2016年3月15日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・瑕疵担保責任の問題について
【斉藤委員】
防集で市町村の動向を聞くと、瑕疵担保責任を負わないと明記している自治体がいくつかある。これは法律に反する規定で、きちんと明記すべきである。明記しているところは2年間という形になっているが、この2年間の根拠は何か。
区画整理事業については特に何の明記もない。これは5mとか10mといった大変なかさ上げをして、壮大な実験だと思うが、それなりの土木工学的な根拠に基づいてやっていると思うが、実際に宮城県などでは地盤災害が多かったわけで、区画整理事業の場合の瑕疵担保責任というのはどうなるか。
【まちづくり再生課総括課長】
防集事業や区画整理事業の瑕疵担保責任について。ご指摘の通り、各市町村により期間を設定しているところ、していないところさまざまある。区画整理事業については、明記していないというところもある。
このことについて把握したのはまだ最近のものであり、この対応についてはこれから検討したい。
【斉藤委員】
対応はぜひしてほしいが、例えば防集事業で、市町村が責任を負わないとか瑕疵担保責任はないと明記しているところもあるので、これは是正が必要である。そして2年というのは最低の基準である。法律の規定は2〜10年となっている。これは市町村の判断だと思うが。瑕疵担保責任を明記していなかったら是正すべきである。
区画整理事業の場合には、基本的には明記がなければ、民法上10年というのが適用になると、このように受け止めているが、そういう形で対応するということでいいか。
【まちづくり再生課総括課長】
区画整理事業の10年ということについては、ここではご回答しかねるが、関係課と連携しながら検討していきたい。
【斉藤委員】
明記がなければ、民法上10年ということになるのではないかと。
防集事業については、瑕疵担保責任を明記しないのは間違いなので。区画整理事業で明記がなければ、民法上10年というのが適用になるのではないか。
【まちづくり再生課総括課長】
瑕疵担保責任においては、瑕疵をした日から原則1年、宅建法40条1項によれば、目的物の引き渡しの日から2年以上特約をする場合を除き、民法より、不利な特約をしてはならないと定められている。
一方、債務不履行責任ととらえれば、消滅時効の一般原則である10年ととらえる考え方もあるようだが、調べたところ、学説でも争いのあることであり、今後実施主体である市町村と協議しながら適切な対応を検討していきたい。
・孤独死を出さない復興の取り組みについて
【斉藤委員】
警察庁の発表では、仮設住宅で生活していた人の岩手の孤独死は52人と公表された。朝日新聞の被災者アンケートなどでも、5年を経過して被災者の状況は大変深刻になっていると。岩手大学の先生の調査でも、「心の平安が戻っていない」というのが6割を超えていた。
仮設住宅に取り残される被災者へのこれまで以上の対策、見守りが必要だと。5年経っても仮設住宅から出られない方々の心の痛み、生活苦は今まで以上に深刻だと思うが、この対策はどのようにとられるのか。
【生活再建課総括課長】
現在見守り活動については、社協が雇用し県が補助する生活支援相談員のほか、各市町村が独自に雇用する仮設団地支援員といった方々により見守り活動を行っている。
ご指摘の通り、仮設住宅での生活が長期化していることに加え、ある意味復興の進展により空き室が増加しているという状況であるので、特に今後は高齢者の方への見守りが重要になってくると認識している。このため、28年度は、国の財源になるが被災者支援総合交付金が拡充される。これを使い、生活支援相談員や各市町村が雇用する支援員により、よりきめ細かな見守り活動を行っていくほか、コミュニティの維持として、お茶会を設定するなどして、見守りやコミュニティ維持に取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
先日、釜石市の仮設住宅で80代の女性が亡くなると。一緒に生活していた50代の男性が衰弱状態で発見されるということもあった。取り残される方々の痛みに心寄せた取り組みが必要だと思う。
災害公営住宅では、孤立化・孤独化が仮設住宅以上に進行している。この間ずっと公営住宅の方々からお話を聞いてきたが、そのことを痛感している。「隣に住んでいる人が分からない」「同じフロアの人が分からない」と。そして、重い鉄の扉で外に出なくなったというのが共通した特徴である。生活不活発病で体調を崩したという例も出ている。そういう認識が県や市町村にあるのか。この認識は大きな分岐点になると思うので、そういう認識で当たらないといけない。
阪神淡路大震災では、災害公営住宅に入ってから897人が孤独死している。この阪神大震災で孤独死対策にあたった萬さんという人は「東北は神戸より厳しい状況だ」と言っている。そういう認識に立って、あらゆる対策を講じる必要がある。特に一定規模の災害公営住宅には、仮設団地と同じように支援員を配置し、集会室も活用し、一人一人の見守りを強めるべきだと思うがいかがか。
