2016年11月10日 商工文教委員会
内陸部の教員の暴力・暴言による不登校事案に関する質疑(大要)
・「平手打ち」「罵声」「監禁」は学校教育法上の体罰に当たる
【斉藤委員】
私は、第三者委員会での調査を求めたが、昨日の審議でもその必要性は浮き彫りになった。
改めて、昨日の教育長、教職員課総括課長の答弁を私自身も精査した。それで確認したいことがある。
1つは、顧問の教師による平手打ち、罵声、体育教官室における監禁、この場所でのかなり威圧的な対応というのは、学校教育法上体罰に当たると。これを改めて確認したい。
【教職員課総括課長】
昨日の繰り返しになるが、具体的な内容について、裁判の場でということであるので、現時点では体罰に当たるかどうかについては差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
完全に逃げの答弁になっているが、総括課長は昨日このように答弁した。「たしかに長時間立たせたままの指導、そういったものが一般論として体罰に該当するということはその通り」と。私は具体的に聞いた。答えは一般論だったが。学校教育法上の具体的な事例も紹介した。平手打ちは体罰、一定期間監禁して怒鳴り散らすのも体罰だと。だとしたら体罰として否定できないのではないか。
県教委が今年の6月19日に調査した、当時の部員の調査結果では、「ビンタはあった」と部員の一人は答えている。そしてもう1人は、「練習するたびに、罵声ほぼ毎日あった」と証言している。3人目の部員は、ビンタをされたときに避けた人だが、この部員は、平手でビンタはどのぐらいあったのか、「それは月1回ぐらいはあった」と。実際はもっとあったと思う。しかし県教委が再調査したら、当時の部員がこのように答えている。これは体罰ではないか。
【教職員課総括課長】
昨日答弁した通り、そのような行為について、まさに一般論としてはこのような行為が体罰に当たるというのはその通りだが、ただ、諸々の事実関係を含めて、双方の主張に食い違いがあるという裁判での状況であるので、いずれ昨日お答え申し上げた通り、この事案について体罰に当たるかどうかについては答弁を差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
私は裁判の双方の主張を言っているのではない。あなた方の調査で、関係者が、当時の部員も「ビンタがあった」「罵声は毎日あった」「平手打ちは月1回はあった」と。これは裁判のやりとりではない、あなた方の調査結果ではないか。これをどう見るのか。
こういう事実を学校で最初につかんでいたら、ただちに実態調査すべきだった。しかし教師がそれを全面否定したから、学校もその立場に立ったから、この対応を間違ってしまった。しかし現段階のあなた方の再調査で体罰が明らかになった。あなた方は調査結果をどう見ているのか。何のために調査したのか。
【教職員課総括課長】
ご指摘の罵声というか大きな声での指導、そういった行為自体があったことについては、我々聞き取り調査によって確認したということではあるが、そのことについて体罰かどうかということについては、裁判が進行中ということで差し控えさせていただきたい。
【斉藤委員】
裁判を理由にしているが、学校教育法での具体的な事例を紹介した。「平手打ち」も体罰、「別室指導のため給食時間を含めて生徒を長く別室に留め置き一切室外に出ることを許さない」ことも。これは実際にあった。2時間以上、3時間近くに渡って該当する生徒を監禁して怒鳴り散らした。学校教育法上例示されている体罰そのものではないか。誤解のないようにこのように例示されているのに、なぜそのように評価できないのか。顧問弁護士からそう言われているのか。
裁判の土台は崩れていると思う。私は裁判に干渉するつもりはないので、あなた方の調査が学校教育法上、許されない体罰ではないかと聞いている。学校教育法上の立場で答えていただきたい。
【教職員課総括課長】
繰り返しになってしまうが、いずれ裁判の途上ということであるので、学校教育法上体罰に当たるかどうかは、裁判に直接影響する部分であるので、そのことについて申し上げることは適切ではないのではないかということである。
