2016年7月4日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・新たな県立高校再編計画について
【斉藤委員】
3月29日、2月県議会が終わった後に、新たな県立高校再編計画が策定された。最終的に策定されたこの計画は、どういう点で修正・補強されたのか。
いくつかの自治体・地域からさまざま要望や意見が出されていたが、策定してから、こうした市町村、教育委員会に対する説明、意見交換はどうなっているのか。
【高校改革課長】
さまざまなご意見を踏まえ、統合の関係については、地方創生に向けたそれぞれの地域の取り組みの推移や、平成30年度までの入学者の状況等の検証を行い、統合時期等について検討するということで、そういった取り組み、地域が取り組むという余地の部分についての追記をした。学級減・学科改編に関してという部分だが、原則として再編計画に基づき実施するが、ブロック内の中学校卒業予定者数や各校の定員充足状況等に大きな変化があった場合には、実施時期の変更等も検討するということで、直近の状況を見て判断するということを新たに追記させていただいた。
統合の関係では、久慈東・久慈工については、市と村にまたがるということもあるので、案では31年度に予定していたものを、市町村との調整を考え32年度に変更させていただいている。
策定後の市町村への説明状況は、計画策定後4月から5月にかけて、県内全市町村を訪問し、再編計画の今後の進め方について意見交換した。各市町村においては、望ましい学校規模の確保による教育の質の保障と、地理的諸条件等を踏まえた教育の機会の保障を柱とした今般の計画にたいして、一定のご理解をいただいている。
【斉藤委員】
今度の再編計画については、かなり柔軟な計画で、最後まで地域の意見を踏まえたものに基本的にはなったのではないか。いずれにしても、それぞれの学校・地域との連携を強めて今後進めていただきたい。
・18歳選挙権―主権者教育について
【斉藤委員】
高校生に対しても、憲法の言論・表現の自由というのは全面的に保障されるべきだということを指摘してきたが、主権者教育がどう進められたか。
県内の高校について、校則等を含めて政治活動について、届け出制などの規制するようなことはあってはならないと思うが、そういうことはあったか。
【高校教育課長】
昨年10月に、政治的活動についての見直しの通知が文科省から出され、その後11月から12月にかけて主権者教育の副教材が各学校・各生徒分届けられている。それに基づき、各学校においては副教材を活用して、主に3月に卒業した生徒について主権者教育を行っており、また現在の3年生で有権者となる生徒についても主権者教育を行っている。県教委としても、5月23日に、各学校の主権者教育担当者を1名参加させ研修会を行っている。あわせて、選挙前ではあるが、有権者となる生徒の投票について、高校野球の大会等も投票日を中心として組まれているので、部活動や学校行事を見通して、生徒一人一人が自分の投票活動を計画的に考えられるように配慮するよう通知も出している。現在においては、選挙期間に入っており、期日前投票をした生徒が報道されているが、順調に投票日に向けて推移しているものと考えている。
届け出制については、県としては各学校に「届け出制は必要ない」と通知しており、各学校においても、生徒の状況や保護者の状況、地域の状況に応じて、必要があれば届け出制をすることもあるとは考えているが、現在のところそういった届け出制を具体的に行っている報告は受けていない。
【斉藤委員】
先日の新聞報道に教育長の記事が載っており、「主権者教育の先進国であるドイツのボイテルスバッハ・コンセンサスという政治教育の原則があり、意見が割れる社会問題を議論する場を積極的に学校でつくっていると聞いている」と。これは大変重要なポイントだと思う。今まで若者の政治的意識が高まらない大きな理由に、政治活動を規制してきた、教育をしてこなかった弊害があると思う。18歳選挙権が全面的に認められた中で、本当に今の教育のあり方、特にドイツの積極的な原則・教訓に学びながら取り組む必要があると思うが、教育長のコメントの真意をお聞きしたい。
【教育長】
