2016年11月17日 決算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)


・被災した県立病院の再建について

【斉藤委員】
 大槌病院・山田病院が再建整備されてオープンした。新しい病院の特徴と医療体制、外来入院患者の状況はどうなっているか。

【経営管理課総括課長】
 被災病院が立地する地域は、いずれも高齢化率が高く、圏域の地域病院として基幹病院と連携しながら、高齢者を中心とした入院医療を担うこととしている。医療体制については、1病棟・一般病床50床の入院機能を有するとともに、内科・外科を基本とし、被災前の外来診療機能を維持している。
 外来入院患者の状況について。震災前の平成22年、新病院移行前の仮設診療所としての平成27年、新病院移行後の平成28年、これら各年10月における一日平均患者数を比較した数字で申し上げる。大槌病院の外来患者数は22年が162人、27年87人、28年82人、入院患者数は、22年24人、27年は病床がなく、28年は27人となっている。山田病院については、22年100人、27年80人、28年103人、入院患者数は、22年39人、27年は病床がなく、28年16人となっている。

【斉藤委員】
 山田病院は、外来患者を震災前に戻すという状況になり健闘していると思うが、大槌病院の外来患者数が意外とまだ戻り切れていないのはないか。この要因をどう受け止めているか。医師確保や交通アクセスの課題はないのか。
 高田病院の再建整備の状況、医師体制、外来・入院患者数の動向を示していただきたい。

【経営管理課総括課長】
 山田病院については、外来患者数が震災前を上回っている状況である。大槌病院については、地域の人口減だとか病床数の減など、被災前との一律的な比較は難しいが、地域の皆様から今後引き続き大きな支援をいただきながら運営していけるよう進めていきたい。
 医師確保について。大槌病院や山田病院の医師確保については、常勤医師が大槌病院は被災前の3名から5名(内科4名・外科1名)となっている。山田病院については、2名から4名(内科3名・外科1名)という体制として拡充している。両病院ともに、入院の再開にともない、当直体制が必要になってくるということで、関係大学等に対して当直応援医師の派遣を要請したり、圏域の基幹病院をはじめ、県立病院の相互応援、地元医師会からの応援などをいただきながら、連携して医師確保を図っている。
 交通アクセスについては、両病院ともに、町内各地と病院を結ぶ交通アクセス―路線バスや乗り合いタクシーなどの公共交通機関を確保している。大槌病院については、岩手県交通・町営バス・町営乗り合いタクシーがあり、一日当たり24.5往復している。山田病院については、県北バス・町営バスにより、一日当たり14.5往復の足を確保している。
 高田病院については、10月に本体の建築工事に着手している。25年に策定した再建方針通りに29年度内の開院をめざし鋭意取り組みを進めている。医師体制は、28年10月1日現在で、常勤医師は内科3名・小児科1名・外科1名・整形外科1名の6名となっており、一日平均患者数は、外来174人、入院16人となっている。

・医療局の昨年度決算について

【斉藤委員】
 前年度はたしか11億円の黒字だったと思うが、昨年度は赤字決算となった。その主な要因は何か。診療報酬改定の影響、消費税増税の影響はどうか。今後の対策も含めて示していただきたい。

【経営管理課総括課長】
 主な要因としては、患者数の減少を手術料収入等の増加でカバーした結果、収益は26年度に比較し4億6300万円余増加している。また27年度当初予算に計上した金額に比べても増加しているところだが、費用が、給与改定、年金一元化等に伴う県債負担金の増加などがあり、給与費が13億6500万円余増加している。および高額な薬剤の使用等により材料費が11億1500万円増加しており、費用が合わせて18億3500万円ほど増加している。この費用増が収益を上回っているものである。
【医事企画課総括課長】
 診療報酬改定の影響だが、28年4月改定にかかる公表改定率は、本体では0.49%のプラスではあるが、診療報酬全体では-0.84%の改定とされている。
 県立病院等事業への影響は、改定前後の実績により、おおまかに試算したところ、年間9億円程度の減収になるものと見込まれる。このうち7億5000万円程度が薬価改定によるものであるので、薬品費の減少も見込まれる。
 消費税増税の影響について。27年度の仕入控除できない消費税負担額および長期前払い消費税の償却額の合計は35億3400万円余となっている。
 これらの負担に対し、国が診療報酬において補填したとされる額等が29億800万円余と見込まれることから、これを差し引いた実質の負担額は6億2500万円余と試算している。
 今後の対応については、引き続き新たな施設基準の取得や上位の施設基準の取得、診断群分類別包括支払方式=DPC制度における係数の維持向上などの収益確保対策に取り組んでいきたい。
 消費税や診療報酬等の全国的な課題については、全国の病院団体等を通じて、引き続き国等に要望していきたい。

【斉藤委員】
 消費税が6億2500万円、これが純粋な負担になったと。この間累積の消費税負担額も示していただきたい。

【経営管理課総括課長】
 平成元年度に消費税導入されてから、27年度までの医療局の消費税負担額の累計額は、532億円余となっている。このうち、診療報酬の引き上げ等によって補填等されたと推計される額は、約358億円ほどあるので、差し引いた実質的な負担の累計額は173億円余と試算している。

