2016年7月4日 商工文教委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)


・雇用問題について

【斉藤委員】
 有効求人倍率が全国で一倍を超えていると大宣伝されているが、岩手県の有効求人倍率は、私が把握しているのは4月段階の1.28倍、一方で正社員の有効求人倍率は0.62倍、そして実際に正社員で就職した方は33%と。この中身を見たら、雇用は劣化している、厳しい状況になっているのではないかと思うが、岩手県の雇用情勢はどうなっているか。

【雇用対策労働室長】
 つい先日5月末段階のものが出たが、県内は1.28倍は変わっていない。正社員の数字は0.65倍となっており、非常に県としては高い数字だが、その中での就職率33%という数字がご紹介あったが、それもその体で推移している。これも実は過去では高いレベルにあるとは思っている。例えば、首都圏、東京の正規の求人倍率と比べればまだまだ差があり、引っ張られるという状況があるというのはその通りである。1.28というのは東北の平均と比べても3番目4番目ぐらいの数字で、全国平均よりも低い状況、全国の雇用は改善という言葉で国は言っているが、そういう状況にある中で、岩手ではなかなか県内に勤めていただく方を確保することが難しい状況にあるというのが実情である。そういうことで、先ほど来の、岩手で働こうというような運動が必要になるととらえている。

【斉藤委員】
 岩手県の場合には、大規模な復興事業が続いているので、これは特殊要因、プラス要因があったとしても、正社員の0.65倍というのは10人に6人半しか正規の求人はない。そして実際に、正規として就職したのは33%。あとの7割近くは非正規になる。本当に雇用の劣化を示すものではないか。
 そして実際に3年間で比較すれば、全国的には、正社員は23万人減り、非正規は172万人増えた。これは全国の動向に対して岩手はどうなっているか。

【雇用対策課長】
 平成24年度の正規の従業員は32万8800人、非正規は19万8500人となっており、非正規が37.6%となっている。なお、平成19年度が33.5%と数字は上がってきている。

【斉藤委員】
 5年に1回の就業構造基本調査なので、この3年間の推移は出ないが、非正規の割合はもっと高くなっていると思う。だから雇用の状況は改善どころか劣化していると言わざるをえない。
 雇用保険の被保険者数は、全県全体で3月では16266人増えて、沿岸も2077人増えている。人口が50806人減っている中で、沿岸は24355人減っている中で、雇用被保険者数=労働者は増えている。まさにこれは復興事業の反映だと思うが、一方で、沿岸の基幹産業である食料品製造業は1470人が震災前より減っている。これは大変深刻なことだと思う。復興事業で働く人は増えているが、これから復興の中心になるべき食料品製造業・水産加工業で震災前の水準を取り戻せていない。この打開策が必要だと思うが、現状をどう受け止め、どう取り組んでいるのか。

【雇用対策課長】
 雇用保険の被保険者数については、沿岸部の就業者数は震災前の23年2月と比較し、直後の23年4月には、約9782人減少したが、28年4月には1953人上回っている。
 食品製造業は、1451人減少している。そういった中で、27年度においては、大手就職情報サイトを活用する企業への補助による、企業の求人情報発信支援や、U・Iターン事業の強化による地域外からの人材確保に取り組んできた。
 28年度についても、27年度の取り組みに加え、企業紹介プロモーションの支援等による地域内の人材確保とともに、U・Iターン事業の強化による地域外からの人材確保にも取り組んでいきたいと思っている。
 緊急雇用創出事業についても、沿岸地域の事業者に限り、実施期限が1年間延長されたということから、事業復興型雇用創出助成金も活用した安定的な雇用創出に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 その程度の対策ではきわめて不十分だと思うが、被災事業復興状況調査、これは今年の2月1日段階で県が行った調査だが、水産加工の場合は、売上がどのぐらいになっているか。「震災前よりも良い」16.3%、「震災前と同程度」23.3%、震災前のレベルをほぼ確保したのは39.6%である。8割方水産加工は再建したが、4割ぐらいの事業者しか売上を確保しきれていないというのはきわめて深刻である。6月に、宮古市の大変頑張っている水産加工の社長さんにお話を聞いたが、「この売上で推移したら再建しても半分はもたないのではないか」という厳しいお話だった。売上減少、人手不足、再建したことは素晴らしい成果だが、再建した水産加工業者がきちんと営業を継続できるという支援が今強く求められていると思うが、この点をどう受け止めて支援策を強めているか。

