2016年11月16日 決算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)


・被災者の住宅確保について

【斉藤委員】
 本会議で、「仮設住宅入居者で、住宅確保の見通しが立っていない被災者が9月末現在で1088世帯・15.2%」という答弁があった。その後おそらく市町村では、さらに精査されているとは思うが、大変重大な実態ではないのか。住宅確保の見通しが立っていない主な理由、そして実態はどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 住まいの意向が決まっていない1088世帯のうち、未定(決まっていない)が349世帯・4.9%、未回答が739世帯・10.3%となっている。
 未定の方の理由については、調査を行っている市町村にお聞きすると、家を建てるか災害公営住宅に入るか、金銭面や家族内での意見が分かれていることで迷われている方が多いと聞いている。

【斉藤委員】
 住宅再建か災害公営住宅かというのは大変重要な選択だが、これは住宅確保に向かう方向である。心配するのは、自立再建でもなく災害公営住宅にも入れない方々がおられるのではないかと思うが、実態は把握されているか。

【生活再建課総括課長】
 決めかねている方の中には、たしかに災害公営住宅の家賃といったところを懸念されている方もいるということは承知している。災害公営住宅については、家賃の軽減措置もとられており、家庭の状況などを把握し、関係の福祉機関につなげるといった支援を行っている。

【斉藤委員】
 県は、沿岸4箇所の被災者支援相談センター、そして岩手内陸避難者支援センターを設置し、住宅確保を含めた相談などに対応していると思うが、この相談内容・件数はどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 被災者支援相談センターでは、相談員による相談のほか、生活設計の専門家であるファイナンシャルプランナー等の専門家を派遣して相談を行っている。
 相談員による相談件数は9月末で、23年度からの累計で22021件。内容としては、住宅に関する相談がもっとも多く約半数を占めているほか、生活上の問題・健康・人間関係に関する相談等が約2割となっている。
 専門家相談については、8月末の累計で2296件であり、司法書士の相談が800件ともっとも多く、ファイナンシャルプランナーが500件となっている。
 岩手内陸避難者支援センターについては、5月に設置しスタッフ7名を配置しているが、内陸および県外に避難している方にたいし、沿岸市町村からの依頼を受け、住宅再建の意向調査を行っているほか、内陸等に避難されている方からの相談にも対応している。相談件数は9月末で945件、内容としては、経済的な問題、子どもの教育のことで再建場所を迷っているといったことなどさまざまあるが、実際に訪問している職員に聞くと、複数の問題を抱えているという方が多いとの報告を受けている。

【斉藤委員】
 知事は、被災者の最後の一人一人まで生活再建を支援すると、こういう立場は大変重要だと思うし、そういう意味でこれから一人一人に寄り添って、困った人が残っているので、しっかり支援を強めていただきたい。
 住宅再建の相談に関わり、先日弁護士と懇談した。そのときに、弁護士の相談の中で多いのは、被災者生活再建支援金の申請期限が平成30年4月10日までで、これでは間に合わないという人たちがいると。これは延長されるものと思うが、その点での見通しはどうか。

【生活再建課総括課長】
 加算支援金の延長について、1年前から協議という形にはなっているが、まちづくりの整備状況等を考えると、延長は不可欠だろうと考えている。つきましては、現在、宮城・福島等とも連携し、延長について要望する方向で進めている。

【斉藤委員】
 もう1つ弁護士さんから指摘されたのは、住宅の二重ローン問題であった。相談はあるが、このガイドラインに引っかかってしまうということで、家を建てたいが二重ローンを抱えたままで住宅再建の見通しが立たないということだった。二重ローンが適用になった件数、申請件数はどうなっているか。認定されない主な問題はどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 今年9月30日までのガイドラインの相談件数は、県内1100件、うち債務整理が成立したのが356件となっている。成立しなかった理由だが、個別の案件で我々も詳細には把握しかねるところがあるが、1つは、債権者全員が合意しないと成立しないという仕組みになっているので、制度的な問題があると。それから、実際に適用にならなかった方からお聞きした中では、資産があって認められなかったようだと聞いている。

【斉藤委員】
 1100件の申請で356件・35.6%しか債務整理されなかったということで、新しい制度なので、改善を強く求める必要があるのではないか。
 特に共働きの場合は、収入基準で引っかかるとか、債務の比率で引っかかるといったことも聞いているので、ぜひ把握して改善を求めていただきたい。

