2016年3月22日 商工文教委員会
公契約条例、自動車産業振興等に対する質疑(大要)
・県が締結する契約に関する条例について
【斉藤委員】
県が締結する契約に関する条例の基本理念の実現を図るための取組(案)が説明された。この条例の一番の問題は、概要版のところの「県契約にかかる業務に従事する者の適正な労働条件」と、これが公契約条例を求める方々の最大の目的であった。適正な賃金水準の確保ということで、@工事請負契約の予定価格の設定にあたり、最新の設計労務単価、資材等の実勢価格を適切に反映―とあるが、これは条例がなくてもこの通り行われるものである。その次に、「庁舎管理業務および指定管理業務において、適正な賃金水準を確保するための実態調査の実施を検討」とあるが、2つの業務に限定したのはなぜなのか。岩手県が発注する公共工事でも実態の把握が必要だと思うがなぜこうなったのか。
【労働課長】
その部分については、特に庁舎管理業務と指定管理業務について従事される方の賃金水準の確保ということについて、県として条例の制定・検討のプロセス、制定後も全庁的に条例の取組については、各部局で構成する県契約条例推進会議を設けて取組の検討として行ったということで、特に庁舎管理業務と指定管理業務について、適正な賃金水準の確保のための実態調査の検討をすると。
経緯としては、素案の段階では、指定管理者等の候補者の選定の審査においては、最低賃金を下回らない運営計画であることを公募要件とするというもので進めていたが、契約審議会の中で、最低賃金を下回らないのは当たり前なので賃金水準の確保という一歩進んだ取組が必要ではないかというご意見もいただき、それを踏まえてこうした案に修正している。
なお、最低賃金の順守については、取組の取りまとめの根拠となっている条例の第6条が根拠規定だが、第7条の方で、最低賃金について順守するという規定が4月から施行することとなっている。そして最低賃金の順守状況について報告を求める制度については第8条で規定があり、これについては制度の運用について審議会で詰めながら29年4月1日までに施行するという条例の立てつけになっており、特に話題としてこれまで取り上げられてきたうちの1つ、指定管理と庁舎管理については実態調査をすると。その他の全般の契約については第7条第8条の規定で履行の確保を図っていくというものになっている。
【斉藤委員】
最低賃金を下回らないのは当然で、別の法令でそうなっている。
庁舎管理業務と指定管理業務について実態調査を行うことはぜひやっていただきたい。
以前も指摘したが、岩手県の公共工事で、大工さんの賃金がどうなっているか。昨年の建設労働組合の2000人調査で、大工さん・常用職人で12018円、公共工事設計労務単価の大工さんの単価は22200円、現場で大工さんがもらう賃金は54.1%にすぎない。こういうことを是正してほしいというのが公契約条例を求めた最大の理由である。庁舎管理業務や指定管理業務だけでなく、特に岩手県が発注する公共工事は一番額が大きいのだから、公共工事の現場での大工さんの実際の賃金というのも実態調査すべきではないか。
【労働課長】
建設労働者の賃金実態等について、条例制定のプロセスでも、関係団体等から資料もいただきながら把握し、たしかに課題があるということで、条例の制定や取組の取りまとめを進めてきた。条例の制定のプロセスの中で、例えば、県独自の発注の際の賃金の下限額を設けるというような、関東・関西での市や区の先行の条例ができないかということも含めて検討されたと聞いているが、それについてはさまざまな意見があって、条例の形としては今回のような条例として制定されたという経緯である。4月から本格施行ということで、県の取組の取りまとめを公表し、1年後までには最低賃金の順守状況を報告いただくというような制度が始まるところであり、県としては引き続き関係団体等から情報提供いただきながら、建設労働者の実態も把握しながら、労働条件が確保されるように全庁的に取り組みを進めていきたい。
【斉藤委員】