・生徒からの訴えがあったにも関わらず調査せず―県教委の責任も重大
【斉藤委員】
結局、答弁不能ということになったと思う。そしてあなた方が応訴した裁判の根拠の土台も崩れている。
それで、あなた方の再調査で明らかになった「平手打ち」や「罵声」、こういうことが事件が発覚した段階で把握していたら、どういう対応になるか。
【教職員課総括課長】
あくまで一般論という形でお答えせざるを得ないが、そういった形で確認されたということで、今回は裁判の過程ということで差し控えるものであるが、一般論として申し上げれば、そういったことが確認されたということになれば、しかるべく措置を検討することになろうと思う。
【斉藤委員】
重大な答弁だった。当初からこういう体罰が明らかになっていたら、これは学校も県教委も重大事態だと。教師の暴言・暴力によって不登校に陥ったのだから。重大事態として徹底した調査をしなければならない。第三者委員会が必要になってくる。
私は教育委員会から資料をいただいた。学校からの「情報提供」という文書しかない。
平成21年11月27日、「昨年秋から不登校の3年男子生徒の保護者から学校に対して次の要求があった。県教委にも電話がある可能性があるので情報提供していく。@不登校のきっかけは1年前の部顧問からの体罰である。事実関係を明確にしてほしいA教員の責任で不登校になったので卒業の手立てがあるはずだ」―と。この2つの要求があった。しかしこのときは、「体罰の事実があれば教職員課に。卒業に関わることは高校担当への連絡をお願いする」というのが県教委の対応である。この時点で体罰と認めていない。
平成21年12月3日、「11月30日に体罰を受けたという教諭から事情を聞いた」と、これは文章としておかしいので、「体罰をした」となるべきである。「昨年の11月に部活動のことで体育教官室で1時間以上部活動への取り組みについて指導した。強い口調で指導したが暴力は振るっていない」と。暴力を否定したが、体育教官室では1時間以上強い口調で指導したと。しかしこのときも暴力を否定したので、体罰と受け止めず県教委への「情報提供」にとどまった。県教委は「了知した」という対応である。
平成21年12月11日、「12月7日に両親と校長とで話し合いを持った。校長から、長い間本人の悩み苦しみがあることに気がつかなかったこと、長時間にわたり立たせて叱責したことについて謝罪し、今後卒業に向けての対応―別室登校、科目をしぼって74単位取得での卒業について説明した」と。このときは、かかりつけ医の鈴木医師からの医療情報提供書の写しを渡された。いわば、不登校の原因が部顧問による暴力・暴言によるPTSDの発症、このときの医療情報提供書はそういう中身である。
この段階で重大事態として対応すべきだったが、このときも「情報提供」である。県教委も「了知した」だけである。だから事故報告書は出ていない。
平成21年12月24日、「12月17日に母親が来校し、学年長・担任と面談を行った。12月21日、両親が来校し、バレー部顧問教師との面談を行った。顧問は、暴力について否定した。2時間に及んだとされる説教については、結果的に2時間ぐらい生徒本人を立たせて話をしたことを否定できなかった」となっている。それでも学校からの「情報提供」である。事故報告書ではなく。調査もしていない。県教委は「了知した」で終わっている。
実際に不登校になり、PTSDを発症したという生徒が勇気をふるって、それはかなりの時間が経ってからだが、部顧問による暴行・暴言が原因だったと。それでこういう話し合いになった。それについて全く聞き耳持たず、調査もしない。まったく初動の対応を間違ったのではないか。こういう深刻な訴えに対して、なぜ生徒の立場に立って対応できなかったのか。謝罪はしたが形だけである。学校の対応が初動でまずかったのではないか。調査しなかったのではないか。
【教職員課総括課長】
当時の判断についてどうであったかということについては、申し上げることは難しいところだが、いずれこのときの調査については基本的に当該教員に対して行ったということで、他の生徒については行っていなかったということ、それ自体は事実ということである。
