2016年11月16日 決算特別委員会
警察本部に対する質疑(大要)
・東日本大震災津波の行方不明者の捜索活動について
【斉藤委員】
先日も、陸前高田市の古川沼で大規模な捜索活動が行われたが、この間の捜索活動の取り組み、成果・結果はどうなっているか。
【警備部長】
東日本大震災津波から5年8ヶ月が経過したが、これまで県警としては、発災年である23年は他都道府県からの応援派遣をいただきながら、ほぼ連日の捜索活動を行っている。
24年以降は、各月命日を中心とした沿岸警察署単位の捜索活動、節目となる3月と9月には、本部および内陸の警察署員を動員した集中捜索を実施している。
昨年は延べ63回、約1100人を動員し捜索活動しており、本年も、11月11日には陸前高田市の古川沼において、海上保安部等と連携して実施した捜索をはじめ、延べ46回、約750人を動員して実施している。
行方不明者については24年12月を最後に、行方不明者に関連する所持品は26年9月を最後に、残念ながら発見には至っていない。
【斉藤委員】
今後の取り組み方針はどうなっているか。
【警備部長】
行方不明者ご家族の要望や防潮堤工事にともなう排水作業などで、新たに捜索可能になるという場所が生じていることなども踏まえ、これまでの手段・方法を見直すなどしながら、行方不明者ご本人はもとより、所持品など縁になる物でも発見したいという思いを持ち、海上保安部等関係機関と連携のもと、先ほど述べたような捜索活動を継続していく。
震災行方不明者の捜索と合わせ、8月の台風10号豪雨災害による行方不明者の捜索についても、機動隊等の動員や消防など、関係機関と連携し必要な体制をとり実施していく。
【斉藤委員】
1123名という行方不明者、これ自身が大変な被害であり、遺族・家族の方々はこの痛みをいまだに引きずっているので、湾内の捜索もしてほしいというのが切実な要望である。古川沼の場合には、大学とも連携して、海中のがれきのあるところを集中的に捜索するという、捜索もかなり進んだ形であるので、毎月とはいかなくても、3月・9月といったときにはそういう形でぜひ捜索活動を効果的に進めていただきたい。
・東日本大震災津波被災者の孤独死・震災関連の自殺について
【斉藤委員】
東日本大震災津波被災者の孤独死・震災関連の自殺の状況はどうなっているか。災害公営住宅での孤独死・震災関連の自殺を含めて示していただきたい。
【刑事部長】
孤独死の定義については、不明確な部分もあり、県警が取り扱ったご遺体のうち、死亡時に応急仮設住宅または災害公営住宅に単身で居住され自宅内で亡くなられた後に発見された方で、自殺者の数を除いた人数を申し上げる。仮設住宅については、本年9月末までで33人、災害公営住宅においては4人が亡くなっている。なお、災害公営住宅の孤独死については、警察が統計を取り始めた平成27年2月から本年9月末までの数である。
震災関連の自殺者数については、発災から本年9月までで39人と把握している。
【斉藤委員】
39人のうち、応急仮設住宅に関わる方、そして災害公営住宅に関わる方はどうなっているか。
【刑事部長】
細かい部分については、個人のプライバシー等いろいろあり、公表していないのでご理解いただきたい。
【斉藤委員】
災害公営住宅での孤独死・自殺者を合わせれば8名になるのではないかと思うが、この数を見ると、昨年4人で減っていない。まだまだ被災の大変な痛み、生活苦その他あると思うので、しっかり対応していただきたい。
・県警本部職員の超過勤務の実態と手当の支給状況について
【斉藤委員】
一人あたりの平均、超過勤務手当の支給率・不払い額はどうなっているか。
【警務部長】
昨年度の警察職員の超過勤務は、月平均一人あたりで約21.1時間、超過勤務手当は、月平均一人あたり約18時間になる。超過勤務時間数に占める支給時間数の割合は約85%となっている。
不払い額については、職員の超過勤務時間数および時間単価には個々に差があるので、一概には算出できない。
【斉藤委員】
毎回この問題は取り上げ、支給率は約85%ということで、率そのものは改善していると思うが、超過勤務をして85%しか払われていないというのは違法行為である。県警が違法行為をしてはいけないと思う。基本的に、超過勤務時間数を正確に把握していることは評価するが、15%不払いというのは大きい。支給対象人員が2232人なので、一人あたり月3時間、年間で37時間不払い賃金ということになるので、平均賃金でかければだいたいの概算は出ると思うが、解決に向かって努力しようとしているか。
