2016年7月1日 6月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。
議案第1号は、平成28年度岩手県一般会計補正予算であります。総額16億3898万円余の補正であります。
・いわて若者ステップアップ支援事業費について
いわて若者ステップアップ支援事業費が229万9千円余の補正で総額857万4千円余となります。被災地域の社会的自立に困難を抱える青少年、いわゆるニート等に対し、自立に向けた支援に要する経費の補正ということですが、今回補正となった理由とこれまでの実績、今年度の事業費が減少している理由は何でしょうか。
【環境生活部長】
これまで全県下でニート対策を進めるため、国による地域若者サポートステーション事業の未実施地域について、県では、いわて若者ステップアップ支援事業を実施し、就労支援等を行ってきたところである。今般、国の事業導入が予定されていた、宮古・釜石地域分が不採択となったため、その分を県事業として実施するため増額補正するものである。
これまでの実績だが、本事業では、コミュニケーション能力や職業能力の向上のための支援を実施してきたところであり、25年度には22人、26年度は28人、27年度は29人が就職などの進路決定につながっている。
今年度の事業費が減少している理由は、これまで本事業については、国の緊急雇用創出基金を活用し、一定の雇用を図ることを目的として、事業を実施してきたところだが、27年度末をもって緊急雇用創出事業が終了したことにともない、事業内容を精査し、県単経費で予算措置した。本年度の事業実施にあたっては、福祉的支援と就労支援の双方のノウハウを有する事業所を受託者とするなど、事業の効率化を図りつつ、サービス水準の維持に努めながら、事業を継続していきたい。
・花巻空港利用促進事業費について
【斉藤議員】
岩手花巻空港利用促進事業費が8352万円余の補正となっています。国際定期便誘致に向けたトップセールス等に要する経費と受け入れ環境の整備に要する経費となっていますが、これまでのトップセールスの実績と国際定期便の見通し、さらなるトップセールスの必要はどこにあるのでしょうか。受け入れ環境整備の中身を示してください。
【県土整備部長】
震災後に激減した国際チャーター便の運航拡大に向け、24年度から毎年度台湾でのトップセールスを実施しており、中華航空に対する定期便化の要請、台湾政府・機関への働きかけを行ってきた。こうした取り組みの結果、インバウンドの国際チャーター便は、23年度の10便から26年度100便まで大幅に増加し、26年度からは本県初となる台湾との国際定期チャーター便が運行されている。
さらに本年度に入り、中華航空から、来年春からの季節定期便化が提案されるなど、国際定期便就航に向けて大きく前進したと考えている。この季節定期便化については、今年度の定期チャーター便の実績を踏まえ、11月ごろまでに判断したいと示されており、定期便化の実現に向けた要望活動、定期便化となった場合の現地での路線PRなどを行うために、今回の補正へ所要の経費を計上した。
また、受け入れ環境整備については、国際チャーター便の運行拡大や、国際定期便就航に向け、航空機の汚染処理車の更新、搭乗客の飲料水を補充する給水車等の整備、さらには国際線のチェックインシステム整備に要する経費である。
・復興支援道路等の整備について
【斉藤議員】
復興支援道路等の整備に3億718万円余の補正となっていますが、復興支援道路の整備状況はどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
県では、復興実施計画に基づき、復興支援道路14路線35ヶ所で整備を進めており、28年3月末時点の進捗状況は、全体35ヶ所のうち完了15ヶ所(43%)となっている。
・岩手県県税条例等の一部を改正する条例の専決処分について
【斉藤議員】
