2016年11月17日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)


・被災者の医療費・介護保険利用料等の免除措置について

【斉藤委員】
 達増知事が来年12月まで継続すると表明したので、高く評価したい。昨年度の実績について、国保・後期高齢者医療・介護保険・障がい福祉サービスの免除者数と免除総額はどうだったか。

【健康国保課総括課長】
 27年度の実績は、4事業合わせて免除者数が約35000人、免除総額が約35億8000万円であり、内訳は、国保が約19000人・約20億2000万円、後期高齢者医療が約12000人・約9億2000万円、介護保険が約4000人・約6億4000万円、障がい福祉サービスが約80人・約400万円となっている。

【斉藤委員】
 35000人余が免除を受けられたと。免除総額が約35億8600万円で、県の負担が4億193万円余であり、その他に県の調整交付金が1億8574万円あったと。
 被災者のもっとも切実な要望に応えたということで評価したいが、実は、今年の3月に、日本公衆衛生協会で、釜石・大船渡保健所長が「東日本大震災後の公衆衛生上の課題への対応、応急仮設住宅長期居住者の健康調査」という素晴らしい調査を行っている。結論として、「岩手県の応急仮設住宅入居中の住民に対しては、医療費自己負担免除が生活就活病など受診を促す効果が大きいと考えられる。これを継続することは、費用対効果の観点からも望ましいと考える」という提言だった。この保健所長をどのように受け止めているか。

【保健福祉部長】
 調査報告書は私も目を通している。やはり、被災地において、応急仮設住宅での生活が長期化する方々にとって、この医療費助成が医療を受けやすい環境をつくっている一例になっていると私も認識している。

【斉藤委員】
 この報告書の中には、応急仮設住宅が大変交通の便の悪いところにつくられているが、それでも医療機関にかかり、受診抑制はなかったということも言われている。交通費がかかっても、医療費が免除されていることによって健康を確保することができたと。本当に被災者の命を守る命綱だと思う。
 そこで、本会議でも議論になったが、台風10号豪雨災害の被災者も対象とすべきではないかと考えるが、県や被害の大きかった3市町ではどのように検討されているか。制度的には可能だと思うがいかがか。

【健康国保課総括課長】
 国保・後期高齢者医療制度・介護保険においては、災害等により一部負担金等の免除を行った場合、一定の基準を満たした保険者に対しては、減免に要した費用の8割が国の特別調整交付金から交付される制度があり、現在各保険者において減免の実施の有無、実施する場合の減免基準や実施時期などについて検討している。

【斉藤委員】
 「一定の基準を満たした場合」という答弁があったが、この基準というのはどういうものか。
 今回の台風10号豪雨災害で、特に被害の大きかった岩泉町・宮古市・久慈市の場合は、当然基準を満たしているのではないか。

【健康国保課総括課長】
 災害等により減免の措置をとった一部負担金の額が、減免前の額の一定割合以上である場合に、減免した額の8割が国の特別調整交付金から交付される仕組みとなっており、国保および介護保険では3%以上、後期高齢者医療は1%以上の場合特別調整交付金が交付されることとなる。また、「当該市町村における複数の災害による一部負担金を合算することができる」ということになっているので、東日本大震災の一部負担金も合算できるということになるので、そちらで減免を受けている場合、台風10号豪雨災害の分を加えてもその分も対象になるということになる。
 個別の市町村の該当のところだが、宮古市と岩泉町については、国保については3%以上になるということで、台風10号豪雨災害を足しても8割の対象になる。ただ久慈市の場合、そこがちょっと微妙なところとなる。

【斉藤委員】
 宮古市・岩泉町は基準をクリアでき、久慈市は微妙なところだと。大震災津波の被災地で二重の被害を受け、特に岩泉町の場合は600億円を超える被害額となっており大震災の10数倍の被害である。同じ被災地なので、台風10号豪雨災害の被災者にも医療費や介護保険利用料等の免除を、制度に基づいて、実現できるように県としても努力してほしいがいかがか。

【健康国保課総括課長】
 8割の対象になるかというのは決まっている制度なので、ただ久慈市の場合、もしかすると3%に満たないという場合については、国保については県でも調整交付金の制度があるので、そちらの検討を考えていきたい。

【斉藤委員】
 前向きな答弁をいただいた。台風10号豪雨災害から2ヶ月半経過しているので、ぜひ被災者を激励するような対策は早く打ち出していただきたい。

・介護保険の諸課題について

【斉藤委員】
 昨年度に、介護施設入所者の補足給付の削減措置が実施された。今年もさらに削減措置が追加されたが、昨年度の場合、前年度と比べて補足給付が削減された高齢者の実態はどうなっているか。今年度の追加の削減の影響はどうなっているか。