【斉藤委員】
調査しなかったことを認めた。そのために、保護者・本人は傷害罪で訴える以外になかった。
いま学校と県教委のやりとりを紹介したが、県教委の対応もまずかった。県教委がもっと踏み込んで、被害者の生徒から聴取するとか、真相を究明するとかやるべきだったのではないか。県教委の対応が学校の無責任な対応を容認したことにならないか。
【教職員課総括課長】
県教委として学校の対応について容認したかどうかということについては別として、いずれ県教委として改めての対応が必要だといったような判断が当時はなかったということである。
【斉藤委員】
私は、学校と県教委のやりとりについて先ほど紹介した。学校の責任は第一義的に重大である。しかし、それについて県教委が一貫して容認している。だから解決の道が閉ざされた。
もう1つ、先ほどの経過の中で、精神科医が専門的な判断で、「高校在学中2年生時、平成20年7月、バレー部に選手不足のために参加し、部活内で指導教員のさまざまな言動が外傷体験となり、同年9月下旬ごろから外傷後ストレス障害を発症した。高校在学中は恐怖心が強く、登校困難となり、卒業後は秋頃になるとフラッシュバック症状に悩むことが多い。現在も通院、治療中である」と。これだけの専門家医師の診断が出され、なぜ真剣に対応できなかったのか。あなた方はこれを無視したということになるのではないか。
【教職員課総括課長】
12月7日の時点で、ご両親から医療情報提供書の写しをいただいたということについては事実ということである。ただ、無視というご指摘だが、いずれ生徒が不登校の状態になっていたので、直接生徒とのやりとりはなかなかできなかったようだが、適宜生徒側とのやりとりは続けていたといったような状況について承知している。
【斉藤委員】
顧問の教師により日常的な暴言・暴力で外傷後ストレス障害、不登校に陥り、この生徒にとっては、本当に高校生活、青春の大事な時間を奪われてしまった。そしてその生徒が勇気をふるって、その原因が部活動の顧問の暴言・暴力にあったと、せっかく告発したのに、あなた方は一顧だにしなかった。許されないことである。
昨日は沿岸部の県立高校の事案を紹介したが、ここでも医師の診断書が出て、なぜこんなに対応が違ったのか。盛岡一高の場合には対応が間違ったのではないか。
改めて聞くが、なぜ無視したのか。実際にこの医師の診断書について対応しなかったのではないか。
【教職員課総括課長】
医療情報提供書に基づくPTSDの症状そのものについて、直接的な形で学校が対応したかということになると、必ずしもそういった形ではなかったと存じるが、ただ、そのまま放置ということではなく、適宜生徒の状況の確認については、学校としても続けていたということについては承知している。
【斉藤委員】
改めて聞くが、高校がまともな調査をしなかった理由は、顧問の教師が暴力を全面的に否定したからではないか。
【教職員課総括課長】
当該教員に対する聞き取りの結果ということもあるが、周りの教員等に対する聞き取りの結果も含めて、当時としてはそういった判断があったものと承知している。
【斉藤委員】
昨日、樋下委員が、自分の甥っ子さんが3年後輩の部員だったと。3年後輩だと重なっていないと思うが、それでも当時そういうことがあったと話をされていたと。生徒はみんな知っていた。だから、バレー部員全員を調査すればすぐ分かったことである。そういうこともしなかった。あくまで、暴言・暴力を振るった教師をかばう対応で、本当に高校生活・青春を奪われた生徒の立場に立たなかった。
教育長、初動を間違ったのではないか。そう思わないか。
【教育長】
この事案が発生したのが平成21年ということで今からおよそ8年前で、その時点で対応したのは学校側だが、ご指摘のあった通り、学校と県教委事務局との間での情報共有が足りなかったということについては、ご指摘の通りだと思う。
これは、教育委員会、それから私自身として、いま振り返ってみれば、初動対応というのはきわめて大事だったのだろうと基本的に認識している。