・被災者の見守りとコミュニティの確立について

【斉藤委員】
 仮設住宅、災害公営住宅の高齢者や一人暮らし高齢者の実態と見守りの体制、取り組みはどうなっているか。

【生活再建課総括課長】
 数値については、市町村の調査自体が異なることから県全体の割合で答弁すると、仮設住宅に入居している65歳以上の高齢者のみの世帯は全体の約3割、このうち約6割が一人暮らし世帯となっている。
 災害公営住宅に入居している65歳以上の高齢者のみの世帯は全体の約4割となっており、このうち一人暮らし世帯は約7割となっている。
 仮設住宅や災害公営住宅に入居している高齢者に対しては、市町村社協の生活支援相談員や市町村の支援員等が、個々の世帯の状況に応じた頻度により訪問活動を行っているほか、地域によっては老人クラブ等による見守りなど、住民が主体となった活動も行われている。

【斉藤委員】
 たとえば、重点見守り、通常見守りではどれぐらいになるのか。

【生活再建課総括課長】
 今年の8月時点で、重点見守りの対象世帯は1289世帯、通常の見守り活動を行っている世帯が8687世帯、不定期の見守り活動を行っている世帯が4381世帯となっている。

【斉藤委員】
 今の答弁でも、災害公営住宅の場合は高齢者が4割で、そのうち7割が一人暮らしだと。高齢者の見守りは、災害公営住宅の場合ほとんど月1回である。仮設では毎週だが。これだと十分な見守りにならないのではないか。そして災害公営住宅は、一定の居住性があるので、ますます外に出なくなってしまう。引きこもりがちになってしまう。今は仮設も災害公営住宅も見守らなければならない状況だが、災害公営住宅の高齢者の見守り体制をさらに強化する必要があるのではないか。阪神大震災では、20年経っても孤独死が今でも発生し、20年間で1063名に及んでいる。それは災害公営住宅に入ってから主に起きている。1つの見守りの転換点だと思うので、そのことをぜひ見守る以上に強化する必要があるのではないか。
 陸前高田市の下和野災害公営住宅の1階に「市民交流プラザ」を設けている。誰でもそこで交流できる、相談機能も持っている。そして「市民交流プラザ」を県営の中田団地にも整備するという話だった。県営の栃ヶ沢団地という300戸の最大規模の団地にも、こういう場所が必要だと思うがいかがか。

【生活再建課総括課長】
 災害公営住宅に入居されている方々の孤立化を防止するためには、生活支援相談員等による見守りのほか、地域による支え合いが重要だと認識しており、陸前高田市が設置している「市民交流プラザ」は先駆的な取り組みだと認識している。
 コミュニティ形成のための支援としては、国の被災者支援総合交付金により、支援員を配置することが可能になっているので、地域によりどのような支援体制が望ましいのか、市町村の考えもお聞きしなければならないので、よくお聞きしながら対応していきたい。

【斉藤委員】
 災害公営住宅の場合、県営と市町村営で約半々の割合、規模ではどちらかと県営の方が大きいので、市町村とよく連絡を取って、県営だから県がやるという単純な話ではなく、そこで生活するのは市民・住民なので、見守りの体制や「市民交流プラザ」の経験も生かせるようにしていただきたい。
 見守りの問題でもう1つ、被災者の状況の中で、「県内在宅」という被災者が10月末で7127世帯・15232人もいる。みなし仮設を含めた仮設暮らしの方々が7214世帯・15881人なので、ほぼ同じぐらい在宅の被災者がいる。この実態を把握する必要があるのではないか。そしてそこに必要な支援を強化する必要があるのではないか。どのように実態を把握しているか。

【生活再建課総括課長】
 ご指摘のあった7214世帯というのは、仮設住宅から恒久住宅に移行した後も見守りが必要だと考えている世帯も入っており、当方で把握している数字では、住宅被害を受け生活再建支援金加算支援金を受給し補修して住んでおられる世帯は9月末で2915世帯になっている。
 在宅の被災者に対する支援については、生活支援相談員の方々は、仮設住宅や災害公営住宅だけでなく地域を回っていただいており、支援が必要とされた世帯については見守り活動を行っているほか、我々も市町村との意見交換の際に、在宅被災者の状況について機会あるごとにお聞きしている。その中では、民生委員などもいるので情報はあがってきているが、ただし、自宅の補修費用が捻出できないがために、補修できない状態でお住まいの方もいるということも聞いている。