議案第2号は、岩手県県税条例等の一部を改正する条例の専決処分の承認を求めるものです。これは、法人事業税所得割の税率引き下げと外形標準課税を拡大するものです。平成26年度外形標準課税は8分の2でありましたが、これまでの改正を含めて8分の5に拡大しようとするものです。外形標準課税は赤字の企業に課税されるとともに、労働者の賃金等の付加価値割の税率が引き上げられるのではないでしょうか。これまでの赤字企業の課税額はどうなっているでしょうか。外形標準課税の拡大によって正規から非正規への転換が進められることになるのではないでしょうか。百害あって一利なしと思いますが、これまでの実績を踏まえてデメリット、メリットを示していただきたい。
【総務部長】
法人事業税の外形標準課税について。今回の改正において、資本金1億円を超えるいわゆる大法人にかかる法人事業税について、所得割の税率を引き下げる一方、付加価値割は100分の0.72から100分の1.2に、資本割は100分の0.3から100分の0.5にそれぞれ引き上げられた。平成27年度では、外形標準課税の対象である県内大法人約1600法人のうち、所得割額の生じていない法人は約250法人、外形標準課税額は約4億9800万円余となっている。
外形標準課税の付加価値割は、報酬給与額が増加した場合にも、それと同額の単年度損益が減少するため、税額が増加しない仕組みとなっており、報酬の多寡や雇用形態に影響を与えるものではない。さらに、報酬給与の比率の高い法人に対しては、付加価値割額から一定額を控除するなど、雇用に配慮した措置も設けられている。
外形標準課税は、事業規模や受益に応じて負担いただくという税負担の公平性や応益性の観点から、安定的な行政サービスの提供に資するものである。
引き続き偏在性が小さく、安定的な税財源が確保できる地方税体系を確立していくことが必要とされている。
・県税、自動車税について
【斉藤議員】
議案第6号、岩手県税条例の一部を改正する条例は、県民税の法人住民税の税率を引き下げ、国税分の地方法人税を地方交付税にするものです。
平成26年度の改正によって、県税はどれだけ増加したのでしょうか。今回の改正でさらに県税はどうなるのでしょうか。
自動車税については、自動車取得税が廃止され、自動車税に環境性能割が導入されます。自動車を購入しない場合は増税となるのではないでしょうか。県税収入全体でも減少するのではないでしょうか。
【総務部長】
法人住民税の交付税原資化による影響について。この改正は、地域間の税源の偏在性を是正するため、法人住民税法人税割の税率を引き下げ、当該引き下げ分について国税の地方法人税の税率の引き上げを行い、その地方法人税収全額を地方交付税の原資としようとするものである。26年度の改正は、法人県民税法人税割の税率を5.8%から4.0%とするものであり、28年度当初予算ベースでは、粗い試算であるが、法人県民税約12億円が国の交付税特別会計に繰り入れられ、地方交付税原資となっている。今回の改正では、さらに、税源の偏在是正を推進するために、県民税法人税割の税率を4.0%から1.8%に改正するものである。
自動車税環境性能割の導入について。今回の改正は、自動車の取得時に価格に応じて課税している自動車取得税を廃止し、新たに環境影響に配慮した燃費基準を税率区分として自動車税環境性能割を自動車の取得時に課税しようとするものであり、現行の自動車税には変更がないものである。この制度の導入は、29年度からになるが、国の試算では、全国で自動車取得税が約1075億円の減、自動車税環境性能割が744億円の増、差し引き331億円の減収としている。
・児童福祉施設の設置及び運営に関する条例等の一部改正、待機児童について
【斉藤議員】
議案第11号は、児童福祉施設の設置及び運営に関する基準を定める条例等の一部を改正するものです。その内容は、深刻な保育所待機児童対策として国が保育士不足を理由に、朝、夕の保育士配置基準を緩和し、当分の間、幼稚園教諭の免許を有する者等を保育士とみなすというものです。
4月1日段階の県内の待機児童の実態はどうなっているでしょうか。盛岡市ではすでに「特定保育所の空きを待っている児童等が298人となっています。こうした隠れ待機児童の現状はどうなっているでしょうか。盛岡市では、保育所の入所希望が計画より237人多い6614人だったとしていますが、全県的にはどうだったでしょうか。
知事にお聞きします。深刻な待機児童対策の基本は、認可保育所の大幅な増設と保育士の抜本的な待遇改善をはかることと考えますが、どう受け止めているでしょうか。姑息な規制緩和では、保育士の待遇改善に逆行するのではないでしょうか。
