して、そして被害の少ない気仙沼―陸前高田間の鉄路復旧も拒否すると。だから結論はBRTしかなかった。最初から鉄路をなくしてしまう経過だったのではないか。
 昨年も指摘したが、大船渡線は全線が開通して80年になる。その歴史を逆転させるようなやり方だった。鉄路がつながらないということは、本当に将来を禍根を残すことになりかねない。
 そこでお聞きするが、JR八戸線は海岸線で1年で復旧した。その他も海岸線で復旧したところがあると思うが、県はどのように把握しているか。被災鉄路で海岸線で復旧したところはどのぐらいあるか。

【交通課長】
 大震災津波により被災したJR東日本の7路線のうち、全線運行再開を果たしたのは、JR八戸線、JR石巻線、JR仙石線の3線と承知している。
 これらはいずれも防潮堤等の津波防護施設や避難路の整備、ルート変更などにより、運行の安全確保を図った上で復旧がなされたものと聞いている。

【斉藤委員】
 大船渡線も防潮堤が整備される。現ルートで復旧できた。それを山側ルートでなくてはならないということで400億円の無理難題を押し付けて、270億円を地元負担しなければ復旧しないと、国も支援しないとなった。こんな最初からやる気のない、途方もない負担を被災自治体に押し付けて諦めさせるという手法も厳しく批判されなければならない。
 この間の経過を部長はどう受け止めているか。

【政策地域部長】
 被災後しばらく何もなかったというのはその通りかと思う。再三県からも復旧方針を示すようにということを申し上げ、昨年ようやく首長会議が開催され、その2回目でBRTによる本格復旧が提案された。
 JR東日本にたいしては申し上げたいことはさまざまあるが、一方でBRTやむなしという地元の声もあり、BRTにより利便性が向上することもあったので、県としては地元の声を尊重し、それを県としても同意したということである。

【斉藤委員】
 JR東日本に言いたいことはたくさんあるということで、気持ちは分かる。
 結局、地元は受け入れたと言っても、受け入れざるをえなかった。選択肢がなかった。こうしたやり方は厳しく指摘されなければならない。
 BRTによる本格復旧というが、たとえばBRTで復旧したという経験は全国にはあるのか。

【交通課長】
 被災した区間でBRTでの復旧した区間は具体的には承知していない。
 鉄道の廃止にともないBRTを導入した事例としては、鹿島鉄道線の後を引き継いだ鹿鉄バス、日立電鉄線の後を引き継いだ日立BRTなどがある。

【斉藤委員】
 2つ例が挙げられたが、それらは上手くいっているのか。
 今回JR東日本は、今後の協議も含めて5項目の本格復旧の中身を出した。具体的に、BRTでこれまで以上に良くなるという提案はあったのか。

【交通課長】
 鹿鉄バス、日立BRTといった部分については、鉄道の線路敷をバス専用道として全面活用することにより、定時制・速達性を高め、地域の基幹路線として役割を現に担っていると聞いている。
 JR東日本からの5項目の提案について。JR側としては、このBRTを地域の基幹的な交通と位置づけ、今まで同様に新駅の要望があれば新駅を設置する。あるいはBRTの特性である自由なルート設定という部分でしっかり対応する。さらに地元では、BRTの導入自体が全国的に珍しいので、これを観光に利用してはどうかという要望もある。こういった部分も柔軟に対応するというような地域振興における協力といった部分も表明している。

【斉藤委員】
 いまBRTやられているが、一番問題になっているのは通学時で、大量輸送に対応できないと。鮨詰め状態で、それでも乗れない生徒も出ていると。また、気仙沼―陸前高田間というのは、国道45号を通るもので全然意味がない。なぜ陸前高田まで通さないのかと思う。町中だけBRTというのならまだそれなりの合理性があるが。かなり矛盾に満ちた方向ではないか。
 そして既存のバス路線、地元バス会社と競合する。下手すると共倒れになりかねない。これは県交通に委託するのだと思うが、県交通はそれで利益をあげられれば、既存の交通はどんどん衰退するという深刻な矛盾を抱えるのではないか。そういう問題意識を県は持っているか。

【交通課長】
 既存のバス路線との競合だが、地域の公共交通ネットワーク全体の問題になるかと思うが、地元ではBRTによる本格復旧ということで、これを基幹路線と位置づけ、これをさらに活用するために路線バスとの提携を視野に入れている。17ルートダイヤの設定が可能といった一般道を走る路線バスの特性を生かしながら、BRTとともに公共交通としての持続的な役割を果たすよう県としても必要な支援をしていきたい。