【斉藤委員】
 災害救助法で応急修理をした世帯もあると思うが、これは何世帯になるか。

【生活再建課総括課長】
 応急修理をした件数については、23年度2730世帯、24年度12世帯で、計2742世帯となっている。

【斉藤委員】
 被災者生活再建支援金の場合は、全壊・大規模半壊が対象なので、半壊や一部損壊で応急修理をしたが改修できていない世帯も少なくないので、正確な数を把握して、実態調査もしっかりやるべきである。石巻市あたりでは、弁護士やNPOも入って、深刻な実態が明らかになっているので、ぜひそういう方向で対応していただきたい。

・災害援護資金の問題について

【斉藤委員】
 災害援護資金の活用状況はどうなっているか。保証人を付けずに活用した件数・比率はどうなっているか。
 災害援護資金を借りた人が、不幸にも死亡した場合、法律上は返済を免除する規定があるが、そういうことをきちんと説明して対応しているか。

【生活再建課総括課長】
 28年3月末までの貸付実績は、1002件・25億4026万円余となっている。うち、保証人を付けずに貸付決定されたのは、550件・54.9%となっている。
 死亡した場合の対応については、災害弔慰金の支給等に関する法律では、死亡した場合には市町村は償還を免除することができるという規定にはなっている。ただこの解釈だが、死亡により当然に免除されるものではなく、民法の規定にしたがい、債務についても相続の対象となることから、死亡された場合には、相続人または保証人にたいし返済を求めるという扱いとされている。なお、市町村に対しては、相続放棄することもでき、限定承認することもできる。そういったことを説明した上で、債務者の変更へ続きをとるように依頼したところである。

【斉藤委員】
 保証人なしが550件・54.9%と。残念ながら原則保証人ということで、借りにくくなったということは繰り返し指摘してきたので、保証人付けなくてもいいという対応ができるので、徹底していただきたい。
 死亡した場合のケースは、弁護士さんからそういう事例があったということなので、建前はきちんと説明することになっていると思うが、結局返済してしまえば相続放棄もできなくなってしまう。大変シビアな問題なので、きちんと説明した上で対応していただきたい。

・復興基金、学びの希望基金の活用状況について

【斉藤委員】
 復興基金の活用状況はどうなっているか。28年度末でどこまで活用になるのか。今後の見通しとして、いつまでもつのか。
 学びの希望基金の総額はどうなっているか。主にどういう分野にどれだけ活用されたか。今後さらなる支給の拡充はどう検討されているか。

【復興推進課総括課長】
 これまで復興基金として約725億円積み立てており、うち約425億円を市町村に交付し、残りの約300億円を県として活用している。
 活用状況は、27年度においては、暮らしの再建として、住宅再建費用の一部助成や国保・後期高齢者医療制度における一部負担金免除に要する経費など15事業、安全の確保としては、再生可能エネルギー導入促進に向けた環境整備、生業の再生としては、中小企業の事業再開や被災地における起業の支援・産業創出など計23事業、約34億円を活用してきた。その結果、27年度末の残高は約128億円となっている。
 今後の見通しとしては、28年度においては、約54億円の活用を見込んでおり、28年度末の残高は約74億円と見込んでいる。
 今後においては、被災地域の状況やニーズを的確に把握し、毎年度の予算編成の作業の中で復興基金の活用について検討していく。
 学びの希望基金について、寄付金の総額については、9月末現在で85億5578万円余となっている。
 基金の活用状況については、奨学金の給付事業、教科書購入、運動部・文化部のクラブ活動費などにつかっている。28年度からは、被災地の文化芸術支援、地域コミュニティ再生支援など8事業を追加して実施している。
 今後の見通しだが、被災地の子どもたちの健やかな成長のためには、息の長い継続した支援が必要である。たとえば、奨学金給付については、現在のところ最長で平成45年度までを想定している。新たな事業の実施については、基金の状況や寄付者の意向も尊重しながら、今後生じてくるさまざまなニーズに対応して、各部局と連携して検討していきたい。