【保健福祉部長】
待機児童数について、厚労省が実施した保育所等利用待機児童数調査の速報値では、28年4月1日現在の待機児童数は、11市町村で192人となっており、前年と比較し市町村数は2ヶ所減、人数は64人増となっている。
隠れ待機児童については、明確に定義されているものはないが、この調査においては、
@特定の保育所等を希望するなど保護者の私的な理由による方が394人
A保護者が求職活動を休止している方が77人
B育児休業中のため、4月1日以降に利用を希望する方が10人、
計481人となっている。
27年3月に取りまとめた市町村子ども・子育て支援事業計画における28年度の利用見込み計画数は、県全体で27713人だが、今年4月1日の認可定員数は30613人となっており、利用申し込み数は29232人となっている。
【達増知事】
保育の実施主体である市町村においては、市町村子ども子育て支援事業計画を策定し、待機児童の解消等に向けて、保育所の整備や小規模保育事業所の設置などの取り組みを進めている。
県においては、岩手県保育士・保育所支援センターによる保育人材の確保や、保育士の賃金改善の支援等を行ってきたところであり、国に対し、子ども子育て支援新制度の量的拡充と質の向上にかかる財源の確保について要望を行っている。
今回の条例案による特例の適用により、保育士等の勤務時間のシフトに近接する職種である幼稚園教諭等を配置することにより、保育士等の業務負担の軽減に一定の効果があるものと考えている。
待機児童の解消は、それぞれの地域の実情や利用者の希望に応じた幅広い選択肢の中で対応していくことが重要と認識しているところであり、効果的な事業実施に向けて、必要な助言等を行うなど、待機児童の解消に向けた市町村の取り組みを支援していく。
・県立御所湖広域公園の水泳プール跡地について
【斉藤議員】
議案第13号は、県立都市公園条例の一部を改正する条例です。岩手県立御所湖広域公園の有料公園施設から水泳プールを除こうとするものです。
水泳プール跡地の利活用は短期、長期でどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
短期的には、いわて国体のカヌー・スプリント会場の駐車場として利用し、国体を支援することとしている。国体後は、イベント混雑時の臨時駐車場として活用する予定としている。
将来的な利活用は、地元盛岡市と協議しながら検討していきたい。
・県営住宅、災害公営住宅の整備について
【斉藤議員】
議案第14号は、県営住宅等条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例です。県営嬉石第2アパートを設置するものですが、マンション形式の集合住宅のようですが、重いドアの改善や間取りの工夫はなされたのでしょうか。これまでの災害公営住宅の整備状況と空き室の状況はどうなっているでしょうか。その要因を含めて示していただきたい。
内陸部への災害公営住宅の整備について、再調査結果では443世帯に希望が増えたとのことですが、早期に被災者が希望する市町村に整備計画を示すべきと思いますが今後の具体的な見通しはどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
県営嬉石第2アパートの設置等について。玄関ドアについては、高齢者の方々の要望に応え、昨年12月以降に発注した団地については、開きにくさを解消したタイプのドアを設置している。窓については、生活のニーズに合わせた間取り変更ができるよう、ダイニングキッチンとそれに隣接する居室を設けるプランとしており、両室を隔てる建具を取り外すことで、一体的な利用を可能としている。
災害公営住宅の整備状況について。5月末現在で5771戸中3393戸が完成、入居戸数は約9割の3022戸となっている。371戸の空き室は、一度入居してすでに退居された方が67戸あるほか、災害公営住宅の入居が持ち家再建とするか決めかねている方がいること、仮設住宅から災害公営住宅に入居することにより、新たに家賃が発生することなどが空き室発生の要因と考えている。