【生活再建課総括課長】
県の認識としては、昨年NPO法人が災害公営住宅に住んでいる方にアンケートを行っているが、その結果によると、「不安を感じる」という方が仮設住宅と災害公営住宅でほとんど差がないことが明らかになった。したがい、災害公営住宅に移ったからといっても、整理がついているというわけではないと当方でも認識している。このため、災害公営住宅においても見守り活動は必要だと認識しており、生活支援相談員のほか市町村が独自に雇用する支援員が巡回して見守り活動を行っている。
県からも市町村にたいして、地域で必要とされる見守り体制の支援体制が総合的に確保されるよう、文書のほか、個別に市町村に出向き依頼している。
これらを受け、現在における来年度の支援員等の配置計画は、生活支援相談員については今年1月時点で178名配置しているが、これを上回る193名の配置を計画しており、市町村においても、見守りやコミュニティ維持のための支援員は、今年度187名いるが、国の正式な決定がないので数字は申し上げられないがこれを上回る配置計画となっている。
【斉藤委員】
仮設住宅と差がないということが深刻でないと受け止めるか、深刻だと受け止めるのか。そのアンケートの資料を示していただきたい。
実際に自治会長さんや入居者の方からも聞いて、共通して孤立化・孤独化が深刻だと。外に出歩かない、高齢者の姿を見なくなったと。仮設住宅と災害公営住宅の違いをしっかり認識しないといけない。
孤独死に詳しい淑徳大学の結城教授は、「災害公営住宅に移っても高齢者が孤立していては生活の復興とは言えない。仮設住宅に常駐していた支援員を災害公営住宅に配置するなど、各自治体が支援の新たな枠組みを考える必要がある」と指摘している。このことをしっかり受け止めて、活用できるものは最大限活用すると。意外と市町村は災害公営住宅をつくって、だいたい復興はそこで山を越えたとなるので。しかし、復興というのは被災者一人一人の生活再建である。生活再建で一番大事なのは、人と人とのつながりであり、その人間関係がなかったら孤立して、心も体もダメにするというのが大きな教訓である。そういう立場で対応していただきたいと思うがいかがか。
【復興局長】
災害公営住宅が完成し、そこに入居していただければそこで被災者の方々の生活が再建したとは考えていないので、その後もしっかりフォローしながら、一人一人が自立した生活を持続的に営んでいただけるような環境整備にしっかり取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
大船渡市は、仮設団地にも複数の支援員を配置し、いま仮設団地が縮小しているので、その支援員が災害公営住宅も回っている。これは進んでいる方であり、それでも被災者から見れば、仮設のときは見守りが必要な人に毎日回っていた、公営住宅に入ったら月1回だと。だから支援員の人たちはこの4年5年という年月で大変重要なスキルを身につけているので、こういう方々を活用し、さらに来年度は拡充されるという方向なので、被災者支援総合交付金を最大限活用していただきたい。来年度は仮設から災害公営住宅に大規模に移動する時期である。この時期に必要な手立てをしっかりとって、後手に回らないということを強く求めたい。
アンケートの資料をいただいたが、集会所・談話室の利用状況、団地内の会話頻度ともに仮設住宅と比較し、災害公営住宅が低い傾向になっていると。仮設住宅24%にたいして、1年以上災害公営住宅は46%と倍近い。そして1年前との比較で、団地内・近隣との付き合いについても、災害公営住宅1年未満の団地は38%と高くなっている。このように評価しているのに、災害公営住宅と仮設住宅では変わらないという先ほどの答弁は違うのではないか。
【生活再建課総括課長】
先ほど申し上げたのは、生活の安心度という面からの答弁だった。しかしながらご指摘の通り、孤立化のところにも触れて答弁すべきであったと考えている。その辺は認識を新たにして取り組んでいく。
【斉藤委員】
事実上訂正されたと思う。
それで、災害公営住宅に入っても40%が不安を感じていることが重大である。そして孤立化の問題では、かなり高いとなっているので、正確に答弁していただきたい。
・住宅確保の見通しと災害援護資金について
【斉藤委員】
一般質問でも取り上げたが、住宅確保の見通しが未定というのは約400世帯ということだった。大船渡市長さんに聞いたら、仮設入居者836人中257世帯が未定、うち50世帯は生活設計が立たないような深刻な状況だということだった。県の把握は少し甘いのではないか。連絡がとれず集計されなかった部分もあり実態は倍ぐらいになるのではないか。全体の状況をどう把握しているか。
【生活再建課総括課長】