【斉藤委員】
 大変矛盾に満ちた、問題を抱えたBRTによる本格復旧だと思う。
 そして、大船渡市も陸前高田市も鉄路の駅舎を想定してまちづくりの計画が進んでいる。今度はBRTの駅舎でまちづくりを進めなくてはならない。この点も大変大きなデメリットになるのではないか。

・JR山田線について

【斉藤委員】
 先ほども議論になった土砂崩落を起こした山田線の復旧問題について、3月4日に山田線土砂崩落に関する斜面防災協議会というのが開催されたようだが、この協議会は、山田線の復旧ということが目的になっているのか。どういう目的で開催されたのか。

【交通課長】
 3月4日に初回の会合が行われ私も参加してきた。その際、設置の目的等も示されていたが、主には、崩落斜面の各種データの共有・分析、技術的な検討を行うということであり、目的の部分を見て、県と宮古市で目的の部分に鉄路の復旧を明示してほしいという要請をした。会議の場でそういう要請を受け、JRでは「検討する」ということで、次回までに目的要領を整理するという動きになっている。

【斉藤委員】
 最初から目的に復旧が出ていなかったと。県と宮古市がそのことを求めて、そこでも決着がつかずに次回となった。ここが一番の問題で、何のための協議会なのか。技術的検討というのも、復旧のためでなければ意味がない。大変だから止めるということになったら、何の意味もなさない。ぜひ県と宮古市が決意新たに、JRの手管に負けないように早期復旧の取り組みを強めていただきたい。

・特定被災地域交通調査事業について

【斉藤委員】
 来年度まで継続になったのは評価したい。しかし国会の議論でも、仮設団地を経由するものに限られるという答弁にとどまっている。仮設団地はどんどん縮小して、高台団地や災害公営住宅がつくられる。だから高台団地や公営住宅を通る路線でなかったら、まったく意味をなさなくなってしまう。そういう交通網の確保にしなければならないと思うが、県はどのように対応し、国からはどういう回答をいただいているか。

【交通課長】
 この調査事業は本年度までの補助事業ということで、国に対し要望を続け来年度も継続することになった。ただ、ご指摘の通り、まちづくりが進んできて、仮設団地がなくなっていき次のステージに移っていくということで、この制度スキームそのものがまちづくりの実態に合っていない部分が出てきていると我々も認識している。当面は来年度もこの事業で、デマンドやコミュニティバスといったようなもので高台や災害公営住宅をつなぐことはできるが、先を見通して、制度の見直し・改善・継続を国に提案していきたいと考えている。

【斉藤委員】
 今回の津波災害の特徴で、高台に団地を形成する、災害公営住宅も基本的には高台かかさ上げした区画の中である。そこをつなぐネットワークがなかったら、新しいまちづくりを支えられないと思う。26年度の実績で、どのぐらいの市町村で路線が維持されたのか。
 来年度はだいたい同じ形で進めることができるのか。

【交通課長】
 26年度の実績は、10市町村で89路線程度、約3億3300万円が支払われている。これは国の直轄事業であり10分の10補助となる。
 来年度については、これから事業のエントリーが始まるところで見通せない部分があるが、国の予算額を見ると、27年度が20億5900万円、28年度が14億8700万円と5億円ほど減っているが、これは被災地のバス特例の部分の減額分であり、調査事業については28年度も同様の規模で実施されるものと認識している。

【斉藤委員】
 先日、県立大槌病院の仮設診療所に行った際に、いま県立大槌病院の仮設診療所も通っているのは町民バスである。県交通の路線バスは通っていない。新しく開院する病院がオープンするが、町に確認したら町民バスを通したいと。新しい病院のバス路線も、国道から外れると既存のバス路線は通らないと。だから1年2年やればいいという話ではなく、役場や病院など一番住民が必要とする基本のルートを支えているのは町民バスだと。そういう意味では、実態を踏まえて、調査事業なので期間限定だと思うが、被災地が復興する上で新しいまちづくりに必要な交通網の確保、財源確保も必要になってくると思うが、その点でしっかり対応すべきと思うがいかがか。

【交通課長】
 復興まちづくりが進む中で、まちづくりに合わせて公共交通網を柔軟に設定していく、そしてそれを持続的に動かしていくということで、当然採算のとれるものではないので、そういった公的な財政支援が必要ではないかと思っている。この財源をどこに求めるかということも含め、しっかり検討を進めていきたい。

