2016年11月18日 決算特別委員会
商工労働観光部に対する千田美津子県議の質疑(大要)
・トヨタ自動車東日本岩手工場の雇用について
【千田委員】
トヨタ岩手工場の正社員、期間社員、派遣社員数のここ数年間の推移はどうなっているか。
また、この間どれだけの期間社員が正社員に登用されたのか、その状況は。
また、H28年度の状況がわかれば聞きたい。この間の新規採用数についても聞きたい。
【自動車産業振興課長】
H25年4月1日で正社員が1701人(59.7%)、期間社員が828人(29.0%)、派遣社員が322人(11.3%)、合計2851人となっている。
26年5月31日は正社員が1865人(72.8%)、期間社員が576人(22.5%)、派遣社員が122人(4.8%)、合計2563人となっている。
27年5月31日は正社員が1914人(68.9%)、期間社員が589人(21.2%)、派遣社員が276人(9.9%)、合計2779人となっている。
28年5月31日は正社員が2015人(71.5%)、期間社員が460人(16.3%)、派遣社員が344人(12.2%)、合計2819人となっている。
昨年の正社員登用は99人、今年度は5月1日付けと11月1日付で合計101人が正社員に登用されている。
その結果、11月1日時点で正社員が2086人(68.4%)、期間社員が460人(15.1%)、派遣社員が504人(16.5%)で、岩手工場では初めて3000人を超える合計3050人となっている。
【千田委員】
新規採用者数が漏れていたので答弁をいただきたい。
正社員数が300人以上増えている。正社員比率は全体が増えているので、ちょっと下がっているが、期間社員から正規社員への登用数が2年間でちょうど200 人。これは地域にとっても、労働者にとっても大変意義あることだと思う。
やはり、このような状況を作り出したトヨタ自動車本体の会社としての取り組みも素晴らしいと思うが、担当部が努力してきた結果だと思う。引き続き取り組みをお願いしたい。
ただ、気になるのは、派遣社員がずいぶん増えている。504人と大幅に増えている状況はどのように見ているのか。
【自動車産業振興課長】
新規採用数について、25年度は23人、26年度は22人、27年度は18人、28年度は34人となっている。
派遣社員の増加について聞き取りをしているところだが、トヨタ東日本では、ある意味で正社員候補として期間社員を募集しているが、なかなかそこには人が集まらないということもあって、派遣社員をお願いしている、というふうに伺っている。
もう一つは、12月に新しい車が立ち上がる、ということで一時的生産増に対応する、繁忙期の短期派遣と伺っている。
【千田委員】
素晴らしい状況だと思うが、トヨタの一人勝ちではなくて、関連産業に対してどのように波及しているのか。
【自動車産業振興課長】
主要部品メーカーなど、自動車関連企業にも正社員を取ろうと、採用しようとする動きが強まってきている。
増産に伴い、そういった動きが出るというふうに把握、認識している。
【千田委員】
トヨタが県内の物づくり産業の雇用の状況を変える牽引車になるように引き続きの取り組みをお願いする。
次に3月発表の「2016いわて統計白書」を見たが、様々な企業誘致や雇用の状況、賃金水準などがどのような状況かわかった。
統計白書では、過去10年間の岩手における工場の立地件数は196件で、全国で33位、東北では宮城県、福島県、山形県に次いで4番目となっている。
この現状について、どのように受け止めているか。
【ものづくり自動車産業振興室長】
工場立地の現状認識であるが、この件数は経産省が毎年行っている工場立地動向調査に基づく数字である。
この調査の対象企業は1000u以上の用地を取得した製造業、電気業等の件数であり、誘致企業、地場企業等問わないものとなっている。
委員が指摘のとおりH17年から26年までの10年間、工場用地を取得した件数が196件、順位についてもご指摘のとおりである。
内訳を詳細に見ていくと、本社が岩手県以外にある県外企業で見た場合、81件で全国26位、東北では3位、全体に占める県外企業の割合は41.3%で、全国17位、東北では2位となっている。県外からの誘致に関しては一定の効果を上げていると考えている。
県では、これまで自動車関連産業や半導体関連産業などを柱とする、本件経済を牽引する物づくり産業、あるいは食品、木材など、地域資源の活用につながる産業等の企業誘致に取り組んできたが、H22年度以降、県民計画に掲げる20件以上という目標を上回る状況が続いているところであり、今後とも取り組みを強化していきたい。
・岩手の賃金、労働実態について
【千田委員】
この白書から、岩手の賃金、労働の実態について質問したい。
岩手の賃金水準は低い。全国平均を大きく下回っている。都道府県では30番目の水準になっている。この現状についてどのようにとらえているか。
男女間の給与格差も拡大しているという指摘がある。岩手の男女間の給与格差は134,859円と白書では述べており、前年よりも格差が拡大している実態があると指摘している。この現状と原因はどこにあると考えているか伺う。
