2016年3月14日 予算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・県立病院の医師確保について

【斉藤委員】
 県立病院の経営計画で、医師・看護師等5年間で322人増やすという計画だったが、26年度・27年度は、計画にたいして実績はどうなっているのか。

【医師支援推進監】
 26年度・27年度で51名の増員計画にたいし、逆にマイナス11名となっている。

【斉藤委員】
 計画は立派だったが、この2年間を見るとマイナスだと。計画から比べるとマイナス62人である。異常事態、非常事態だと思う。医師が増えてこそ県立病院の経営も安定するし医療も充実する。増員の計画を立てながら、結果としてなぜマイナス11人ということになったのか。どこでどう減ったのか。

【医師支援推進監】
 1つは、大学院等で専門医資格の取得を目指す医師の増加により、後期研修医の採用が計画人数を下回ってしまったということで、マイナス20名。
 また、医学部卒業生の都市部や大規模病院志向等により、初期研修医を計画通り確保できなかったこと、こちらがマイナス18名。
 当初は見込んでいなかった招へい医師の退職者が相当数発生したこと、こちらが16名。
 医師の派遣元である関係大学医局自体においても、医師の絶対数が不足していることなどにより、マイナス9名となっている。
 病院別では、基幹・地域病院ともに減少しており、県北・沿岸地域の病院において減少している。

【斉藤委員】
 みなさん全国を駆け回り、招へい医師の確保や大学病院訪問など、努力しているのだと思う。しかし結果としてマイナス、計画比はマイナス62人だと。
 計画通り増員に転換させるという点で、局長はどう考えているか。来年度はどういう見込みか。

【医療局長】
 経営計画における医師の増員計画というのは、今後の県立病院の医療提供体制に必要な医師数として計画したものだが、計画にたいして逆に減少している状況である。今後においては、招へい医師の定着・支援を図るためのフォローアップ面談を実施したり、やはり初期研修医と後期研修医の減少が非常に大きい数字であるので、そうした研修医の受け入れ体制の充実、研修プログラムのPR強化等により必要な医師の確保に努めていきたい。
【医師支援推進監】
 来年度の見込みは、現在年度末を迎えており、関係大学等の異動の部分の情報を収集中であり、現段階において4月1日現在の状況ははっきり申し上げられる状況にはない。

【斉藤委員】
 人事異動はすでに発表され、4月1日段階の数は出るのではないか。その後変動はあるかもしれないが。

【医師支援推進監】
 大学医局の人事異動は定期ではないので、年度末に向けて随時情報が入ってくる状況である。

【斉藤委員】
 来年度予算の関係で、職員をどのように見込んでいるか聞いたが、正確かどうかは分からないが、28年度は予算積算上の職員数は5121人、全体として89人増やすとなっているが、医師はマイナス4人、看護師はプラス49人、医療技術員はプラス40人と。現段階はそういう見込みで、これからさまざま大学等との交渉でプラスに転じることもあるかもしれないと思うがいかがか。

【医師支援推進監】
 今後2週間ほどある中で、大学医局とも交渉しながら、新たな招へい医師確保にも年度間を通じてやっているので、そういったところの活動に力を入れていきたい。

【斉藤委員】
 私はみなさんの努力を認めた上で、しかし結果として県立病院の医師が減ったと。きわめて重要な転換点だと思う。今までの努力の延長線上ではなく、さらに抜本的な対策を講じる局面ではないのか。ぜひこの局面を打開し、医師が増えてこそ県立病院の経営計画は成り立つので、しっかり知恵も出して、総力をあげて取り組んでいただきたい。

・看護師確保と労働条件改善について

【斉藤委員】
 これまでの増員実績と来年度の増員の見通し、退職者の状況と採用試験の応募状況はどうなっているか。

【職員課総括課長】
 増員実績については、被災病院の再建や7対1入院基本料にかかる施設基準の維持、退院調整や看護職員の教育などに携わる看護師の専従配置などのほか、勤務環境の改善などに向け、産前産後休暇や育児休業等の取得者にかかる代替職員の配置の見直しなどを行い、26年度からの2カ年で72名の増員計画にたいし計画を上回る98名を増員した。
 来年度については、山田病院の入院再開のため25名、7対1入院基本料にかかる施設基準の維持のために16名、産育休を取得する職員の増加への対応ということでの代替職員を20名程度増員することと合わせ、入院患者の減少等に応じた病棟再編により22名、38名の増員計画にたいし全体で45名ほどの増員を見込んでいる。
 退職者については、1月末で、定年退職者が30名、勧奨退職者が25名、普通退職者が87名の計142名の見込みとなっており、26年度の125名と比較し17名の増加となっている。
 27年度の採用試験通常募集においては、採用予定人員177名にたいし175名の応募、最終的に161名の採用内定を行っている。11月に実施した特別募集においては、採用予定数9名にたいし22名の応募があり、15名の採用内定を行い、通常募集と合わせ176名の採用内定を行った。

