2016年11月22日 決算特別委員会
農林水産部(水産部門)に対する質疑(大要)


・東日本大震災津波からの漁業・水産業の復興について

【斉藤委員】
 生産量、生産額、漁業就業者、漁港の復興状況はどうなっているか。

【水産振興課総括課長】
 平成27年度の県内産地魚市場の水揚げ量は11万4000トンであり、震災前3ヶ年度平均と比較し64%、金額では199億2000万円、同様の比較で85%となっている。
 養殖業については、平成28年度のワカメの生産量は14900トン・36億5000万円であり、震災前と比較し生産量で67%、金額で87%。
 コンブは、生産量で5200トン・8億4000万円、震災前同期比で生産量46%、生産額56%。
 ホタテ貝は今年10月末で、生産量2000トン・8億3000万円、震災前同期比で生産量55%、生産額88%。
 カキは、9月末現在の剥き身生産量は31トン、震災前同期比で91%となっている。
 採介藻漁業では、27年度のアワビの漁獲量が292トン・29億円、震災前と比較し生産量で85%、金額で126%。
 今年8月末現在でウニの漁獲量は97トン・8億円、震災前同期比で生産量で81%、金額で107%となっている。
 漁業就業者数だが、漁業センサスによると、平成25年度に6289人となっており、平成20年と比較し63%となっている。
【漁港課長】
 被災した108漁港すべてで本格的な復旧工事に着手しており、28年9月末までに約8割にあたる90漁港で復旧工事が完了している。
 引き続き、関係市町村や漁協などと緊密に連携しながら復旧工事を進め、29年度末までに被災したすべての漁港の復旧完了を目指していく。

【斉藤委員】
 生産量でみると7割弱と。これは漁業就業者が犠牲になったり減少したり、養殖施設整備そのものが7割程度にとどまっていると。就業者からみれば震災前の売り上げになっているのではないかと思うが、しかし震災前を回復するには、担い手の対策が必要になっているのではないか。
 主要施策の成果に関する説明書で見ると、漁業生産額となっていて、26年度までしか出ないが357億円となっている。漁業生産額と水揚げ額、養殖も含めるとそのようになるのか。27年度分で漁業生産額はどのように推計されるか。

【水産振興課総括課長】
 漁業生産額そのものは、お話あったような養殖あるいはサケなどの漁獲で市場に水揚げされるもの全てトータルしたものである。
 27年度の漁業生産額は、国の数字がまだ確定していない。

【斉藤委員】
 水産加工業の復興状況はどうなっているか。

【水産振興課総括課長】
 28年8月に実施した被災事業所の復興状況調査では、水産加工業で被災事業所の86%が再開し、64%の事業所がほぼ震災前の状況に復旧したと回答がされている。26年の本県水産加工品の生産状況を見ると、国の農林水産統計によると生産量は11万2000トン、水産食料品製造業の出荷額は621億円であり、それぞれ生産量で震災前の96%、金額で86%となっている。

【斉藤委員】
 大変苦労しているわりには、食料品製造業の出荷額で86%、水産加工品の生産量だと96%。ただ、水産加工品の生産量を見ると、圧倒的に冷凍水産物が多いので、もっと付加価値をつけたものにしていくことが必要ではないか。

・台風10号豪雨災害による被害状況、復旧状況について

【斉藤委員】
 漁業・水産関係の台風10号豪雨災害の状況と復旧状況を示していただきたい。

【水産振興課総括課長】
 施設への浸水・土砂の流入・損壊、流出など、被害額で36億8000万円となっている。特にサケのふ化場で約18億円の被害、定置網等の漁具で11億円、養殖水産物で約4億円の被害となっている。
 サケふ化場については、今般の9月補正予算で措置させていただいたが、国の水産業競争力強化緊急施設整備事業を使うほか、農林水産業共同利用施設災害復旧事業を活用し、さらに県・市町村のかさ上げ補助により支援をすることとしている。
 復旧状況だが、修繕により稼働できるところ、洋野町有家川ふ化場などではすでに事後復旧して稼働している。釜石市の鵜住居ふ化場などでは、災害復旧事業の査定前着工によりすでに復旧整備を進めている。ここまでは今年度中に稼働できることとなっている。今年度稼働できない野田村の下安家ふ化場などについては、29年度にサケが帰ってくる時期までに稼働できるよう復旧整備を進めることとしている。
 養殖施設や陸上の水産施設、器機等、増養殖用の種苗などの確保についても、今般の9月補正で県単事業で補助することとしている。
【漁港課長】
 沿岸12市町村において、79漁港で防波堤が倒壊するなどの被害が生じ、被害額は約40億1000万円となっている。被災した漁港のうち、漂着した流木がかなりあったが、漁業活動に支障をきたさないよう早急に進め、9月上旬までに撤去作業を完了している。
 また、漁業集落排水処理施設や上下水道が被災したところもあったが、これについても災害査定前に応急工事を実施し、すでに仮復旧している。
 今後においては、国の災害査定が終了した箇所から順次復旧工事を発注し、早期完成に向けて取り組んでいく。

