2016年3月23日 復興特別委員会
住宅再建支援の延長等に関する質疑(大要)
・住宅再建の見通しについて
【斉藤委員】
復興事業は着々と進んでいる側面と、ロードマップを発表する度に1年2年と遅れが出る。特に、生活関連の問題で、住宅の供給区画数、公営住宅の供給戸数で見ると、1月のロードマップの最新版で、平成30年度で完成するというのが、山田町の場合は災害公営住宅185戸、大槌町は災害公営住宅238戸、釜石市は土地区画整理事業で348戸、大船渡市は土地区画整理事業で96戸、陸前高田市は土地区画整理事業で1186戸、防集で152戸となっており、合わせて宅地造成で1782戸、災害公営住宅で423戸が平成30年度完成見込みである。率で見ると、たしかに90%台というが、合わせると2200戸ぐらいが平成30年度にならないと宅地が造成されない、災害公営住宅ができない。土地造成の場合だとそれから家を建てることになるので、あと3年以上仮設住宅暮らしなどが強いられるということをリアルに見て、こういう方々の生活と健康をどう守っていくのかというのは、これから5年間大変重要な課題だと。仮設住宅の集約化もあるが、仮設そのものが狭いわけで、その場合、例えば2戸を1戸にして1戸を押し入れ代わりに使うなどの改善策、そういう形で取り残される方々の生活・命・健康を特別の対策が必要ではないか。
【生活再建課総括課長】
仮設住宅になお居住しなければならない方へのケアということだが、ご指摘の通り平成30年ぐらいまでは仮設住宅での生活を余儀なくされる方が出てくるのは事実である。そもそも仮設住宅が5年以上使われていたという例が今までないので、安心して暮らしていただけるようハード的なケアをしっかり行い、仮設住宅でも安全な生活ができるようにするのが第一と考えている。また、その間の空き住戸の活用等については、市町村とも相談させていただき、集約化していかなければならない事情もあるので、相談しながら進めていきたい。
【斉藤委員】
仮設住宅はどんどん空いてくるので、空いてるのに狭いところに引き続きという発想ではなく、空き住戸を最大限活用して少しでも生活しやすい環境を確保していただきたい。2200戸というのは本当に軽視できない数なので、ここに心を寄せて、遅れている状況を数字だけで見るだけではいけない。残された方々一人一人の生活実態をしっかりつかんで対応していただきたい。
災害公営住宅の孤立化・孤独化については、何度も取り上げたので、仮設住宅についても万全の対策をとっていただきたい。
・養浜事業の取り組みについて
【斉藤委員】
実施計画の進捗状況について。2ページのところで、陸前高田市の海岸保全施設整備、いわゆる養浜事業が取り組まれている。これは県の事業として取り組まれているが、釜石市に行ったときに、根浜の養浜事業、大槌の吉里吉里の養浜事業、これも何とか県の事業としてやってくれないかという要望をいただいたが、これは県の事業としてやれないか。そしてこれは市の事業として今取り組まれているのか。
【河川課総括課長】
高田松原の砂浜再生については県事業として試験施工ということで今年度から取り組んでいる。
釜石・大槌の砂浜再生については、釜石市については、釜石市から県が要望を受けた経緯がある。ただ、県が海岸管理者として施工する場合には、海岸保全施設という位置づけが必要で、かつ海岸保全施設にするための要件があり、県土整備部所管の海岸保全施設としてはなかなか要件をそこに見い出すことが難しいということで、市にも理解していただいており、現段階では釜石市の方で、砂浜が防災機能というわけではなくて地域振興に資するものだという位置づけで、市独自で海岸管理者としてはその取り組みを海岸法上の行為として認可できるという対応をとらせていただく上で、市での工事は可能であるという説明もしているので、市がまず復興事業として取り組みたいと考えていると聞いている。大槌町でも、独自で取り組んでいく方向を考えていると聞いている。
【斉藤委員】