記事については、取材を受けて意見交換させていただいた内容が記事となったものである。今回18歳以上に選挙権年齢が引き下げられたことにたいし、学校教育としてどういう基本的な考え方で対応するかという中で、ドイツの事例等について意見交換したと。
参院選から初適用だが、今回がスタートということで、できる限り高校生が主体的に投票活動に出て、それぞれの高校生が持つ権利を行使することはきわめて大事だと思っており、そこからのスタートとなるが、そういう行動が社会全体に効果が波及していけばと期待している。
ドイツの事例については、18歳に引き下げられて長年経過しているので、成熟した選挙制度が確立しているという中で、そういう事例等も勉強しながら、学校教育の中で主権者教育を充実させていきたいという思いの中でそのような回答をしたところである。
・教員の多忙化問題について
【斉藤委員】
6月13日に文科省が、学校現場における業務の適正化について、次世代の学校指導体制にふさわしい教職員のあり方と業務改善のためのタスクフォースの報告書を出した。大変重要な内容ではないか。そしてこれに基づき都道府県教育長宛の文科省の通知も出されているが、この文科省の通知と報告書の内容とポイントを示していただきたい。
【教職員課総括課長】
6月17日付で文科省から通知が届いており、その概要としては、教員の担うべき業務に専念できる環境の確保、教員の部活動における負担の大胆な軽減、長時間労働という働き方の見直し、国あるいは教育委員会の支援体制の強化、といった中身である。
【斉藤委員】
文科省も本腰を入れて、こうした一定の調査・議論を踏まえた報告書も出して、改善の方向は示されたと思う。
そこで、県教委もこの間教職員組合とも協議を進めながら、教員の多忙化解消に取り組んできたと思うが、文科省の報告書・通知を受け、これをどう具体化・徹底しようとしているか。教職員組合と一緒になって協議をしてきた具体的な改善事項、改善の取り組み、今後の方向性を示していただきたい。
【教職員課総括課長】
6月17日付で通知をいただき、まずはその中身を受けて、各市町村教委宛に通知を出させていただき、その趣旨を周知させていただいた。その通知の中において、いずれ県教委としても今後の取り組みのあり方について検討を進めていきたいという旨を述べさせていただいている。
職員団体との協議については、昨年1月以来実施しており、逐次テーマを設定し協議を進めているということである。1つ目として労働安全衛生体制の構築、2つ目として勤務時間の正確な把握、現在は部活動のあり方といったものについて協議している。具体的にできることから実行に移すということとしているが、労働安全衛生体制については、各県立高校にモデル校を設け、そこで中心的に取り組んでいただき、成果・実績等について各校に普及するといった中身を進めている。勤務時間の把握については、県立学校の業務について舎間業務についての時間外勤務の把握といったものを一層正確な形で把握させていただくといったような取り組みを順次進めている。
【斉藤委員】
盛岡市教委が、教員の超過勤務時間の調査を毎年行い、100時間を超える教員もかなりの数出ていた。県教委の場合だと、高校の場合でも100時間を超えるものが少なくなく出ており、これは多忙化以上に、過労死の危険を指摘せざるをえない実態があるので、今回の文科省の報告書と通知を踏まえて、これまでの延長線上ではなく、本当に思い切った改善に取り組む必要がある。
例えば、労働時間の把握も、文科省の報告書では、タイムカードやICカード、パソコンで把握しなさいと。私は県職員についてもそのことを言っているが、正確な実態把握、できることはすぐやると。
それから矛盾の集中点は部活動である。これについても、文科省の報告書は、スポーツ医科学等の専門的な知見を踏まえて、高校生のあるべき部活動のあり方を打ち出していく必要がある。毎日練習していないと気が済まないという、プロ野球でもピッチャーはせいぜい5日に1回、大谷君は週に1回である。プロの選手でも本当に実力を発揮しようと思えば、そういうスパンでやる。ましてや成長途上の子どもたちに、集中性と必要な休養というのは一番効果的なあり方だと思うので、おそらく最大のポイントは部活動の改善・改革できるかというところにあると思う。その点についても、集中的に打開を図るべきだと思うがいかがか。
