2016年11月22日 決算特別委員会
農林水産部に対する千田美津子県議の質疑(大要)
・日本型直接支払い交付金について
(千田美津子委員)
日本型直接支払い交付金の実績について聞く。
農地維持支払い、資源向上支払い、長寿命化という多面的機能支払い交付金の実績はどうなのか。中山間地域等直接支払い交付金、環境保全型農業直接支払い交付金の支払い実績はどうだったのか。この額は農家の要望に対してどうだったのか。平成28年度の見通しについて伺う。
(千葉匡農村建設課総括課長)
日本型直接支払い交付金の平成27年度の支払い実績については、多面的機能支払い交付金の交付実績は32市町村、1038活動組織、交付面積約7万2000ヘクタール、交付金額は48億4000万円余であり、要望に対して89%の配分となっている。
内訳は、農地維持支払いと資源向上対策の共同活用分については100%である。資源向上対策の長寿命化の取り組みについては74%である。
中山間地域等直接支払い交付金の交付実績は31市町村、1132協定、交付面積は2万3000ヘクタール余、交付金額は34億9000万円余であり、要望に対して、全額支払われている。
環境保全型農業直接支払い交付金については、19市町村、実施件数172件、交付面積約5000ヘクタール、交付金額2億5000万円余であり、要望に対して全額支払われている。
平成28年度の見通しは、多面的機能支払い交付金については33市町村、1076活動組織、交付対象面積約7万4000ヘクタール、交付金額は51億6000万円余であり、要望に対して93%の配分になる見通しである。
農地維持支払いと資源向上対策の共同活用分については100%、長寿命化については85%の見通しである。
中山間地域等直接支払い交付金については、31市町村、1151協定、交付対象面積は2万4000ヘクタール余、交付金額は35億7000万円余であり、要望に対して、全額支払われる見込みある。
環境保全型農業直接支払い交付金については、20市町村、実施件数187件、交付対象面積約6000ヘクタール、交付金額2億円余であり、要望に対して69%の配分の見通しである。
(千田美津子委員)
今の答弁を確認したいが、環境保全型農業直接支払い交付金の、今年度の交付対象面積約6000ヘクタールといわれたが確認する。
(千葉匡農村建設課総括課長)
27年度の実績は5000ヘクタール、28年度の見通しは6000ヘクタールである。
(千田美津子委員)
長寿命化を除いてはほぼ100%ということで、当初予算の時は危惧をしていたが確認してよかった。ただ、長寿命化について実績は74%ということで、この事業は国が決めた事業なので、予算が多いときは予算の範囲内でと言い訳しているが、地域が皆で決めて取り組んでいることなので、是非国がしっかりと手立てを尽くすべきではないかと思うがその点伺う。
(千葉匡農村建設課総括課長)
長寿命化対策の予算不足については、各活動組織において長寿命化計画を策定していただいているので、その中で補充箇所の優先順序をつけながら、交付額の範囲内で対応していただいており、27年度に制度運用が拡充されて、農地維持支払いと資源向上支払いの共同活動の一部を長寿命化対策に充てることも可能となっている。そうした制度拡充についても各活動組織に周知して利用していただいているが、委員指摘のとおり、日本型直接支払い制度については、27年度に法制化されて、国の責任において本来の交付額を満額交付するよう、県としても引き続き国に対して強く要望していく。
(千田美津子委員)
環境保全型農業直接支払い交付金について、最初に聞いたときは、28年度の面積が4439ヘクタールという資料をいただいている。増えているのはよいが、環境保全農業は化学肥料、化学合成農業を原則5割以上低減する取り組みと合わせて、地球温暖化防止対策、あるいは生物多様性保全に効果が高いということで、これを推進、促進することは大事なことと思っている。
その中で、カバークロップについて10アール当たり8000円の補助になっているが、この面積が、この取り組みがどのような状況になっているのか伺いたい。
(高橋昭子農業普及技術課総括課長)
平成28年度の交付対象面積6000ヘクタールは申請した面積である。国からは全国の面積が上回ったことから、27年度の執行に応じて、本県については69%の額で配分となった。面積的には4439ヘクタールとなったが、カバークロップの面積については、27年度の実績は688ヘクタールであり、今年度の申請面積は877ヘクタールであるが、市町村に69%で配分してあるので、実際はもっと下がる見込みである。
・米の生産調整について
(千田美津子委員)
