2016年11月16日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・JR大船渡線のBRTによる本格復旧について

【斉藤委員】
 昨年12月25日、JR東日本から、大船渡線の鉄路復旧はしないと、BRTで本格復旧するという方向が出された。大船渡線が全線開通して80年を迎える年に鉄路が分断されたということは、本当に残念なことだったと思う。
 BRTによる本格復旧という中身はどういうものか。

【交通課長】
 本格復旧にあたっては、まず復興まちづくりの面的整備―陸前高田市の中心市街地のかさ上げの完成などを見据えながら、BRTの運行ルートを固めることが1点。その上で、鉄道敷きを専用道にするなど、専用道の比率を高め、合わせてBRTの駅を整備していくと、こういったところが主な復旧の内容となる。
 現在JRにおいては、BRTの運行ルート、専用道の整備の検討をしており、専用道の比率については、最終的に大船渡線全線の50%程度まで高め、定時性と安全性を確保していく予定と聞いている。

【斉藤委員】
 もう少し正確に答えてほしいが、12月25日にJR東日本が出したペーパーがあるが、BRTの存続、地域交通の活性化への貢献、交流人口拡大に向けた利便性の向上、産業観光の振興による地域の活性化―これらについて今後の協議を進めていくという中身だった。
 現在のBRTは、震災前の鉄道の利用者と比べてどうなっているか。

【交通課長】
 被災前のJR大船渡線の平成22年度については、一日あたりの輸送密度は426人となっている。25年度にBRTによる仮復旧という形になり、BRTでの輸送密度は200人となっており、震災前の輸送密度の半分程度から始まったが、26年度には250人、27年度は314人となり、震災前の約7割の利用水準となっている。
 BRTについては、ルート設定、ダイヤ編成の柔軟性などの特性を発揮しながら、徐々に地元の足として定着しているものと考えている。

【斉藤委員】
 まちづくりや復旧事業が途上なので、そのことを考慮しても7割しか復旧していない。やはり通院・通学、乗り切れない、ぎゅうぎゅう詰めで高校生が通学せざるをえないという事態は今でも解消されていない。そういう意味では鉄道の方が利便性は良かったと思わざるを得ない。やはり震災前の状況に復旧するような手立てを、JRとしてもさらに取るべきだと思う。
 「交流人口拡大に向けた利便性の向上」の中で、「BRTと鉄道との接続・利便性向上に取り組んでいくとともに、新幹線との接続・改善や、新幹線駅へのアクセスの利便性向上に向けて検討を進める」と書いている。この中身を踏まえて、陸前高田市から一関市にBRTを運行させるという協議が行われているということを聞いてきた。この状況を県としてはどう把握しているか。

【交通課長】
 陸前高田市から一関市までBRTが延伸して直通で行くという話については、話としては聞いている。この話の流れについては、陸前高田市だけではなく大船渡市も、新幹線駅へのアクセス改善ということを当初から求めており、そのような話の中で、陸前高田市から一関市までBRTをそのまま変更できないかという提案があったものと承知している。
 協議状況については、JR東日本では提案として前向きに受け取り、BRTを今運行しているバス会社の方に、できるかできないかといったところを協議しているというところで、その経過としては、途中経過だが、1つは、陸前高田から一関まで行くためには、国道343号線「ループ橋」を通らなければならないが、こちらは冬場に運行するのが安全性を確保するのが大変だというバス会社の話、そこを通った場合に、JR大船渡線の気仙沼と一関間―これは鉄路で残っているが、そことの利用競合になり、鉄路の利用者がそちらに吸われてますます鉄路の利用者が少なくなる問題、あるいは、これはバス側だが、一関までの運行に回せるBRTの車両や運転手が不足しているという、いろいろな問題点があると聞いている。