今日の説明は取り組み案の説明を受けているので、私の発言はここに限定すべきではない。今指摘した問題は大変重大なので、こういうことが改善されなければ公契約条例の効果は出てこないと思う。ぜひ庁舎管理業務と指定管理業務の実態調査はしてほしいが、公共工事についてもしっかり。いま建設労働者は激減、高齢化し、これからどう確保するかが大事な課題になっているときに、放置できない状況である。ぜひ限定せずに取り組んでいただきたいと思うがいかがか。
【商工労働観光部長】
取り組み案については、庁内での検討もさることながら、県の契約審議会においても議論いただき定めたものである。ご指摘の点については、取り組み案について毎年度見直したり付け加えたりといったことも契約審議会の中で議論されるので、発言の趣旨については審議会にも申し伝えたいと思う。
【斉藤委員】
公契約条例については、期待も強いので、具体的な実態を今指摘したので、こういう状況が一歩でも二歩でも改善されるという方向で条例が生かされるようにしてほしい。
実は全国で公契約条例が制定されているが、賃金条項を規定しているのが17自治体。この中には、神奈川県川崎市・相模原市、東京都多摩市・国分寺市・渋谷区・足立区・千代田区・世田谷区と、人口規模で岩手県を超えるようなところも賃金条項を設定し、だいたいこういうところは設計労務単価の8割以上の賃金を確保している。やってやれないことはないと先進例は示しているので、ぜひそういう事例も研究しながら、現場で働く労働者の適正な賃金確保に取り組んでいただきたい。
【商工労働観光部長】
この条例については、さまざまな事情背景のところから当面は賃金条項は盛り込まなかった経緯がある。
いずれ、その中では、県としては法令の順守を徹底した上で、予定価格の適正な設定、ダンピング入札の防止といったことなどに取り組み、賃金をはじめとする労働者の適正な労働条件を確保していきたいと考えている。
ただ、条例の附則にもあるが、施行後3年を目途として社会経済情勢の変化等を勘案しつつ、条例の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるという条項もあるので、そういったところも踏まえ、契約審議会の中でも議論があり得るととらえている。
【斉藤委員】
適正な賃金水準の確保の業務委託契約のところで、建設関連業務の入札において最低制限価格を導入すると。県立病院清掃業務の入札においては低入札価格調査制度だと。庁舎等管理業務の入札では最低制限価格制度だと。改善は改善なのだと思うが、なぜ県立病院の清掃業務については低入札価格なのか。最低制限価格で一本化した方が分かりやすいのではないか。なぜこうなったのか。
【労働課長】
これは今新たに始めるというよりは、すでにこのようにとり行われているものだが、こういったことについては、全庁の条例推進会議で各部局の取組を検討し掲載しているということである。それぞれの制度については、過去の経緯、その時々で課題が生じたので、現在の制度にしたと担当部局から聞いている。
・トヨタ自動車東日本岩手工場について
【斉藤委員】
岩手工場は縮小するのではないかという一部の議論が予算特別委員会であったが、あまり根拠のない話ではないかと思うが、トヨタ自動車東日本の現状、トヨタの戦略、今後の見通しについて正確な情報を示していただきたい。
【自動車産業振興課長】
2011年7月にトヨタ自動車において、東北の国内第三拠点化というものが表明され、2012年7月にはトヨタ自動車東日本が設立された。設立に関しては、東北をコンパクト車の企画開発から生産までを担う拠点化を進めているということで進められてきた。
3月2日に、トヨタからの発表があり、新たな社内体制の構築ということで、ビジネスユニット制ということでリースカンパニーを設立するという報道があった。東北に限った部分では、コンパクト車の部門が新たに立ち上がったということで、コンパクト車の社内での位置づけがトヨタ自動車東日本ということになっており、ますます東北のコンパクト車の重点が高まったと認識している。
一部の憶測というか議論の中で、おそらく昨年11月4日に日経新聞の1面トップに、トヨタの国内の生産再編という記事が載って、翌日岩手日報社には「ヴィッツ生産検討へ」ということで記事が出ている。我々とすると、岩手日報社の記事に関してはかなりの信頼性の高い記事だと思っている。岩手日報の報道の通り、新型スポーツタイプ多目的車や人気車種のヴィッツが東北にそろうということになると、ますます今後岩手・東北の自動車産業は余地があるのではないかと期待している。
