2016年11月10日 復興特別委員会
津波伝承施設、住宅再建、商店街の再生等に関する質疑(大要)


・津波伝承施設の整備について

【斉藤委員】
 当初は、国営の震災祈念公園ができるのではないかと受け止めていたが、6月に基本計画が決定されたと。国は何をつくり、県は何を整備し、市は何を整備するのか。総事業費は出ているのか。

【まちづくり再生課総括課長】
 伝承施設は、陸前高田市の高田松原復興祈念公園の中につくるわけだが、建物は道の駅の中にいろいろな施設を入れるということで進んでおり、道の駅というのは国で建物をつくるが、一方で、物販施設は市でつくると。建物は国と市がつくるが、その中に県が伝承施設をつくるということで進んでいる。
 事業費については把握していないが、伝承施設の方も、展示の基本設計をしているところであり、事業費は確定していない。

【斉藤委員】
 仮称で「国営の追悼祈念施設」とあるが、現地に聞くと「形がない」という話もある。どういう国営の追悼祈念施設を整備する計画になっているのか。
 そしてこれは県の公園として整備されるということだと思うが、県内では唯一の震災津波伝承施設なので、この公園の中には、いくつかの震災遺構がある。国内外から来ていただいて学んでもらうということからすれば、今ある震災遺構をきちんと位置づけるべきだと思う。国は、「1自治体1箇所」と、被害がどうであれ画一的な姿勢だが、ここを突破しないと必要な施設にならないと思うが、そこをお聞きしたい。

【まちづくり再生課総括課長】
 仮称である「国営の追悼祈念施設」というのは、国が公園施設をつくるということであり、その公園施設というのは、県が都市計画決定した合意が広くあり、その中の一部に国営の追悼祈念施設、広場みたいなものをつくるということである。広い公園の中に大きな遺構―気仙中学校やタピック45がある。これについては、伝承施設の展示の考え方の中に、外の遺構も連携して、1つのストーリーにして考えるということで現在考えている。

【斉藤委員】
 だから「国営の追悼祈念施設」というが、公園そのもので、中身がない。やはり追悼施設といったら、それなりのモニュメント、対象になるものがないと、空間が追悼施設では来た人が全然分からないということにならないか。
 せっかく震災遺構が周辺に3つもあるのだから、基本計画の中にこれが位置付いているのか。きちんと震災遺構と一体とした祈念公園になっているのか。問題は何なのか。
 そして、県と市が一体となって、国の厳しい査定を打ち破ってやらないと、本当にまともな津波伝承施設にならないと、大変危惧しているが、その点いかがか。

【まちづくり再生課総括課長】
 国営追悼祈念施設について、静かな場所としての公園をつくるのが国である。国営追悼祈念施設の一部のお金が建物にも入っているが、形がないということではなく、しっかりした面的なものはつくるということで聞いている。
 遺構については、6月に策定した基本計画の中でも、遺構を活用するということは謳っている。
 市との連携だが、国と県と市が頻繁に情報交換・意見交換しながら進めている。
【都市計画課総括課長】
 国営の追悼祈念施設の具体的な中身だが、まず二線堤に「祈りの場」を設け、それにいざなう人道橋を川原川にかけて、そこを祈りの軸として道の駅にということをメインに、国が国営の追悼祈念施設をつくるということで、県はこのエリアの設置許可をするという立場で進めている。

【斉藤委員】
 結局、面の整備と空間ではないか。モニュメントのような祈る施設があるわけではない。 国内外から来た人たちは空間を見ても分からない。そういう計画でいいのかと現地に行って聞いて驚いた。戦後最大の大災害を受けて、震災遺構もあり、皆さんは追悼の気持ちで来る、学びたいということもある。そういう国内外から来てもらえるような、津波の経験・教訓を学んでもらいたいと、それに頼るようなしっかりした津波伝承施設の整備に取り組んでいただきたい。

・仮設住宅建設戸数について

【斉藤委員】
 仮設住宅等の入居状況で、建設戸数が12437戸、ところが仮設住宅のピークは13228戸となっているが、なぜ違っているのか。

【生活再建課総括課長】
 建設戸数の差は、解体した分を除き、現在ある建物が12437戸ということなので、入居率とした場合には48.3%となっている。

【斉藤委員】
 そうすると1000戸近く解体されていると。

・住宅再建の見通しについて

【斉藤委員】
 被災者の住宅再建の状況で、再建準備中の世帯7522世帯・33%、この方々は基本的には全壊・大規模半壊で基礎支援金をもらった方々を対象としたデータだと思うが、7522世帯がいまだに住宅確保できていないと。本会議の答弁では「1088世帯が住宅確保の見通しを持てていない」ということだった。そうすると、6400世帯は災害公営住宅に入るとか自立再建と理解していいのか。