5年経ったので、釜石市がやるんだったら市の事業として進めたらいいし、根浜は、砂浜を守るということで堤防を元の高さにして、あとは高台移転と避難で対応するということで、地域が結束して取り組んでいるところなので、ましてやラグビーワールドカップが鵜住居で行われるわけで、県内を代表するような海水浴場でもあったので、そこを県事業としてできないのだったら大いに助言して、そういう取り組みが進むように是非やっていただきたい。
・地域での防災対策について
【斉藤委員】
3ページの地域防災力強化プロジェクト事業ということで、自主防災組織等活動促進事業ということでやられているが、今度の震災の教訓を踏まえた取り組みにする必要がある。大槌町の安渡町内会の取り組みは、実は国の防災白書にも詳しく紹介されている。大槌の安渡・吉里吉里・赤浜というのは、自主防災組織が先進的な取り組みをしていたところだったが、安渡地区で218人・人口比11.2%の犠牲者を出した。それで安渡町内会は、震災後の翌年に、防災の専門家やまちづくりの諮問を受けて、安渡町内会防災計画づくり検討会を立ち上げ、東日本大震災の検証と新しい防災計画づくりに着手した。地区住民がどういう避難行動をしたか、なぜ亡くなったか、どういう避難生活を送ったか、地域防災活動では何が必要かという徹底した議論を行って安渡地区防災計画をまとめて、町の計画にも取り入れられたということで、先進的な取り組みをやっていたところでも大きな被害に遭った。問題は、それを重視して徹底した地区での検証を行い、地区防災計画を立てて、それに基づく訓練をやっている。
こういうところからしっかり教訓を踏まえた取り組みを普及し発展させる必要があるのではないか。
【復興推進課総括課長】
東日本大震災津波については、平成24年2月に検証報告書を一度取りまとめて、その報告に基づいた今後の改善方向、防災対策の取り組みということで、現在取り組みをさせていただいているところで、今後もしっかり検証を確かなものにしていく必要があると考えている。
【斉藤委員】
例えば吉里吉里の場合は、交通が遮断された中で、地区で独自の災害対策本部を確立して、食料や燃料を全て自前で、そして交通の確保までやったと、NHKでも紹介された。これは災害後の対策だが、そういう意味で自主防災組織というのが、今回の震災で何が問われ、どういう力を発揮したのかということにしっかり光を当てて、学ぶべきことはしっかり学ぶということが必要である。
・住宅再建への支援金の延長について
【斉藤委員】
7ページのところで、被災者生活再建支援金の支給というのがあり、下には被災者住宅再建支援事業とある。被災者生活再建支援金の支給というのは、平成30年4月10日までになっている。先ほど指摘したように、30年度中に区画整理事業が完成するところが少なくない。あとは木造戸建てに入った方々が5年後に買い取ることも可能であり、そういうときに、被災者生活再建支援金を活用できなければ再建できないと思う。これはぜひ期間延長の見通しを早く、国に対して出させる必要があるのではないか。ロードマップで30年度中でなければできないということがはっきりしているので。
岩手県の100万円補助は、平成30年度までになっている。国の補助より1年長いが、30年度でも対応できないのも事実なので、県自身がそれを延長して、需要があるまでやるということを示しながら国に迫っていくことが必要ではないか。
【生活再建課総括課長】
今後、住宅再建の進捗状況等を総合的に勘案し、市町村の意向もうかがいながら期限延長について、被災者の方々が安心して自立再建できるように検討し、国とも協議を進めていきたい。
【斉藤委員】
平成30年度にならなければ区画整理が終わらないので、これも上手くいった場合のケースなので、毎年のロードマップで延長されているので。現段階ですでに平成30年4月までとなっている支援金は明らかに途中で切れてしまう。県の事業もこれだけでは足りない。復興局長いかがか。
【復興局長】
基本的には、被災者が年度が切れて住宅再建ができなくなるといったことがあってはならないと考えている。これは今後の復興の全体の事業の進捗をしっかり見極めながら、必要な措置についてしっかり検討していきたい。
【斉藤委員】
