2016年3月18日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・災害公営住宅の整備について

【斉藤委員】
 2月末現在で2748戸整備され、計画の47.6%となっているが、3月末までにロードマップ通りに3334戸整備されるのか。現在工事中が1801戸となっているが、これはいつまでに整備されるのか。
 2748戸整備されているが、2月末の入居戸数は1924戸となっている。これは整備数の70%程度で、入居決定戸数はもう少し多いようだが、かい離が大きいのではないか。
 空き住戸は358戸となっているが、県管理の空き住戸が多いと思うが、実態と要因をどう受け止めているか。

【住宅課長】
 現在ロードマップの更新に向けて、市町村にたいし3月末の完成見込み戸数等の問い合わせを行っている。市町村からの報告はこれからとなるが、前回公表したロードマップの通り工事が進むものと考えている。1月末時点で工事中であった1801戸については、27年度中に完成するものが586戸、28年度上半期が714戸、下半期には501戸の完成予定となっている。
 空き住戸の状況だが、建築住宅課でも市町村に適宜問い合わせており、入居状況を毎月把握しているが、我々の数字では2748戸の整備にたいして2390戸、率にして87%の入居となっている。
 県営住宅の方が空きが多いのではないかということだが、市町村で離半島部の戸建てや、そういった直接「この方が1対1で入る」といったような形の整備をメインでやられている部分があるので、現時点では県営より入居が進んでいる側面があるのではないかと思っている。戸数の決定については、これまで市町村と十分調整をさせていただいて決定しているところであり、今後、仮設住宅の集約やそういった流れの中で、現在入居を迷っている方々の入居が今後進んでくると思っているので、空きは埋まっていくのではないかと考えている。

【斉藤委員】
 建築住宅課の2390戸というのは「入居決定戸数」で「入居者数」ではないということなので、復興局とのずれはあるが、入居が決定したが入っていないという方も少なくない。
 空き住戸について、県管理で141戸、例えば県営の陸前高田市の中田団地は68戸も空いていて、それを含めると209戸で58%になる。県管理の公営住宅の空きが多いというのが特徴としてあるのではないか。よく分析して対応していただきたい。
 災害公営住宅の問題で一番深刻だと思っているのは、高齢者世帯、一人暮らし世帯というのが新聞報道でも多いが、閉じこもり・孤立化・孤独化が進行していると。こういう点で、高齢者・一人暮らしの入居者の実態をどう把握しているか。また、鉄の重いドアで、それだけで部屋に閉じこもってしまうというのも共通した声である。重いドアの改善、引き戸をもっと増やすとか、そういう改善をすべきだと思うがいかがか。

【住宅課長】
 高齢者世帯等の状況については、昨年10月末時点で、県が供用を開始している県営団地445戸のうち、高齢者のみで暮らしている世帯が176戸、うち高齢単身世帯が125戸となっている。
 玄関扉、鉄の重い扉の改善だが、近年公営住宅については、各住戸の気密性がかなり高くなっている。台所の換気扇を回した場合、玄関扉が開きにくくなるといった指摘があったことから、換気扇や吸気口の使用にかかる注意事項について、改めて入居者に周知を図っていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 換気扇程度の改善では改善にならない。それは入居者はみんな分かっていて、それでもこのように言っているので。3月4日の毎日新聞では、復興住宅孤独死11人、うち岩手県は5人だと出ており、3月3日の日経新聞では、「近所づきあいが濃い地域の1戸建て住宅になれた高齢者にとって、集合住宅の鉄の扉は重く分断されていると感じる」と。これは阪神大震災のときに支援した萬相談所の理事長さんは、「東北は神戸より厳しい状況だ」と。阪神大震災では1130人孤独死のうち800人以上は復興住宅での孤独死である。高齢化も阪神大震災のときより10%ぐらい高いのではないか。それだけに、災害公営住宅でこうした孤立化・孤独化を防止するということを、整備する側もしっかり対応して、引き戸を増やすとか、重いドアを改善するといった具体的な改善策をやっていただきたいと思うがいかがか。