【斉藤委員】
 これはJRが自ら本格復旧の中身として「新幹線との接続・改善や新幹線駅へのアクセスの利便性の向上に向けて検討する」と、鉄路を分断する代わりにこういう提案がされている。これを真剣に受け止めていただきたい。
 いま大船渡市・陸前高田市の方々は、新幹線を使うときは自家用車で行かざるを得ない。そのルートがいわゆる笹ノ田である。答弁で重要だったと思うのは、バス会社が「冬場は343号は安全性に問題がある」と。これは本当に県当局も真剣に受け止めて、せっかくJR側から提案したわけなので、これを実らせると。そして、それに対応した新車両を開発すべきだと思う。もっと小型の小回りの利くようなものであれば可能だと思うので、その点で、JRからの提案を本当に最低限の問題なので、必ず実らせるように県も全面的に支援していただきたい。

【政策地域部長】
 ご指摘のようにJRからの提案である。ただちに解決する話ではないが、三陸道の状況なども見据えた回答もあったのかと思う。JRとの交渉、県も仲立ちしながら進めていきたい。

・JR山田線(盛岡・宮古間)の土砂崩壊の復旧状況と見通しについて

【斉藤委員】
 JR山田線(盛岡・宮古間)の土砂崩壊の復旧状況と見通しについてお聞きしたい。

【交通課長】
 昨年12月に、宮古市門馬地区で土砂崩落が発生し、現在まで運休が続いている。この間、JR・県・宮古市・林野庁といった関係者で構成する「山田線土砂崩壊に関する斜面防災協議会」を開催し、復旧に向けた検討を行ってきた。この協議会、今年7月7日に開催し、ここで復旧方針が決定している。中身としては、崩壊した地域の崖、かなり大規模な崩壊だが、この上部の土砂の撤去、あるいはアンカー杭を打つという工事について林野庁が行い、上の部分の崩壊を抑え、そうした上で、JRが現在下で放置されている車両の撤去にかかり、下の崖にアンカー杭をJRが施工し、崩壊地全体の安全性を確保して、その後に鉄道の復旧、運行の再開を図るという方針になっている。
 この工事は9月から本格的に林野庁が開始しており、年度内には終える予定になっている。その後、おおむね来年秋ごろまでを目途にJRが崖の下の工事を完成させ、その後すみやかに鉄道の運行再開を図る予定と聞いている。

【斉藤委員】
 復旧方針も決まり、工事も始まって、来年秋までに工事も終わると。その後車両の撤去、鉄路の復旧となると思うが、ぜひ前倒しでも復旧が進むようにお願いしたい。

・情報通信基盤整備と災害復旧について

【斉藤委員】
 国の補助制度を活用して、光ファイバーやテレビ共同受信施設等の情報通信基盤を整備してきた市町村の状況はどうなっているか。

【情報政策課総括課長】
 情報通信基盤整備については、国の補助制度を用意し、条件不利地域の市町村の整備を支援している。特に東日本大震災津波の際には、被災市町村にたいし、国の特例措置により情報通信基盤整備の災害復旧および地域課題解決のための新たな情報通信基盤整備等へ財政措置として補助制度が創設されている。1つとして、情報通信基盤災害復旧事業、これは沿岸市町村を中心に7市町村で事業費約11億円余、また被災地域情報化推進事業として16市町村で事業費総額85億7400万円余の事業、2つの事業を合わせ96億8000万円の事業を実施している。国からは、補助総額として約35億8700万円余の措置があるほか、市町村負担分については、震災特別交付税の措置がなされている。
 ちなみに、今回の台風で大きな災害を受けた岩泉町では、この2つの震災特例の補助のほか、被災市町村以外も対象としている条件不利地域の光ファイバー整備の事業に対する国の補助制度を活用し、24年度から総事業費約22億7400万円余の事業を実施し、国からは補助として約7億5000万円余の補助を受けている。

