2016年3月16日 予算特別委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・主権者教育について
【斉藤委員】
学校の政治的中立性は、授業などで教員が守らなくてはならない問題である。同時に、子どもたちへのこれからの主権者教育というのは、文科省の通知にもあるように、現実の政治の課題を積極的に取り上げなさいとなっている。現実の政治的な問題を取り上げて、子どもたちが政治的教養、政治的理解を高めるというところに主権者教育の中身があると思う。そして今、毎日のテレビ・ニュースを見て、全国の多くの高校生が戦争法、いわゆる安保法制に反対するデモ・集会に参加している。これは1つの高校生の目覚めであり成長であると思う。
この点について、政治的な中立性という問題と主権者教育はそういう立場で受け止めて進めるべきだと思うがいかがか。
【教育委員長】
高校生でなくても、18歳であれば選挙権があるわけで、勉強して政治のことに関心を持ち、投票したり政治活動をするのは一向にかまわないと思う。ただ、学校教育の中でということになると、いろいろ制約があっても仕方がないと思うし、いま始まったことなので、全国の様子を見たりしながら、県内の高校でさまざまな課題があったときには、適切に相談しながら、決して子どもの活動を制約することなく、ただ、乱すとか、ならないような形で適切にやっていかなければならないと思う。
【斉藤委員】
きわめて重大な答弁だった。
今日の朝日新聞の一面に、愛媛県が県立全校で政治活動の「届け出制」と。これは県教委がこういうモデルをつくって、全部の高校がこれに応じたと。こんなことをしたら政治活動の規制である。人権の侵害である。そういう専門家のコメントが載っているが、岩手県はそういうことはやらないと。県教委がやらないだけでなく、全ての学校がやってはならないと思う。
今の教育委員長の発言で問題なのは、文科省の通知で「授業、生徒会活動、部活動など学校管理下にある教育活動での政治活動は禁止する必要がある」と。生徒会活動まで禁止されたら問題である。生徒会は自主的な活動なので、それまで政治活動を禁じたら憲法違反になる。
2つ目に、「高校の校内での高校生の政治活動というのは制限あるいは禁止する必要がある」と。例えば、高校の中で昼休みや放課後に戦争法反対の署名を集める、この規制は政治活動の規制である。
3つ目に、学校の外での活動でも、「学校教育の円滑な実施に必要があると認められる場合には、高校は禁止も含めて指導する」と。高校の外でも規制できるとしている。憲法の19条は「思想・良心の自由」、21条は「集会・結社・表現の自由」が保障されている。これは高校生にも保障されている。そして日本政府が批准している子どもの権利条約では、子どもの意見表明権、表現・情報の自由、思想・良心・宗教の自由、結社・集会の自由が認められている。グローバルスタンダードでも憲法でも、高校生にも認められた権利である。高校の中では憲法が通用しないということはあり得ない。この憲法が通用する学校であるべきであると思うがいかがか。
【教育委員長】
高校生の政治活動については、無制限に認めるものではないのではないかと私は思っている。我々はやはり法治国家にいるわけで、教育基本法や学校教育法に基づいて子どもたちを指導しなければならないと。もちろん前段には憲法がある。それらを全部クリアするような形で子どもたちにも許可したり、必要によっては制約を受けることもあり得るという考え方にしていないといけないのではないかと思っている。
【斉藤委員】
憲法で保障された思想・信条の自由、集会・結社・表現の自由、高校の中でそれが規制される法的根拠はない。法的根拠がないものを規制したら憲法違反になる。法的根拠を示すのなら今の答弁は分かるが、法的根拠を示せるか。憲法が生かされない高校はあり得ない。やるとすれば規制ではなく教育的指導である。
【教育長】
法治国家において、守るべきものは最上位の法規として憲法があるというのはその通りであり、ただその中で、さまざま基本的な人権が付与されているが、公序・良俗に反しないだとか、公共の福祉の増進に反しないというような中で、国民のそれぞれの権利なりが認められるということだと思っている。その中で、さまざまな法律で、憲法を補完する法体系が我が国ではつくられているということで、委員からお話のあった具体的な活動については、有権解釈するのはあくまで国であり、憲法の運用の話であり、そういう中で文科省・総務省からさまざまな情報をいただいている。その中で、きちんとそれを学校教育の中で生かすよう努力していきたい。