2016年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(水産部門)に対する質疑(大要)
・漁業の復興状況について
【斉藤委員】
昨年の産地魚市場の水揚量・水揚金額は、前年比、震災前と比べてどうなっているか。
【水産担当技監】
27年の県内魚市場の水揚量は11万4000トン、金額は199億円となっている。
前年比は、水揚量では83%、金額では88%となる。
震災前と比べ、水揚量では64%、金額では85%となっている。
【斉藤委員】
昨年は、サケとサンマが大不漁で、前年から割れたと。全体とすれば6割強というところが水揚げの水準かと。金額では85%ということだった。
だいたい漁船の確保や養殖施設の整備は目標通りにいったと思うが、これから漁船や養殖施設を活用して、どう経営を成り立たせるのかという状況ではないか。
養殖の生産量・生産額、アワビ・ウニの採介藻の生産量・生産額はどう推移しているか。
【水産担当技監】
ワカメについては、27年度は15349トンで、前年比107%、震災前の69%、金額は23億3900万円で、前年比137%、震災前の56%である。
コンブについては、27年度は6729トンで、前年比101%、震災前の59%、金額は8億5400万円で、前年比98%、震災前の56%。
ホタテについては、27年度は3280トンで、前年比84%、震災前の58%、金額は14億2900万円で、前年比97%、震災前の92%となっている。
カキについては、むき身の重量のみの数字だが、27年度は225トンで、前年比106%、震災前の55%となっている。
アワビについては、27年度は292トンで、前年比113%、震災前の85%、金額は29億円で、前年比127%、震災前の126%となっている。
ウニについては、生ウニのむき身の数字だが、27年度は98トン、前年比110%、震災前の80%、金額は7億3000万円で、前年比89%、震災前の96%となっている。
【斉藤委員】
養殖の場合は、生産量では対前年比並かやや超える状況だが、生産額となると6割前後で、おそらく漁業者が2割3割減ってしまったということが最大の要因ではないか。いま就業している方々は震災前の水準には戻っているのではないかという感じを受ける。
サケ・サンマが大不漁であったが、資源回復の見通しについてどのように把握しているか。
【水産担当技監】
27年度の秋サケの漁獲そのものは、震災前に放流した稚魚が5年で回帰したこと、主力となる4年漁が、震災翌年のふ化場が整備途上で2億9000万尾と少なかったことから、回帰尾数が少なかったと見ている。27年春からは、4億尾の放流を開始しているので、震災前の漁獲に回復するのは、この稚魚が回帰する平成30年以降になるものと考えている。
サンマなどについては、魚市場にサンマなど主要な魚種の資源動向、国の調査によると、サンマの資源的には横ばい、スルメイカだと減少傾向、マダラやブリなどは増加傾向にあると見ており、漁種によりばらつきはあるが、総じて本県の近海の資源は安定しているのではないかと見ている。
【斉藤委員】
サケについては平成30年以降と。昨年が底なのか、底が少しまだ続くのか見通しが見えない厳しい状況だと思うが、漁業者に聞くと、夏場は獲れたので何とかトントンだということだった。
・漁業担い手育成対策について
【斉藤委員】
県も3月末には漁業担い手ビジョンを策定すると。先日、水産関係の懇談会でも説明を受け、漁業関係団体の方々からも意見を聞いてきた。一番の今の問題は担い手だというのは共通している。
漁業経営体と担い手の現状、この間の推移はどうなっているか。
【漁業調整課長】
個人の漁業経営体については、震災前の平成20年に5204経営体あったが、25年には3770経営体となっている。
就業者については、震災前の平成20年に9948人だったが、25年には6289人となっている。
【斉藤委員】
漁業経営体は1430経営体、5年間で27.5%減少している。就業者は3659人、36.7%減少している。激減と言ってもいい状況である。
それだけに、漁業担い手をどのように確保するかというのは、これまでの延長線上では全然対応できないと漁業関係者も言っていた。抜本的にやってほしいと。ところが来年度予算を見ると、担い手確保育成総合対策事業費は700万円で前年度より90万円減っている。地域再生営漁計画推進事業費は870万円弱で1億5100万円減った。これから担い手対策をやろうというときに、予算を減らしてやろうなどということは考えられない。県の担い手ビジョンの中身と、来年度予算の整合性がとれないと思うがいかがか。
【漁業調整課長】
担い手育成ビジョンだが、漁業者の減少と高齢化が進んでいるので、担い手確保の育成の取り組みは重要だとは県も認識している。
県はこれまで、漁協の経営戦略・戦術となる地域営漁計画の策定と、これに基づく新規就業者の確保、漁業経営体の規模拡大などの取り組みを支援している。このような取り組みに基づき、来年度地域再生営漁計画を支援するということで予算計上させていただいているところである。また、地域再生営漁計画の着実な実行を進めるために、今年度は関係者が連携し取り組めるように、担い手育成ビジョンを策定することとしている。その中身は、中核的な漁業経営体を育成するために、生産の機械化・省力化、販売方法の改善などの取り組みを支援すること、新規就業者確保のため市町村協議会を設立し、地域ごとの新規就業者を確保する受け皿づくりや、国の事業を活用して熟練漁業者等による技術指導等の取り組みを支援していく。