【斉藤委員】
 国の補助を受けた情報通信基盤整備については、東日本大震災津波でも被害を受けて、このときには特措法があったので、3分の2補助、3分の1も特別交付税の措置で全額措置で復旧した。
 それで、今回の台風災害も、災害の規模とすればそれに匹敵するような災害、特に岩泉町はそれを超えるような災害だと思うが、台風10号豪雨災害の被災状況はどうなっているか。

【情報政策課総括課長】
 市町村では、先ほどご紹介したような国の補助制度を活用し、情報通信基盤整備に努めてきたが、今回の台風10号豪雨災害では、6市町で光ファイバーおよび携帯基地局など概算で15億9000万円余の被害を受けた。あわせて、テレビの共同受信施設については、基本的に地域の世帯で構成される協同組合で整備・管理されているが、こちらは岩泉町および久慈市において、概算で3億7000万円の被害が出ている。こちらの共聴施設の被害については、現在被害額も含め詳細の調査を取りまとめ中とうかがっている。

【斉藤委員】
 東日本大震災津波では、特措法に基づき、国庫補助・災害復旧の制度はなかったが、これはきちんと対応された。国庫補助で整備していながら、災害復旧の制度がないのは欠陥だと思うので、ぜひこの機会に国に対して災害復旧の制度をつくるなり、やはり東日本大震災津波被災地での二重の被災になっているので、大震災並みの復旧策が講じられるよう、県も努力していると思うが、そういう手立てをしっかりとっていただきたい。

【政策地域部長】
 県としても情報通信基盤は、道路や上下水道と同じような生活インフラと考えている。この制度がないということについては、総務省にも要望に行っている。現在のところ、残念ながら明確な答えは得られておらず厳しい状況だが、国の三次補正という話も聞いているので、そういうものを見据えながら要望活動をさらに続けていきたい。

【斉藤委員】
 これは政権党の方々も頑張っていただきたい。こういうことを岩手から正していくということでやっていただきたい。

・特定被災地交通調査事業について

【斉藤委員】
 特定被災地交通調査事業の実施状況はどうなっているか。来年度の見通しはどうなっているか。

【交通課長】
 昨年度においては、10市町村91路線にたいし、3億4558万円余の補助が行われている。今年度は、7市町村67路線にたいし、2億6407万円余の補助が交付決定されている。
 来年度の見通しは、この事業については、被災地の仮設住宅と医療機関や商業施設・公共施設などを結ぶ交通を確保するための調査実証運行を支援するものであり、当初23年度から27年度までの時限的措置とされていたが、県では、いまだ復興まちづくりの途上であることから、期限の延長を国に働きかけてきたところであり、国においては平成32年度までの継続を決定した。したがい、来年度もこの事業を活用し、被災地のコミュニティバス・デマンド交通などの運行が可能となることから、引き続きこの事業を活用した市町村の交通再建の取り組みを支援していく。

【斉藤委員】
 平成32年度までの継続が示されたことは一歩前進だと思うが、答弁あったように、「仮設団地を回る」という条件になっている。今年度中に8〜9割災害公営住宅が完成し、高台に防集団地が形成されている中で、そういうところを回るようなものにしないと効果が発揮されない。
 実は先日、国の復興委員会が開かれて知事も出席したようだが、ここで、復興創生期間における東日本大震災津波からの復興のこの間のまとめの骨子案というのが出されたが、ここでは、「新たな町での交通網の形成」が今後の課題として提起されている。国もそういう認識なので、これにかみ合った手立て・対策が講じられるように強く求めていただきたい。

【交通課長】
 先ほどご説明した調査事業という部分、かなり被災地の交通の再建には役立っていると思っており、ただ、ご指摘の通り「仮設団地を通るもののみしか補助しない」ということである。やはり復興の現状に必ずしも即した制度になっていないということで、県では6月の政府予算要望において、高台団地や災害公営住宅などに生活拠点がどんどん移っているので、そういったところも幅広く加えて、柔軟な制度設計にしてほしいという要望をしている。この事業の被災地交通に果たす役割は非常に大きなものと考えているので、引き続き国に対して要望していきたい。

