2016年11月9日 商工文教委員会
教員の暴力・暴言による不登校事案に関する質疑(大要)
・沿岸部の県立高校における教師の暴言による不登校事案について
【斉藤委員】
この(内陸部の)教師の暴力・暴言による不登校の問題について、まったく初動の対応を間違ったと思う。まともな調査もしていないことも明らかになった。たった4人しか調べていない。
つい最近明らかになった、沿岸部の教師による暴言で生徒が不登校になった。10月26日付の読売新聞が報道して、私も県教委から詳しく経過を聞いた。この沿岸部の県立高校では、教師によるどういう暴言があって生徒が不登校になったのか。
【教職員課総括課長】
発言・行動の内容としては、「激怒して黒板や教卓を叩く」、「教卓や生徒の机を蹴る」、「どなり散らす」、「生徒が実習で失敗―勝手な機械操作等をしたとき等に突き飛ばす」、「俺に恥をかかせるな」、「俺の仕事を増やすな」といった暴言があったということについて、県教委の調査で確認している。
不登校になった経緯としては、地区の就職セミナーというものがあり、当該クラスの生徒の約半数が無断で欠席したということについて、当該教諭が強い口調で黒板や教卓を叩きながら激怒したといったような経緯があり、その後3月末だが、年度をまたいで4月頭から不登校の状態になっている。
【斉藤委員】
この事件は、医師が証言しているが、「医学的見地から学校での出来事が本人の症状の原因と考える」と指摘されており、PTSD―うつ状態になり学校に来れなくなったと。教師の暴言がこういうことを生み出すということである。
そしてこの生徒は、実は昨年9月に「怖いので怒鳴らないでほしい」とこの担任の先生に訴えている。そういう訴えがあったにも関わらず、「ずっと怒鳴り散らす」、「生徒に「死ね」「バカ」「クズ」といった」、「激怒して黒板や教卓を叩いた」、「怒りにまかせて怒鳴り散らした」。これがなぜ明らかになったかということ、保護者の要請に基づき、学級全員の調査をした。教師にもアンケートをやった。そしたら多くの生徒が暴言があったことを認めたから、県教委も認めざるを得なかった。だから懲戒処分も含めて検討しているのではないか。
【教職員課総括課長】
発覚の経緯については、今年の3月に、匿名という形で県教委にそういう訴えがあったということであり、それを受けて県教委として調査を進め、先ほど委員が述べたように、10月時点でアンケートを実施し、一定の暴言や乱暴な行為があったと認められたということであり、その点を踏まえて現在懲戒処分について内容を検討している。
【斉藤委員】
この事件の最大の教訓は、教師の繰り返される暴言が、生徒の心と体を壊してしまう暴力となる、重大な人権侵害となるということである。教育長、これは確認できますね。
【教育長】
そのような教員の行動があったということを県教委として情報提供受け、その事実関係を丁寧に確認する必要があるということで、先ほど総括課長がお答えした調査を学校と一緒に行った。いずれこれは生徒たちの成長を進めていくなかで、さまざまな子どもたちに対する教育、いろんな方法があるが、教科活動だけではなく、子どもたちの行動に対して、それを直していくということも大事な教育である。そういう中で、大きな声をたてたり抑圧的な行動をすることに対して、これは生徒一人一人受け止め方がさまざまあろうかと思う。同じ行為をしても、それが生徒自身に大きな負担になる場合もあるし、そうでない場合もあるということで、全体的にそういう課題が出てこないようなやり方というものをさまざまな事案を研究していく中で、きちんと学校現場に広げていくことが大事かと思っている。
【斉藤委員】
私の質問は、この事件の教訓は教師の繰り返される暴言が生徒の心と体を壊してしまう暴力となる、重大な人権侵害だと思うがいかがか、と聞いた。この質問に答えていただきたい。
【教育長】
可能性としてはそのようなことが起こりうるということは十分考えられる。
【斉藤委員】
この事件は、医師もこう言っている。「基本的な事実の確認ができたので、学校と保護者・関係者が連携して進めることが生徒の健康の回復にとっても大事」だと。そういう信頼関係を県教委がしっかり構築して、卒業のためのあらゆる手立てを尽くしていただきたい。
【教職員課総括課長】
当該生徒については3年生ということもあり、卒業の時期が近づいているので、いずれ県教委としても学校と連携をとりながら、卒業に向けての具体的な方策について意思の疎通を図っており、特に生徒については、精神的に必ずしも安定していないということで、慎重に対応する必要があるが、ご指摘の通りあらゆる手段を講じながら取り組んでいきたい。
・内陸部の県立高校における教師の暴力・暴言による不登校事案について
【斉藤委員】
先ほど千葉委員・樋下委員が取り上げた問題は、もっと悪質な問題である。暴力・暴行を行った教師は、その事実を否定した。そして学校はその立場で収束を図った。だから解決の仕方が傷害罪の告訴、民事訴訟しかなかった。
教師は、当初は暴言・暴行を否定したが、今はどうか。あなた方の調査、民事訴訟での公判で、この教師は、ビンタをしたこと、暴言を吐いたことを認めているのではないか。
【教職員課総括課長】