内陸部への災害公営住宅については、建設が想定される市に、入居希望世帯数等も示しながら、建設時期・場所・戸数等の協議を行っている。
・主要地方道重茂半島線の道路改良工事について
【斉藤議員】
議案第16号、第25号は、主要地方道重茂半島線赤前地区と里地区の道路改良工事の請負契約の締結に関し議決を求めるものであります。
重茂半島線の総事業費と工事区間、今回の契約による事業の進捗状況と完成の見通しを示していただきたい。
【県土整備部長】
現在、宮古市と山田町の全7工区、総延長15.2キロで事業に着手しており、総事業費は約200億円を見込んでいる。提案している未工事の契約金額は合計で約17億円、全体事業費の約8%に相当し、これまで発注済の工事等も含めた契約額ベースでの進捗率は約60%となる見込みである。
現在、7工区のうち6工区で改良工事に着手するとともに、主要構造物であるトンネル2ヶ所、橋梁4ヶ所の下部工が発注済となっており、平成30年度末の路線全体の供用開始を目指し、鋭意工事の進捗を測っている。
≪再質問≫
・待機児童問題について
【斉藤議員】
今度の条例改正の最大の問題は、保育士不足について、「当分の間幼稚園教諭の普通免許を有する者等を一定の数の範囲内において保育士とみなすことができる」と。これが一番の問題である。保育士は国家資格で、にも関わらず資格のない者を保育士としてみなすというのは、保育士の専門性の否定につながる。
実は、岩手県のパブコメはゼロだったと聞いているが、やり方が問題だった。盛岡市は、まだ条例が提案されていないが、6月6日までパブコメをやってかなりの数の意見が出され、それを見たが、例えば、朝夕、保育士を2人配置すべきところを1人でいいと、1人は保育士でなくていいということになる。朝というのは子どもを預かるとき、そして夕は子どもを送るときで、このときは一番子どもの状況が難しく、1日の状況の変化を保護者に伝えなくてはならないときに、国家資格のある保育士が1人になったら、結局は1人に責任がのしかかり、これでは保育士の待遇改善につながらないというのが現場の声である。
保育士不足の理由は2つあり、賃金が圧倒的に低く、専門学校を出ても資格があっても半分は就職していない。仕事をしてもすぐ辞めざるを得ない。野党4党が国会に共同提案しているが、一気に月5万円引き上げるとか、抜本的な待遇改善なしに保育士不足は解消されない。
もう1つは労働条件。今の運営基準でみると、8時間労働が保障されていない。残業しなければ保育園は11時間なので。労働時間も賃金も保障されていない。この抜本的改善なしに深刻な状況を解決することにはならない。
これは知事にも理解していただきたいが、保育士を増やす、とりわけ認可保育所を増やすと。もう1つは、抜本的に待遇を改善するということに、本格的に着手しない限り、待機児童と保育士不足は解決できない。そして逆に、今回のような規制緩和をやれば、保育士の専門性を矮小化してしまい、ますます保育士になる人が少なくなってしまう。保育の質を落とすようなことがあってはならない。子どもたちの命と健康と成長がかかっているので、条例の問題点を今指摘したが、知事と部長はそういう基本的な方向で打開すべきではないか。
【達増知事】
保育の問題は、子育て支援の中でも非常に重要な分野であり、やはり保育所の整備や小規模保育事業所の設置などの充実、保育人材の確保のための保育士の賃金改善といったところをしっかりやっていかなければならないと考える。
【保健福祉部長】
国においては、待機児童の解消に向け、保育の担い手の確保が喫緊の課題だということを踏まえ、昨年11月に保育士等の確保対策検討会を設置し検討してきたところ、今回の緊急的な対応ということで、これまで実施してきた保育士確保にかかる取り組みに加え、より一層の即効的な対応ということで制度を見直したものである。
この制度により、早番や遅番など職員の勤務時間のシフトについて、近接する職種である幼稚園教諭等の資格者を配置することにより、保育士の有資格者の勤務環境の改善につながるものであり、またその配置数は配置基準の3分の1以内とするなど、保育士の有資格者の業務負担の軽減と並んで、保育の質の確保にも配慮した基準とということで導入するものである。