2016年3月14日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・地域医療構想(案)について
【斉藤委員】
地域医療構想では、病床機能ごとにどういう計画となっているか。パブコメを受けて、病床機能ごとのベット数というのは変更があったのか。
各地域・関係団体からの意見、パブコメでの主な意見、それへの対応はどうなっているか。
【医療政策室長】
構想策定する、構想区域ごとに将来の必要病床数と病床機能報告により報告された病床数を比較することで、将来不足する病床機能と過剰となる病床機能の方向性を示すものである。
現在策定を進めている最終案では、全県単位で見れば、急性期機能や慢性期機能の病床が過剰となり、回復機能の病床が不足する傾向にあることから、急性期や慢性期の病床機能を回復期機能に転換していくことや、在宅医療等の体制整備に医療資源を活用していく必要があるとしている。
なお、この病床の算定にあたっては、厚労省令の告示に算定式で求めることが必要であることから、病床数については、国から示された算定式通り示し、医療計画部会で審議し決定したものであり、パブコメ等の意見を踏まえての変更はなかったものである。
パブコメ等での主な意見は、地域医療構想の素案を示し、二次保健医療圏や関係団体からの意見聴取やパブコメを行った結果、地域の実情に応じた在宅医療の体制整備の必要性や、医師をはじめとする人材確保の重要性に関する意見のほか、病床を削減しないでほしいなどの意見もあったところである。これらの意見も踏まえ、最終案では、高齢化や医療・介護資源の状況が異なるなどの地域の実情を踏まえ、在宅医療等の体制整備に取り組んでいくこととしたほか、医師をはじめとする医療従事者の確保等に重点的に取り組むこととしている。
【斉藤委員】
高度救急は1053床が過剰、急性期は2580床過剰、回復期は1788床不足、慢性期は1061床過剰と、3164床が過剰となっている。
各関係団体やパブコメをやったが、厚労省の算式で出されたベット数は変更なかったと。何のために関係団体から意見を聞いたのか。こんな押し付け的な、ベット削減ありきの地域医療構想は大問題だし、全国一律の基準で広大な面積で、人口減少、高齢化の岩手で東京と同じ基準の算定式でいいのか。
高度急性期というのは、今までの高度急性期と何が違うのか。計画では、9つの圏域ごとに過不足が出ている。しかし皆さんの案では、これは三次医療圏で対応すると。だとしたらなぜ各医療圏ごとに高度急性期の不足数が出るのか。根拠がないのではないか。
在宅医療に移行すると。療養病床の医療区分1は70%在宅に移行するというのが基準である。これは根拠があるのか。平成25年の在宅医療の医療需要は11202人となっているが、これはどういう根拠で出た数か。
【医療政策室長】
地域医療構想の病床については、強制的に削減するためのものではなく、将来の医療需要に応じて講じる必要があるべき医療提供体制を検討するためのものであり、協議の場においてこれらの意見についても参考にしながら、地域における病床機能の連携や在宅医療等の体制について協議をしているものである。
高度急性期の機能については、岩手県保健医療計画では、全県を範囲とする三次医療圏を単位として医療提供体制を確保するとしており、また国の地域医療構想策定ガイドラインにおいても、必ずしも構想区域で完結することを求めているものではないとされていることから、最終案では、高度救命救急センターが整備された盛岡構想区域を中心とした連携体制を引き続き確保する必要があるとしているものである。なお、この前提となる病床機能報告だが、病棟単位で主な病床機能を報告する制度であり、病床単位で見ると、高度急性期の医療が行われていても、高度急性期機能として報告されていないケースがあり、実際には構想区域の基幹病院等において一定程度高度急性期の医療が行われているものと理解している。
在宅医療の移行の根拠については、厚労省の省令の告示に基づき、そちらを根拠に算出しているものである。医療区分1の方7割を在宅に移行を見込むと、これも国の根拠で数字を当てはめるという形で、省令の告示で根拠に決められているものである。11000人の根拠は、現在の在宅医療等に関しては、1日当たりの在宅医療を受けている、サービス料という形になるが、現に在宅でサービスを受けている方の他にも、特養や老健施設で在宅サービスを受けている方々も入っている。その他、療養病床の医療区分1の方々の7割が移行するという前提のもの、現在在宅医療等で医療を受けている方、そうしたものが算定式の根拠になっていると理解している。
【斉藤委員】
11202人というのは、平成25年度の在宅医療の医療需要数であり、この根拠を示していただきたい。療養病床の医療区分1から何人が移行したか。これは現況なので、そして平成37年度に13780人の需要になると。