【警務部長】
超過勤務については、職員の健康保持、勤務環境の改善の観点からも縮減することが大切だと認識しており、業務事務の合理化・効率化を推進している。また、署長会議や各地の幹部の会議等において、繰り返し超過勤務の縮減について具体的な指示を行っており、幹部職員をはじめとする職員全体の労働時間短縮に関する意識改革を行っている。
またリフレッシュデーの設定を行い、定時退庁の促進、週休日に超勤を命じた場合には振り替えするという形で、超過勤務縮減に向けて取り組んでいる。
今後においても、事務の合理化・効率化を推進し、超過勤務の縮減に向けた取り組みを継続するとともに、勤務実態の把握に努め、突発的な事案に対処する必要がある場合には、所要の措置を講じていきたい。
【斉藤委員】
超過勤務を縮減することはいいが、超過勤務をしたらきちんと手当を出しなさいと、15%が不払いだと指摘した。これを解決する方向に努力するのか、しないのかと聞いたので。
過労死ライン―80時間を超えて超過勤務をした職員はどのぐらいいるか。
【警務部長】
まずは超過勤務時間を縮減していきたいと考えているが、合理化・縮減に向けた努力を継続していきたいと思っているが、突発的な事案等に対処する必要がある場合には、所要の措置を講じるなど対策をとっていきたい。
80時間を超えた超過勤務については、県警では労働安全衛生規則に基づき100時間を超える超過勤務をしている職員を把握しているが、その数字では、27年度は延べ20人となっている。
【斉藤委員】
不払い労働を解消しようとしているのかどうかを聞いたので。率直に言うと、一人あたりの超過勤務時間数は、この間だいたい18時間前後で縮減されていない。
・捜査報償費について
【斉藤委員】
捜査報償費はこの間どう推移しているか。捜査報償費は何に使われているのか。今でも前払いなのか。
【警務部長】
盛岡の推移では、平成23年度1499万円、24年度1234万1千円、25年度1149万円、26年度1067万9000円、27年度1072万9000円となっている。
捜査報償費の用途については、捜査協力者・情報提供者への謝礼、これらの捜査協力者等との接触に際しての交通費、聞き込み・張り込み・尾行等に必要な交通費や通信費といったものに使用している。
捜査報償費の執行については、執行の事前・事後に所属長等による承認・確認がなされ、その結果として精算している。
【斉藤委員】
23年度以降の5年間で、捜査報償費は3分の2程度に減少している。今まで取り上げてきた効果があると思っているが、ただ当初予算は27年度1600万円余、今年度も1600万円余で、かなり実態と乖離があるのではないか。3分の2程度で推移しているのなら、予算も縮減すべきではないか。
【警務部長】
捜査報償費の執行額は、事件の規模・性質・形態・捜査の期間など、さまざまな要因によるものであり、単純に事件が多いとか少ないをもって執行費が決まるものではない。年々下がっているということだが、増減が寄与するものではない。
予算については、その年その年に必要な予算を積み上げているところである。
【斉藤委員】
捜査報償費の問題をなぜ取り上げているかというと、裏金に使われているという指摘が警察幹部職員から告発があり、それが大きな政治問題になった経過があるからである。捜査協力者や情報提供者にお金を渡すわけなので、本当にそれが渡っているのか、いないのか。
昨年度の捜査報償費、全体としては、本部や警察署で減少しているが、2倍以上に増えたところが捜査第二課で、69万8000円余から146万円に増えている。二戸署では40万4000円から81万6000円に増えている。倍に増えるのは尋常ではない。特別な重大な事案や理由があったのか。
【警務部長】
執行額については、事件の規模や性質、形態、捜査の期間によるものであり、執行額の増減については、事件捜査を行った結果であるので、理由を一概に申し上げることはできない。
【斉藤委員】
そういう答弁が疑惑を深める。少し増えたのではなく倍増している。なにか重大な事案が発生したのか、そういうことしか考えられない。そのことにも触れられないのか。全体として刑法犯は減っている。捜査報償費も減って当然ではないか。そういう中で特別に増えているところの理由があるのではないか。