【長寿社会課総括課長】
 27年8月の制度改正により、世帯分離している配偶者が市町村民税を課税されている場合、または預貯金について、配偶者がいる場合は合計2000万円、配偶者なしの場合1000万円を超える場合には補足給付が支給されないこととなった。この取り扱いにより、27年8月末までに認定申請を行った約15000人のうち、約500人が新たな要件により27年度の補足給付の対象外となっている。制度改正から2年度目になる今年度は、昨年度にこの要件により対象外となった方はすでに当初から認定申請を行っていないものと想定され、影響を把握することは困難である。
 今年8月施行の制度改正だが、補足給付の受給要件のうち、利用者負担第二段階と第三段階を区分する年金収入額において、新たに障害年金・遺族年金等の非課税年金を所得として勘案あれることになった。これについて本年8月末時点の状況を保険者に照会したところ、今年度の利用者負担の段階が上がった県内被保険者の数は3345人であった。

【斉藤委員】
 質問にしっかり答えてほしいのだが、前年度と比較して補足給付を受ける人がどのぐらい減ったのかと聞いた。そうしないと正確な実態が分からないので。

【長寿社会課総括課長】
 27年の負担限度額認定証の交付対象者が補足給付の対象者になるかと思うが、13515人ということである。
 26年8月末時点で15108人、変更後の27年8月末時点で13801人、減少した1307人の中に制度改正の影響を受けた方がいると思われる。
 先ほどの約500人というのは、27年8月に補足給付の申請を受けた方のうち、新たな要件により対象外となった方となる。

【斉藤委員】
 昨年度も補足給付を切られ、さらに今年追加で削減されるという、本当に介護保険の改悪は深刻だと思っている。一方で保険料は上がるわけで、「保険あって介護なし」である。
 一人あたりの介護サービス利用量はどう推移しているか。介護予防、居宅介護サービス、施設サービスそれぞれ示していただきたい。

【長寿社会課総括課長】
 介護サービス受給者一人あたりの費用額の推移で比較すると、介護サービス給付分については、26年4月審査分で18万3300円、27年4月審査分で18万7300円、28年4月審査分で18万5700円となっている。
 介護予防給付分については、26年4月審査分で3万9600円、27年4月審査分で4万300円、28年4月審査分で3万5400円となっている。

【斉藤委員】
 今年の4月審査分では、軒並み介護予防サービスも介護サービスも減少している。
 介護サービスは全国でも最低クラスだったと思うがいかがか。

【長寿社会課総括課長】
 全国との比較では、一人あたりの介護サービス利用料は、28年4月審査分で見ると、介護サービス給付分については、本県が18万5700円、全国は19万900円と5000円弱の差となっている。
 介護予防給付分については、本県は35400円、全国は36600円となっている。

【斉藤委員】
 被災者の防災集団移転跡地の売却により所得が増えた場合に、介護保険料・利用料・補足給付への影響が大きい問題について、遅ればせながら改善措置がとられた。どういう措置がとられ、どれだけの被災者が対象になったか。

【長寿社会課総括課長】

 土地売却収入にかかる制度改正の影響だが、国においては、介護保険料の段階や補足給付の利用者負担段階の判定の際に、防災集団移転促進事業などによる土地売却収入等に対して、特別控除を適用する見直しを順次行うこととしており、平成28年8月から補足給付の利用者負担段階の判定に適用された。
 現在のところ県内では、補足給付にかかる見直しにともない、防災集団移転促進事業による土地売却収入等を得た被保険者の負担が軽減された例はない。その理由について、沿岸の保険者から聞き取ったところによると、特例減額措置の適用を受けるために必要な要件として、たとえば、全世帯員の現金・預貯金等の合計額が450万円以下であることなどの要件があり、防集の土地売却代金の特別控除があって仮に土地売買代金をゼロとみなした場合であっても、その他に別途預貯金等が450万円以上ある方については対象とならない仕組みだったので、各保険者から聞いたところでは、防集の土地売却を行った方々については、土地売却代金とは別に、別途預貯金等の資産が450万円以上あり該当しなかったという回答をいただいている。
 いずれ県としては、防集の土地買収が行われている市町村もあることから、この特例減額措置にかかる要件の緩和、現状の要件の緩和でいいのか、もっと必要なのか、土地売却代金のほかに別途資産があるのだから他の被災者とのバランスという問題もあるかもしれないので、沿岸市町村の意向を聞きながら、国に対して必要な働きかけを行っていきたい。

