2016年11月11日 9月定例県議会本会議
議案および請願に対する千田美津子県議の討論全文
日本共産党の千田美津子でございます。
議案第23号、請願第15号、請願第16号、及び請願第23号の総務委員長報告に反対の立場で討論いたします。
・県営住宅の家賃滞納者への訴えの提起にについて
議案第23号は、「訴えの提起に関し議決を求める事について」であります。
多額の家賃の滞納に対する訴えを起こすというものですが、滞納者の実態は複雑で、低所得者や病気等、様々な問題を抱えている場合も多く、生活保護などの福祉的な施策が必要な場合もあります。
この間、一定の努力をされてきたことと思いますが、連絡が取れないことなどを理由に訴えを起こすというのは、問題があると考えますので、議案23号については反対をいたします。
・所得税法第56条廃止を求める請願について
請願第15号、所得税法第56条廃止を求める請願です。
所得税法第56条の要旨は、「事業主と生計を一にする配偶者、その他の親族が事業主からの対価の支払い、つまり給与を受ける場合には、その給与の額は原則として必要経費にならない」というものです。
つまり個人事業主が家族へ給与を支払ったとしても、それは必要経費にならず事業主の所得とされてしまいます。これが税法上の原則です。
この第56条が長年にわたり家族従事者の社会的、経済的自立を妨げています。このため、白色申告者の場合、息子さんが仕事を手伝っていた際に独立開業するということになれば、当然借り入れを起こしますが、その際に所得証明は専従者をとり、給与所得収入額が50万円、給与所得控除を引きますとゼロになります。
まさに、この第56条は、戦前の家制度の名残であり、男女共同参画社会基本法の趣旨からも受け入れがたい内容で時代遅れのものとなっています。国連の女性差別撤廃委員会からは、「労働の対価が税法で事業主の所得とされるのは人権侵害ではないか」と取り上げられ、異議が出ています。また、配偶者が交通事故に遭った場合などは、専業主婦の方より日額保障額が少なくなるという不具合が現実に起きています。
このように、所得税法第56条は、憲法、女性差別撤廃条約、男女共同参画社会基本法にも違反する時代遅れの条文だといわなければなりません。
また、税法上の問題で言えば、原則、個人の場合は白色申告です。青色申告は原則ではありません。税務署にお願いをして許可をもらってやるものであります。社会が大きく変わる中、同一生計であるというだけで、親族に支払う対価の経済性を一切認めないこの規定は、もはや多様な経済実態にそぐわないものであり、課税上、新たな不公平を生じる結果となっています。同一生計親族に支払う対価については、その適正な金額を必要経費とすることが、所得税法の本則からも当然であり、また対価の支払いを受ける側も所得とすることが相当です。労働に対して、正当な評価と報酬を得ることは当然の権利であり、自立して生きるための基本的な要件です。
私は、このような観点から、請願第15号、所得税法第56条廃止を求める請願は、採択すべきと考えます。
・「米軍元海兵隊員による女性殺害事件に強く抗議し、日米地位協定の抜本的見直し、海兵隊の撤退、米軍基地の大幅な整理・縮小を求める請願」について
請願陳情第16号は、「米軍元海兵隊員による沖縄での女性殺害事件に強く抗議し、日米地位協定の抜本的見直し、海兵隊の撤退、米軍基地の大幅な整理・縮小を求める請願」です。
今年4月末に沖縄県うるま市の20歳の女性が行方不明になり、嘉手納基地で働く元海兵隊員が容疑者として逮捕され、その後遺体が発見されるという痛ましい事件が起きました。実は、前の月の3月13日にもキャンプ・シュワブ所属の海兵隊員が那覇市内のホテルで観光客の女性を襲い、準強姦容疑で逮捕されています。
沖縄では、1972年の本土復帰から今年の5月までに、米軍関係者による犯罪が5910件発生し、凶悪事件は575件、レイプ事件は129件も起きています。
米軍は、事件のたびに「再発防止を行う」と言いますが、米軍基地がある故に多くの犠牲と過重な負担を強いられて来たのが沖縄であります。
今年6月、沖縄の怒りは沸騰し、那覇市内で被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会が開催され、6万5千人もの県民が参加しました。
しかも、女性に対する暴力は、1995年の少女暴行事件や55年の由美子ちゃん事件等に象徴される形で起こり続けており、米軍の駐留の中で起きているということは紛れもない事実であります。
そして、これらを可能にしているのが、日米安保であり、不平等な日米地位協定があり続けていることです。
これ以上、犠牲者を出さないためにも、請願項目にあるように、日米両政府が県民に対して謝罪し完全な補償を行うこと。米海兵隊の撤退及び米軍基地の大幅な整理・縮小を行うこと。日米地位協定の抜本的な改定、そして、普天間基地の無条件閉鎖と名護市辺野古での米軍新基地建設を断念することは急務であります。
よって、請願第16号、米軍元海兵隊員による沖縄での女性殺害事件に強く抗議し、日米地位協定の抜本的見直し、海兵隊の撤退、米軍基地の大幅な整理・縮小を求める請願は採択すべきと考えます。
・「安保法制の発動を許さず、自衛隊に『駆け付け警護』など新任務を付与せず、南スーダンからの撤退を求める請願」について
請願陳情第23号は、「安保法制の発動を許さず、自衛隊に「駆け付け警護」など新任務を付与せず、南スーダンからの撤退を求める」ものです。総務常任委員長の報告では、「安保法制の発動をやめ、多くの国民が望んでいる安保法制を廃止するよう国に求めること」は採択する一方で、安保関連法に基づく「自衛隊に駆け付け警護など新任務を付与せず、南スーダンから自衛隊を撤退するよう国に求めること」の請願項目は不採択とされました。これは論理的に矛盾するものです。
南スーダンの状況は、国連の報告書でも、今年の7月に、首都ジュバで、大統領派の政府軍と前副大統領派の反政府軍との間で戦闘があり、300人以上が死亡したとされています。政府軍による国連部隊、人道支援団体への攻撃、殺害、レイプも発生しています。その後も国内各地で戦闘が継続しており、内戦状態です。停戦合意はすでに破たんしており、自衛隊の撤退こそ必要です。こうした危険な状況の中で、11月に派兵される自衛隊、東北の部隊である第9師団第5普通科連隊に、安保関連法=戦争法に基づいて「駆け付け警護」の新たな任務が付与されようとしていることは、極めて重大です。「駆け付け警護」とは、国連の施設や他国の部隊が襲撃されたときに、自衛隊が駆けつけて救出をするということです。まさに「殺し殺される戦争」に巻き込まれることになります。国際紛争の解決にあたって、「武力の行使も、武力の威嚇も行ってはならない」という憲法9条を踏みにじるものであり、戦後初めて戦死者を出しかねない問題です。
とりわけ、派兵が予定されている部隊は、岩手県出身者を含む東北の部隊です。東日本大震災や台風10号災害での人命救助・救援復興に献身的に取り組んできた自衛隊員・若者を決して戦争に派兵してはなりません。
また、11月9日に開催された民進党、共産党、自由党、社民党の野党書記局長・幹事長会談では、ТPP承認案と関連法案徹底審議を求めることと合わせ、南スーダンPKOの「駆け付け警護の付与に反対する」ことも合意されています。国会でも選挙協力でも前進している野党合意を踏まえて、この請願項目が採択されますように、強く訴えます。
以上で反対討論とします。ご清聴ありがとうございました。