【産業経済交流課総括課長】
 委員ご指摘の通り、事業再建が84%にも関わらず、震災前と同程度までに業績が回復したところは全産業の平均が47.6%のところ、39.6%と厳しい状況にある。
 課題としては、原材料価格の高騰だとか調達困難、雇用労働力の確保、業績の悪化等販路の喪失等もある。いずれ我々としては、魅力ある商品づくりから販路の拡大に至るまで、+改善による生産性の向上等に努めながら、業績の回復に向けての重点的な支援を行っていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 売上を回復して頑張っている企業もあるし教訓もあるわけだが、全体としてきちんと支援しないと、今後の地域経済・雇用確保を考えたときに大変大事な課題なので、本当に1つ1つよく見て、市町村とも協力して支援策を強化していただきたい。

・仮設店舗の現状と対策について

【斉藤委員】
 復興状況調査で、仮設店舗の本設再開を予定していると答えたのが75.6%だった。しかし内訳を見ると、「28年度内」と答えたのが28.8%、「未定」と答えたのが51.4%だった。本設再開を予定はしているが、具体的には未定だと。ここに深刻さがある。
 6月11日付の岩手日報で、沿岸10市町村の仮設商店街の調査をしたら、本設予定は49%止まりだったと。2月1日の調査から4ヶ月も経っていないと思うが、この報道に大変衝撃を受けた。これを県はどのように受け止めているか。いま本設展開に向けた支援が必要だと思うが、仮設店舗、仮設商店街の実態を示したうえで、対応策を示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 震災後23年度24年度にかけて、中小機構で仮設施設を整備していただき、今は市町村が管理しているわけだが、最大で362の仮設施設が整備された。その中で、撤去や移転といったものがあり、現在仮設としては328カ所になっている。いわゆる無償譲渡したものや、本設移行した事業者がいて空きが出たので撤去したといったものがあり、市町村等から聞いたものをまとめたところでは、仮設から出て、仮設に入っていた方で本設に移行したのが114事業者と聞いている。
 本設移行については、約半数弱が具体的に決めているが、それ以外の方はまだ迷っているというか、方針を決めかねている事業者も多いと受け止めている。
 実際、沿岸南部が今かさ上げ工事もだいぶ進んで、ようやく本格着工できるということ、また大船渡では、民間事業者が先行して整備しており、地元商店者も共同店舗これから着工ということで動いている地区もある。市町村でも、そういう状況を踏まえて、個別に意向調査などをしているところであり、そういった中でどんな形で本設移行するのか、あるいはいつ頃になったら希望する場所に着工できるのか、そういったことを含めてヒアリング意向調査をしているという状況なので、いずれ県としても市町村商工団体と連携し、グループ補助金や無利子融資などあるわけだが、どういった形で再開後継続できるかといったところの事業計画の策定も重要だと思うので、そういったところも含めて本設移行の相談対応等をしていきたい。

【斉藤委員】
 仮設商店街もたくさんできたが、まちづくりの進展度合いと合わせて、本当に今年あたりが転換期になると思う。そういう意味で、本設を希望している業者が本設展開できるように、きめ細かな支援策が必要ではないか。
 特に、商店街としての再建、例えば陸前高田市でいけば10mかさ上げしたところに、当初聞いたときには百数十店舗が希望し新しい商店街をつくる、そこには公共施設もつくるということで、まさに商店街は町の顔である。ただ、グループ補助の申請ということでは、なかなかその数にいっていないと思うが、分かったら教えていただきたい。
 大船渡市も、いわゆる駅から海側のほうに商店街を形成するとなっているが、なかなかテナント料が高くて、みんなが移行できるわけでもないと。そういう意味では、商店街の再生というのは、地域経済にとってもまちづくりにとっても中心課題なんだと思う。そういう点で、今の仮設商店街の現状をどう把握しているか。新しいまちづくりとしての商店街の再生の取り組みをどう把握しているか。

