2016年11月9日 商工文教委員会
商工労働観光部(補正予算)に関する質疑(大要)


・いわて仕事人材創生事業費について

【斉藤委員】
 2500万円余予算化されているが、首都圏在住の本県出身者学生のU・Iターンの促進を図るためのインターンシップの実施の支援や情報発信だと。総額では7640万円になるが、県内の大学・専門学校などの県内就職をもっと進めると。総額の中には、県内のインターンシップも含まれていると思うが、この間の実績はどうなっているか。

【雇用対策課長】
 本県のインターンシップの状況だが、岩手大学を中心に、ふるさと岩手創造プロジェクトにおいて、あとは県立大学を中心に東北インターンシップ推進コミュニティでそれぞれ取り組んでおり、県内学生を中心にインターンシップが進んでいるが、岩大・県大・盛大の参加学生数を見ると、27年度は268人となっており、25年度は252人、26年度は275人という形になっている。なお、受け入れ参加事業数も年々増加傾向にあり、25年度は94社、27年度は130社となっている。

【斉藤委員】
 県内の中小企業は人材不足が深刻なので、U・Iターンとあわせて、県内でのこうしたインターンシップを進めていただきたい。

・いわて働き方改革等推進事業費について

【斉藤委員】
 働き方改革のアドバイザーの養成および派遣ということだが、今岩手の働き方改革といったら、まずブラック企業やブラックバイトをなくすと。このことがまさに緊急課題ではないか。
 先日、高等学校定時制・通信制教育協会というのが、定時制・通信制高校生を対象とするアルバイトに関する意識等調査の結果を発表した。新聞報道にもなったが、かなり深刻な実態である。たとえば、「労働条件を示した書面を交付されてない生徒」が51.9%、「働く前に口頭ですら具体的な説明がなかった者」が17.8%、「コンビニでは50%以上が口頭で知らされた」と。「労働条件を文書で提示されていないケースが多いことは労基法15条に違反し、きわめて不安定な労働環境である」と。さらに、「アルバイト代の金額が明示されなかった」39.4%、「支払日が明示されなかった」37.9%と、本当にブラックである。そして「アルバイトにより勉強に支障が出た経験があるか」、「登校できなくなった、疲れて勉強が大変だった」人が5人、「勉強する時間がない」5人、「テストに影響」4人など、学ぶ権利が侵害されるような異常な事態、まさにブラックバイトである。
 こういう調査結果が出たわけだから、県としてもこういうブラックバイト・ブラック企業の問題に真剣に取り組む必要がある。

【労働課長】
 ご指摘の通り、県の高校定時制・通信制教育協会が実施した調査では、多くの労働条件のトラブルがあったという回答があったと、新聞報道でも把握しているが、教育委員会からも情報をいただいている。
 いわゆるブラック企業・ブラックバイトについては、国としても県としても重大な課題と認識している。働き方改革を推進する前提として、労働条件の確保があると認識しており、国ではそういった過重労働の対策等のために、26年頃から厚労大臣を本部長とする推進本部を設置するだとか、各労働局にも推進本部を設置、それから本年度からは、地方労働局にも過重労働特別監督管理監を配置するなど、監督指導の徹底を強化している。
 このアルバイトについても、そのような調査結果もあると。厚労省でも先般調査され、やはりそういった問題があったということで、それも受けての今般の高校定時制・通信制教育協会での調査という風にも聞いている。
 県では、このアルバイトの労働条件の確保等についても、就業支援員が事業所や学校訪問をして、労働相談に対応したり、あるいは労働委員会が大学・専門学校等において出前講座もしているところであり、国の労働局が中心になりそういった対応をしており、県としても必要に応じ岩手労働局と連携し対応していくものである。
 また、このようなトラブルについては、労使双方において、労働関係法令の知識が不足しているということが根底にあると考えられるので、県としてはその1つとして、働くルールガイドブックを作成し、学生に配布するなどしている。これについては、高校生については管内の高校3年生を中心に配布しており、大学生は全員に配布しており、教育委員会とも連携しながら周知に努めている。今回の調査結果も踏まえ、特に定時制高校等については、1年生・2年生も含めて全員に配布することにしたいとも考えている。

【斉藤委員】
 この調査では、「あなたは労働条件などに関して困ったことがあった場合どうしますか」という問いに、一番多かったのは「家族に相談」が31.4%、「知人・友人」24.2%、「高校の先生」は7.6%、「行政機関への専門の窓口へ相談」は5.7%だった。身近な先生や頼りになる行政機関への相談が一番少ない。そして何が必要かというと、「学校教育の場で学ぶ機会を設ける必要を感じる」となっている。ガイドブックを作られているのはいいが、やはり配るだけではいけない。きちんと説明・学習することが必要ではないか。
 そして、アルバイトについてもきちんと触れてほしいと。アルバイトにも同じ労働の権利が保障されている。有給休暇もある、超過勤務手当も出ると。そういうことで、このガイドブックを充実させるとか、特に定時制なんかについてはアルバイトに関わるパンフなりを作成するということが、今回の事態からは求められているのではないか。