・漁業の担い手確保について

【斉藤委員】
 震災復興や今後の漁業振興でも要をなす問題が担い手の確保だと思う。漁業経営体、漁業就業者の推移はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 個人の漁業経営体数は、漁業センサスでは、震災前の平成20年に5204経営体であったものが、25年には3770経営体・72%となっている。
 漁業就業者数は、平成20年に9948人であったものが、25年には6289人・63%となっている。

【斉藤委員】
 漁業就業者数では3659人減少し、減少率は36.7%となる。震災で犠牲になった方々、高齢で再開できなかったことが反映されていると思う。
 漁業担い手ビジョンを県は作成したが、協議会がつくられているようだが、担い手確保の目標、計画はどうなっているか。この間の担い手確保は23年以降どういう取り組みを行ってきたか。

【漁業調整課長】
 担い手確保の目標は、年間の新規就業者数を平成26年度の40人から平成31年度までに65人、1.6倍に向上させることとしている。
 担い手確保については、沿岸市町村の人口減少対策などを踏まえ、市町村単位の担い手対策協議会による就漁希望者の受け入れ体制を構築することとしており、漁業就漁希望者を地域に受け入れ、支援するため、漁業就業支援フェアにおける就漁情報の発信や、熟練漁業者のもとでの技術習得研修、生活基盤の安定化のための住居あっせんなどに取り組むこととしている。
 23年度からの取り組み、推移については、新規就業者数は23年度45人であったものが、27年度には59人に増えている。

【斉藤委員】
 27年度は59人ということで、Aランクという評価だった。それはそれで評価したいが、この事業は国庫補助事業の漁業復興担い手確保支援事業を活用したものがほとんどである。28年度以降は、27年度末の受付分しか対象にならない。だから28年度は17人になっている。今までは国庫補助事業で、やっと60人近くになってきたが、27年度で終わりと。だとしたら国に事業の再開を求めるのと合わせて、県の独自事業がないので、これをやらなかったら、増えるどころか減ってしまうのではないか。

【漁業調整課長】
 ご指摘のあった事業に関しては、国の漁業復興担い手確保支援事業に基づき、23年度から取り組んでいるものである。たしかに27年度でこの事業は終了し、27年度の申込みがあったものの計上で28年度で17人ということだが、国では、28年度から新規漁業就業者総合支援事業が開始されたということもあり、事業に則り新規就業者の初期研修に対応していきたい。

【斉藤委員】
 28年度からの新規事業の中身を示していただきたい。今までとどこが違うのか。28年度からそれは取り組まれているのか。

【漁業調整課長】
 28年度からの新規事業に関しても、基本的には就業希望者が漁業者のもとで研修をするということで受け入れには変わりないが、今までは復興担い手支援という位置づけだったものが、全国に拡大されて、総合支援事業という形で取り組まれることになっている。同じように使える制度なので、実際いま本県でもこの事業で研修されている方もいるので、この事業を今後活用して就業者の研修を進めていきたい。

【斉藤委員】
 28年度は17人に激減している。新規事業で激減したのか、これから増えるのか。

【漁業調整課長】
 新規事業でこれから新規就業希望者の研修生が増えるかどうかは分からないが、いずれ漁業就漁を希望したいということがあれば、事業で対応できるようにしたい。

【斉藤委員】
 今までと枠も同じで希望者があればいくということか。平成23年度は国の事業で5人、24年度24人、25年度31人、26年度38人、27年度50人である。それが28年度は17人になっている。だから心配している。制度が変わったせいなのか、急に希望者が減ったのか。
そして県はビジョンを作ったが、いわゆる真水の県の対策は残念ながらない。思い切ってきちんと対策をとるべきではないか。

【水産振興課総括課長】
 国の制度はたしかに28年度から変わり、復興のために人材の研修という制度から、全国的な同じような仕組みの中で、ある程度採択は厳しくなったということはある。そういう面があったので、これまではある程度研修を受けられていた人たちが、今回は対象にならないような場合も生じているということも事実である。新たな担い手への対応については、県単事業というお話もあったが、水産業の担い手育成基金という事業もある。これらの事業の中でも、こういう研修等についても検討させていただいているところなので、いろいろな対応を考えていきたい。