ご案内の通り、我々は訴状を受けて、実質的な事案の中身を理解したということだが、そして応訴期限が迫ってきているという中で、できる限りの事実関係を把握しようということで、同級生を含めて話を聞きながら、事実関係の把握をしたと思っている。それで、ご両親の訴状にある内容とは大きくかけ離れたもの、事実関係に相違があるという判断をして応訴したということであり、それ以降の対応については、現在公判の中で争われているので、ご指摘いただいた点については具体的な言及は避けさせていただきたい。
【斉藤委員】
当初の対応はまずかったということは認められた。きわめて重要な教育長の答弁だった。
最初の情報提供の最後に、「体罰の事実があれば教職員課に連絡をお願いする」と。このとき、調査していないから体罰の事実を確認していない。そして教師も否定したので、その後もこれは体罰事件になっていない。しかし同級生の部員も認めた。顧問の教師も平手打ちをしたことを認めている。ここまできたら、体罰事件、体罰によって不登校が発生したという認識になるではないか。
【教育長】
先ほどの事実関係に相違があったので訂正させていただきたい。答弁の中で、「応訴時点で同級生からの確認を行った」と述べたが、「応訴した後」確認したものである。
【斉藤委員】
これはまた教育長は重要な答弁をした。応訴前には調査して確認していなかった。そして応訴してから調査したら、部員の生徒は体罰を認めた。そして顧問の教師も平手打ちを認めている。この事実が最初から分かっていたら、体罰による不登校事件という重大事態だったのではないか。
【教育長】
応訴時点では、当該教員から詳しく事情を聞いたということである。当時の校長等からも聞いたうえで総合的な判断をして応訴に至った。
一般論として、体罰によるものであれば重大事態だということだが、体罰について全国的な問題となったのは、桜宮高校の事件だった。これは平成21年の後であり、当時の認識と現在の認識は、我々の危機感というものも違っていた部分もあるのではないかと思っている。いまこういう状態のもとで、こういう事案が、我々調査するということであれば、また違った対応があったのかなと思っている。
【教職員課総括課長】
生徒への聞き取りについては、今年の6月になって改めて聞き取りしたという状況はあるが、その以前、平成24年3月の時点で、当時の同級生の部員4人に対して聞き取りして、その時点ではいずれも「体罰はなかった」という結果を得ているところであり、応訴の時点においては、そういったことも含めて判断させていただいた。
【斉藤委員】
電話の調査で、録音か記録はあるのか。
【教職員課総括課長】
録音ではないが、当時の聞き取りのメモということで記録が残っている。
【斉藤委員】
適当な調査である。もう東京の大学に行っている同級生に、何年か後に電話で調査して、体罰はなかったということを根拠にして、体罰はなかったとは言えない。
最後に、一番この生徒を苦しめたのは、部活動の終了後7時から、1人だけ体育教官室に連れ込まれ、立たされたまま着替えをすることも飲食をとることも許さず、約2時間から3時間にわたり、当時の副校長の表現によれば、「ものすごい剣幕で怒る」「至近距離で怒鳴る」という行為であった。これが一番ダメージを与えた。この生徒が家に帰ったのは10時だそうで、2時間以上、3時間近くにわたり監禁して怒鳴り散らした。ところが、この証言に対して、ある副校長は「あとから作られた記憶もある」と言った。本当に学校の姿勢を疑うものである。被害を受けた生徒が、勇気をふるって訴えたのにたいして、「あとから作られた記憶がある」と。二重三重に生徒と保護者を苦しめた。
事件直後にまともな調査が行われなかった。そして教師が全面否定した。しかしその全面否定した根拠は現段階で完全に崩れている。体罰もあった、暴言もあった。そのことが理由で不登校になったというのなら、やはり現段階では重大事態として、第三者委員会でやるべきである。県教委は残念ながら学校と一緒になって誤った対応をしたので、あなた方が再調査するということではないと思う。やはり第三者による徹底した真相の究明、そしてこの教訓を生かすことが必要だと、そのことを述べて質問を終えたい。