・医師確保対策について

【斉藤委員】
 経営計画からみると26年度27年度は11人の減少となったが、その後どういう対策を講じたのか。今年度は増と聞いているが、今年度の医師配置の状況はどうか。
 奨学生医師の配置が今年度から本格的に始まったが、どれだけの病院に何人配置されたか。今後の見通しはどうか。
 産科・小児科医師をどう確保するか、医療局自身の取り組みについてお聞きしたい。

【医師支援推進監】
 県立病院等の経営計画においては、26年度・27年度で51名の増員を計画したのにたいし、研修医を計画通り確保できなかったこと、これまで招へいしてきた医師の退職者が相当数発生したことなどにより、結果的にさらに減少し13名の減少となった。
 増員の見通しについて、経営計画においては、28年度は24名の増員を計画しており、そのうち初期研修医は4名の増員計画にたいし1名にとどまった。勤務医については20名の増員計画で、関係大学へ医師派遣の要請を行っているほか、即戦力医師の確保に鋭意取り組んでいるところであり、現時点では具体的な増員の見通しを示すことは難しいが、一人でも多くの医師を確保し目標実現に取り組んでいきたい。
 今年度は、新たに奨学生養成医師16名が、後期研修医などとして基幹病院に配置となったことで、医師の増員計画の推進に寄与しているところであり、今後も養成医師の計画的な配置に努めていきたい。
 産科・小児科医師の確保対策について。県立病院では、産婦人科や小児科を含めたすべての診療科の医師が不足しており、まずは医師の絶対数の確保のために、即戦力医師の招へいや奨学金による医師の養成などに取り組んできたところである。産婦人科・小児科などの特定小児科については、専攻する医師が少なく、主な派遣元である関係大学の医局自体の医師の絶対数が不足していることから、ただちに常勤医を増員することは難しい状況であると理解している。こうした状況の下、県立病院の産婦人科の診療体制については、県内4つの周産期医療圏における機能分担と連携に基づき対応しているほか、周産期医療と小児科についても大学からの応援等により診療体制の充実に努めていく。

【斉藤委員】
 なかなか医師確保は苦労されていると思うが、特にどこに行っても不足の産科・小児科、知恵を出して政策的に養成しないと、地域の医療需要に対応できないのではないかと思っているので、ぜひ取り組みを強めていただきたい。

・看護師確保対策について

【斉藤委員】
 今年度を含めて3年間をの看護師増員の実績、そのうち大槌・山田が再建されたのでその分は何人になるか。

【職員課総括課長】
 各年度5月1日現在で、26年度3136名、27年度3186名、28年度3218名ということで、82名の増員となっている。
 大槌病院については、32名で前年度比23名増、山田病院は29名で前年度比19名増となっている。

【斉藤委員】
 82名増員は評価したいが、そのうち42名が新病院再建分ということになると、20病院あるうちで40名程度の増である。病院や病棟の実態から見ると、本当に増えてるのかというぐらいの実態だと率直に指摘しておきたい。
 今年の採用試験の状況はどうだったか。年次休暇の昨年度の取得状況はどうなっているか。なぜ年次休暇が取れないのか。9日夜勤の状況も示していただきたい。

【職員課総括課長】
 今年度の採用試験の状況だが、まず5月に実施した特別募集においては、12名の採用予定人員にたいし16名の応募があり、最終合格者11名のうち9名を採用した。11名のうちの9名ということで2名の差がでているが、これは採用辞退ということである。7月に実施した通常募集においては、181名の採用予定人員にたいし169名の応募があり、最終的には144名に採用内定を出している。通常募集の結果、採用予定人員にたいし応募者が満たなかったということのほか、今後においても内定の辞退等が見込まれることから、現在特別募集を実施している。
 年次休暇取得状況だが、28年・27年とも7.8日と横ばいの状況である。取得できない要因だが、年次休暇の取得日数については、ここ数年同程度と推移しており、26年からは夏期休暇の取得可能日数が1日増加したことなど、年次休暇以外の有給休暇の取得日数が増加しているということが影響しているのではないかと考えている。今後においても、取得推進ということは医療局においても重要事項と認識しているので、各病院に引き続き取得推進の通知を行うほか、産育休の取得者にたいする代替職員の正規職員での配置ということも進めながら、取得しやすい環境づくりに努めていきたい。
 9日夜勤の状況について。27年度においては11病院延べ569人となっており、26年度の延べ425人に比べ144名の増となっている。今年度の上期においては、11病院延べ424人となっており、前年同期比59人増えている。