【斉藤委員】
 やはり5年経つと国の復興事業が転換してしまっている。復興の兆しが見えたところで事業を縮小してしまう。本当に国の姿勢を正さなければいけない。
 担い手対策でいけば、陸前高田市や宮古市が一人当たり年間120万円とか、大船渡市も宿舎の整備に補助するとか、市は独自に頑張っている。県が負けないように、一緒になって必要な手立てをとっていただきたい。

・サケ資源の公平配分について

【斉藤委員】
 20トン未満の小型漁船漁業者の方々は、本当にいま復興のさなかで経営が成り立たないという深刻な状況になっているが、こうした小型漁船漁業者の実態をどう把握されているか。
 サケ資源の公平配分をめぐり今裁判が行われているが、100人の漁船漁業者の方々が、「固定式刺し網方式で宮城県のように我々にもサケを獲らせてほしい」と。当然の主張であり権利だと思う。やはり漁民の経営が成り立ってこそ、漁業が成り立ち、漁協が成り立つ。そういう点で、この裁判で何が争われているのか、双方の主張はどうなっているのか。刺し網漁を認めない具体的な理由は何か。

【漁業調整課長】
 小型漁船漁業者の数は、漁業センサスの無動力および20トン未満の漁船の経営体数で、震災前の平成20年度の2519経営体にたいし、25年度は2125経営体で20年度の84%となっている。
 小型漁船漁業者の経営状況は、本県登録のデータはないものの、国による本県を含めた被災地域の漁船漁業経営体の経営状況の調査では、震災前の平成20年度の漁業所得水準を100とした場合、平成27年度は84と公表されている。
 サケ資源の公平配分をめぐる裁判については、平成26年9月30日以降、合計102名の漁業者から、サケを目的とする固定式刺し網漁業の許可を求める申請があり、県では、漁業法および県漁業調整規則等に照らし、「許可しない」こととしたところである。不許可処分を受けた漁業者のうち100名が原告となり、平成27年11月5日付で、県の不許可処分の取り消し及びサケ刺し網漁業の許可を求め、盛岡地裁に県を提訴したものである。これまで5回の口頭弁論が行われ、裁判ではこれまでのところ、県の不許可処分の理由の適合性が主に論点となっている。固定式刺し網漁を認めない理由については、漁業者計102名からの許可申請にたいし、県は、固定式刺し網漁業許可を有している53名については、県の固定式刺し網漁業許可等取り扱い方針に定める許可対象者のいずれにも該当しないこと、また、同許可を有しない49名については、取り扱い方針で新規許可は知事が定めた新規許可枠の範囲内で許可することとしている。震災以降、漁業調整および水産資源の保護の観点から、新規許可を設定しておらず、そもそも新規許可枠がなかったことを理由に不許可処分としたものである。

【斉藤委員】
 答弁あったように、固定式刺し網を認めない唯一の理由が「水産資源の保護」だと。しかしこれは科学的根拠がない。隣の宮城県でサケを刺し網でどんどん獲って、宮城県がサケの漁獲が減ったかというと、減っていない。これは科学的に検証されなければならない。
 もう1つは、何よりも大変厳しい状況、先ほど震災前の84%という数字が出されたが、復興の担い手は漁業者である。こういう方々の経営を守ってこそ、本物の漁業の復興になる。そういう意味で、漁民の立場に立って、漁民ファーストでこの問題を対応すべきだと思うがいかがか。

【漁業調整課長】
 漁業者、漁民の経営を最優先に考える、これはおっしゃる通りである。私どもも常々そのような意識で仕事をさせていただいている。
 いま漁業経営上で非常に問題がたくさん、それも同時に起こっている。一つには、漁獲がなかなかない問題、同時に震災復興に向けた取り組みもしなければならないこと、漁協が施設整備等をすることに際して1000億円以上の事業であり、漁協の自己負担金も200億円余が出ていると聞いている。これらを10年かけて返済していかなければならないという状況もあるので、そのためには漁協も支払いに充てるための収入が必要になってくるということもある。
 また、秋サケについて、震災により放流尾数が減ったということで、今もその影響が出ている。これらを同時に解決するのは非常に難しい部分がある。 
 まずはどこから手をつけていけばいいのかというところだが、やはりサケについては資源を増やしていく、資源を元に戻していくということがまずは大事なのではないかということで、漁業関係団体と一緒にサケの資源を元に戻すという取り組みを進めているところである。
 これらを通して、まずはサケの資源を増やし、漁業生産も増やし、そういう中で今後どのような対応ができるのか検討していきたい。