【斉藤委員】
 看護師確保については、計画を上回ってこの間増員されており率直に評価したい。
 同時に、普通退職者が87名と大変多い。20代30代が多く、県立病院の厳しさで早く辞めてしまう傾向が実態を反映しているのではないか。
 9日夜勤、年次休暇の取得状況はどうなっているか。

【職員課総括課長】
 月8日を超えた夜勤の状況は、27年度の第三四半期までの実績では、11病院のべ437人となっている。26年度の同時期と比較し4病院減少しているが、新卒採用者の増加に伴い、当該職員が夜勤に携わることができない年度初めの時期に、8日を超える夜勤が発生して83人の増となっている。
 年次については、前年と同じように、県立病院平均で7.8日となっている。

【斉藤委員】
 月8日夜勤が原則だったが、今や9日夜勤、それが12月までで延べ437名、昨年1年間で425名と昨年を上回っている。特に二戸病院は133人、久慈病院92人、胆沢病院44人、大船渡57人と深刻である。これはあってはならないという立場で対応すべきである。
 年次休暇は平均7.8日だが、毎回中央病院の看護師さんからお話を聞いているが、中央病院は5.6日である。ほとんど取れていない。これだったら辞めてしまう。ハローワークで今何と言われているか、「中央病院はブラック企業ではないか」と。この事態を深刻に受け止めて、打開しようとしているか。

【職員課総括課長】
 8回超えの夜勤についてだが、産育休への対応として、ルールを見直して、これはさらに病院と緊密に連絡を取りながらそういった形で仕事をされる方々の人数が減らないようにしたいと思う。しかしどうしても、特にも27年度において、大船渡だとか胆沢だとか新採用の職員が多く配置になっている。そのような部分があり、職員にはご苦労をおかけしているが、そのような病院との情報交換等を緊密にしながら、解決に向け頑張っていきたい。

【斉藤委員】
 今の答弁だと打開できないのではないか。今までの延長線上でしかないと思う。
 中央病院の看護師さんの声を少しリアルに紹介すると、「昨年の年次は1日のみ。年次残日数39日。勤務へのモチベーションが出てこない」「もっと働ける人員を増やしてほしい」「7対1看護体制と引き換えに希望の休みがもらえない」「日勤が終わって帰宅したのは23時。子どもも夫も寝ていて部屋は真っ暗。台所は洗い物の山。とてもむなしい。こんな生活ありえない」と。これは一部の人だけではない。そして年次が取れないというのは共通した声である。ここが改善されなければ、本当に誇りを持って希望を持って看護師は働けないと思う。そして中央病院で県立大学の看護学生は実習をするが、「中央病院は行きたくない」と。
 局長も実態は知らないわけではないと思うが、看護師は増員はしているものの、異常な事態を打開しないと、県立病院の看護師は選ばれない。採用試験の状況も、募集定数ギリギリである。どんどん減っていくことになってしまう。県立病院で働きたいという職場に、労働環境を改善しないといけないと思うが、決意をお聞きしたい。

【医療局長】
 産育休の取得者が見込みより多かったということも夜勤が増えた原因の1つなので、その産前産後休暇や育児休暇等の取得者にかかる代替職員を可能な限り正規職員で補充するということを行っており、28年度もこの取り組みを進めていく。
 中央病院に関して言えば、7対1看護体制の維持ということが出てくるので、28年度においては、7対1看護体制維持のための9名の増員も行う。
 ご指摘の通り、そうした増員だけではなく、年次を取りやすい環境なり勤務環境の改善も看護の確保検討委員会の中で話し合っている中身について、実現していくことで看護師の勤務環境の改善はぜひ図っていきたい。