【教職員課総括課長】
いずれ今回、国から示されたタスクフォース報告については、ご指摘のようないろんな示唆に富んだ中身が含まれており、現在、職員団体等協議の場の中でいろいろ進めているが、そういった内容についても十分踏まえて検討を進めていきたい。
【スポーツ健康課総括課長】
部活動について。文科省が示す部活動指導ガイドラインに基づいて、具体的な目安を示しながら適切な休養日や活動時間について配慮するよう各学校に指導している。特に、管理職の理解をいただきながら、部活動について、校内で実施状況、保護者・外部指導者と共通理解を図るための運動・部活動連絡会が実施されるよう依頼している。効果的・効率的な活動となるよう、休養日の重要性やスポーツ医科学を活用した指導方法について、アスレチックトレーナーの派遣事業、運動・部活動指導者研修会などを実施しながら、教員の指導力向上と休養日の重要性を急いでいる。今後、中体連等と連携を図りながら、さらに進めていきたい。
【斉藤委員】
ぜひそういう方向で進めていただきたい。
・被災生徒のこころのケアについて
【斉藤委員】
平成27年度のこころと体の健康観察の結果が3月17日付で発表されたが、中学生で要サポート16.6で過去最多だったと。この内容と特徴について。3.11から5年数ヶ月が経過しているが、やはり子どもたちの心のケアというのは、相談内容を見ても、精神科医の受診を受けている件数が4000件を超える規模で増え続けていると。こころのケアの取り組みはどのように行われ、強化されようとしているか。
【生徒指導課長】
平成27年度のこころと体の健康観察の結果について。平成23年度から毎年9月に実施させていただいている。内容については、4つのストレス反応、現在の体の状況等をアンケート形式で答えるような形である。5年間の経過については、県全体で、最初の年が要サポート14.6から始まり、27年度は11.5となり順次減少している。ところが、沿岸部については、15.8からスタートし現在13.7、その間は上下しており、今後のサポートが必要であると認識している。
ご指摘の通り、内陸部の中学生の部分について、被災経験があった子どもの場合は、内陸にいる子の場合15.2、沿岸部が15.5という形で高い状況であるので、今後サポートに関わっては、沿岸部はもちろん、被災された子どもたちのケアも含めて今後取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
本当にこころのケアの取り組みというのは、時間の経過とともに、単純に減少するというよりは、また戻ったり、いろんな体験を通じて出てくるということがあるし、実際に、子どものこころのケアの相談が受診件数で増加していると。大変切実な課題で、このことを重視して、さまざまな取り組みを進めていただきたい。
・自衛隊、防衛大学校への就職、進学について
【斉藤委員】
安保関連法にも関わって、自衛隊、防衛大、防衛医大の進路状況の推移、受験者数、就職者数の推移を示していただきたい。
【高校教育課長】
具体的な数字は今手元で探せないが、徐々に減少傾向にあるととらえている。
・教科書問題について
【斉藤委員】
大修館書店の教科書を採用したところで、教材無償提供が県内3校(県立2校・私立1校)ということだが、これは今年度の話で、これまでもあったのではないかと思うが、この点で実態を示していただきたい。
教科書検定に関わって、教科書が実際に各学校に採用される前、検定前に、事前に教科書を見せていただいて報酬をもらったということもあった。処分もされたと思うが。学校現場で、本当に脇が甘いというか、金銭を貰うことになれば、普通の感覚でもあってはならないことだと思うが、その実態と対応について、あまりにも見識がなさすぎたのではないか。
【高校教育課長】