【警務部長】
執行額は、事件の規模や性質、形態、捜査の期間などさまざまな要因により増減するものである。刑法犯が減っているからという理由で、減るといった性質ではなく、さまざまな要因によるもので、執行額の増減については、事件捜査を行った結果であるので、理由を一概に申し上げることはできない。
【斉藤委員】
疑惑は深まったとしか言えない。
・警察本部職員の天下り、再就職について
【斉藤委員】
昨年度・今年度の天下り、再就職の実態はどうなっているか。
【警務部長】
いわゆる天下りについてだが、定義が明確ではないが、警視正以上の階級にある警察官の再就職先の状況については、国家公務員法に基づき内閣が公表している。
昨年度は、公益社団法人日本防災通信協会、学校法人岩手医科大学、岩手県ハイ・タク交通共済協同組合。今年度は、株式会社岩手銀行、東北電力株式会社、損害保険料率算出機構、株式会社東北銀行に再就職している。
【斉藤委員】
大変優良な企業に天下っている。
昨年岩手医科大学に天下りしたのは、刑事部長だった。そして、そのときに発生した事件が、岩手医科大学元教授の覚醒剤疑惑だった。こういう疑惑が発生して、本来徹底して捜査すべき刑事部長が、その捜査をうやむやにして当該大学に天下るという、これは県警自身が自ら正さなかったら県民の信頼を得られないと思うがいかがか。
【刑事部長】
捜査されたかどうかという質問だが、個別の事案について捜査しているか否か、あるいは捜査状況について具体的な事柄については答弁を差し控えさせていただきたい。
一般論では、警察は、犯罪があると思量した場合には、法と証拠に基づき適正に捜査を尽くしたところである。
【斉藤委員】
今の答弁だと、捜査しなかったという答弁である。捜査していたら、その刑事部長が当該大学に再就職するなどあり得ないのではないか。
【刑事部長】
個別の事案については、捜査したか否かも含め答弁は差し控えさせていただきたい。
しかしながら、県警においては、法と証拠に基づきこれまで適正な捜査に努めてきた。今後も努めていく所存である。
【警務部長】
捜査については、警察は、犯罪があると思量した場合には、法と証拠に基づき適正に捜査を尽くしたところである。
退職者の再就職については、民間企業がどのような人材を必要とし、どのような採用を行うかは、あくまで当該企業の独自の裁量と努力によるところであり、再就職は雇用主と退職者本人の雇用契約に基づいているものと承知している。
【斉藤委員】
岩手医科大学は調査委員会をつくったが、調査委員会は調査結果を明らかにしていない。これまた大学自身がうやむやにした。引き続きこの問題は取り上げていきたい。
・児童虐待の取り組み状況について
【斉藤委員】
児童虐待の県警本部への通報、県警の対応、児童相談所への通告の状況はどうなっているか。
【生活安全部長】
児童虐待事案を認知した場合には、警察官や少年補導職員が早期に現場に臨場し、直接児童の安全確認を行い、虐待事実が確認された場合や、虐待が疑われた場合には速やかに児童相談所へ通告するほか、暴行や傷害など具体的な法令違反があった場合には所要の捜査を実施している。
現場において、通告の必要がないと判断した場合においても、児童相談所や市町村等にたいし、当該児童にかかる過去の取り扱い状況等について確実に事前照会を実施し、それにより得られた情報について十分勘案した上で通告の要否を判断している。
平成28年9月末現在の虐待による通告件数は429件であり、前年同期比で254件増加している。平成27年は253件の通告がなされており、平成12年に児童虐待防止法が施行されて以来最多となっている。
【斉藤委員】
大変急増している理由は何か。
虐待の中身を見ると、一番多いのが「心理的虐待」で297件。現場で聞くと「面前DV」の通報が多いということだったが、心理的虐待の増えた理由、その中身はどうなっているか。
【生活安全部長】
急増した理由は、お話の通り心理的虐待による通告の増加が大きな要因になっている。
具体例で見ると、たとえば夫婦間での暴力事案を認知した際に、児童に与える心理的影響の重大性を考慮し、その事案が児童の目の前で行われたものか否かの聞き取りを徹底し、確実な通告に努めたため急増したものと考えている。