【斉藤委員】
岩手工場はいまアクアのフル生産で、今のラインはフル稼働しているのではないか。さらにヴィッツの生産となると、工場やラインを増設しないと対応できないのではないか。岩手工場の今後の見通しはどうか。
自動車産業は岩手の戦略産業の1つだが、自動車関連産業は県内でどれだけで、関連従業員数はどのぐらいか。どのぐらいの厚みをもったものなのか。正社員比率は分かるか。岩手工場の従業員数は2742名というのが最新だが。
【自動車産業振興課長】
トヨタ自動車本社の考え方として、国内投資に関しては非常に限定的だということから、国内300万台生産維持ということからすると、なかなか新しいラインを増設することに関しては厳しい状況にあるのではないか。厳しいというのは、東北の部品メーカーがトヨタ自動車東日本にたいしどの程度支えているかということだが、いずれ部品メーカーの能力そのもの、50%程度という数字もあるが、こういった中から新たなラインの増設は現段階では厳しいと認識している。
従業員数だが、統計データで、26年現在で62事業所・6677人となっている。ただ県内の地場中小企業の部分では、機器製造業にカウントされない業種等もあるので単純な積み上げはできない数字かと思う。正社員比率に関しては、部品メーカーも含めた全ての業界での正社員比率は調査していない。
・岩手東芝について
【斉藤委員】
東芝の粉飾決算により大リストラ・合理化が行われ、大分工場と岩手東芝が統合し、東芝の名前もなくなると。大分はリストラで、1万人以上のリストラを東芝は関連会社でやろうとしているが、岩手東芝が新しく統合し、このリストラの煽りを受けることはないのか。そして今700名が四日市に出向しているが、おそらく岩手に戻る条件が現時点ではないのだと思うが、こういう方々はどういう形で雇用が守られるのか。
そして最近の情報では、東芝はNAND型フラッシュメモリを四日市で増設すると。ここは投資するということだが、そことの関わりで、岩手での新工場の誘致の見通しは現時点でどうなるか。
【企業立地推進課総括課長】
3月18日に東京で発表されたグループ全体のリストラ計画がある。これはグループ全体であるが、15年3月末から17年3月末までということで、全体で約34000人のリストラをしていくと。理由としては、リストラの部分と事業売却の2つの部分で、東芝全体で18万3000人ぐらいにスリム化をはかっていくと。注力分野として、今後半導体やエネルギー、エレベーターといった社会インフラに注力していくという方向でのリストラ等が出てきている。
半導体部門だが、その一環として岩手東芝と東芝大分工場が吸収し岩手東芝に承継され、ジャパンセミコンダクターという新会社が4月から発足する形である。
たしかに岩手東芝から四日市にNAND型フラッシュメモリをつくるために700名程度が出向しているが、今回四日市の工場そのものも東芝の工場ということになり、これは従業員の立場的な部分からすると、ジャパンセミコンダクターに移籍するのではなく、あくまでも東芝に移籍し同じようにフラッシュメモリを四日市でつくると。従業員の方たちについては所属が変わるということで、その部分については影響は少ないのではないかと思っている。
一方、この方々が戻ることになると、率直なところ、いま北上に新たなNAND型フラッシュメモリ工場ができなければ戻り先は厳しいという認識である。
いずれ東芝では、四日市工場の投資という発表もしており、新規の投資というよりは、増設という見方で、今まで二次元でつくられていたNAND型フラッシュメモリだが、微細化の究極のところまできており、それを三次元に積層していくというようなメモリに変わってくる。そのためには、三次元を積層する工場等をつくるのが今回の投資である。
いま我々が北上の誘致に働きかけているのは、最初から一貫して三次元をつくるという新工場の誘致であり、これらについては四日市にはもう人が集まらないということと土地がないということもあり、国内とすると北上というのはまだまだ最有力地ととらえている。