【生活再建課総括課長】
 すでに決まった方の行き先だが、自立再建の方、災害公営住宅に入る方、民間賃貸に入る方ということになる。

【斉藤委員】
 いまだに約1000世帯の方々が住宅確保の見通しを持てないでいるというのは本当に深刻な事態で、その背景にはやはり生活苦があると。災害公営住宅に入る見通しもないという方々が少なくないのではないか。この間陸前高田市に行ったときに、市では改めて8月に再調査し、それでも回答率が8割、2割が回答なしという深刻な状況であった。いろんな相談対応もしていると思うが、早く住宅確保の見通しを立てさせてあげないと、再建の希望が出てこないので、これはぜひ丁寧にやっていただきたい。
 そして、在宅で避難生活をしている方々も少なくない。ここもしっかりとらえて、わずかな金額で改修したりしているので、実際には修繕が完了していない実態などもしっかりつかんでやっていただきたい。

・中心市街地の再生について

【斉藤委員】
 まちなか再生計画が認定されたのは、山田町、陸前高田市、大船渡市である。陸前高田市は、10mのかさ上げがほぼ終わり整地の状況、そしてやっと大型ショッピングセンターの建設が始まるという状況を見てきたが、山田町、陸前高田市、大船渡市が、まちなか再生計画の中で、どれだけの事業者が中心市街地の再生に参画することになっているのか。
 残念ながら大槌町が入っていないのだが、大槌町の中心市街地の再生はどういう状況になっているのか。

【経営支援課総括課長】
 3市町での商業施設の入居者の状況について。山田町は、テナント入居者10者で今日まさにオープンということで、オープンイベントをやっているところである。
 陸前高田市は、3棟合わせて21テナントとなっている。このショッピングセンターは一定の規模をなすというために、被災していない外部からのテナントもいくつか入っているが、それも合わせた数である。
 大船渡市は、30者ということで、そういう計画で工事を進めている。
【産業再生課総括課長】
 各まちなか再生計画においては、大型商業施設、共同利用店舗などを核として、戸建ての商店等の再建なども含めて計画されている。
 大槌町については、現在、県と町、国とも協議しながら、まちなか再生計画の策定に向けて検討しているが、なかなか核となる大型店舗の確保が難しいといった状況や、なかなかテナントとして入る事業者の数が分からないといった状況があり、現在そういったことを見極めながら進めていると聞いている。

【斉藤委員】
 大槌町については、この間テレビでも紹介されていたが、末広町の中心部に再建する事業者が中心となって、どの事業者がどの場所にという図入りのチラシも示しながら、見通しよりも自らが町の復興のために取り組むということだった。いずれにしても、具体的な計画、ましてや中心市街地は復興の中心課題なので、しっかり支援してやっていただきたい。

・災害公営住宅のコミュニティの確立について

【斉藤委員】
 災害公営住宅も整備されてきたが、このコミュニティの確立、そして一人暮らし、高齢者世帯などの見守りが特別に重要になっていると思う。たとえば、陸前高田市の栃ヶ沢団地、300戸を超える最大規模の団地があるが、ここではどういう自治会の体制がつくられようとしているか。県営だといっても入居するのは市民なので、市とよく連携してやるべきではないか。陸前高田市では、下和野災害公営住宅に「市民交流プラザ」をつくり、いつでも誰でもそこに行って、憩いの場にもなり、相談もできると。そういう体制が栃ヶ沢公営住宅にも必要ではないか。そして高齢者などの見守りの体制はしっかりやられているのか。絶対に孤独死を出さない対策は必要だと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 見守りについては、仮設住宅と同様に、社協が雇用している生活支援相談員が個々の状況に応じた訪問頻度により見守りの支援を行っているほか、市町村が独自に雇用している各種支援員が災害公営住宅を巡回して見守りを行っている。さらには、地域によっては、老人クラブによる見守り活動など、住民が主体となった活動も行われている。
 コミュニティについては、ご指摘の通り栃ヶ沢団地は県内最大の災害公営住宅ということであり、県営ではあるが、建設部門の県と市の方々と定期的に完成前から、振興局が仲立ちになり意見交換をしてきた。現在話し合いが続いており、自治会の設立に向けて動いている。
【建築住宅課総括課長】
 栃ヶ沢団地では、そういった形で事前に集まりを設けて、住民の方の交流を深めていく、そのことがコミュニティの形成につながっていくと考えている。
 また、災害公営住宅コミュニティ形成支援事業という事業を行っており、そちらにおいてコミュニティ形成支援員というものを配置させていただき、入居開始から3年程度、住民の顔合わせのお手伝いをしたり、管理人をサポートさせていただいたり、そういった形でコミュニティの形成が促進して、孤立や引きこもりなどの解消を防止していくと、そういった形に持って行けるように取り組みを進めている。

【斉藤委員】
 栃ヶ沢団地については、陸前高田市が行っているような「市民交流プラザ」のようなものを整備すべきだと思う。県内最大規模の災害公営住宅で、集会所は別建ての棟で、円形で洒落た集会所だが、しかしそこに人はいない。そこに人が常駐して、いつでも交流・相談できるといった体制が必要ではないか。

【生活再建課総括課長】
 支援のあり方については、市町村が単独で被災者支援総合交付金を活用して雇用することもできる。そういった方法、それから、地域において住民が主体となった活動も必要だと思う。最終的にはやはり同じ地域で暮らす方々がお互いに支え合う仕組みづくりが重要だと考えているので、そういった方向に誘導できるように、市とも協議してどのように進めていくのか十分話し合っていきたい。