2016年7月6日 6月定例県議会・最終本会議
議案に対する反対討論
日本共産党の斉藤信でございます。議案第2号、第6号、第11号に反対の討論を行います。
議案第2号は、岩手県県税条例等の一部を改正する条例の専決処分の承認を求めるものであります。
この内容は、3月31日に成立した地方税法の一部改正によるものであります。今回の改正は、消費税10%への増税を前提に、昨年・一昨年に引き続き、外形標準課税のさらなる拡大と法人事業税所得割の税率引き下げを行うものであります。黒字企業を一層優遇するものであります。赤字でも課税される外形標準課税は一昨年の8分の2から8分の5に拡大されます。当面の対象は資本金1億円超の法人となっていますが、与党の税制改革大綱では、資本金1憶円以下の中小企業にも対象を拡大することを「検討する」と明記されています。昨年度、資本金1憶円以上の赤字企業約250法人の外形標準課税額は約4億9800万円余となっています。
税金は応能負担が原則であり、利益を上げた企業には減税し、赤字の企業からも税金を取り立てることは税制の民主的原則に逆行するものであります。
議案第6号は、岩手県県税条例の一部を改正する条例です。県民税の法人住民税の税率を引き下げ、国税分の地方法人税を地方交付税とするものであります。
消費税8%の引き上げ時に、「地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小をはかるため」、地方税である法人住民税の一部を地方法人税(国税)として、地方交付税の原資とする仕組みを創設しました。今回の改正は、消費税の10%への引き上げ時に、同様の地域間格差が発生するとして法人住民税率をさらに引き下げ、地方交付税原資化の規模を拡大するものです。
自治体間の税収格差の是正は、地方交付税の財源保障と財政調整の両機能を強化することでなされるべきであり、反対するものです。
議案第11号は、児童福祉施設の設置及び運営に関する基準を定める条例等の一部を改正するものです。その内容は、深刻な保育所待機児童対策として、国が保育士不足を理由に保育所の設備運営基準等を改正し、保育士配置等について特例的運用を可能とする規制緩和を行うものであります。
具体的には、保育所にかかる保育士の数の算定について、当分の間、幼稚園教諭の普通免許状を有する者等、一定の数の範囲において保育士とみなすことができるとすること。朝夕の保育士の配置基準を現行の2人から1人に、当分の間、保育士と同等の知識経験を有するものとすることができるとするものであります。
保育所の待機児童急増の原因は、認可保育所の整備の遅れと保育士不足であります。特に、保育士の待遇が全産業と比べて月収で平均11万円も低いという待遇の悪さによるものであります。
ところが、国の対策は、待機児童解消に対応する保育所増設や保育士の待遇の抜本的改善に背を向けて、保育士の配置基準をさらに緩和・改悪するものとなっています。これでは、待機児童の解消にも、保育士の確保にも対応できないことは明らかであります。それどころか、子どもの安全、成長と発達が脅かされかねない重大なものです。
そもそも、日本の保育基準は、保育士の配置基準でも面積基準でもフランスやドイツ、イギリスなど先進諸国と比べて、2分の1程度という劣悪なものです。実際の保育の現場では、国の低い基準を超えて保育士を配置しているのが現状です。この遅れた保育士の配置基準をさらに緩和することは、子どもの安全、成長と発達にかかわる問題であります。
国の方針と今回の条例改正案では、幼稚園教諭の普通免許状を有する者等を、保育士とみなすことができるとしていますが、この「等」の中には、小学校教諭、養護教諭とともに知事が認めたものも含まれます。保育士の資格は国家資格であり、乳児や児童の保育に関する専門的な知識と経験が求められる仕事です。簡単にこれらの方々に保育士とみなすことができるとすることは、保育士の国家資格を軽視し、ないがしろにするものであります。こうしたやり方では、専門家としての保育士の確保は一層困難になることは明らかです。
また、朝夕の時間帯に保育士の配置基準を2名から1名とすることは、保育士に対する責任と労働を一層過重とするものです。朝夕の時間帯は、子どもを保護者から預かる難しい時間帯であり、夕方の時間帯は、1日の子ども様子や変化を保護者に伝え、保護者の相談や悩みにも対応する大事な保育の仕事となるものです。保育士の配置基準の規制緩和は、子どもの安全確保にとっても、保育士の専門性の確保にとっても逆行するものと言わなければなりません。
4月1日現在の県内の保育所待機児童数は、11市町村、192人で、前年比64人の増となりました。深刻なのは、希望した保育所に入れないなどの「隠れ待機児童」が481人となっていることです。県内市町村の保育所利用見込み数は、計画では27713人でしたが、利用申込数は29232人と、計画を1519人も超過しています。計画の見直しを含めて、認可保育所の大幅増設に取り組むべきです。
保育士の確保にとっては、野党4党が国会に法案を提出しましたが、直ちに月収で5万円の引き上げを行うことであります。日本共産党は、さらに、10万円まで引き上げるよう提案しています。
国が進めている企業主導型保育は、保育士が職員全体の半分以上いればよいとするものであり、保育の質を大幅に低下させるものです。昨年も認可外保育施設で10人の死亡事故が発生しています。保育基準の後退、保育の質を下げることは子どもの命と安全にかかわる問題です。また、保育士確保にも逆行するものでもあります。
以上申し上げ、保育士配置基準を緩和・改悪する今回の条例案に反対の討論といたします。
ご清聴ありがとうございました。