本県においても、大修館書店の発行する教科書で無償提供された問題集に関連する教科書を採択している高校が2校あり、うち1校が無償提供を受けていた。現在、大修館書店の営業担当から回収の意向が示されているので、回収作業を進めており、終わり次第大修館書店に返却することとしている。今回の件については、教科書協会に加盟する業者が、教科書協会を定める宣伝行動基準という自主ルールに違反する行為があったことが第一の問題になっている。学校においては、教科書の採択のルールに則り、学校によっては選定委員会を設け、その学校で検討を進め、使用教科書を選び、県に採択願いを届けており、県においては採択願いに基づき、採択の過程においては、県教委としても問題があるとはとらえておらず、今回の件についても、毎年教科書が決まった後、年度末にかけて副教材の使用計画を立て、年度初めに副教材の使用届が県に届けられているが、その使用届においても、英語の副教材がしっかり選定されているので、今回の無償提供を最初から期待して教科書を採択したということはないととらえている。検定前についても、高校では小中と違い、毎年教科書を採択しており、その都度生徒の実態に応じて、あるいは教育計画の進展を踏まえながら、PDCAを行い、学年・学科ごとに毎年教科書の選定を行っているので、教科書の採択に関わって公平性が損なわれるような採択はなかったととらえている。
【斉藤委員】
検定中の教科書を閲覧したこと自身がまずルール違反である。ましてや、金品を受け取っていたと。県教委の処分は、訓告1名、厳重注意27名である。甘いと思う。この中に、教科書検定に関わる調査員その他は何人いたのか。だいたい、検定中の教科書を閲覧したこと自身が問題だし、ましてや金品までもらっていたと。教科書採択に影響があったかどうかという以前の問題で、あったら犯罪である。
大修館書店の教科書については、教科書を採択された後で余っていたからあげると。業者は次を期待している。そういうことを含めて適切だったのか、まったく適切でなかったのではないか。
【教職員課総括課長】
処分が甘いのではないかというご指摘だが、いずれ今回の処置については、検定中の教科書、閲覧自体は各教員ではなく、基本的には各教科書会社が閲覧させてはならないといった義務付けになっているが、そうとはいえ、本来閲覧してはならない検定中の教科書を閲覧したと。またそういったことに伴い、謝礼等の金品を受け取っているということについて、結果として選定についての県民の信頼を損ねる事態を招いたということを重くみて措置を実施したということである。一方で、義務付け自体は教科書発行者に対する義務付けであり、教科書を結果として閲覧したということはあるが、いわゆる事前に検定中の教科書を閲覧させるといったような、そういった予告自体もなかったという中で、教科書編集にあたって現場の教員の知見というものも十分生かされるべきといったような、これは文科省の考え方もあるが、そういった考え方の中で、短い人で3時間、長い人で6時間程度の時間の中で、教科書編集にあたってのいろんな意見を述べたということについての謝礼ととらえているので、一概にそれ自体が服務義務に違反するというものではないのではないかと考えているところであり、そういったことも総合的にふまえて、なおかつ他県等の措置の実態も踏まえつつ、今回の措置をさせていただいた。
いずれ、こういったことで県民の信頼を損ねたことはその通りで、各市町村教委に対しても適正な運用について改めて通知を出し、周知徹底を図った。
【高校教育課長】
大修館書店に関わって、過去の教科書の採択状況だが、文科省から大修館書店に対して調査の依頼があり、大修館書店において調査した結果が先週文科省に報告されている。その報告に基づいて文科省は今後各都道府県に調査を行うわけだが、その報告によると、今回無償提供されていた高校において、1校は平成24年度から、もう1校は27年度から使用している。
採択について適切だったかというご指摘については、無償提供を期待して採択したわけではないということで、これは今後、文科省の調査に則り事実を把握した上で、事実に基づき今後検討することがこれからの課題とはとらえているが、大修館書店から文科省に報告があった内容については、大修館書店の報告書の内容から引用すると、今回の事案について、高校の教職員に責任は一切なく全ての責任は大修館書店が負うべきものと考えているという大修館書店の報告があるので、今後は文科省の調査に則り事実を把握していきたい。