予算は減っているが、就業対策については、国の支援事業でお金が出る事業なので、それを活用して今後もやっていきたいと考えている。また28年度は、関係団体と今協議しているが、就業フェアを県内開催で進めるような協議をしている。こういった取り組みは予算に反映されていないが、国の事業を引っ張ってきたいと思っている。
県庁予算の他に、振興局で予算化をしており、現在漁業体験をさせるような事業、漁業経営体の経営改善を支援するような事業等も含め、予算計上を別途させていただいている。
【斉藤委員】
すでに陸前高田市や宮古市などで独自の担い手対策をやっている。その中身と実績を示していただきたい。
【漁業調整課長】
陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町、宮古市が独自の施策を実施している。
陸前高田市の事業においては、新規就業者の奨励金を支給する事業で、実績としては26年度2名となっている。
大船渡市の事業は、新規就業者の宿舎整備を補助するもので、実績は27年度2件となっている。
大槌町の事業は、漁業研修等を実施する事業であり、実績は26年度11名となっている。
山田町の事業は、新規就業者に就業奨励金を支給する事業であり、実績は26年度1名となっている。
宮古市の事業は、新規就業者の受け入れの補助を行うもので、新規の受け入れ実績は26年度3名となっている。
【斉藤委員】
陸前高田市は、新規参入型の場合には120万円、宮古市は年120万を2年間と。
このぐらいのことをやらないと、育成できないと思う。国の支援策も、農業や林業と比べるときわめて不十分。せめて、青年就農支援金など、このぐらいの支援をやらないと育成できない。ここ3年から5年ぐらいが勝負だと思う。ここでうまくやらなければ立ち消えになってしまう。陸前高田市や宮古市がやっていることを全県的にやると、思い切った支援策が必要ではないか。
【漁業調整課長】
新規就業については、未経験者、未就業者が就業当初から組合員資格を得て、養殖業を営むとか、漁業許可を得て漁船漁業を営むというのは、技術的等の問題から非常に困難だと認識している。よって、熟練漁業者などに雇用されながら、技術習得を図るようなことが重要だと我々も認識している。
国の就業支援事業については、このような実情に即して、新規就業者を雇用して、雇用される身分で実践研修を受けるということで、指導者に対して謝金を払うという仕組みになっている。その期間が、新規就業者の身分が雇用されているということで保障されているものなので、1〜2年以内ということで、農業の3〜5年というよりも短いが、そのような実情を反映して今の制度になっている。
県としては、このような事業を最大限活用し、県内での就業フェアの開催や、就業支援情報をこれから積極的に発信していくようなことで、担い手対策を進めていきたい。
【斉藤委員】
本当にこれだけ激減してきて、この3年ぐらいのところで勝負しないと、激減傾向に歯止めがかからない。そのためには、陸前高田市や宮古市は頑張っているが、全県的に、せめてそのぐらい支援すると。その際、漁業者の後継者は一番のポイントである。もう1つは、せっかく水産高校や水産学科があるのだから、就職状況を聞いてみると、漁業への就職が26年度8人、25年度は7人である。やはり水産高校・水産学科で担い手をしっかり育成していくということも、そのためにどうすればいいのかということも知恵を出してやらなければいけないと思う。具体的な、思い切ったことがないと、ビジョンに魂が入らないと思うがいかがか。
【水産担当技監】
水産高校の生徒さん、やはり水産高校から漁業に入っていただくというのが一番の近道だろうと考えている。ただ、高校の先生方にお聞きしても、どこから入っていいのか分からないということもお聞きしている。そこで、久慈東高校に県北局で働きかけ、生徒を対象に「北の海女養成塾」という名称で研修会を開催している。内容としては、天然ワカメの採集やら、ウニを実際に採るといったことを実習したところである。生徒からは「非常に貴重な経験になった」という意見、「意識していなかったが漁業も1つの選択肢」という意見もいただいている。教員の方々からは、このような体験の場は必要でこれからも続けてほしいという話もいただいている。今後、高校生のみなさんにこのような体験の場を通じて、まずは漁業の就業のきっかけを提供していくような取り組みをさらに続けていきたい。
【斉藤委員】
担い手ビジョンをつくって予算を減らしたという、ちぐはぐなことはやらない方がいい。それにふさわしい思い切った対策を示さないと漁業者は本気にしない。
・サケ刺し網漁の許可をめぐる裁判について
【斉藤委員】
裁判の論点、県の主張について示していただきたい。
【漁業調整課長】
26年9月30日以降に、合計102名の漁業者から「サケを目的とする固定式刺し網漁業の許可を求める申請」があった。県では、漁業法および漁業調整規則等に照らし、許可をしないこととした。
この不許可処分を受けた漁業者のうち、100名が27年11月5日付で、県の不許可処分の取り消し及びサケ刺し網漁業の許可を求めて盛岡地裁に県を提訴したところである。
これまで2回の口頭弁論が行われ、裁判ではこれまでのところ、県の不許可処分の理由の適合性が主な論点となっている。
県では、弁護士を代理人として、原告の請求の棄却を求めること、客観的データと根拠に基づく事実を示して、不許可処分に至った経緯等を主張しており、今後も県の処分の適法性等について主張していくところである。