【住宅課長】
 高齢者への対応については、これまで通常の公営住宅でもやっていたが、指定管理者による巡回を行っている。これに加え、やはり孤立化というのはコミュニティの形成、特にも災害公営住宅の場合は、新しい入居者が一斉に集まり、なかなかコミュニティが形成しにくいといったような側面もあろうかと思うので、来年度から入居者の交流会を行うなどのコミュニティの形成を支援する事業を実施したいと考えている。
 玄関扉の改善だが、そういった問題が出た昨年12月以降については、工事の発注をした団地の玄関扉、引き戸にするとどうしてもプランの制約や面積等の問題があるが、ドアでも、一度引っ張ると梃子の原理ですき間が開いて空気が入り、開きにくさを解消するような製品があるということだったので、昨年12月以降に工事を発注した団地の玄関扉については、そのようなタイプのものを設置することとしている。

【斉藤委員】
 高齢者世帯は、各紙も調査し、だいたい38〜39%である。一人暮らし世帯が28%である。本当にこうした方々の孤立化・孤独化を防ぐということをぜひ考えていただきたい。
 そのために整備されている集会室や支援員の事務室、この整備状況と活用状況はどうか。机やイス・ストーブなどの備品は年末には全て整備されたと聞いているが、新しい住宅は整備完了と合わせて整備されるのか。さらに、県営の場合は、住宅センターが見守りもしているということだったが、この見守りの体制と内容について示していただきたい。

【住宅課長】
 県管理のものについては、一般の公営住宅より広い集会所を整備するとともに、支援員が常駐することが可能な事務室を整備している。集会所については、自治会などにより定期的に利用されており、事務室については活用を市町村に呼び掛けている。
 備品の設置状況は、県管理の災害公営住宅の集会所、すでに管理を開始している団地の集会所については全て設置が完了している。今後完成する公営住宅についても同様に設置を進めていく予定である。
 県営住宅の指定管理者が行っている見守りについては、高齢者世帯にたいして3名の専門職員により対応しており、災害公営住宅だけに限定すると42世帯対象であり、昨年4月から12月までの間に164回の訪問を行っているという報告を受けている。

【斉藤委員】
 県管理の住宅はそういう形でやられていることは評価したい。ただ、仮設のときには毎日来たが、災害公営住宅になったら月1回という声もあるので、頻度を高めていただきたい。
 内陸での災害公営住宅の整備について。アンケートの集約状況、再調査もやっているようだが、面談・相談件数は新聞報道では61件あったと。3月中にはこれを集約して4月には整備方針を出すというので、現段階でどういう集約状況になっているのか。面談件数は最終的に何件だったのか。

【住宅課長】
 1月25日に意向調査を表明する旨公表し、県外避難を含む内陸部等の避難者にたいし2219件の調査票を送付している。現在、締め切りを2月中に設定したが、回答率が思わしくなく、未回答者等に再度確認を行い、再度調査票を送付している。こうした状況なので、回答は返ってきている段階であるので、集計の途中経過については控えさせていただきたい。
 また、意向調査にともない、個別相談会という形で、県内4カ所で5月3日〜2月9日にかけて実施したが、盛岡会場で29組、遠野会場9組、北上会場14組、一関会場9組の相談があった。また調査票に関しての問い合わせの電話も適宜いただいている。


【斉藤委員】
 最初の締め切りで寄せられた回答数はいくらだったのか。

【住宅課長】
 具体的な数字は持ち合わせていないが、おおむね5割程度の回答だったところである(後に1001件と答弁)。それを受け、意欲のある・なしではなく、住宅再建にかかる重要な調査だと思っているので、住居の希望がある・なしではなく、送った書類を見ていない方もいるだろうということで、改めて回答をいただけなかった方にご案内しているものである。それらを含め、昨日時点では、1456件・62.9%いただいている。

【斉藤委員】
 アンケートからしたら高い回答率である。アンケートは、内陸で災害公営住宅を建設するためのアンケートなので、その気がない人は答えない可能性だってあるわけなので、これだけの数はかなりの意向を把握できる数だと思うので、こういうものはできるだけ議会に明らかにしてやるべきではないか。

【県土整備部長】
 意向調査は大変大事な調査だと思っている。内陸にどうしてもとどまられる方の住宅のセーフティーネットの確保ということで、こういう作業も丁寧にしっかりやっていきたいと思うので、結果がまとまり次第報告させていただきたい。