・ILCの動向について

【斉藤委員】
 国、有識者会議の検討状況はどうなっているか。
 東北ILC準備室、岩手ILC準備室、庁内の研究会の体制、機能と役割はどうなっているか。
 ILC誘致、私たちは科学技術の発展には賛成の立場だと言ってきたが、少なくない県民の中には、将来、使用済み核燃料や核のゴミの最終処分にされるのではないかという不安の声も寄せられている。この不安を払拭すべきだと思うがいかがか。

【ILC推進課長】
 国においては、平成25年5月に日本学術会議に審議以来し、同年9月に回答を受け、有識者会議を26年5月に設置し、ILCについて具体の議論を開始している。同会議では、素粒子原子核物理作業部会と、技術設計報告書検証作業部会を設け、素粒子の部会では8回、技術の部会では6回の会議を経て、27年6月に中間取りまとめを行った。同年11月には、人材確保育成方策検証作業部会を設けて議論を進め、28年7月には取りまとめを行っている。このようなことから、国として検討すべきおおむねの方向性が見えてきたと考えている。
 東北ILC準備室については、鈴木岩手県立大学長を室長に、産学官が連携した組織で、広報・地域・技術・産業の4部門で構成されている。この体制により、東北地域の受け入れ体制の準備を進めるための具体の検討を始めたところである。一方、岩手ILC連携室は、東北ILC準備室の設置を受け、県内関係者がILC実現に向けて連携を密に図るためのスペースとして平成28年6月に先端科学技術研究センター内に設置した。庁内においては、外国人受け入れなど諸課題の解決に向けた方策を検討するため、本年度から副部長級の研究会を設置し検討を進めている。連携室と庁内の活動を連動させ、東北マスタープランの策定に向け、本県の意見を調整し提案していく考えである。
 不安の払拭という点では、ILCトンネルの深さや構造は、委員ご指摘の不安という点では、議会の場で知事が「最終処分場については、従来から県として受け入れる考えはない」と明言している。また、仮にそのような話があっても、絶対に転用しない、使用させないということについて、ホームページ等で周知を図っている。今後とも、講演会等を通じながら、県のスタンスを説明していきたい。

【斉藤委員】
 有識者会議の提言を正確に答えていただきたい。3つの提言がされているのではないか。
 最終処分場の問題で、たしかに知事は「従来から本県としては受け入れる考えはない」と表明している。問題は、「将来にわたって受け入れない」という明確な宣言が必要だと思うがいかがか。

【ILC推進課長】
 中間取りまとめの際の3つの点について。1つは、国際的な経費分担が必要不可欠であるということ。2つは、2017年末まで実施されるセルンでの「ラージハドロンコライダー」実験結果に基づいて見極めることは、ILCの性能を得られる成果を見極めること。3つは、この2つの提言も含め、全体像を明確に示し、国民および科学コミュニティの理解を得ることということがある。
【政策地域部長】
 使用済み核燃料、いわゆる核のゴミの最終処分場について、現在の使用済み核燃料の処分の条件は、地下300mより深いところというところであり、ILCトンネルは一番浅いところでは数十メートルというところもあるので、これを転用することは不可能と考えている。
 使用済み核燃料については、ILCトンネル云々ということよりも、現在国で最終処分場の候補地選定が進んでいるが、この中で、今年度中にも適地・不適地ということが出されるのではないかという動きがある。県としては、所管は環境生活部だが、現状では全く考えはなく、将来にもないと。それをどのように担保するかということを、どういうことで申し上げるのがいいのかということは、環境生活部で検討されているものではあるが、そちらの状況を見てから判断すべきものと考える。
 ILCに関しても、そのような考えは一切ないし、あるいは仮にILCを立地する場合には、国際研究所と立地協定を結ぶことが考えられるので、その中で転用については明確にすべきと考える。