・若者の定住・移住の取り組みについて

【斉藤委員】
 ふるさと創生の大変重要な戦略は、若い世代を岩手に呼び込むことだと思う。特に、定住・移住の取り組みを他県に負けずに取り組む必要があると思うが、定住・移住のこれまでの実績と推移、その内訳はどうなっているか。

【県北・沿岸定住交流課長】
 移住・定住者数は、平成24年度が1021人、25年度1908人、26年度1107人となっている。
 内訳としては、Uターンを含む就職、あるいは新規就農者、市町村の移住相談窓口等を通じ移住された方を積み上げて集計したものである。

【斉藤委員】
 各県で移住者の把握の基準が違っていて、岩手県の今の数字は高く評価されている。しかし岩手に就職したということまで含めているのかどうか。これはハローワークの資料だと思うが、そういう意味では、純粋に見れば移住した方々というのは26年で301人ということで、限定してみればそうなるのではないか。
 岩手を選んで移住した方々、岩手を選んだ理由、来た実感や要望、問題点を県はどう把握しているか。

【県北・沿岸定住交流課長】
 301名というのは、市町村窓口を通じて移住された方と把握している。
 移住者の声ということで、今年度移住者の方に精力的にインタビューしており、そういったインタビューやこれまでの意見交換を通じた中では、岩手に移住した理由として、東日本大震災津波をきっかけとしてUターン、復興支援のために移住、自然環境や子育て環境に惹かれて移住、定年後田舎暮らしに憧れて移住など、特定のパターンよりはさまざまあると承知している。
 移住者の声としては、「岩手暮らしや人の良さなど岩手の魅力を大いにアピールしてほしい」といった意見、「移住者相互の交流、ネットワークづくりが必要」「移住者の受け入れ・フォロー体制の整備が必要」といった意見が寄せられている。
 このため、ホームページやPR動画による岩手県の魅力発信に加え、来年度は移住者の受け入れ環境の向上を図るため、NPOや地域団体の移住・交流の取り組みを支援することとしている。
 また今年度は、移住された方をコーディネーターとした移住体験モニターツアーを実施するなど、移住者と連携した取り組みを積極的に展開しており、今後においても実際に移住し活動されている方々生の声をかけながら移住定住の積極的な推進に努めていきたい。

【斉藤委員】
 特に、住居の確保など若い世代を岩手に呼び込む特別の手立て、子育てしやすいというが岩手は子育て支援が遅れているのでもっと拡充するといった対策も打ち出して進めていただきたい。

・大震災津波で犠牲になった市町村職員・臨時職員について

【斉藤委員】
 今日のニュースで驚いたが、大船渡に派遣された県の任期付職員が自殺をしたというショッキングなことが起きた。これは県にどういう報告があるのか。
 大震災で犠牲になった市町村職員、臨時職員を含めてどう把握しているか。臨時職員を含めて、公務災害と同様の補償をするように条例制定されているが、きちんと措置されているか。

【市町村課総括課長】
 自殺した当該職員は、県の任期付職員ということで、県職員の人事管理で人事課の所掌となっているが、市町村への派遣職員ということでもあり、市町村課としても人事課と情報共有しており、当方で把握している内容について答弁できる範囲で答えたい。本事案については、大船渡市の方から、本県で採用した任期付職員30代の土木職ということで、7日の朝に出勤せず連絡がとれないということで、市の職員が宿舎である仮設住宅を訪問したところ、死亡しているのが発見されたという情報提供を受けている。
 大震災で犠牲になった職員の関係だが、市町村の正職員では108名と把握している。陸前高田市が68名、大槌町は町長を含む33名、釜石市4名、山田町2人、大船渡市1名となっている。臨時職員は19名と把握しており、陸前高田市10名、大槌町6名、釜石市3名となっている。
 公務災害の関係だが、それぞれ職種により根拠が決まっているが、臨時職員については、地方公務員災害補償法に基づく条例となっており、これについては全部の市町村で条例制定となっている。

【斉藤委員】
 陸前高田市は正職員68名、臨時職員10名と。陸前高田市の検証報告書では、臨時職員含めて111名が犠牲になったと、差があるのだが、その差はどういうものか。

【市町村課総括課長】
 陸前高田市の報告書は、正職員が68名、そして臨時職員と嘱託職員を合わせたものとなっており、報告書には短時間勤務の非常勤職員等の嘱託職員の分が含まれている。