【経営支援課総括課長】
 グループ補助の申請の状況だが、今年度1回目の公募が先ごろ締め切りとなり10グループ、補助金の交付申請を予定している方だいたい約60ぐらいだと思う。今年度は秋口にもう1回予定しており、相談は受けているが、秋口に申し込むというグループもあるので、今年度全体はまだ分からないところだが、27年度は1年間で60ぐらいだったので、今年度は申請数が増えるものと考えている。
 仮設商店街の状況は、昨年9月時点で、商店街実態調査というものを県でやったが、そのときに、仮設商店街とされるところ、ある程度まとまりのある仮設店舗25ヶ所に調査をしており、なかなか繁栄しているところはなく、停滞しているところがほとんどだった。店舗利用が減ってきており、お店が少しずつ抜けてなんとなく賑わいが下がってきているという話もある。この仮設商店街の方々は、逆に地域との連携というか、コミュニティづくりにも取り組んでいる割合が通常の商店街よりも高かったので、そういった意識で本設に移行してもやっていくということが大事だと感じている。
 一番大規模なかさ上げをしている陸前高田市が、今年度から順次着工可能ということになっている。市でも事業者への説明会等もやっており、我々としてもグループ補助の申請に向けていろいろ相談対応している。
 大船渡市は先ほど言った通り、民間事業者が先行しているが、津波立地補助金を使った共同店舗の計画が進んでいる。
 同じく町中再生計画でやっている山田町については、すでに共同店舗が着工している。周りにも戸建ての店舗が張りついてきているので、お話あった通り、まさに今年度がそういう大きな動きのある年になると思っている。

【斉藤委員】
 DIOジャパン問題は基本的には決着はついたと思うので、復興の取り組みに本腰をあげて取り組んでいただきたい。特に今年は正念場だと思うので。

・トヨタ自動車東日本岩手工場の雇用について

【斉藤委員】
 5月17日付の新聞では、新たに期間従業員100人の正社員登用と、期間従業員230人の新規募集を発表したと。この内容について、背景を含めて。現在の岩手工場の正規・非正規の状況を含めて示していただきたい。

【自動車産業振興課長】
 今年度、前期と後期に分けてそれぞれ約50人ずつ100人の正規社員を期間社員から登用するという報道があった。7月1日付で、岩手工場の期間社員51名が正社員に登用されている。さらに11月1日にも期間社員50名程度の正社員化を予定している。
 これを踏まえ、現在の岩手工場の7月1日現在の状況は、正規2066名、期間社員409名、派遣343名、計2818名という状況であり、正社員比率は73.3%である。
 この背景としては、報道もされているが、年末に生産が予定されている新型車両の生産計画台数が現段階で数字が上がったということも聞いている。非常に昨年東京モーターショーで発表して以来、海外のモーターショーでも人気を博しており、ディーラー各社からの要請もあり、生産台数の上積みを見込んでいたということである。

・雇用促進住宅について

【斉藤委員】
 全国的には、独立行政法人高齢障がい求職者雇用支援機構は、1190宅10万7000戸を所有しているが、居住者がいるまま、大手不動産・ゼネコン・投資ファンドなどに一括売却することを最近発表した。県内の雇用促進住宅の現状はどうなっていて、どれだけの人が入居していて、この岩手の雇用促進住宅もこうした一括売却の対象になるのか。

【労働課長】
 平成19年の閣議決定により、平成33年度までに譲渡・廃止されるということが決定されている。現状として4月末時点で、住宅数51、棟数119、戸数4430、入居者数が1172人となっている。現在の国の方針にしたがい、民間売却または市町村への譲渡を進めるということで、民間売却にあたっては現在の入居者が10年間継続入居できるように4点を売却条件とし、@買主・民間事業者が住宅の取得後10年間は他者に転売しないA買主が普通借家契約を締結している入居者については10年間変更しないB買主は定期借家契約を締結している入居者での再契約を希望する場合は10年間再契約を行うC入居者にとって不利とならない賃貸条件で―というような条件で、10年間は継続入居できるようにと聞いている。

【斉藤委員】
 入居者1172人ということだったが、1172世帯ではないか。
 今の説明だと、国と同じ方針で売却方針ということになる。売れなかった場合、都市部と違ってそういうことも想定されると思うが、売れなかった場合は引き続き機構が管理することになるのか。

【労働課長】
 正確には1172戸である。
 売れなかった場合については、特に国からは説明がなく、いずれ国および機構としては、民間売却あるいは市町村への譲渡に努めると説明を受けている。