労働時間の長さだが、全国平均の月間145.1時間に比べて岩手は158.0時間と、12.9時間も長く、都道府県では一番長い労働時間となっている。労働者の働く環境としても早急に改善するように取り組むことが必要と考える。この現状を改善していくために、これから何が必要と考えているか伺う。
【労働課長】
本県の賃金水準の現状等について、その後の毎月の勤労統計調査、同地方調査によっても、本県の常用労働者5人以上の規模の事業所におけるH27年の1人月額現金給与総額は283,000円余と前月に比べて400円以上上昇しているが、依然として全国平均を下回る水準となっている。
男女間の給与格差については、様々な要因が指摘されているが、女性の職業生活における活躍が、長時間労働につながる職場意識や労働慣行によって、阻害されていることが大きな要因とされており、そのような意識や労働慣行を改めて、ワークライフバランスを実現するなど、すべての人が働きやすい労働環境づくりを進めることが重要であると認識しており、加えて、女性が多くを占める非正規雇用者の正社員との賃金格差が大きいと考えられるので、正規社員への転換や処遇改善等を促進する必要があると考えている。
長時間労働の指摘については、本県は全国平均よりもかなり長い労働時間という調査結果が出ており、その是正を図るには、その要因とされている、長時間労働につながる職場の意識、労働慣行を変えていくことが重要と認識しており、ワークライフバランスなど、企業の優良な取り組みの事例などの紹介を含めたセミナーの開催などの普及啓発とか、労働時間短縮に取り組む事業主への国の助成制度活用の促進などに取り組んできたところである。
さらに、今年度から「岩手働き方改革推進運動」を開始するとともに、運動参加企業の中から、優れた取り組みの企業を表彰する「岩手働き方改革アワード」を実施するなど、県内の企業等の働き方改革の取り組みを推進しているところであり、今後もこうした取り組みを通じて、長時間労働の是正など、労働環境の改善を図っていきたいと考えている。
【千田委員】
今の答弁のように、働き方の改革をしていかなければこれらの現状を改善できないということは明らかだ。
それは一つの企業がやればよい、ということではなくて、県民の大きな運動が必要であり、県が今取り組んでいるところをもっとプッシュするような形で前向きにお願いしたい。
男女間の給与格差が非常に広がっているということは、正社員への転換が必要だということはそのとおりだが、男女差別を撤廃していくという、県民の意識を事業者にも、働く側にももっと周知しなければならないと思うので、その点を伺う。
【労働課長】
ご指摘のとおり、男女給与格差の背景には、男女の雇用機会均等がきちっと確保されていない恐れもあるという指摘もあるので、それについても普及啓発に力を入れて努めていきたいと考えている。
【千田委員】
過労死を無くすために、残業時間の問題とか、労働者の働き方、働かせ方が大きな社会問題となっている。
過労死防止対策推進法が制定されて、過労死等防止対策白書が10月7日に公表された。
過労死等防止対策白書は実態調査に伴う、漠然としたような出し方をしているのでこれからどう変わる、ということは掴みにくいのだが、昨年度岩手県における脳疾患、心臓疾患での過労死の認定が、死亡した4名のうち2名が岩手でいる。全国では246名の方が認定されている、という大変な実態にある。
過労死を無くす取り組みを一緒になってやっていかなければならないと思うが、県は発表された白書から今の岩手の労働環境の現状について、課題をどうとらえ、強化していくべき点は何か、伺いたい。
【労働課長】
委員ご指摘のとおり、過労死防止対策推進法の制定、それから国による大綱の制定を受けて、国は10月7日、過労死等防止対策白書が閣議決定、公表されており、当方としてもそれを把握しているところである。
この白書にもあるが、国が毎年、過労死等の労災補償状況を公表しており、27年度の状況は、過労死の認定件数は全国で189件の内、本県では2件ということで、本県にも過労死と認定されているものがあるということで、県としても過労死防止、特にもその要因とされている長時間労働の是正に力を入れていくべきと認識している。
取り組みについては、過労死の防止、長時間労働の是正について、国において法制定、大綱の策定を受けて監督、指導の強化をしているところである。報道等にもよるが、東京、大阪に過重労働撲滅特別対策班を設置し、全国、岩手も含めて労働局に過重労働管理監督官を配置するなど、監督指導を強化しているところである。
県としても、労働関係法令に違反した事案を把握した場合は、岩手労働局に連絡するなど、緊密な連携を図っているほか、協力、連携して相談対応をしている。
また、労働関係法令のガイドブックを作成・配布し、あるいはセミナーを開催するなど、長時間労働の是正を含めた啓発活動を行ってきているところである。
また、国に対しては長時間労働の抑制を図るよう、一層、法整備や雇用ルールを確保するための岩手労働局の労働基準監督官の増員など、監督体制の一層の強化を要望しているところである。
今後も岩手労働局と連携しながら、過労死防止、長時間労働の是正が図られるよう取り組んでまいりたい。