【労働課長】
 アルバイトについての記述を加える等について、アルバイトの労働条件の確保のキャンペーンを毎年行っており、そこで国がアルバイトももちろん労働条件の確保が必要、確認しましょうということで、資料を作って周知を図っているということで、ただ、それが十分に行き渡っていないということもあるのかもしれないので、そういったパンフの周知や、働くルールガイドブックを今後作成する際には、そういったことも読み取れるということも含め、周知・徹底について取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 改めて示すと、「労働条件を示した書面が交付されていない」が50.9%と半分以上、異常な事態が当たり前になっている。「賃金に関する事項について明示されていた」割合が40%で、明示されていないのが6割、これはとんでもない話で、実態がそういうことなので、ぜひこうした事態について、一人一人の高校生が行政機関に訴えるは勇気もいるしハードルも高い。学校や県の機関が一緒になって、労基署に訴えるとか、協議するとか、そういう形で取り組む体制をしっかり確立していただきたい。

【労働課長】
 国・県等への相談について、岩手労働局によると、労働者からの相談のうち、パート・アルバイトについての統計ということでは、27年度417件、26年度413件、今年度上半期で193件となっている。労働局はもちろん、県としてもまだまだそういった周知、困ったときはそういう機関に相談する方法があるということの周知はもっと徹底を図るべきだと考えるので、さらに岩手労働局と連携するなどしながら、周知徹底を図っていきたい。

【斉藤委員】
 少し温度差を感じるのだが、5割・6割が労働条件が提示されていない、賃金が明示されていない、そういう状況である。そして高校生一人一人が行政機関に訴えられるかというと、ハードルが高いのではないかと。これだけの問題になっているのだったら、高校や県の雇用対策労働室が窓口になって一緒にやるべきだと提案したので、個々の事件というよりは、きわめて深刻な事態と受け止めてやっていただきたい。

【商工労働観光部長】
 ご指摘の現状というのは、社会問題として深刻な問題ととらえることが必要だと認識している。県としてできる限りのことをしていくということと、国、労働局としっかり連携し、困ることがないように、つらい思いのないような状況を作っていかなければならないと。働き方の面でも、産業・経済の部分でもそういった状況にもっていくようにしなければならないという認識はあるので、しっかり取り組んでいきたい。

・台風10号豪雨災害に対する補正予算について

【斉藤委員】
 今回の補正予算の目玉といってもいい「地域なりわい再生緊急対策交付金」が10億9500万円余が計上された。上限2000万円の直接補助などもメニューに加わっている。しかし、企業によっては、1つで1000万円を超えるような機械が被害を受けた、数千万円、億を超える被害の中小企業もあるが、本会議では、それぞれの市町が実態に合わせて柔軟に活用できるという答弁だったが、県の考え方として、たとえば、卸・小売は200万円と言われているが、被害の大きいところにはどういう対応をするのか。そして下限がないということで100万円以下の被害にも対応するという答弁があったので、そうした今回の交付金の具体的な考え方、メニューを示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 基本的には平成23年の大震災津波のときの、県と市町村で4分の1ずつ出して復旧を支援する県単補助があったわけだが、その枠組みを基本とし、実はもう1つその時点では、大企業等の被災を想定して、中小企業に限らず大規模な被災を受けた大企業でも補助するメニューも用意はしたが、それについては結局グループ補助金等もあったので、そのメニューについては使われることがなかったということで、2分の1補助の県単補助が使われてきた。
 今回はその部分と、25年の繋の観光施設に対する補助をベースにしている。ただ、メニューを設定していく中で、3市町とも協議したところ、冷蔵庫1台だと100万円までいかないが大事な機械だといったところもあるので、そういったところも対象にして二重に被災したような事業者も支援したいという話もあり、サービス業でも設備を非常に使われていて製造業と実質変わらないといったことも聞いている。卸・小売200万円、全体としては上限2000万円というのは、我々が交付金の規模を積算する上で目安となる額が必要だったので、23年度のメニューとして卸・小売・サービス業200万円上限、その他2000万円ということと、今回の被害の件数等を勘案して積算したということで、メニューとしての目安ということで考えている。実際には、市町において、一部の事業者とはいえ、復旧に200万円、400万円を超えるところもあるので、そこについては市町の交付金の範囲の中で、全体を見ながら対応していただければと思っている。それは市町からも、上限を機械的に設定するのは難しいという話もされているので。
 大規模に被災した部分についても、積算上まず2000万円というのが大震災津波のときの上限だが、先ほど申し上げたそれよりも大きな被災用のメニューというのは、実は10分の1補助ではあるが上限5000万円という事業も設定していた。ですので、2000万円を超える部分でも、補助率をどうするかは市町の全体の交付金の枠組みで、実情に応じた対応をしていただけるようにメニューの設定を考えているので、予算成立いただいた上で具体的な交付の要綱等市町と相談しながら対応していきたい。