【斉藤委員】
 共通して看護師が言っているのは、「休みがほしい」「年次がほしい」「7対1で年次も取れなくて忙しい」「形だけの7対1やめませんか」と。実は7対1看護体制が休みが取れない最大の理由になっている。この3月に中央病院は、久慈病院から3人、遠野病院から1人、釜石病院から1人応援に入っている。天下の中央病院がこれだけ応援されないと7対1看護体制が維持されない。こういうことをしなければ維持できないというのは、絶対的に最初から看護師が足りていなかったのではないか。7対1看護体制をやるんだったら、中央病院が他の病院から応援を受けるようなことがないように、抜本的な増員が必要ではないか。

【職員課総括課長】
 ご指摘の通り、中央病院では7対1看護体制を維持するために、9月と11月と3月に他の県立病院から看護師の業務応援を受けた。主な原因として、産前産後休暇や育児休暇等を取得する職員が想定を大きく上回ったと。一方で、育児休暇からの復職予定者の休業延長、職員の年度中途の退職といったものが重なったこと等によるものであり、応援に出向く看護師の負担はできるだけ軽くするように配慮しながら進めてきた。
 県立病院としては、職員配置等も含めて、それぞれの病院で完結することが望ましいと考えているところだが、このような想定を大きく上回るような状況が生じた場合には、20病院6診療センターが一丸となり、医師をはじめとする職員の応援体制が構築できるのも県立病院の大きな強みであろうとも考えている。
 来年度については、こうした産育休の取得者に関する代替職員が不足しないよう、各病院との連携を密にしながら、中央病院については7対1看護体制の維持のために9名の増員、産育休の取得予定者の増員等に対応して、今年度との比較で11名を予定している。

【斉藤委員】
 増員はいいが、その程度でどこまで改善されるか。現場の実態と切実な声を紹介したので、それを踏まえて対応していただきたい。

・地域医療構想と県立病院のあり方について

【斉藤委員】
 県立病院の経営委員会の資料を見ると、地域医療構想の要請を踏まえて経営改善に取り組むと。地域医療構想はとんでもない国の一方的なベット削減だが、これはどういうことなのか。3千数百床の削減が出されており、そういう中で、要請を踏まえてというのはどういうことか。特に急性期は、大幅に減るというもので、具体的にどう医療局は対応しようとしているか。

【経営管理課総括課長】
 地域医療構想の実施に向けた取り組みについては、2025年度を見据え、今後10年程度をかけて、地域の実際の病床の状況と構想で定める目指すべき医療体制が、関係者の話し合いを重ねることで次第に収れんされ、不足する機能の解消や患者ニーズとの整合が図られていくように取り組んでいくものであり、直ちに急激な病床削減を行うものではないと承知している。
 県の地域医療構想は、今年度中に策定され、来年度以降は構想区域ごとに設置する協議の場において、病床の分化と連携、医療と介護の連携などについて協議されることとされているが、各県立病院長も協議に参加し意見を述べることとしている。
 医療局としては、病床規模や機能について、地域の医療ニーズをしっかりと把握するため、病院長はじめ各病院から意見を十分に聞くとともに、外部有識者による経営委員会や地元からもご意見をうかがいながら、地域医療構想に対応していきたい。

・診療報酬の改定の影響、消費税増税の影響について

【斉藤委員】
 診療報酬の改定については6億8000万円のマイナスの影響だと。しかしこれは予算に反映していないということだった。この通りいけば赤字がさらに増えるということになり、かなり深刻、悪政の象徴だと思う。
 もう1つの悪政が消費税増税で、8%になって転嫁できない負担増はいくらか。来年4月からは10%で、そうなったら負担増はどのぐらいか。絶対このような増税はさせてはいけないと思うがいかがか。

【経営管理課総括課長】
 28年度の当初予算をもとに、消費税負担額を試算すると、仕入控除できない消費税の負担額および固定資産を取得する際に負担した消費税を、取得の翌年度以降に費用処理する長期前払い消費税という科目で行っているが、長期前払い消費税の償却額合計で33億8000万円余と見込んでいる。うち3%増税の影響額は11億6000万円余と見込んでいる。
 これにたいし、診療報酬の引き上げにより補てんされたと推計される額、一般会計から地方消費税相当分として繰り入れをしている合計額で30億8000万円余で、県立病院事業の実質的な負担額は2億9000万円余と見込んでいる。