環境保全型農業はこれから大事な部分だと思う。国が削減査定をするということで苦労はあると思うが、是非促進のためにこれからもよろしくお願いする。
二点目に移るが、岩手の農業にとって本当に大事な転換となると思うが、2018年から生産調整を廃止するということだが、そうすれば、岩手の農業にとって大きな影響があると思うがその点について伺う。
(松岡憲史水田農業課長)
平成30年度以降、行政による米の生産数量目標に配分が廃止され、仮に米の生産が需要量を超えるほどに増大すれば、全国的に米価が下落することが予想され、農業経営に大きな影響が懸念される。
(千田美津子委員)
大きな影響があるということだと思うが、今、後継者対策でいろいろと事業を進められて、担い手対策に集中する取り組みなどで、後継者の方々がせっかく頑張っていこうという状況の中にあって、意欲を削ぐになることになるのではないかと思うがどうか。
(松岡憲史水田農業課長)
担い手などの後継者対策としても有効な国の交付金があるが、国は平成30年度以降、米の直接支払い交付金を廃止するという方針を示している。
また、飼料用地や、麦、大豆などの転作作物に対する助成の枠組みは、30年度以降についても必要としているところであるが、助成水準など詳細な情報は示されていない。
(千田美津子委員)
担い手対策としても大きな影響を及ぼすものと思う。農地中間管理機構等への集積を進めているわけだが、例えば、そういう集積できない零細農家等は全く耕作できないことになりかねないので、是非、注視をしながら、岩手の農業を守る立場で取り組む必要があると思う。
今月に入り東北農政局が、11日には県南、沿岸南部の首長を集めて、15日には盛岡、県北、沿岸北部の首長を集めて、生産調整をはじめとした、農業問題での意見交換を行ったようだが、どのような意見が出たか把握しているか。
(松岡憲史水田農業課長)
農業関係の幅広い意見が出されたところだが、生産調整の関係については、全国の産地の足並みがそろわなければ主食用米の生産量が増大し、全国的に米価が下落するのではないかと懸念や、飼料米等に対する助成水準の維持を求める声が出されたと承知している。
(千田美津子委員)
米価下落に対する不安等が寄せられている。これはもっともっと大きな声になってくると思う。具体的に国からの説明はまだなされていない状況だが、県に対して、国から説明、取り組みの段取り、スケージュール的なものは来ているのか。
(松岡憲史水田農業課長)
30年度以降の取り組みについては、国が各県と意見交換をしており、国の考えとして、今後は県段階、地域段階での農業再生協議会において、需要に応じた生産を進めるように準備を進めてほしい、というような説明がなされている。
(千田美津子委員)
それに対して、県はどのように取り組もうとしているのか。
(松岡憲史水田農業課長)
30年度以降の県の取り組みとしては、県と農業団体等で構成している、農業再生協議会において、これまで地域協議会、集荷団体などと意見交換をしており、こうした経過を踏まえて対応方向を今年12月頃取りまとめしようとしているところ。
・農地中間管理事業について
(千田美津子委員)
農家の方々は今後の営農に対して、大変不安感を持っている。是非、県としても農家の意向を反映した取り組みができるように引き続きお願いする。
最後になるが、農地中間管理事業について伺う。農業を頑張っている後継者の皆さんから様々具体的な質問、意見が寄せられているので、それを紹介しながら見解を伺う。
農地中間管理機構に貸し付けるときに、耕作者は自分で見つけなければならない。機構は全く耕作者を探してくれない。そういう意見があったので伺う。
二つ目は、条件の悪い農地を機構は借りないのではないか、そういうところは耕作放棄地になってしまうのではないか、と心配する声がある。それについても伺いたい。
三つ目は農地の借り受けてのメリットが感じられない。10アール当たり1万円とあるが、貸し手に比べて受け手のメリットが少ないのではないかという意見がある。
次に協力金があるわけだが、これが毎年変動して、チラシとか既製のポスターに書いてあることと実態が違い混乱している、という若い方々の意見がある。
最後になるが、農地中間管理機構の貸付期間は10年であるが、10年後に農地中管理機構は機能しているのか、という声が多く寄せられているので伺う。
(菊池政洋担い手対策課長)
一つ目、貸し付ける相手先、つまり耕作者の掘り起こしだが、農地の受け手の掘り起こしや、その方とのマッチングについては、地域農業マスタープラン等の話し合い、地域での話し合いによる地域の意向を踏まえながら、農地中間管理機構の地域コーディネーターや市町村が行っているところである。
また、受け手がすぐに見つからない場合、そういった農地であっても、草刈りなどを行う当面の管理者がいる場合には、機構はその農地を借り受けることにしている。