ご指摘の通り、いわゆる両手で頬を叩く、片手で頬を叩くといったような行為、「ふざけるな」といったような言動があったということについては、裁判の過程で明らかになっているが、いわゆる程度や頻度で考えると、ケガをしているとか強い痛みを感じているというものではないということもあり、頻度についても日常的といったようなものではなかったということで、直接結びつくようなものではなかったと考えている。
【斉藤委員】
それは何の論証もない。当初教師は暴力について全面否定した。しかしそれを翻して、ビンタがあったと。部員の4名の調査は、卒業してから、電話調査でやられた。これは録音でもあるのか。そして裁判に入ってから、つい最近、6月13日・19日に、当時のバレー部の部員に、わざわざ東京まで出かけていって調査している。そこでは、ちゃんとビンタがあったことを認めている。当時の生徒は、「毎月1回以上あった」と言っている。警察の捜査や地検の捜査では、月3回以上だと。傷害罪が不起訴になったのは、暴行事件がなかったということではない。傷害罪として成立するかどうかが難しいという判断だった。日常的に暴力があったのである。そして、「何度か拳で机を叩いた」、「鍵を壁に投げつけた」、「ふざけるな、なめんじゃねぇ」「お前のせいで負けた」「お前は駄馬だ」と。もっとひどいのは、この生徒はバレー部が4人しかおらず試合に出られないというので、生徒会活動をやっていたが、生徒会の後輩から誘われてバレー部にはせ参じた。そういう生徒に対して、青森の遠征に行かなかったというので、2〜3時間も体育教官室に呼びつけ、監禁して、30センチぐらいの距離で立たせたまま怒鳴り散らした。これが暴力でなくて何なのか。あなた方の応訴の理由は崩れているのではないか。
【教職員課総括課長】
いわゆるビンタ等の行為については、当該行為については、傷害を負わせたり強い痛みを感じさせるものではなかったということで、頻度も日常的とまでは言えないのではないかと考えていたところである。
教官室での監禁といった話もあったが、原告側からは30センチの距離で怒鳴り散らすといったような主張もあるが、それについては被告側としてはそういった行為自体については認めていないところである。
【斉藤委員】
体育教官室に呼びつけたのは最初から認めていることである。30センチの距離かどうかは別として、怒鳴り散らしたことも認めている。これは事実なので、嘘を言ってはいけない。はっきり答えていただきたい。
【教職員課総括課長】
認めていないというのは、30センチの距離でという部分についてであり、体育教官室で強い指導、大きな声で叱責したということについてはその通りである。
【斉藤委員】
だいたい7時ごろまで部活をやり、その後体育教官室に1人呼ばれ、2〜3時間立たされたまま怒鳴り散らした。これは暴力ではないというのか。2時間以上も立たされたまま怒鳴り散らされたら、こんなひどい暴力はないと思う。教育長、これは事実の問題として、許されない暴力ではないか。
【教育長】
委員が主張しているような内容を公判の場で原告側が主張しているところであり、それに対する反論、いわば髪をつかんだとか、そういうことも含めて現在裁判が行われているので、その中で明らかになっていくものと思っている。
【斉藤委員】
私は、学校当局も認めた事実について言っている。それを暴力ではないのかと聞いている。そのことも判断できないのか。
大阪の高校で事件があったときに、「体罰の禁止および児童生徒理解に基づく指導の徹底」という文科省の通知が25年3月13日に出されている。そこでは、体罰と判断される行為として実例がある。「授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒の頬を平手打ちする」と。いま取り上げているこの生徒は反抗などしていない。みんな平手打ちされている。学校教育法で禁じられている明確な体罰である。事例をもう1つ、「別室指導のため給食時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない」と、これは「被罰者に肉体的苦痛を与えるようなものだ」と。まさに最悪の体罰だったのではないか。
はっきり言うと、盛岡一高で行われた部活動顧問による暴言・暴力は、学校教育法による体罰ではないか。
【教職員課総括課長】
体育教官室での長時間の強い指導といったことがあったのは事実ということだが、ただ、原告の訴えの中では、髪をわしづかみにするとか、そういったやりとりの中で裁判が進んでいるということで、その事実関係自体が裁判の中で争われているということであるので、それについては裁判の中で明らかにされるべきではないかと考えている。
【斉藤委員】
裁判は裁判として、私が言っているのは、学校当局も認めている、あなた方の調査でも明らかになっている事実について、暴力であり学校教育法が禁じる体罰ではないかと聞いている。そういう判断はできないのか。だとしたら、体罰に関する指導なんてできない。教育長いかがか。
【教育長】