27年12月末時点で、沿岸市町村から報告いただいた数で、住まいの再建方法が未定と回答された方が413世帯、連絡がとれない等により把握できていない世帯が684世帯で、計1097世帯と全体の5.3%になる。
【斉藤委員】
連絡がとれないのが684世帯というのも深刻だと思うが、大船渡市長さんの話を聞くと、大船渡市はよく把握していると思うが、未定の中でも生活苦で、災害公営住宅に入る見通しも立たないと。生活保護の適用も考えた援助が必要だという認識である。残されている方々は生活苦で、災害公営住宅に入っても家賃や共益費の負担でやっていけないのではないかという不安を募らせることが少なくないという現実をよく見て、取り残された方々の住宅確保の見通しをしっかり、この1年以内に立てるようにしていただきたい。
災害援護資金の取り組みについて。350万円、厚労省通知では、被災者の場合は連帯保証人はいらないと明記されていながら、その後県の通知で、原則連帯保証人が必要となって断られた被災者が少なくない。これは厚労省の通知にも反するのではないか。県の通知でも、「本資金による土地・家屋など、固定資産の取得等相続財産がない場合は原則として申込者に連帯保証人を求める」と。住宅確保で財産取得するとなったら連帯保証人はいらないと思う。圧倒的に住宅再建で活用されているという回答もあった。その点で、市町村の担当者会議も開いたようだが、この点は柔軟に対応して、特に高齢者の場合はローンが活用できないので、最大限住宅再建を支援する対応を強めるべきだと思うがいかがか。
【生活再建課総括課長】
ご指摘の通り、震災直後国から原則として連帯保証人は立てなくてもよいという通知が出された。この通知の趣旨について確認したところ、「震災という緊急性に鑑み、返済が確実な方に対しては保証人を立てなくてもよい旨通知したものである」と。それまでは保証人は必ず付けなければなれなかった扱いだった。それが、返済が確実な方については保証人はいらないという趣旨という説明を受けている。
このことから、仮に貸付金が返済されない場合、市町村が返済しなければならないことになるので、県では、借り受け人となる方に相続財産がない場合は原則として連帯保証人を求めるという通知を出した。
今年2月に、県内3ヶ所で市町村の災害援護資金の担当者を集めた会議を行ったが、この会議では、通知の趣旨を再度確認・徹底したところである。
保証人を立てた方の割合は、27年12月末現在で44.3%となっている。
【斉藤委員】
県の通知では、「本資金による土地・家屋など、固定資産の取得等相続財産がない場合は原則として申込者に連帯保証人を求める」と。圧倒的に住宅再建で活用していると。そういった場合には財産の形成になるので。こういう方々には連帯保証人は求めなくていいのではないか。
この国の通知は、よく見ると、平成30年までという通知で、30年まで保証人はいらないと。その中には、「東日本大震災の被災者への貸付については、支払期日到来から10年経過後において、なお無資力またはこれに近い状態にあり、かつ償還金を支払うことができる見込みがない場合も免除要件に該当する」と。ここまで丁寧に書かれた厚労省の通知を、これと全く違う中身を通知するのは間違いではないか。
【生活再建課総括課長】
連帯保証人を求めるとした県の通知の趣旨について、相続財産がない場合は良いのではないかということだが、これについてはその通り市町村の担当者会議で周知した。
10年無資力のことについては、たしかに通知ではそう書いているが、然らばどういう状態が10年間無資力の状態なのかということについて国に対して基準を示してほしいと申し上げている。これについて国からは、「まずは返済していただくことが前提であるので、現時点で判断基準は示せない」ということだった。いずれ、災害援護資金というのは、被災者の住宅再建のための砦的なものもある。果たして今までのやり方でいいのかというところは我々としても疑問はあるところなので、引き続き国と協議していきたい。
【斉藤委員】
私が引用した県の通知の部分はその通りだと。圧倒的に住宅再建のために災害援護資金は活用されているので、連帯保証人が必要だとして窓口で断られている人が実際に多いので、これから高齢者の方々が住宅再建するか災害公営住宅に入るか決断の時期なので、柔軟に、制度を最大限活用できるような支援を強めていただきたい。
・被災事業所復興状況調査について
【斉藤委員】
調査結果の内容と課題はどうなっているか。
仮設店舗、事業所の現状と本設展開の希望状況、それへの対応についてお聞きしたい。
【産業再生課総括課長】