さらに、管理者が見つからない農地にあっても、機構が農地を登録して受け手を探す取り組みに努めているところである。
二つ目だが、借り受け手がないところは耕作放棄地が進むのではないか、という懸念については、圃場条件が悪く、受け手が表れない農地の扱いについては、全国的にも大きな課題となっている。
このため、本県においては27年度から新たに高収益作物の導入や、農作業の効率化に向けて、簡易な基盤整備が行うことができる、活力ある中山間地域基盤整備事業を措置しており、こうした取り組みにより、できる限り多くの農地を受け手に結び付けていきたいと考えている。
三つ目だが、農地の受け手に対してメリットが薄いということだが、農地中管理事業については、担い手の規模拡大意欲に呼応して農地の集積、集約化を進めることにより、担い手の農作業の効率化、コスト低減が期待できるということで、そのことが担い手にとって一番のメリットと考えている。
また、地域集積協力金は地域の創意工夫により、使い方を自由に決定することができることから、本県では地域の話し合いをもとに、担い手が利用する共同機械の購入など、地域の担い手に対する支援として活用している事例が多く見受けられている。
その外、一部の国庫事業においては、中管理事業により農地を集積した地域を優先して採択するものもあるので、その分担い手に対するメリットと考えている。
四つ目だが、中間管理事業の制度が変わるといったことでの混乱ということだが、26年度の農地中間管理事業の全国的な実績から担い手の新規集積に対する協力金の貢献度が弱いという理由で、国は協力金の県への配分方法を変更した。28年度以降、担い手の新規集積面積をもとに、10アール当たり5万円が県に配分されて、農家や地域への交付基準はこの予算をもとに国が示した交付単価を上限に、県が定めるということになり、各種協力金は減額せざるを得なくなったところである。
国は本事業の開始時に30年度までの交付単価や交付条件を示しているため、今回の変更は国の方針転換ということもあるが、県では農家に混乱が生じないよう、振興局単位で事業推進会議を開催したり、全市町村を巡回した相談対応、県のホームページによる交付水準の公表など、丁寧な説明に努めてきたところである。引き続き制度の変更の周知に努めるとともに、国に対しては継続性のある制度設計を要望してまいりたい。
最後、農地中間管理機構の継続性について、本県では農地中間管理機構として、広域社団法人岩手県農業公社を指定し、担っていただいている。
農業公社は農地保有合理化事業が始まった昭和40年代から農地の貸借業務や売買業務を担ってきており、今後引き続き、今後も本県の農地集積の中核として、継続して業務を進めてもらいたいと考えている。
(千田美津子委員)
農地の受け手に対するメリットについて説明があった。意見をくれた方は、、先ほど地域集積協力金は、自由に使い方を考えられるという話があった。その使い方に対する周知、地域の認知度が低く、担い手のメリットが少ないと思っているのだろう。
だから、そういう部分でもっとそういう使い方ができるよ、というアドバイスをしていただくことが必要と考える。頑張っている人たちなので、その辺のことが十分伝わるようお願いする。
経営転換協力金、耕作者集積協力金、地域集積協力金の配分実績と配分基準をについて説明願いたい。
(菊池政洋担い手対策課長)
担い手に対するメリット部分での地域集積協力金の使い方については、地域で話し合いをしていただく中で、この協力金の使途は自由ですよ、ということは再三現地で周知している。
その中で具体的な使い方として、本県では担い手の設備投資に充てている事例が8〜9割位、それ以外の使い方としては協力金はもらえないが、集積には協力しましたよ、というような、個別の農家の方々への手当であるとか、地域の皆さんがこういった使い方が一番いいだろうと話し合いのもとに決定されたものと承知している。今後、そういった担い手への支援が有効に働いているなどの事例も含めて、地域に紹介していきたい。
それから地域集積協力金の配分実態については、27年度の県の配分方法から申し上げる。国から配分された予算の範囲内で、県では担い手に新たに農地利用が集積、集約に資する観点から配分方法を定め、本県では三種類の協力金の内、経営転換協力金と耕作者集積協力金を優先的に配分し、残った金で地域集積協力金を新規集積に寄与する割合、地域から配分を行った。
27年度の配分実績は、経営転換協力金が約10億3000万円、耕作者集積協力金が約2億2000万円を要望のあった全額を交付したところ。
また、地域集積協力金については、要望のあった77地区のうち75地区に配分した。その金額は約8億8000万円である。