医療区分1が療養病床で、なぜ7割かという質問をしたが答えがなかった。政府が勝手に決めたと。病院から出して在宅にということ以外に何か医学的・医療的な根拠があるのか。
【医療政策室長】
こちらの根拠については、厚労省令に示されたものだが、医療区分1の患者に関しては、医療的なケアというよりも、福祉的なケアがニーズが高いであろうといったような国のデータが根拠となり7割という数字が出てきたものと理解している。
【斉藤委員】
パブコメの意見も全部見たが、「本当に住民が在宅を希望しているか考える必要がある」「経済力がないと在宅は選択肢にならない」「体制を整えても住民が望むかどうか別」「在宅は理想的だが希望できる住民は少ないと思われる」「経済力がないと在宅には移行できず、希望できる住民は限られるのではないか」と。これに対し県の回答は「地域医療構想の策定後は、構想区域ごとの協議の場において住民の状況やニーズを含め、地域の実情も踏まえて地域における病床機能の分化と連携について協議していく」と。県で決めたら、あとは圏域ごとに協議してくださいと。結論ありきで、こんなことがあるのか。
この地域医療構想の最大の問題は、こういう地域医療構想にした場合に、どれだけの医師が必要なのか。例えば、平成37年度に在宅に13780人移行が必要だというのなら、どれだけ在宅医療の医師が必要なのか。そこを示さなかったら移行できない。地方に行けば行くほど在宅医療は成り立たない。対象者は少ないし移動距離は長い、経済的にも困難。そういうことは真剣に検討されたのか。
【医療政策室長】
在宅移行にあたっては、地域の医療資源、地域の置かれている状況、今後の高齢化の進展などさまざま異なるので、それに合わせた検討が必要だと理解している。
構想実現にあたっては、不足している機能、例えば回復期の機能をどのように今後地域で確保していくのか、在宅の移行をどのように進めていくのかというを10年かけてきちんと進めていこうという考え方と理解している。したがい、在宅への移行にあたっては、限られた医療・介護資源の中で住民が安心して地域医療を受けられるよう、整備が先行した上で移行を進めることが必要であり、その旨を計画にも記載させていただいているところである。
在宅に必要な医師数だが、現在国で医療従事者の需給に関する検討会で議論している。地域医療構想の4つの医療区分ごとに、それぞれ必要な医師数をどのように算定したらよいかという議論が今まさに国で行われており、今後そういった議論の中で、在宅医療やそれぞれの機能に応じてどれぐらい将来医師が必要なのかということが示されてくるものと理解している。
【斉藤委員】
いま重大な答弁があった。厚労省が4つの医療区分でどのぐらい医師が必要な検討していると。一番肝心なことが示されず、ベット数削減だけ決まってしまう。強制しないといっても、ベット数削減の計画を立てたら自主的にその方向に向かってしまう。そんな根拠のない話はない。例えば療養病床の1区分、それは療養病床の中で医療度の低い方々で、なぜ療養病床に入っているか、在宅で診られないからである。そういう人を在宅に返していいのか。療養病床は岩手は決して多くはないが、そういう実態である。
本当に在宅に移行する数だけが決まる、ベット数削減先にありきで、肝心の医師をどう確保するのかが示されない。驚くべき計画である。一緒になり決めるべきものではないか。
地域医療構想の中で、県立病院はどう位置付けられるのか。民間はベット数削減を押し付けられない。だとしたら県立病院で縮小するということにしかならないのではないか。県立病院はきちんと地域医療の拠点として守られるのか。
【医療政策室長】
県立病院は、民間医療機関による提供が困難な政策的な医療を担うなど地域に必要な医療を提供していくことがその役割だと認識している。
地域医療構想実現に向けては、医療関係者等の協議に基づく自主的な取り組みが基本であることから、県立病院においても地域医療構想の内容を踏まえた新公立病院改革プランや構想区域ごとの協議の場における協議を通じ、民間医療機関との役割分担や今後のあり方を明確にし、将来の医療需要に応じた医療提供体制の構築に向け、積極的にその役割を果たしていくことが求められるものと考えている。
地域医療構想で定める必要病床数は、それに向けて直ちに病床削減するものではなく、医療関係者等の協議に基づく自主的な取り組みを通じて将来の医療需要に応じたあるべき医療提供体制を目指すうえでの方向性を示すものである。
【斉藤委員】
明らかにしたように、県民の意見を聞いても厚労省の試算は少しも変わらなかった。厚労省の試算、国の方針でベット数削減が決まっている。まさにベット数削減の計画を決めて、それに必要な医師や体制は圏域ごとに協議してもらうと。ましてや県立病院の役割、自主的にそこに向かうと。言葉だけである。削減の数が決まったらそこに向かってどうするのか。民間に押し付けられなかったら県立病院がやるということにしかならない。そういうことも含めて、関係者が納得するようなものにしないといけない。国の一方的な押し付けの計画くというのはない。