【斉藤委員】
 防集の土地売却収入による影響ということで取り上げてきて、県も国に呼びかけ改善措置がとられた。しかし、今言われたように2つ問題があった。全世帯員の現金・預貯金等の合計額が450万円以下というとんでもない条件がつけられた。そして28年8月1日から施行と、ほとんど売却してしまっている。だいたい施行前にやられてしまった。今後に生かすために、そういう改善は引き続き求めていただきたい。

・高齢者施設の防災対策について

【斉藤委員】
 県内の高齢者施設の現状はどうなっているか。そして防災対策はどのようにとられているか。

【長寿社会課総括課長】
 入所型高齢者施設ということで申し上げると、28年4月1日現在で約970施設ほどある。
 高齢者施設の防災対策の現状については、各施設において、県または市町村が定めている施設の整備および運営に関する基準を定める条例により、非常災害に対応する具体的計画の策定や、定期的な避難訓練の実施などが義務づけられている。
 各施設にたいしては、指導監督権限を有する県または市町村が定期的な指導監督を通じて、非常災害に関する具体的計画の策定や避難訓練の実施など防災対策の状況について確認し、必要な指導を行っている。

【斉藤委員】
 台風10号豪雨災害で大変大きな犠牲者を出したグループホームは、避難マニュアルがなかった、訓練もなかったということだった。県が管理監督すべき高齢者施設で、そういう避難計画を持っている、訓練をしていることは確認されているか。

【長寿社会課総括課長】
 先ほど述べたとおり、県および市町村では、それぞれが指導監督権限を有する施設に対して、定期的な指導監査等を通じて、非常災害に関する具体的計画の策定状況だとか、避難訓練の実施状況等を確認し、必要な指導を行っているが、一覧で把握するような形の把握は現在行っていない。今般の事態の重大性を踏まえ、国から、県および市町村に対して「介護保険施設等における利用者の安全確保および非常災害時の体制整備・強化、徹底を図る」よう通知があった。これを受け県では、介護保険施設以外も含めて、入所・通所型の社会福祉施設等における非常災害対策計画の策定状況や避難訓練の実施状況等について、各施設に自己点検を求めたほか、市町村に対しても指導監督権限を有する施設に対して同様の対応を求めたところである。この自己点検においては、火災対策のみならず、立地状況等を踏まえて、水害だとか土砂災害・津波等にも対処できる計画になっているかどうか、避難場所・経路・方法等が細かく定められているか、計画に基づいて避難訓練が実施されているか等の点検を求めており、県および市町村では、年内を目途に点検結果を取りまとめて必要な指導につなげていくこととしている。

【斉藤委員】
 被害を受け犠牲者も出した岩手だからこそ、今回徹底して点検・指導し、970施設ということで、岩手県の高齢者施設はきちんと対応したということでしっかりやっていただきたい。

・重度障がい者・児の対策について

【斉藤委員】
 県のアンケート結果では、短期入所の充実や、一時預かりなどの対策が強く求められたが、この対応はどうなっているか。施設の実態も含めて示していただきたい。

【障がい保健福祉課総括課長】
 昨年6〜7月にかけて行ったアンケート調査の結果、短期入所の充実がもっとも必要といったような回答をいただいている。県としては、在宅サービスを確保していくということが重要ということで、重度心身障がい者の支援に多くの事業者が参入でき、取り組みやすいように、障がい福祉サービスの報酬引き上げ、施設整備補助にかかる予算の充実等について、継続して国に要望している。また本年2月から、看護師や相談員等を対象とした、重度心身障がい児・者への看護や支援等に関する研修を実施し、人材の育成に取り組んでいる。
 短期入所の施設の実態について、重度障がい児・者が利用可能な短期入所事業所は、本年2月現在で28事業所となっている。そのうち盛岡圏域は7事業所・23床となっている。

・成年後見制度について

【斉藤委員】
 先日弁護士の方々と懇談したときに、弁護士さんの集計では、認知高齢者・知的障がい者・精神障がい者あわせて約67000人いるが、県内の後見人は約1700人にとどまっていると。これからこの課題は大変切実になると。弁護士や司法書士だけでは対応できないと。市民後見人をどう養成するのかという問題提起をされた。現状と県の取り組みについて示していただきたい。

【地域福祉課総括課長】
 成年後見制度については、時分で判断できない高齢者など、財産管理や契約などの法律行為を行うきわめて重要な制度と認識している。
 県内の状況は、手元にある盛岡家裁から聞いた数字は27年度のものだが、成年後見人は1253名であり、26年度に比べ92名ほど増えている。
 本県の特徴としては、第三者後見が平成26年は54.7%、27年は66.2%となっている。全国的には逆転しており、家族等が3割、第三者後見が約7割となっている。
 県としては、こうした弁護士会など関係機関と密接に連携をとり、そういったネットワークを構築することにより、成年後見制度の普及を図っていきたい。