【斉藤委員】
 年次休暇が看護職員全体で平均7.8日というのがどのぐらい異常なのかというと、知事部局で女性職員の平均は14日である。本当に異常なことで、年次も取れない職場に女性が就職するのかと。そして就職すれば2-8体制、これは1960年代に確立した体制、それを超えて9日夜勤が11病院569人、今年はそれを超えるペースだと。昨年は大船渡病院が103人、久慈病院が110人、二戸病院は149人だった。本当に看護師の命を削るような状況である。
 年次休暇が取れて当たり前、せめて本庁の女性職員並に取れるような体制を作る必要があるのではないか。9日夜勤を絶対に解消するという取り組みが必要だと思うがいかがか。

【医療局長】
 ご指摘もあったが、病院ごとにかなり開きがあることも事実である。やはり7対1体制の基幹病院ではなかなか年次休暇の平均が少ないと。一方で、取得が増えている病院もあるので、年次休暇の取得のためにさまざまな提言をいただいており、たとえば、「記念日休暇であるとかそういったことを病院としてやっていこう」という提案を受けて取得が増えている職場もあるので、そうした看護師が働きがいをもって働ける職場づくりを全職員で進めていきたい。

【斉藤委員】
 夜勤を含む三交代勤務というのは、一般の勤務以上に健康にリスクがある。さまざまな国際機関でも指摘されている常識なので。
 中央病院の看護師さんの実態をリアルに紹介すると、「日勤の帰りが8時過ぎは当たり前。日勤の半分は9時までいる」「深夜は最初に帰った人は11時30分。最後の人は12時までいた」という状況、そしてこれは5階西病棟(小児科・総合診療科)、ここは病棟再編され矛盾が激化したと言われているが、「深夜3名のうちベビー室に1名入りきり。2名でコール対応しているので大変だ」と。そのほかに、「勤務が終わってから研修があり、超過勤務が申請できない」と。こんなことは許されない。「『感染と災害の研修以外は義務づけられていない研修だから、超過勤務を申請するな』と言われた」と、これは本当か。こうした深刻な事態を打開することが必要だと思うがいかがか。

【職員課総括課長】
 超過勤務については、当然必要な業務というものであれば認めさせていただいて、そして支払いしているところである。
【看護指導監】
 中央病院の4階西病棟の状況だが、中央病院では、病床の効率的運営や入院待ちの期間短縮など患者サービスの向上を図ることを目的に、10月初めに診療科構成などを変更する病床再編を行った。この再編にともない、さまざまな諸問題が発生していると聞いているが、内容については、4階西病棟においては5名の看護職員が院内異動となったので、新たに配置された看護職員に対する支援を進めながら、あわせてこの時期に小児科等の入院患者数が増加したと聞いている。再編にともなう業務量の多い状況と合わせてこのような状況になったようである。ただ、こうした状況を受け中央病院では、4階西病棟への院内での業務応援を開始しており、今も継続している。また、人員の補充や夜勤体制の強化などにより、現在では配置された看護職員の習熟度も高まりつつあるので、夜勤の看護体制も図られたことも合わせて、再編直後に比べては業務量も落ち着いてきていると確認している。
 ちなみに、今後も院内異動となった職員への支援や、状況に応じた院内の業務応援に引き続き取り組んでいくということなので、業務支援課としても必要な支援に努めていきたい。

【斉藤委員】
 「感染と災害の研修以外は超過勤務の対象にならない」と現場では言っている。中央病院の研修の資料をいただいたが、これは本当であればきわめて重大である。
 たとえば、部長講話で看護師102人が参加、これも超過勤務の対象となっていない。上司が招集した研修も超過勤務の対象とならないのはおかしいのではないか。
 宮古病院では、出勤時間前に出勤して仕事していた、これは労基署によって是正されたと思うが、そういう事態というのは宮古病院に限らずあると思うが、全体でそういう改善をしているか。

【職員課総括課長】
 当然、時間内から始まった委員会・研修会というのは、感染・安全に限らずあろうかと思う。それについて、時間内に及んだものについては当然超過勤務の対象にはなろうかと思う。
 宮古病院の件については、時分の受け持ちの患者さんの当日の状態であるとか、その日の治療計画だとか、こういうものを業務前に情報収集するということ、宮古病院ではこれについては「時間内にやりましょう」としていたが、一部の職員が時間外にやって申請したが、認めないという形で言われ、監督署に申し立てた経緯がある。これについて監督署からは、病院の方でヒアリングを受け事実確認を行った。その結果、仮に「時間内にやりましょう」と言っていたにしても、その始業だとか終業の部分の管理、あるいは止めさせる姿勢といったものについて、いわゆる勤務管理の部分について不十分だったと。このようなことからすれば、超過勤務の対象とせざるを得ないという形で、事実上そういった対象の職員には、18名分14万632円超過勤務手当をお支払いしている。
 当然宮古病院とあわせて、医療局としてすべての病院に、きちんとした事前命令が基本という部分、当該業務が本当に時間外にやる必要があるのかどうかという部分に関しては、共通認識をもっていただいた上で勤務管理をしていただくよう、各病院にお知らせしながら、適正な時間外勤務の管理をしていきたいとしている。