2月1日を基準として実施した被災事業所に対するアンケート調査であり、回収率は56.1%だった。事業再開の状況については、今回を含め9回の調査から、被災事業者の78.6%が再開していると推計している。建物や設備が半分以上復旧していると回答した事業所は71.6%と前回調査から3.1ポイント増、労働者が充足していると回答した事業所は66.4%と4.9ポイント増、業績が震災前と同程度または上回っていると回答した事業所は47.6%で1ポイント増となっている。全体としては緩やかな回復傾向を示していると考えているが、業績が震災前と同程度以上と回答した事業所の割合は50%未満にとどまっており、足踏みが続いている。事業者が挙げる課題としては多い順に、販路の喪失・減少、売り上げ減少、労働力の確保となっている。
仮設店舗・事業所について。被災事業所復興状況調査では、事業を再開した事業所のうち、仮設店舗・事業所で再開した事業所は今回20.3%で前回調査から1.2ポイント減少している。うち本設再開を予定していると回答した事業所は75.6%で前回調査から4.3ポイント増加している。一方で、予定していないとした事業所は16.2%で前回調査から7.4ポイント減少している。仮設店舗・事業所の本設展開に向けては、関係市町村等と連携しながら適切な対応を図っていきたい。
【斉藤委員】
8割方再開はしたが、今回見てみると再開率は73.8%で1.5ポイント低下である。
特に心配しているのは仮設店舗で、75.6%が本設展開を希望すると。ただ、この中には、28年内に再開したいというのが28.8%で、未定が50.4%と。本設展開したいが時期は未定だと。ここに厳しさがあると思う。こういう方々が本当に本設展開できるような支援策を講じる必要がある。釜石や陸前高田では、テナントで被災した方々に対する建物や家賃への補助など独自の対策を講じるようだが、そういう対応を市町村とも協力してやるべきではないか。
【産業再生課総括課長】
テナントで被災した業者への支援ということだが、グループ補助や県の補助は原則として事業者が震災前から所有し被災した施設・設備を復旧整備するための経費を補助しているもので、テナント事業者新たに店舗を建設する費用までは対象としていない。ただし、グループ補助においても、地域の商業機能回復をはかるため、組合等が設置する共同店舗にテナント事業者が入居して復旧する場合には、その店舗部分の建設費用を補助対象としている。
テナント事業者が単独で店舗を再建する場合については、地域によりさまざまな事情があることから、まずは復興をまちづくりの主体である市町村において、実情を踏まえた施策によることが適当ではないかと考えている。
・復興交付金と県の復興基金の活用状況と今後の見通しについて
【斉藤委員】
復興基金で岩手県は医療費・介護保険利用料の免除措置、住宅再建に100万円の補助などさまざまな取り組みを積極的にやってきたと。今年度末でこの復興基金はどのぐらいまで活用されることになるのか。
今後、新しい課題やニーズも出てくると思うが、これに対応したいと復興局長も述べていたが、今後どのぐらいの基金が残って、30年度までにどう活用できるのか。
【復興推進課総括課長】
これまで復興基金として約725億円を積み立てており、うち425億円を市町村に交付し、残りの約300億円が県の活用分である。平成28年度当初予算においては、住宅再建費用の一部助成などの約37億円をはじめ、中小企業の事業再建に向けた支援、医療・福祉サービス利用者への支援など幅広い取り組みに総額で54億円を活用する予定である。28年度末の残高は約67億円と見込んでいる。
今後においては、被災地域の状況・ニーズを的確に把握しながら、毎年度の予算編成作業の中で復興基金の活用についても検討していくこととなるが、いずれにしても被災者の暮らしや生業の再生が遅れることのないよう引き続き国に対して必要な財源措置について強く要望していきたい。
・東日本大震災津波の検証について
【斉藤委員】
来年度予算では、震災津波関連資料収集・活用等推進事業費で4億9000万円が計上されている。震災関連の資料を集めるのは当然だが、この中で今回の大震災の教訓、なぜ6000名を超える犠牲者を出したのか、このことの実証的な検証が必要だと思う。岩手日報が遺族アンケートで報道した。大槌町の安渡地区は、大きな犠牲者を出したが、犠牲者すべてを調査したら、要援護高齢者の対策が弱かったと、3月6日に地区防災計画を立てて訓練までしている。こういう実証的な検証を踏まえて、震災の教訓を生かすような情報収集や伝承施設の整備をやるべきだと思うがいかがか。
【復興推進課総括課長】
震災津波関連資料収集・活用等推進事業については、県と市町村連携し、被災の状況や復興の状況について、震災関連資料ということで収集して、それをデジタル化し、ストックした上で情報発信する。情報発信する中で、基本的にはホームページをイメージしているが、検索して必要な情報を取り出すことができるという形にしたいと考えているが、それと合わせて、防災・教育・交流人口というテーマで、見やすい形で情報発信していきたい。
いずれ、津波により再び人命が失われることがないよう、しっかり今回の震災で得られた教訓を情報発信していく必要があると考えているので、検討しながらシステムづくりに取り組んでいきたい。