【斉藤委員】
 かなり柔軟で、大震災津波のときの県の支援策と同等、もしくはさらに使いやすい制度になっているのではないか。その点は高く評価したい。
 さきほど冒頭に説明があったように、商工業者の被害は1874件・236億円、観光施設が35件・1億9744万円と。10億9500万円というのは小さくない額だが、被災規模から見て十分に対応できる額なのか。今回補正を組むにあたりどれだけの活用件数を想定したのか。不足になれば次なる補正で対応を考えているのか。

【経営支援課総括課長】
 被害の総額については、商品が水をかぶったとか、建物が床下浸水したといったような場合に水が引いて何かしらの修繕をすれば元に戻せるといった部分もあるが、機械設備でも入れ替えしなければならない、あるいは修繕で対応できるかもしれないという部分も、実際に機械メーカーが来て点検しないと分からないので、県で積み上げている事業は修繕だとか機械の入れ替えといった設備・建物の部分を考えているので、商品・在庫等の部分までは見ていないので、どうしてもギャップがある。ただ、積み上げるときには3市町の被害件数と大震災津波のときの県単補助の実際に使われた額を目安に積み上げているので、被害に応じた部分にはなっているのではないかと思うが、市町でも実際に事業者から申込みを受けてみないと分からないということもある。
 加えて、今般国で小規模事業者持続課補助金ということで、100万円の上限だが商業者が顧客を取り戻すために台風枠ということで設定されたので、こちらも活用していただいて、そういった状況も見ながら進めていきたい。

【斉藤委員】
 小規模事業者持続化補助金が国の制度としてあると。これは今回の交付金と併用して使えるのか。そして小規模事業者持続化補助金は県の補正予算には反映されないものなのか。

【経営支援課総括課長】
 併用は可能である。同じ機械に2つ補助事業を入れることはできないが、使い分けは可能だと考えている。
 補助金自体は、商工団体を通じて事業者に直接行き渡るので、県や市町を通らない形になるので補正の対応はないものである。

【斉藤委員】
 小規模事業者持続化補助金は、要綱を見ると100万円の上限ということで小規模だが、補助対象経費の3分の2ということで補助率が高い。被害が比較的軽微な場合はこの活用を大いに推進する必要があるのではないか。
 高橋千鶴子衆議院議員が国会で取り上げたときには、革新的ものづくり商業サービス開発支援事業というのも活用できるという答弁があったが、これはどういうもので、どういう活用ができるのか。

【経営支援課総括課長】
 ものづくり補助金だが、これも県等を通じないで、団体を通じて事業者に行く補助金だが、災害に合わせて、もともと全国枠で新しい生産性向上のための機械設備を入れるとか、そういった事業者を公募し内容を国で審査し採択する事業だが、国では、災害があったということで、審査の際に加点するということで対応を図ると聞いており、そういう設備をする場合に3分の2の補助があり、メニューによるが、最大で3000万円となっている。新しい取り組みを進めるという点でこのメニューも国では台風災害対応ということで適用している。

【斉藤委員】
 国のこういう制度は、県の今回の対策と合わせて最大限いろんな形で活用できるように周知徹底を図っていただきたい。
 今回の台風10号豪雨災害は、東日本大震災津波被災地での災害であった。今回、グループ補助金交付決定事業者、県単補助交付決定事業者はどのぐらいあって、そのうちどのぐらいが今回の台風災害で二重の被害を受けたのか。やはりそういう点で大震災並の対策が必要だと。県や市町もかなり努力していると思うが、国がやはりもう一歩踏み込んで、熊本地震並にグループ補助金を何としても実現すべきだと思うが、実態を含めて示していただきたい。

【経営支援課総括課長】
 宮古・久慈・岩泉の3市町で、グループ補助金を受けて被災した事業者が151、県単が77、合わせて228者となっている。利用した事業者が合わせて488者なので、半分近くが二重の被災をしている。
 グループ補助金の適用については、県としても地元からの要望が非常に強いということもあり、国に出向いて要望したり、現地に来ていただいたときにもそういった要望もしているので、引き続き要望していきたい。

【斉藤委員】
 3市町のグループ補助金交付決定事業者は296事業者でそのうち151が被災、県単交付決定は192でそのうち77が被災と。正確に答えていただきたい。
 商工業の再建は、地域経済の再建、そして東日本大震災津波からの復興に関わる課題なので、いま示された制度の全面的な活用と、引き続き国への対応を強く求めていただきたい。