【斉藤委員】
 今みなし仮設で生活している方々は、いつまで生活できるか不安を募らせている。そういう具体的な方向を示すのは大事なことなので。整備方針を決めてから2年間かかるというので、良いことは早くやっていただきたい。

・住宅再建への支援策について

【斉藤委員】
 岩手型復興住宅の取り組みはどうなっているのか。
 釜石市や陸前高田市や山田町では、地元の建設業会や森林組合などが独自のモデル住宅も造って取り組んでいるが、こうした取り組みの実績をどう把握しているか。

【住宅課長】
 岩手県地域型復興住宅推進協議会が公表している推計値によると、26年度までに被災者の住宅1777戸、27年度は819戸を建設する見込みと聞いている。
 釜石市内で工務店等が連携したスクラム上閉伊住宅や、陸前高田市の建設業協会による住宅再建推進協議会、山田町の町主導による低価格住宅「山田型復興住宅」などの取り組みの事例はうかがっているが、具体の実績までは把握していない。

・住宅金融支援機構の返済猶予の打ち切りについて

【斉藤委員】
 住宅金融支援機構の5年以内の返済猶予が3月以降1184件で終了すると報道されている。この支援機構に対する予算も提起されているが、岩手県分で打ち切られる件数はどう把握されているか。返済額は、全体では402億円と言われているが、どうなっているか。

【住宅課長】
 機構に問い合わせたところ、県内では累計で361件、債権総額は24億円であり、うち猶予期間が終了しているものは17億円になるという回答であった。

【斉藤委員】
 終了すると、住宅ローンの返済が始まり、まさに二重ローンという事態になるので、これは二重ローン対策の対応も含めて丁寧にやっていただきたい。

・都市再生区画整理事業について

【斉藤委員】
 造成された宅地は、計画で5343区画だが、防集と違い、区画整理というのは基本的には前の区画を造成する。しかし待ち切れずに高台にどんどん家を建てていると。区画整理は一番遅れているわけで、30年度までかかる区画数はどのぐらいあるのか。造成されたところにどれだけ住宅が建設される見込みなのか。しっかり把握しないと大変なことになる。大船渡市長さんに聞いたら、231区画のうち当面家を建てられるのは3分の1だと。しっかり見ないとまちづくりが進まない。

【まちづくり課長】
 30年度までかかる宅地数は、1630区画見込まれている。
 区画整理における住宅再建の把握については、事業主体の市町村においては、必要に応じて個別面談やアンケート調査等を通じて住宅再建等の意向を把握し、換地設計や工程調整等に使用していると聞いている。さらに精度を上げた住宅再建の把握については、今後まちづくりを進める上で、各市町村が必要に応じて判断し実施されるものと承知している。

・防潮堤の整備について

【斉藤委員】
 丸5年を通じて議論になっているが、県内の防潮堤の整備状況、総事業費、高さ等を見直した地区数はどうなっているのか。
 首藤先生が防潮堤の問題について、「津波と防潮堤の優劣というのは相対的な関係でしかない。造るのなら100年200年先まで維持管理する仕組みを考えなくてはならない」と。防潮堤の議論は複雑で一面的には言えないが、岩手県分では耐用年数、維持管理費というのは現時点でどのように推計されているか。

【河川課総括課長】
 県土整備部所管の海岸保全施設については、65地区全てで工事に着手している。26年度末までに17地区が完了し、さらに27年度末までに6地区が完了、計23地区が完了見込みである。
 県土整備部所管の防潮堤の整備にかかる総事業費は、27年12月末時点で試算したところ約1800億円と把握している。
 地域海岸で設定した計画高さに至らない地区については、県土整備部所管では6海岸となっている。
 耐用年数については、一般的には50年程度と言われているが、点検や維持管理等をすることでさらに長寿命化が可能となるものと考えている。維持管理については、これまでも定期的なパトロール等により点検管理してきたところである。パトロール等により異常が発見された場合、必要な場合にはその都度補修を行うこととして、被災前までには大きく補修した事例は確認されてはいない。
 今後、復旧復興事業が進むが、震災前までの管理状況から、頻繁な補修は発生しないと考えているが、いずれコンクリートの劣化や堤体内の空洞化に対応した適切な措置管理に努めていきたい。