ぜひ早く国にも求めて、県ができることは県が早く示していただきたい。
被災者の方々は本当に不安である。平成30年度で切られてしまったら、住宅再建の希望が失われるようなもので、「被災者が要望する限り対応する」というメッセージを早く打ち出す必要がある。
災害援護資金も平成30年までになっているので、これもほとんど住宅再建に使われているので、この延長も求めていただきたい。
・心のケアについて
【斉藤委員】
11ページには心のケアセンター運営事業、12ページには子どもの心のケアセンター運営事業があり、ここでの実績を見ると、211%の実績となっている。だから、想定した倍以上の実績になっている。第二期実施計画で1092となっているのがすでに1400ぐらいになっている。心のケア対策は大変重要だし、相談件数では1万件を超えている。減るどころかどんどん増えている。子どもの心のケアの問題でも、相談件数では3000件と聞いているが、子どもの心のケアは診療で、医療行為である。その点でいけば、子どもの命と健康に関わる切実な取り組みをやっていると思うが、さらにこういう切実な課題に拡充して万全の体制で取り組む必要がある。大塚先生は、特に子どもの心のケアは診療行為で医療費もかかるので、医療費の無料化・免除措置が大変大きな役割を果たしていると言っているので、そういう点を考慮し心のケア対策を強めるべきだと思うがいかがか。
【保健福祉企画室企画課長】
心のケアはご指摘の通り非常に大事な問題だと思っている。かつ心のケアについては、何年経てばなくなるといったものがはっきりしないもので、中長期的な取り組みが必要だと思っている。26年度でも1万件を超える相談があり、今年度もすでに12月末で8000件を超えているので、心のケアについては子どものケアも含めて、引き続き県としても力を入れて取り組んでいきたいと思うし、取り組む上では財源も必要だが、国の財源を見ていると若干減る傾向があるので、中長期的な取り組みが必要だということを強く訴え、財源の確保にも努めていきたい。
・防集事業と区画整理事業に関わる瑕疵担保責任の問題について
【斉藤委員】
防災集団移転促進事業については、土地の売買なので、住宅建設課長の答弁だと「国と自治体は宅建業法からは除外されている。公平な取引が前提」だと。しかし、今回の防災集団移転促進事業というのは、大規模な今までと違った、土地の改編をともなう事業を行っており、多くの自治体が宅建業法や民法を踏まえて、最低2年の瑕疵担保責任を明記している。明記していない自治体も若干あったと。やはり宅建業法や民法の精神に基づいて、やはり統一的な方向をきちんと示していく必要があるのではないか。
区画整理事業の場合は、土地の売買ではないというので、瑕疵担保責任の対象にならないという説明があった。しかし、今までの区画整理事業と全く性格が違うもので、5mなり10mかさ上げして土地を造成し提供する。今までと同じ更地で道路を広くしたり住みよくする区画整理事業とは全く違うので、そうした場合には、きちんと瑕疵担保責任を明記してやらないと、今までの延長線上で対応することは被災者の住宅再建や安全な生活という点では、きわめて不十分ではないか。その点での対応を改めてお聞きしたい。
【都市計画課総括課長】
防災集団移転促進事業については、県において先月開催された防災集団移転促進事業連絡会議において、各市町村における瑕疵担保責任の期間や課題等について問題提起したところである。瑕疵担保責任の期間については、事業主体である市町村が責任をもって定めることになっているが、被災者に安心して住まいの再建をしてもらうため、関係諸法令を精査した上で、各市町村にたいし必要な対応を要請したいと考えている。
区画整理事業については、ご指摘の通り売買契約ではないので、使用収益開始というものにより土地の引き渡しを行っていることから、瑕疵担保責任は負わないということになっている。しかしながら、被災者に安心して住まいの再建をしてもらうため、造成した土地に不具合が生じた場合等に対応し、同じように関係諸法令を精査した上で、各市町村と必要な対応を検討していきたい。