皆さんの回答を見ると、「これは医療計画の一部だ」と言っている。ところが医療計画の一部でベット数全体が決まってしまう。本当に矛盾に満ちている。パブコメでたくさん意見が出たが、回答は全部D(参考にする)のみで、反映しないと。何のために関係者や県民から意見を聞いたのか。
・介護保険の改悪・介護報酬の引き下げの影響と対策について
【斉藤委員】
介護保険改悪の影響がどのように岩手の介護の現場に出ているかお聞きしたい。介護保険の改悪により補足給付が削減された高齢者はどうなっているか。そのために、施設を退所した例、休止・廃止となった介護事業所はどうなっているか。
【長寿社会課総括課長】
昨年8月末までに施設入所者の食費・居住費にかかる補足給付の申請を行った約15000人のうち約500人が資産要件や世帯分離をしており、配偶者の住民税課税という新たな要件により対象外となっている。このことを理由に施設を退所した事例は承知していない。
休止・廃止となった事業所については、27年4月〜12月までの間に休止39、廃止37の計76事業所となっている。
【斉藤委員】
15000人の申請で500人ということだが、最初から申請しなかった人もいると思うが分かるか。1年前と比べて補足給付が減ったのはどのぐらいか。
【長寿社会課総括課長】
26年7月で14778人だったものが、27年8月で13319人、1459人減少となっている。
【斉藤委員】
1年前と比較する方が正確に実態が出てくる。
2割負担となった高齢者の実態はどうか。全国的にこういう調査がある。2割負担になったために、4割の方々が介護サービスを減らしたと。この実態はどうなっているか。
【長寿社会課総括課長】
昨年8月1日以前の市町村データによると約4500人で、2割負担の方が1ヶ月当たりの利用者負担金の上限に際して、高額介護サービス費の対象者、2割負担に寄与するサービス料の変化については、当方では把握していない。
【斉藤委員】
補足給付が削減され、年金280万円の高所得者とは言えない高齢者が2割負担になり、全国的な調査では4割の方々が介護サービスを減らしたと。実態を個別に調べてやっていただきたい。
介護保険の改悪の中では、要支援の高齢者の介護保険サービスからの切り捨てがあった。来年度までは暫定措置があるが、すべて要支援の場合には市町村の総合事業に移行する。すでに移行したところで介護サービス切り捨てという実態はあるのか。全国的には、要支援の介護サービスを受けていた人たちが「卒業」と言って、改善したから介護サービスそのものが受けられなくなり、毎週受けていたサービスが月1回になり、介護度が重度化したというのが全国の先行事例の実態だが、要支援者の介護サービスの実態はどうなっているか。
【長寿社会課総括課長】
今年度新たな総合事業に移行するのが4市町であり、これらにおいては従来の介護予防給付と同様の訪問・通所のサービスが提供されているほか、2町では栄養改善を目的とした配食なども実施されている。
「卒業」ということについては、県内では、陸前高田市1ヶ所でそういった形で要介護支援ではなくなったという方にたいし出している例はあるが、それについては、担当のケアマネの意見も聞きながら対応しているということで、切り捨てということにはならないと思っている。
【斉藤委員】
岩手の場合は、住田町や西和賀町が先行して市町村総合事業に移行したが、さいわい地元の介護事業所に委託された。介護事業所というのは別なメニューでやれない。要介護の方々のデイサービスと別なメニューではやれない。同じメニューでやるから基本的には同じ介護サービスが受けられる。今の段階ではそうなっていると思う。ただ、意図は違うので、そして総合事業は予算が決まっているので、高齢者が増えれば予算が増えるというシステムではない。要支援の方々の介護サービスの切り捨てというは本当に許されない。
ところが安倍内閣は、介護度1、2を介護サービスから外そうとしている。保険料は上がって受けられる介護サービスはどんどん削減される。許されないことである。介護度1、2の高齢者は、全体の要介護認定の中でどのぐらいを占めるのか。
【長寿社会課総括課長】
12月末時点のデータによると、65歳以上の第一号被保険者で、要介護・要支援の認定を受けている方が約75000人、うち要介護1、2と認定されている方は約28000人であり約38%を占める。
【斉藤委員】
38%の方が介護サービスから切り捨てられたら、介護保険制度は成り立たない。そして介護事業者がどんどん倒産してしまう。こんなことを許してはならない。