2時間以上にわたり強い指導をしたという事実関係については学校も認めている。これが体罰に当たるかどうかも含めて、現在公判で争われているということであるので、今後の裁判にも大きく影響するので発言は控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
だから私は沿岸部の高校の話をした。教師の暴言が生徒を鬱状態に陥らせ、不登校までに至った、これは重大事態である。そういうことが現実に起こっている、盛岡一高でも同じことが起きたのではないかと、私は学校教育法の体罰の実例を示して聞いた。平手打ちは体罰、別室指導のため別室に留め置き一切外に出ることを許さないのも体罰である。だとしたら体罰に当たるのではないか。そういう判断もできないのか。裁判で争われていることを聞いているのではない。学校の中で起きた体罰・暴行・暴力、これに県教委がどう誠実に対応するかを聞いている。
【教職員課総括課長】
文科省の通知の中でも体罰の例示があり、たしかに長時間の立たせたままの指導、そういったものが一般論として体罰に該当するということはその通りと思うが、今回の事案については、教官室での指導の具体的な内容については原告と被告の間で争いがある部分であるので、今回の事案が体罰に当たるかどうかというのは差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
裁判になると本当に機能マヒしてしまう。
この教師は、最初は全面否定していた。しかし生徒への今年の調査では、平手打ちを認めた、公判でも認めた。そしてこれは学校の対応を間違わせたのではないか。暴力を認めていたら、きちんと解決できていたと思う。教師は嘘をついていたのではないか。
【教職員課総括課長】
嘘をついていたということではなく、当初たしかに学校と生徒側の間で、生徒側の質問に対して「一切手を出していない」と答えていたということだが、ただそれについては、訴状にもあるような「髪を引っ張って頭を揺する」とか「バレーシューズの裏で腹を蹴り上げる」といった行為の有無について答えていたということである。
【斉藤委員】
顧問の教師は、当初は平手打ちも含めて全面否定していた。学校はその立場で「体罰・暴力はなかった」ということで対応した。だからこの問題は解決できなかった。そこに一番の初動の誤りがある。
沿岸部の高校の事案のように、部員全員に調査すれば分かったことである。そういう調査もしなかった。まともに調査していないのではないか。そして学校の対応を誤ったからここまできてしまった。教師のこの証言は事実とは違っていた、そのことにより学校の対応が間違ったとは思わないか。
もう1つ。医師からPTSDを発症したと指摘された。「医学的な見地で、生徒の不登校は、学校における部活内で、指導教諭のさまざまな言動が外傷体験となり、同年9月下旬ごろから発症した。高校在学中は恐怖心が強く、登校困難となり、卒業後は秋頃になるとフラッシュバック症状に悩むことが多い。現在も通院中である」という診断書が出た。医師のこういう医学的・科学的な診断を県教委は無視したということになるのではないか。
【教職員課総括課長】
診断については、平成21年12月の時点で学校側に情報提供されていたということでもあるが、いずれそれについては訴状にあるような「髪をつかんで頭を揺する」とか「バレーシューズで腹を蹴り上げる」といった行為自体を前提にした上での診断ということであり、そこの基本的な事実関係についての認識について違いがあると考えている。
【斉藤委員】
今の議論の中で明らかになったのは、教師の全面否定の根拠は崩れた。そのために学校の対応が間違った。もう1つは、医師がこの生徒の不登校の原因は「部活内で指導教諭からの数々の言動が外傷体験だ」と。こんなに生徒が苦しんでいるときに、二重に重要な事実をあなた方は無視した。本当に許されない。
裁判を理由に、この真相究明を回避するのは二重の誤りである。徹底して保護者が求めるような真相究明すべきである。残念ながら今の県教委の対応ではできないので、第三者委員会を設置して、やらないとできないのではないか。
【教育長】
今回の事案、この生徒さんが在学していた当時から長年時間が経過している中で、事実関係を明確につかんでいくというのは、できる限り明らかにしていくのは我々の責務という基本的な考え方に立ち、事実関係をできる限り明らかにしてきたつもりである。
そういう中で、原告の保護者の方々の思いというものがなかなか接点を見いだすことができないという中で、昨年9月に訴えが提起されたということであり、これは事実関係を明らかにするためにも、公判を通じて応訴した上で、こちらのこれまでの調査結果等も含めてきちんとお伝えしていくということが必要だと、そういうことも含めて応訴したということであり、その辺の事情についてご理解賜りたい。
【斉藤委員】
民事訴訟でも、「事実関係の確認を行った結果、訴状にあるような暴力行為はいずれも確認されなかったことから、応訴して原告の請求の棄却を求めていく」と。この県教委の立場は完全に崩れていると思う。しかし裁判を理由に、まともに事実を見ようとしないのが今の県教委の実態である。
委員長にお諮り願いたい。ぜひ商工文教委員会として、こういう状況の中で、第三者委員会を設置して真相究明を求める決議をあげるように取り計らいを願いたい。