特養ホームの早期入所が必要な在宅の方は958人だと。毎年数字が出るがほとんど待機者の数は変わらない。第5期計画でどのぐらい特養が整備され待機者はどうなったか。
【長寿社会課総括課長】
特養ホームの待機者については、今年度から4月1日時点での数を把握しているということで、第6期計画においては、991床相当の開設が見込まれているが、今年度は210床が開設する見込みとなっており、28年度は203床が整備予定となっている。
【斉藤委員】
第5期計画でどのぐらい整備されたか。その結果待機者は減ったのか。本当に待機者を解消する計画を立てなかったら詐欺である。保険料とって必要な特養ホームに入れなかったら。保険あって介護なし。今までの実績からしっかり見る必要がある。
【長寿社会課総括課長】
第5期計画では1303床が整備され、特養ホーム待機者はおおむね数字的には、26年3月末においては、早期入所が必要な方(要介護3以上)で1054人、27年4月1日では958人になっている。
【斉藤委員】
1300床を第5期計画で整備したがほとんど待機者は変わらなかった。本当に待機者を解消する計画にしなければ、保険料だけ上げて年金から差っ引いて、こんなやり方はない。
・医師確保の問題と岩手医大の役割について
【斉藤委員】
県立病院は増員計画があったが11人もマイナスだと。大変ショックだった。なぜマイナスになったのか、どこで減ったのか。
岩手医大は公的病院にこの間どれだけ派遣しているか。それは減っていないのか。岩手医大への今年度・来年度の県からの補助金はどうなっているのか。
覚せい剤疑惑の調査委員会はどうなったのか。
【医務課長】
病院勤務医師数については、厚労省が2年に1度行う医師・歯科医師・薬剤師調査で、26年12月1日現在の県内の医療施設従事医師数は2465人となっており、内訳を見ると、病院従事者は前回調査から11人増の1635人と増加傾向にある。診療所従事者は前回から17人減の830人と減少傾向である。
岩手医大の公的病院への派遣については、大学の報告によると、27年5月1日現在で334人となっており、ここ数年横ばいで推移している。
【医療政策室長】
岩手医大への県補助については、28年度当初予算では、相互周産期母子医療センターや高度救命救急センターの運営費助成など、地域医療の確保を図るため約9億5000万円を計上している。27年度当初予算と比較すると約8億5000万円の減となっているが、これは27年度において震災対応分として、災害時において電力確保を図り災害拠点病院として継続的な医療体制を維持するためのエネルギー施設整備にたいして約7億6000万円を助成することとしており、27年度で事業が完了するため予算額が減少した。
岩手医大の元教授に関する調査だが、大学に確認したところ、調査委員会の調査に関しては外部に公表していないとのことであり、県としては承知していない。
・障がい児対策について
【斉藤委員】
精神障害がい者のバス運賃の割引が実現した。これは本当に良かったと思う。国体も開催するという点でも。皆さんの努力を評価したい。
同時に、重度障がい児・者の対策は、県のアンケートでも、一時預かり、デイサービスが不足していると。具体的な実態調査が出たので、具体的な方策を示すべきであるがいかがか。
【障がい保健福祉課総括課長】
精神障がい者の方の通院など日常生活の支援や社会参加の促進の観点から移動手段の確保は大変重要であり、県でも精神障がい者に対するバス運賃割引の実施については、県バス協会および県内の主要バス事業者を訪問し、重ねてバス運賃の割引の実施を要請してきた。バス事業者においては、これまでの障がい者団体や県などからの要請、本年開催される希望郷いわて国体に多くの障がい者の方々が来県されることなども踏まえ、精神障がい者に対するバス運賃割引を実現されたものと考えている。
重症心身障がい児者の対策だが、今回のアンケート調査では、重症心身障がい児者ご本人のご家族など376人から回答をいただいている。うち24.5%の方々が経管栄養などの医療的ケアを受けていること、ニーズとして短期入所の充実を求める声がもっとも多いという状況だった。重症心身障がい児者が利用可能な短期入所事業所は、2月現在で28事業所となっており、重症心身障がい児者のご家族の団体からは、重症心身障がい児者の多い盛岡地域を中心に利用できる事業所の確保について要望をいただいている。在宅サービスの充実については、必要なサービス数の確保、医療的ケアに対応できる専門的知識を有する人材の確保などが課題となっているところである。県としては、重症心身障がい児者の支援に多くの事業者の方々が取り組みやすいよう、障がい福祉サービス報酬の引き上げ、施設整備費補助にかかる予算の充実等について、継続して国に要望していく。また本年2月から、看護師や相談員等を対象に、重症心身障がい児者への看護や支援方法等に関する研修を実施し、人材の育成に取り組んでいる。